【三次】 みほエリを見たかった俺はこの先生きのこれるのだろうか?   作:米ビーバー

12 / 23
ロサ=カニーナとは、「イヌバラ」のことを指す。

ローズヒップティーの名前で語られる「ローズヒップ」とは

ローズ(薔薇の) ヒップ(果実)」という意味であり、紅茶に使われるローズヒップの代名詞になる植物は、前述のイヌバラと、ハナマスの二種類である。


イヌバラは「野ばら」という曲のモチーフとされており、言ってみれば「雑草の薔薇」と呼べるかもしれない。




 さて、ここまで語ればわかるでしょう?私がどうしてあの子に冠銘を与えたのか……





           ~ 『アールグレイはかく語りき』より抜粋 ~




閑話:ロサ・カニーナは校庭(にわ)駆けまわる

 彼女は勤勉だった。ただし自分の興味を持ったものに対しては

 

 彼女は真っ直ぐだった。ただし自分のルールという点でいうならば

 

 彼女は自分に素直だった。ただし脳のリソースを『考える』に割り振っていない点を除けば―――

 

 

 故に、この結論はある意味で当たり前の帰結だったと言える。

 

 

「―――お断りいたしますでございますですわ!」

 

 現隊長ダージリン、及び副隊長アッサムを目の前にして、きっぱりと言い切った少女は、ピンクの癖ッ毛を揺らして大きく胸を張った。

 

「そもそも、最初に足切りを行うと名言されていた以上、わたくしは失格なのでございますですの。お紅茶の淹れ方もわかりませんでしたし、生徒会のお仕事も失敗してしまいましたし。それで合格と言われても―――スジが通らねぇでございますですの」

 

 むふん、と鼻息荒く言い切った少女は背を向けて

 

「それでは失礼いたしますわ!」

 

そう言って講堂を立ち去ったのだった。

 あとに残されたのは少女一人にいいように振り回されボコボコにされた生徒たちと、ダージリン、アッサム。そして―――

 

「―――で、どうするんだ?残りの面子から候補生選ぶか?」

 

興味なさげな態度でそう告げる子供のような背丈の少女―――天翔エミの言葉に、ダージリンはハッと気を取り直し

 

「―――多勢に無勢で逆にやられるような若輩者に候補生は務まりませんわ」

 

そう言って割れてしまったカップとソーサーの代わりをテーブルから取り上げ、軽く傾けて舌を湿らせてから―――にっこりと微笑んで見せる。

 

「では皆さん、皆様のこれからのご活躍とご栄達をお祈り致しますわね」

 

 

 

――― To Emi

 

おいやめろダージリン。その台詞は俺に効く(お祈りメール感)

ダージリンの“それ”はある意味死刑宣告に近いのではなかろうか?

 

 

 

******  Emi To Rose Hip

 

 

 

 戦車道に触れたのはあの時が初めてだった。

 

 

―――まるでピッチングマシンのように矢継ぎ早に撃っては次、打っては次とマチルダから放たれる砲弾。

 

 

―――それを装甲に角度を付けて弾き飛ばし、受け流し、いなして防ぎきるチャーチルを主軸とした防御陣。

 

 

 

―――そして何よりも、

 

 

 

―――【止まらなければ狙えない!狙えなければ当たらない!故に足を止めなければやられない!】と公言し、戦場を縦横無尽に駆け回るクロムウェル!!

 

 

 その鮮烈な光景が、目に焼き付いて離れなかった。

 

 

そう。私はあの時―――戦車道に恋をしたのだ。

 

 

 

*****  Rose Hip to Emi

 

 

 

「―――というわけで戦車道への転科を希望しました―――の、で、ございますですのですわ!!!」

「お、おう」

 

 聞き取り調査に赴いた俺にそんな感じのモノローグで答えてうっとりと空を見上げるローズヒップ(予定)

 「ですが」とその顔がギリィと歪む。

 

「正直期待外れ―――で、ございますですの。多少かじった程度の私にあの体たらくでは―――戦車道の底もたかが知れてる―――のーで、ございますですのですわ」

 

 無理して淑女っぽくしようとしているローズヒップの語尾がどっかの芸人並みにゲシュタルト崩壊を起こしている。が、まぁ原作でもこんな感じだったのでどうでもいいか。

 

