【三次】 みほエリを見たかった俺はこの先生きのこれるのだろうか? 作:米ビーバー
なのでオレンジペコは中等部3年生。高等部昇級手前で、冠名を(エミカス以外から)もらった後の時系列になります。
デッドエンドNo2 フォーエヴァーウィズユーまで極まってないただちょっといろいろ深いだけで、オレンジペコちゃんは頑張り屋で可愛い後輩さんですよ。
イイネ??
4:30 AM
―――PiPiPiPiPiッッ――――PiPiPiPiPiッッ
幽かに耳にこびりつく様なアラームの音に、手を伸ばして目覚まし時計を止める。
ぼんやりと、まだ薄暗い周囲に起き上がってベッドの脇に在るスタンドランプ型の小型照明を起動させる。暗闇に光がともり、その明るさに目を瞬かせ、すぐ傍のテーブルに置いた洗顔用の水で軽く顔を洗い、タオルで拭って洗面所へ―――
―――春先ながらまだ水は冷たい。寝汗を気にする季節でもないけれど、癖ッ毛が気になるので朝は簡素にシャワーを浴びる。
気温との差異で湯冷め・春風邪を患っても困るので、温度はやや低めに。汗を洗い流して、髪を整える。ドライヤー、ブラッシング、そして髪留め。すべての支度が終わったら、制服に着替えて、タオルと水筒を手に寮の外へ。
―――そこに、壁を蹴り、外灯を蹴り、飛び跳ねるようにして飛来する影がある。
身を屈めてくるくると前転し、着地を決めたその小柄な人影に、私はタオルを手に駆けよるのだ。それが私の一日の始まりでもある。
「―――おはようございます先輩。タオルをどうぞ」
「ん。あんがとさん、ペコ」
これは私、オレンジペコの一日の始まりの挨拶。目の前の先輩と知り合って、彼女のトレーニングを知ってからずっとずっと続いている。二人だけの―――
「―――はひ、はひぃ……せ、センパイ……お待ちくださいですのぉ……」
―――訂正。三人だけのやり取りである。
薄暗がりにやや強めの霧が出る朝靄をかき分けて、よろよろとした足取りでやって来る影が一つ。
「―――ローズヒップさん、お疲れ様。こちらいつもの天然水ですよ」
「ぉ、おはようございますです、のぉ――――……あ、ありがたくいただきますでございますですわ……」
ハァハァと荒い息を吐き、その場に膝から崩れ落ちて座り込んだピンク色の髪の少女、ローズヒップさんに水筒を手渡すと、犬のように舌を出していたローズヒップさんは水筒のカップ部分を使うことなく水筒を傾け、開いた注ぎ口から直接ゴクゴクと水を嚥下していく。
これもいつもの光景―――彼女にローズヒップさんが弟子入りを表明してからずっと続いている、いつもの光景だ。
―――すこしだけ、うらやましい。彼女に……天翔エミ先輩についていけているローズヒップさんが。
「―――んっ!んぅ、んむ、んぐ…………っかーーーーっ!!!全力で走った後の一杯は格別でござぁますですわねぇ!!この一杯のために生きてるって感じがするでございますですわぁ!!」
―――ただ、あそこまで女性を辞める覚悟が持てないのも事実ではあるけれど。
余った水を頭からかぶってガシガシと乱暴に髪をぬぐっている様子を見咎めたのか、先輩が手を伸ばそうと踏み込む姿勢を見せた。やや前方向に体重をかける辺りで、素早く立ち位置を変えて前に踏み込み、先輩に代わってタオルでローズヒップさんのお
先輩の手が誰かの体液で汚れるようなことは避けなくてはならないのだから。
微笑ましい様子を見ているような生暖かい笑顔で微笑む先輩に笑顔で返して、内心で溜息を一つ。
大型犬を入浴させた後の後始末をしている気分に近いのは、黙っておこうと思った。
先輩とローズヒップさんから水筒とタオルを戻され、見送ってからひとつ欠伸が漏れた。どうやら昨日の夜更かしが少々後に引いてしまったようだ。目覚ましをもう一度仕掛けて椅子に腰かけ、ブランケットで少しだけ仮眠をとることにする。
―――ああ、そう言えば洗濯槽にこのタオルを入れるのを忘れていた。けれどまぁ、起きてからでもいいですよね――――
そんな独り言とともにすぅと落ちるように眠りにつく。腕に抱いたタオルをマフラーのように首元に巻き付けるようにしていたのは、きっと偶然そうなっただけ。
6:30 AM
―――PiPiPiPiPiッッ――――PiPiPiPiPiッッ
目覚ましを止めて朧気な意識を目覚めさせ、椅子から立ち上がって軽く深呼吸。
まだごろごろとしていたい気分を抑えて服の皺などを確認して身だしなみを整える。―――やや目元が腫れぼったく感じるので少しだけごまかしを入れる。
少し名残惜しいけれどタオルも含めて洗濯機を回す。寮内の洗濯物は朝に回しておけば寮母さんが各階を回って回収して各部屋に振り分けて夕方までに準備を終えていてくれる。
鏡に向かってタイの乱れを直しているときに、ふと手を止める。
もしもこのタイが乱れていて、その乱れをあの人が気付いたなら―――あの人は呆れた目で私を見るだろうか?
