鬼夜叉と呼ばれた男   作:CATARINA

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最近ちょっとペースが落ちてる。なんでだろ。
(FGOとドルフロをプレイしながら)
記念すべき100話がこれかい。


破滅願望

人間だけを殺す瘴気。

一言で言えば彼の能力はそれだけだった。

その他の生命、そして物体には何一つとして影響を与えない。

 

そしてそれは英霊達にも言える。

 

「どうしてアイツらだけ死なないんだ!」

「きっと薬か何か持っているに違いない!」

「寄越せ!」「よこせ!」「ヨコセ!」

 

僅かに芽生えた猜疑心。

 

「違う!そんな物持ってなんか…」

「待ちたまえレディー立香!人間である君が近付くのはあまりにも危険だ!

兵達よ、引け!引き給えよ!これは大統王としての命令である!」

 

立香に縋り付こうとした兵士がエジソンによって引き剥がされる。

緊急故に多少乱暴なその手口はばら撒かれた油に火種を投じるも同然だった。

 

「……プレジデントまで俺たちを見捨てるのかッ…!!!」

 

死と反乱の乱調は終わらない。

 

 

 

「…サーヴァント界最大のヒットナンバーを、聴かせてあげる!『鮮血魔嬢』!!!」

「エリちゃん!?」

 

否、今終わった。終わらされた。

それは全てを否定する怪音波、脳を沸騰させるキテレツボイス。

 

(………どうしてこんな黒歴史を……ううう……)////

なお、忘れてはならない。このエリちゃん、カーミラである。

つまり黒歴史に耐えている、必死に耐えている。

そのリスクを負ってでも、自らが止めねばならないと思った、思ってしまったのだ。

 

貴族として圧政を強いた際、時折耳にした民の争い。

今までは何も感じなかった。

しかしあの時。

たった一人自らを認めてくれた男に教えられた。

ほんの数秒、それも消滅間際の刹那。

それでも伝わった、人間として心が。

 

心を繋ぐ宝具…つまり長政の宝具の本来の効果。

人と人の間を繋ぎ、争いを鎮め、心を癒す。

生涯を戦いに費やした男が持つにはあまりに優しい宝具。

それは彼の秘めた本心を表していた。

戦うしかなかった。それも自らの宝具を改造してまで。

 

本当に誰かを想うのなら。本当に誰かを護りたいのなら。

自ら行動するしかない。

座して待つだけでは何も変わらない。自分は誰よりも分かっていただろう?

 

今やるしかない。届け、今此処に居ない男への想いを乗せて。

 

その声は、とても美しく響く。

始めて誰かの為に謳うその歌は人の狂気を鎮めた。

憎悪が消えて行く。疑念が、苦痛が、恐怖が。

そして彼女の歌は皆を奮い立たせる。

 

一人、また一人と兵たちは立ち上がる。

その瞳からは一切の陰りが消えていた。

死への恐怖さえ薄れた。

 

即ち、死の伝染は終わった。

メメント・モリ,死を忘れるな。死を恐れよ。

それは恐怖を媒介として感染する。

だからこそパンドラは一人目は自ら始末した。

自らの手で始末しなければ発動しなかった。

 

「……違う。」

 

 

 

「違う………俺の知る戦場は、こんなんじゃ……無い………」

 

恐怖が無い。代わりに勇気に満ちている。

狂気が無い。代わりに慈しみが蔓延している。

 

絶望が無い。

そこにあるのはただただ眩い希望だけだった。

 

 

 

 

 

 

眩過ぎたその姿に目を灼かれた。

身体を焦がれ、しかし心だけが溶けていく。

 

何かが、溢れ出る事を止められない。

朽ち果てた感情が蘇っていく。

 

それは憧憬だったのだろうか?羨望だったのだろうか?

 

「……泣いて、る?」

 

止まらない、止められる筈も無い。

その姿に焦がれて彷徨っていたのだから。

無意識の内に手を伸ばす。届かないと分かっていても。

届かない星に、それでも思いを馳せた。

 

 

 

 

「…違うよ。」

 

同化が解除された瞬間、背に騎乗する少女は謳う。

 

「だって、誰も助けてくれなかった。」

 

!?……繧ィ繝ゥ繝シ!!!繧ィ繝ゥ繝シ!!!

縺ェ縺ォ縺九′縺ッ縺?▲縺ヲ縺上k

 

「誰も私を、私達を助けてくれなかったのに。」

縺昴≧縺?縲√□繧後b縺溘☆縺代※縺上l縺ェ縺!

「どうして貴方達だけが、生きていられるの?」

縺ェ繧薙〒縲√♀蜑阪i縺?縺代′

 

「私達だって、こんな風にはなりたくなかったのに……ッ!!!」

 

 

 

 

 

 

「認めない…『ネガ・ソリテゥス』!私達だけを認めないこんな世界!絶対認めない!!!」

…………そうだ、認めてたまるか。

「壊してやる!何もかも!邪魔しないでよ!もう嫌なの!」

 

世界の不平等に怒れる少女は慟哭する。

そして動かなくなった男の身体を無理矢理駆動すると怒りのままに潰走する。

途中、数多の兵が果敢にも立ちはだかった。

全てを切り払い、穿ち、撃ち抜いて駆ける。

何故笑って死ねる?何故死を恐れない?分からない…パンドラには分からない。

分かりたくない。分かってしまえば自らの過ちに気が付いてしまうから。

 

 

 

そしたら、過ちを冒した私を、彼は見捨てるかもしれない。

それだけは、どうしても恐ろしかった。

 

 

 

数百mと少し先、此方を見据える影を捉える。

カルデアのマスター。彼女はまるで影法師だ。

彼女の周りはいつだって光輝いている。

…違うか。影は私の方だった。

____そして大抵の場合、影は光に惹かれるモノだ。

 

その方向に駆け出す。理由など無い。

強いて言うなら何か惹かれたに過ぎない。

 

誰も反応出来ていない。

彼女を殺せばまた皆絶望を感じるだろうか。

 

…認めない。

幸せな結末なんて、認めてたまるか。

 

超至近距離、殺った。

 

「………まぁ、ちょっと待て、小娘」

ズブリッ……命を貫いた手応えを感じた。




長々5章。6章はホノボノさせたいからシリアスにもーちょい付き合ってくらさい。

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