「そんで?紅茶の園のメンバーも同じレベルだと?」

「いいえ!私が憧れた方々は皆素晴らしい方々でした!ですが新人が素人に蹴散らされる程度であれば、私が上級生になるころの個々のレベルは今に比べて下も下になってしまうでしょう?そんな不良債権を押し付けられるのは御免で―――ございますですのですわ」

 

 紅茶の園に対するヘイトはない。けれど戦車道履修生の全体レベルを鑑みて、自分が下の面倒を見るのが嫌とか隊長職としては失格もいいとこなんだが……

「自分を高めるために戦車道をやりたいんですの!!」でごり押しされると何て言うかこう……困る。

 そもそも戦車道が“道”を冠する以上そういう面がメインなはずであって、本来みぽりんが目指す皆でワイワイやってたーのしー!戦車で勝ってすっごーい!君は戦車道が得意なフレンズなんだね!っていうのは副次産物に当たる。

 道ってのは柔道、剣道、茶道に華道のように本来求道を目的とするものに冠せられるものであるので、西住流における理念こそが正しいと胸を張ってるしぽりんまぽりんのほうが正しいともいえるわけなんだが―――みぽりんがガルパン本編最終話で見つけた「わたしの戦車道」も間違っているわけではない。道ってのは色んな道があって当然なのだから。

 なんでこのローズヒップ(予定)の意見も受け入れてしかるべきなんだが―――それを受け入れてオッケー!ってやってしまうと、今度は聖グロリアーナの戦車道の理念に反することになりかねない。終局、ローズヒップ(予定)が聖グロを選んだのが間違いだったという結論にまで来てしまう。

 

「―――少なくとも、ダージリンがトップの間は今のハイソな紅茶の園のままだろうな」

 

 なので言葉を選んだ。ピクリと目の前でわかりやすい程に反応が生まれる。

 

「ダージリンもアッサムも、聖グロを体現してるハイソサイエティの顕現体と言って過言じゃない。優雅で気品あふれる居住まいで戦車道を行う聖グロの在り方を表してる。その流れを変えて違う風を吹かせるなら、卒業した後になるだろうね」

「―――何を考えているんですの?」

 

 とりあえず考えていることを述べているだけなんだが不審そうな顔を見せるローズヒップ(予定)に、俺はとりあえず意味深に笑って見せる。

 

「お前さん(の戦車道の素質)がどうしても聖グロ(うち)に欲しい。だからできることであれば叶えてやろうって話しなんだが。物騒な話にでも聞こえたか?」

「な、ななななななな!?」

 

 唐突に変顔をコロコロと変化させていくローズヒップ(予定)だったが、まぁ俺としてはとりあえず傾向はわかったし話を切り上げて退散することにした。

 

 

 

******* Emi to Rose Hip

 

 

 

「お前さんがどうしても欲しい」

 

―――いきなり口説かれましたわ!?紅茶の園に来ないかという話だったはずですけど!?どどどどういうことですのーーーー!?

 

 慌てて思考が定まらないうちにあの方はさっさと去って行ってしまいました。いえ、そもそも女同士ですわね?これはワンチャン告白ではないのでは?ですがあの方のお噂は色々入ってきておりますし……

 

 

 

 

―――曰く。

『彼女はあのアールグレイ様に見込まれて即レギュラーに組み込まれた』

 

 

 

 

―――曰く。

『当時はまだ無銘だったとはいえダージリン様と対等のライバル関係だった』

 

 

 

 

―――曰く。

『彼女がいなければ生徒会が機能しない』

 

 

 

 

―――曰く。

『ダージリン様とただならぬカンケイに至っている』

 

 

 

 

―――曰く。

『アッサム様がダージリン様と彼女の関係を牽制している』

 

 

 

 

 

 このお噂から想像するに―――生徒会は彼女を取り合う多角関係の百合の花咲き誇る坩堝になっているということ!!!

 これは私も身の危険を感じておいた方がいいのかもしれません!!ですの!?

