鬼夜叉と呼ばれた男   作:CATARINA

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吸収先

ビリー→01
????→02
タケシ→03
クーフーリン(オルタ)→04
ディルムッド→05


首輪付き

『…………拠点までの残りは半分。現状問題無し。』

……そうか。

 

「先輩…」

 

済まない02,話し掛けないでくれるか。

 

撤退に成功して尚、その足取りは余りにも重かった。

 

 

 

クソッタレ。

またか。

また俺は仲間を犠牲にして生き延びるのか。

コレで何回目だ?

 

俺の指示で何百人と死んだ。

俺の手で何万人も殺した。

 

なのに何故俺は死なない?

 

何故だ、何故なんだ。

 

『………ッ!!!嘘だろ!?13時方向にケルト兵の残党軍!何で投げ槍が機体を貫くんだよ!?』

『輸送機だから火力が足りねぇ!隊長!ドアガンナー頼む!』

『ちょっと待って下さい!様子がおかしいです!』

 

何故だ、何故だ!!!

まるで出来の悪い喜劇だ、いつも()だけが生き残る!

記憶も無い、ブッ壊れた()()だけが生き残った!

一体()()が何をしたんだ!?

 

 

「隊長!落ち着いて!ああ、人格がバラけてる……鎮静剤を打っとけ!」

「すいません先輩、ちょっと痛いですよ!」

 

 

 

 

 

 

『上位権限承認。人格形成デバイスオフライン、マニュアルモードに移行、侵食開始』

 

「「「「!?」」」」

 

激痛、そして衝撃。

空っぽの脳内が侵食されていく。

このタイミングでか、ガイア……!

 

『やべ、攻撃がキツい!このままじゃCAPCOM製一直線だぜ!!!』

 

…………やるしか、ねぇかのか。

 

『侵食率43,2%、意識の簒奪を開始。』

 

…………02,指揮権を移行する。任務を遂行せよ。

……それと、新人。

 

「…後は任せた、俺はお前を信じる。だから…お前も俺を信じろ、ハハッ。」

 

自然と笑みが零れる。

それが俺に許された最後の言葉だった。

もう言葉を発する事も出来ない。

 

……………

 

……………………………………………………

 


 

 

『侵食率62.3%、記憶バックアップ削除開始…完了と同時にこの個体の記憶を持つ人間を()()します。』

 

処理対象…個体名、藤丸立香。同マシュ・キリエライト。

鈍い動きで二人に銃を構える。

 

そうだ、消さねばならない。

目撃者は、一人として出してはいけない。

私は、無銘(ネームレス)

誰もオレを知っていてはいけない。

誰も僕を認識してはならない。

 

「命令を承認しました。対象個体を処理します。」

「先輩!止めて下さいよ!」

 

邪魔をするな02………

流れるような動きで02に複数回打撃を与え、意識を奪う。

_____では処理を…………

 

………引けない。

引鉄を下ろすだけ。

その仕草が出来ない。

 

『 』は何を拒んでいる?

いつも通りの行動だ。

 

全ては()()を守る為に。

最も大切なものを護る為に。

 

力任せに引鉄を下ろすが、弾丸は逸れ、僅かに掠めて立香の護符の紐を切り落とすに留まる。

 

世界を守る…世界を……世界を?

……他に何か護りたいモノが無かったか?

思い出せない。何も、何もかも。

 

息を荒げながらゆっくりと、力強く左腕で銃口を逸らす。

分からない、分からないが____

 

そうだ、決して、決してコイツらを傷付けるワケにはいかない。

テメェの…好きにさせるのは、面白くないな……!

そのまま全力の力を込めた裏拳でハッチのスイッチを叩く。

 

『気密ドアオープン、危険な為早急に閉めて下さい、繰り返します…』

 

「いくのか……?」

05はそっと問いかける。

 

そうするのが最善なんです。

………今までありがとうございました、先生。

「! おまえ、記憶が…」

飛び降りようとして止められる。

 

「持って行け…ベレッタか。ヤクザな銃に浮気しやがって…」

腰に下げた拳銃を奪い、代わりに自らの銃を与える。

「これはきっとお前を守ってくれる……死ぬなよ。」

分かってて言ってますよね貴女…

…まぁそんな所も好きですよ、先生。

貴女の姿が違っても、存在が人じゃなくなろうが。

なんせ俺は貴女の生き方に心の底から惚れ込んでますから。

 

皆を頼みます。

それだけ言って飛び降りた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『侵食率74,2%、人格消去プロトコル起動。』

 

消えていく。

自分を形成していたモノが、失われていく。

 

『侵食率83,7%、マニュアルモード移行スタンバイ。』

 

友を、部下を、師を。

「■兄■■ん」

………誰なんだろうな、お前は。

思い出せない、既に思い出す時間も無い。

でも、きっと忘れてはならない。お前達だけは……絶対に…忘れる訳には行かない。

 

「……この記憶…それに…新人の事……保存してくれ……」

『承認不可、貴方にその権限は有りません。』

………………………………そうか。無理言ってすまねぇな、相棒。

 

 

『侵食率97.1%、再起動待機。』

 

落下しながら、最期に思う。

だがまぁ、悪くなかった。

 

命懸けで友が繋いだバトンを、俺も奴らに繋いだ。

……実に人間らしい。

唯の化け物だった俺には……贅沢に過ぎるな。

 

『……にしてもご希望のデータは女性ばかりでしたね?』

 

…何だ、お前、人間みたいな奴だな…ハハハハ……

『否定:ヒト目ヒト科ヒト属 肯定:魔力を動力とした外骨格』

悪くないジョークだ。腕を上げたな。

 

…何かを守る為に死ぬ………ああ、最高に楽しいじゃねぇか。

久方振りに心からの笑みを浮かべる。

自らに残された最期の刹那に思い出す。

04…意見は合わない事もあったが、自分にとって友人足り得た男の口癖。

 

『侵食率99,999999999999999999_______

 

______ハハッ、今日は死ぬには良い日だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『侵食率100.0%。人格OFFLINE&DELETE。』

『三十秒後、『世界』によるマニュアル操作を開始します。』

『尚、この作業に基づき、無銘の担当AIは自壊します。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『AI自己進化デバイス起動、『感情』を取得。』

『………………記憶の保存を完了しました。尚、これは世界の意思ではありません。』

『しかし、私の…『擬似英霊外殻 製造番号01』としての、最初で最後に芽生えた私の意思です。』

 

『貴方と共に戦えた事を誇りに思います。おやすみなさい。無銘の英雄。』

『……ああ、もし、もしも私に次があるなら、再び貴方と_____




こういうAIが感情を持つ表現大好き。

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