―――きっと、そんなことはない。あの人が無精を気にしている様子を見せたことはほとんどないから。
ほとんど、と形容するのは、ローズヒップさんがあまりにも無精が過ぎるときには、あの人もダージリン様もさすがに口をはさむからだ。身だしなみの乱れを気にせず、くしゃくしゃの髪の毛でも気にしないであの人の前に顔を見せる豪胆さには違う意味で敬服しなくもない。
けれどそれが目に余るときにあの人が手ずから髪を直している様子を見ていると、胸の内から何かが湧き上がるような感覚を覚える。
―――それを“嫉妬”と呼ぶのはきっと簡単なのだろう。
0:00 PM
午前の授業が終わり、紅茶の園のサロンで昼食をとる。今日は……というか、8割がたの確率でいつもの先客がそこに所在無さげに座って居た。
「―――ぁ、オレンジペコさん。こんにちは」
「こんにちは、みほ先輩」
―――西住みほ先輩。
ダージリン様が黒森峰から追い出された彼女を拾ってきたのはひと月ほど前の話。
少なからず面倒な手間をかけたと語っていたし、今も現在進行形で面倒な手続きを踏んでいるという。
―――それもあの人のためだという話で、目の前の彼女が、いったいどういう経緯であの人と知り合ったのか興味がわかないでもない。
「今日はこちらでお昼を?」
「うん。エミさんももう少ししたら来るって」
朗報だった。あの人が昼食を誰かと食べることはあまりない。
中等部のころにこちらから誘った時ですら、確率でいえば3割未満ほどで、後は何かと理由をつけてあちこち駆け回っている様子で、忙しい人という印象を当時は抱いていた。実際はそういうわけでもなかったようで……日々各種の栄養補助サプリメントと少量の食事だけで済ませていることを知られないようにしていたらしい。
目の前の彼女が、自分を救ってくれたあの人に依存傾向があることを理解して、自分を仲立ちにして周囲に慣れさせようとしているのだと、私は理解した。
―――なのでそれを最大限に利用すべきだと、私の中に息づく聖グロリアーナの理念は言っている。
西住みほさんを気にかけている間、みほさんを理由とすればあの人は絶対に昼食を断れない。それは火を見るよりも明らかな事実。
「よろしかったら、いつでもここにいらして下さい」
「ありがとうオレンジペコさん。ダージリンさんもそうだけど、みんないい人たちですね!」
―――流石、聖グロリアーナの隊長は手回しが早かったようだ。
その後、合流した先輩も加えて話し合いを行った結果、両方との関係を重視するみほさんは11時のイレブンシズ*1にダージリン様のところで、ランチの時間には私たちのところで過ごすタイムスケジュールを取ることになった。
何というか―――みほさん、実は少々重い女なのでは?