 

 

そんなこんなでその日はろくに眠ることもできず―――朝早く寝ぼけた目でいつもよりも早くロードワークを始めたところ……

 

 

―――それを、見た。

 

 

 全速力の私よりも早く、それでいて失速しない。そのまま団地の壁を蹴って垂直に駆けあがっていく。途中で団地の階段のひさしの上を足場にして、張り出したベランダも足場にして、一気にリズムよくとん、とん、とーんと、あっと言う間に団地を昇り切って見せた。

 

 

 

 その小さな影に―――私の対抗心に火が付いたのだ。

 

 

 

「―――誰かができることならば」

 

 

グッと脚に力を入れて前傾姿勢、クラウチングスタートに近い体勢で―――

 

 

「―――私にもできることですわ!!!!」

 

 

―――一気に加速した。

 

 

 

 

 

ダンッ!!

 

一歩目、蹴り過ぎないように、勢いを殺しきらないように力加減を考えて蹴る。

 

 

 

 

―――ダンッ!!ダンッ!!!

 

二歩目、三歩目をしっかり踏んで、最初の足場に取り付いて

 

 

 

 

―――ダンッ! ダンッ! ダンッッ!!!

 

そのまま斜めに―――不格好だけれどしょうがない。落ちないことが、失速しないことが重要。壁を蹴って次の足場に―――

 

 

 

 

 

 

 

「―――――――――――――あっ」

 

 

 

 

 

 

 

グラリと揺れる視界。ぐるりと反転する景色。

 

 

 

―――ああ、踏み外してしまったんだ。と、理解して

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――出来ないなら真似なんかすんじゃねぇよこの阿呆―――――!!!」

 

 

てっぺんでこちらを見ていた影が、一瞬で壁を蹴って加速して、私を抱きかかえて―――

 

 

 

 

 

 

――――――どすんと地面に着地したその衝撃で、私は気を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――目を覚ました時、彼女がすぐ傍に居た。

 

自分を助けてくれたのは彼女だとすぐに気が付いた。

 

そして同時に、あのとんでもない動きが彼女のものであるという事も理解した。

 

 

―――ならばあとは即断、即決!!早さとは即ち最大の攻勢である!!

 

 

 

「―――師匠と呼ばせてくださいませぇぇ――――――!!!」

 

 

 

 

―――それが、後にローズヒップの冠銘(なまえ)を戴くことになったわたしのスタートライン、なのですわ。

 

 

 

******

 

 

 

「さぁ!おっしょーさま!!今日も朝練のお時間ですわー!!」

 

 朝早く、朝日が昇るよりも前にお師匠様は鍛錬に出る。それを知ってから私のライフサイクルはいつもより一時間早回しになった。

お師匠様と一緒にトレーニングをして、お師匠様について行けるだけの体力を手に入れる。それはきっと私の身となる、糧となる。

 

 

 その背中はどうしようもなく遠いけれど、いつかきっと届く―――きっと!

 

 

「―――ぜぇー……ぜぇー……ぜぇー……」

 

 途中でスタミナ切れを起こしてヨタヨタと汗だくで歩いていくと、ゴール地点の寮の前でお師匠様がタオルでクールダウンしながら待っていた。

 

「お疲れ様です“  ”さん。はい、タオルとお水どうぞ」

「あ、ありがと―――う、ござ、い……ます―――わ……ぜぇ……ぜぇ……」

 

息も絶え絶えでやってきた私にお水とタオルを笑顔で差し出してくれる少女が1人。お師匠様の紅茶の園の専属のお付きの子で、とっても有能なのだと聞いている。の、ですわ。

 

「―――無理に先輩について行かなくても、身の丈を知るって大切だと思いますよ?」

「御心配には……およびませんわ……!絶対……ついていって……みせましてよぉ……!!」

 

 親切心から言ってくれている―――のでしょう。きっと

なので私はそう返してニッと笑って見せる。いかに身体が苦しかろうと全力で、心が楽しくて笑っているのだから。

 

 

 

 

―――そしてこれが目の前の、後のオレンジペコとの因縁の始まり。でございましたの。

 

 

 

 

 

その後、ダージリン様に薫陶を受け、紅茶の園のマナーを学んで、一年で紅茶の園に入園できる資格を得たのです―――けれど、

 

