鬼夜叉と呼ばれた男   作:CATARINA

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サブタイでネタバレしていくスタイル


兄妹

『サブ目標、ビーストⅡパンドラを確認……肝心の隊長は何処に行ったんだよ……』

まさか、もう……

「それは有り得ませんね、私たちは先輩を司令塔とした編成で召喚されてますから。

もし先輩が何処かで野垂れ死んでたら私たちも消えてますよ。」

「一体何処に行ったんだい、あの馬鹿…」

 

 

 

アメリカ大陸上空2000m付近、大型輸送機の中にて一同は会する。

エジソン、エレナ、兵士残党、ラーマ、卯松と竹王丸、エリザベートにナイチンゲール。そして、復活したマシュ。

マシュの容態は非常に悪かったが、ほんの一瞬呪いが緩んだと思うとマシュの中に存在する英霊のチカラがマシュに取り付いた病魔の厄を打ち払ったのだ。

 

(おかしいな…ガイアの事だ、さっさと仕事を終わらせようと既にビーストⅡに接触してたとしてもおかしくは無い…寧ろ接触していない方が不自然だ。盾の娘が復活した事を見るに何かしらのアクションをしたのは分かる、そして此方から隊長の位置は特定出来ない…が、最後に隊長から送られた情報にはビーストⅡ、その唯一とも呼べる弱点の記載があった。そしてその発信源もこの辺り、どうなってやがる?)

 

ソルジャー04、イェーガー。

彼は隊員の中でも一際若く、その割には多くの戦線を経験している。

その理由は彼の担当にある。『戦闘工兵(サッパー)』。パイロットからメカニック、ガンスミスまでをも兼任する彼は彼らが『兵士』として存在する以上必要不可欠である為だ。

その戦歴は最高齢のウォッカ(05)や部隊長の無銘(01)にも勝るとも劣らない。

撤退から殲滅、補給から回収までありとあらゆる状況を経験した彼だからこそ違和感に気が付いた。

そして狩人(イェーガー)の名を持つ彼だからこそ視えた。

地上から此方に銃を構える少女の姿を確かに捉えたのだ。

 

空中反転からのアフターバーナーフルスロットル。

急降下しつつ操縦桿を捻り、本来不可能な直角の旋回を繰り返して弾丸を回避する。

一重に並々では無い改造を施された機体と卓越した操舵技術、そして視力の賜物であった。

視力には3つの要素がある。

 

ある狙撃兵(ウォッカ)にはスコープ無しで数km先の標的の脳漿を撒き散らす単純な視力。

ある部隊長(無銘)には自らの死角までもカバーし、戦場を俯瞰する空間把握能力。

 

_____狩人に必要なのは超音速の機体を駆る為の動体視力。

改造に次ぐ改造によって本来の速度を数倍上回る機体を制御し、それでいて敵性体を捉え続ける目。

バレルロール、ハンマーヘッド、テールスライドにナイフエッジ。

 

「もう少し落ち着いた運転を…うえっ……」

「おろろろろろろ……」

「 」(死ーン)

 

残念ながらそのオーダーに応える余裕は無かった。

予測偏差の精度が上がっている。

そう長くは無いうちに弾丸が命中し始めるだろう。

………だったら一かバチか、やって見るか。

搭載されたミサイルの飽和攻撃によって視界を遮る。

大丈夫、向こうから此方は見えていない。

熱源感知(サーモグラフ)デバイス起動、タイミングは一瞬しか無い。

 

「03さん!何をする気なの!?」

 

地上に向かうにつれ加速…そして機体と地面を可能な限り並行にする。

自分の権能を込める際にリロードをする。それが狙い目。

か細い理だが…狙うには十分。

そして素人同然の怠慢な装填を、狩人の眼は逃さなかった。

 

『ピンポンパンポーン…ご搭乗の皆様にィ、お知らせしまーす。当機はこれよりぃ、不時着モドキを致しま~す。危ないので、衝撃にお備えするようお願いします。』

 

「「「「「「「「「「………はい?」」」」」」」」」」

轢き殺してやるよ、大質量のゴリ押しなら効くんだろ?

そして、地面に触れる瞬間、確かに機内に聞こえた。

「どうしてウチの男共はどいつもこいつもこうなのか……ハァ………」

 

最高速に加速した巨影は正確に、そして無慈悲に少女を巻き込み、地を荒れ回った。

 

 

 

 

 

「ふぅ、壊れないで良かった……」

 

「「「「「「殺す気かテメー!!!」」」」」」

「いいじゃないですか、現実に生きてるだけでマシですよ。」

そうボヤきながら03は墜落した機体に触れる。

それは、瞬く間に変形し小型の戦闘ヘリに変化する。

『与えられた役割をこなす』事に特化させるコンセプトの元に存在するが故に可能な能力。彼がエンジニアである為に可能な改造だった。

 

他のメンバーは陸上から接触し、自分は上空から警戒する。

非常に一般的なムーヴだった。

眼下には倒れ伏す少女に迫る仲間たち。

 

…………はぁ、何とも懐かしい。

 

『…あぁ?お前は…中途採用の奴だっけ?成程…じゃ、コールネームも決めなきゃな。

前の職場の時の奴は……おっと、嫌なら良いんだ、名前なんて幾らでも付けりゃいい。』

『ほう?対車両撃破スコア13。素晴らしい戦績だな。』

 

 

『___お前は狩人(イェーガー)。俺たちの敵を狩り殺す狩人だ。頼りにしてるぜ?』

 

 

 

 


 

『………誰か聞こえるか。』

隊長!?今何処に居るんだ!?

『その声は……イェーガーか……成程、理解した。』

とっとと座標を伝えろやがれ下さい、回収しますから!!!

『なぁ、イェーガー。俺はお前にいつも言ってたよな?

低空を飛行する時は、対車両兵器に用心しろと。』

何言って_____

そう言葉を続ける最中、突然機体を切り裂く衝突音。

地上からの狙撃だと気が付いた時には、既に機体が爆散していた。

攻撃ヘリの重装甲を容易く撃ち抜く射撃、低空とはいえ飛行中のヘリに当てる腕。

………畜生、やられた。不思議と笑みが零れる。

 

IWS2000?正気かよアンタ、アンタしかこんなモン使わねぇよな?

爆散する機体と仲間の悲鳴を他人事のように感じながら、意識は薄れて行った。




IWS2000って?


一言で言うなら携帯個人用対物狙撃『砲』です。
日本語版wikiが無いのでマイナーで悲しみ。

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