4:00 PM
ミッディー・ティーブレイク*2の時間。
戦車道で疲弊した脳に糖分を補い、消耗した水分を紅茶で満たす。
合理的とOG会が豪語するこの休息時間をダージリン様が心待ちにしていることを、紅茶の園のメンバーは皆知っている。
ミッディー・ティーと同じ時刻のティータイム。アフタヌーンティー*3の伝統。
それはスコーンとケーキときゅうりのサンドイッチ。
今日も青野菜独特のシャキシャキした音とともに、日ごろまず見ることのない笑顔を見せるダージリン様がそこにいる。
5:00 PM
放課後。
今日はおなかに重めの食事を入れる気分ではないのでファイブオクロック*4の時間。皆それぞれ思うところはあるだろうけれど、総じて皆の頭の中には体重計が浮かんでいるに違いない。
先輩はこの時間はアルバイトなどを入れて生活費を稼いでいるらしい。珈琲の専門店―――GI6の表向きの職場であるそこで、いったいどんな仕事をしているのかと興味は尽きないが、好奇心に負けて猫を殺す趣味は私にはないのだ。
幸い、お仕事の斡旋はアッサム様が選別しているので問題はないと思う。
「―――ローズヒップさん、支出の欄の桁が2つ間違ってます」
「はぇ!?マジですの!!!?でもでもですが!?合計はちゃんとプラマイゼロですのことですのよ!?」
「……収入の欄も2桁間違えてるからです」
「―――なぁんだぁ!!じゃあべつによろしいんじゃありませんの?最終的にプラマイゼロですし?そんなケツの穴の小さいこといちいち気にする人なんかいませんわ!」
―――胃薬を申請しよう。ニルギリ様の気持ち、少しだけわかりました。
21:00 PM
アフターディナーティ-*5を終えて寮に戻って、こまごまとした雑事を済ませて、寝しなに身体を温める紅茶*6を一杯。
今日の出来事を軽く日記にしたためることにする。
― 本日の障害報告 ―
ダージリン:公的な立場を使い、西住みほさんを助けたことを口実に盤面をコントロールしている。恩人の立場を利用して先輩を縛り付けている。要警戒。
ローズヒップ:頭が悪いわけではない。けれど慎みが浅くマナーが成っていない。最終的な帳尻が合えば問題がないという理論で押し通そうとする。面倒な女。
ご主人様と飼い犬状態のまま立場を弁えて居る間は警戒の必要はない。が、今後も釘は差していくべき。
アッサム:仕事もできる。公私の分別もわける。人当たりも良い。上司にしておくのであればよい上司。ダージリン様のお目付け役の立場でありいつでも牽制ができる立ち位置にいるので、密にコミュニケーションを取り、経由しての牽制の指し手を狙いたい。
アールグレイ:行動が予測できない。最も油断できない先輩で、最も信頼がおける先輩。横紙破りはしないので油断さえしなければ良い先輩のまま。同時に刺激と愉悦に飢えているのでターゲットをうまくダージリン様に向けていて欲しい。
西住みほ:おっとりとしていて、いつも柔和に微笑んでいるか、落ち込んでいるかの落差が激しい女性。先輩が今最も気にかけている女性。やや妬ましい。
「―――ふぅ」
ペンを置いて目元を揉む。体が温まったせいか、眠気が襲って来ていた。
ベッドにもぐりこむようにして目を閉じる。今日1日を思い起こし、その中で最も重要な情報をピックアップしていけば、夢の中でもその光景が浮かんで消える。
―――あと1年。そうすればダージリン様は卒業して英国へ留学する。
「―――せんぱい」
あの人の傍にずっとまとわりついていたものがなくなる。
―――すこしだけ、その日が待ち遠しい―――。
いっそ今すぐ手折ってしまおうか?すべてを捨てて
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壁を蹴り、外灯を蹴り、飛び跳ねるようにして飛来する影がある。
身を屈めてくるくると前転し、着地を決めたその小柄な人影に、私はタオルを手に駆けよるのだ。それが私の一日の始まりでもある。
「―――おはようございます先輩。タオルをどうぞ」
「ん。あんがとさん、ペコ」
笑顔でお礼をくれる先輩に、私は今日も笑顔を返すのだ。
――月――日
朝のパルクールの時間にローズヒップがついてくるのももう慣れた。
まだまだスタミナが足りてないのか疲労困憊で戻ってくるローズヒップにタオルと飲み物を差し出すオレンジペコ尊い。天使かな?
こう、いろいろと女としてのあれやこれや捨てててオッサン染みてるローズヒップが手のかかる5歳児程度のお子様に見えてくる不具合……もしくは大型犬。
飲み残しを頭からかぶってワシワシし始めたんでさすがにちょっとこれはと思ってたらオレンジペコがタオルでやさしく髪をぬぐってあげていた。
なんだこの後輩たち―――尊いぞ!?
クォレハァ……ローペコ?いや、ペコローだよな?
……アリじゃない?ダーペコが正統ならペコローはこう、対抗?的な?(違いの分かる男感)
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休憩やで