よくよく考えてみたら紅茶の園に参加しなくても戦車道はできますし?紅茶の園でお仕事に没頭していたらお師匠様との鍛錬のための自己トレができなくなるでございますの。ということで正式にお断りしましたの。

 

その後、高等部にお呼ばれされたときにアールグレイ様から【ローズヒップ】の名前を戴きましたの。

 

 ですが不思議な事にあの日の熱烈ッ!な口説き文句からこちらお師匠様のアプローチが全くありませんの。

 

これはきっと、お師匠とお弟子という関係が原因だと思われますの!!なので一刻も早くお師匠様に卒業認定を戴き、一人のオンナとして立たねばならない!と!思うのでしてよ!!!?

 

 

 

 

 

 

 

 

―――後に、ダージリンはこの頃のことを、本当に重そう~~~に語る。

 

 

「ええ、本当に本当~~~~に大変でしたわ。天翔エミが安請け合いに「紅茶の園を好き勝手に改造する」とか言い出してしまったので、短期間であの子を淑女の雰囲気に漬け込んで啓蒙する必要がありましたから―――ええ本当に、死ぬほど面倒な手間でしてよ?」

 

 




 ――月――日

 いつも通りのパルクールトレーニングをしていたところ、同じように壁を蹴って昇って来る人影がひとつ―――っていうかローズヒップ(予定)じゃん。
で、勢いよく昇って来るので勝算があるのかと思ったら全くのノープランだったらしい(絶望) 途中で足を踏み外し真っ逆さまに落ちようとしてたので屋上から地を蹴って、壁をベランダを蹴って蹴って加速して追いついて抱え込み、あとは壁やベランダを横向きに蹴って減速しつつ着地。着地の衝撃で足の骨がヤバい音を立てたのと、肩に担いでたローズヒップ(予定)がカナディアンバックブリーカーの要領で腰部に強い衝撃を受けて肺の空気全部吐き出して気絶したこと以外は大した犠牲ではなかった。一安心である。
 なんかローズヒップ(予定)に弟子入りを希望された。
断っても結局後をついてきてまた落下事故とか起こしそうだったので仕方なく弟子入りを認めることになった。

 まぁその内身体能力の差で諦めるだろう(楽観)



 ――月――日

 病院で見てもらったところ足の骨にひびが入っていたとかで歩行用の杖を貰って戦車道への参加もお断りされてしまった。ダージリンの機嫌がマッハで酷い(語彙激減)



 ――月――日

 「お師匠様の身の回りのお世話は弟子のお仕事ですの!」と言ってローズヒップ(予定)が俺の部屋に居候を始めた件。たすけて()
 この子俺が移動しようとするたびにおんぶして歩くし風呂に入ろうとすると一緒に入ろうとするし足怪我してて逃げれないし胃壁がガリガリ削れるんですけどぉ!?

「親しき中にも礼儀ありですよ」と割って入ってくれたオレンジペコ(仮)に全力で感謝する。サンキューペッコ!!マジ助かった!!



 ――月――日

 足の完治は割と早かった。治ったのでローズヒップは自分の部屋に戻り、俺に安寧が訪れ―――無かった。
 毎朝の鍛錬にローズヒップが参加するようになり、パルクールで障害物を飛び越える間、陸路でダッシュして追いかけて来るようになった。危険なのは理解したので十分に身体が出来上がるまでは我慢するらしい。
―――あれ?最終的にはパルクールについてくるってことじゃね??

 ルートを見直すべきかもしれない。



 ――月――日

 朝練を終えたらペコ(仮)が待っていてくれるようになった。正直スポドリとタオル持って待っててくれるのは助かる。ローズヒップ(予定)が返ってくるまで汗だくのまま寮の前で待ってると風邪をひきかねなかったし、本当助かる。
「私は先輩の専属のようなものですから」と言ってくれるペコ(仮)に感謝しつつ朝練のクールダウンを済ませて学園に向かうのだ。

 ―――俺、なんかペコ(仮)に主導権握られてない??このままだとまずい?まずくない……??

次回更新のお相手()

  • ダージリン
  • ペッコ
  • 舎弟ップ
  • アッサム
  • パイセン
  • その他
  • 本編更新して、やくめでしょ
  • 休憩やで

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。