ラスボス系の悪役として死にたい主人公君のロールプレイ   作:醜すぎる獣の集合体

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 りんごすのどりんくのんだらむせたで


悪役への道:三歩目

 レッドさん含めた三人衆に会いに行ってから一週間近く経った。

 

 一泊した次の日に帰ろうと思っていたのだが、オーキド博士が『もう一日くらい泊まっていけ』と言うのを何度も繰り返した所為で予定より少し長く滞在してしまった。

 

 もちろん、そのときの宿はお孫さんの家。

 

 お陰様で、オーキド家の長女と次女の懐き具合と言うか、好感度が高い。もうなんか家族の一員にされてる気分。

 その証拠に、当初はどことなく距離を取って『お兄さん』呼びだったグリーンが、今では『兄ちゃん』呼びになって一緒の風呂で寛ぐくらいには懐いた。腹筋をさわさわするのをやめてほしい。興奮はしないものの、こそばゆくて妙な気分になる。

 

 長女のナナミに、こんな男を信用していいのかと聞けば、曰く

 

「おじいちゃんの連れてきた人が悪い人とは思えないから」

 

 とのこと。

 すいません、将来カントー地方に災厄をばらまく予定なんですよ。あなたの妹さんの幼馴染に人殺しをさせようとしているんです。言わないけど。

 

 それと、グリーン以外の幼馴染の反応だが、最初よりは随分と懐いてくれた。

 

 鬼ごっことか、かくれんぼとか、全員纏めて担ぎ上げるとか。菓子も買ってやった。

 他にも、トキワシティやトキワの森、ニビシティの博物館に連れて行ってやったのもよかったのだろう。ニビシティなんかは三日連続くらい連れて行ってくれとごねられた。

 

 子供だけで行くのは些か不安だが、俺のようにある程度戦える大人が同伴なら問題ない。オーキド博士のお墨付きだ。

 そんなオーキド博士が言うのならと、周囲の親御さんも納得している様子。娘をよろしくとかなり良くして貰った。

 

 オーキド博士の人望が半端ない。そんでもって、なんで自分があの博士にここまで気に入られたのかもわからない。

 

 とはいえ、好感度はそこそこに稼いだだろう。

 その証拠に、帰るときにはみんなして別れを惜しんでくれた。

 さらに餞別として、三人からはそれぞれの小遣いを少しずつ出し合って作ったと言うペンダントを貰った。原作主人公たちの繋がりだと思えば悪くない。

 

「じゃあ、またね。にいちゃん」

「お兄さんまた遊ぼうね」

「ばいばいオトギリさん」

 

 順にグリーン、リーフ、レッドさん。

 見送りに来た三人の少女たちに手を振り、マサラタウンを後にする。さて、帰ったら仕事用のメール確認しなくちゃなぁ……

 

 

 

 

 

 

 

 何事もなく帰宅――とはならず。

 

 何をとち狂ったのか『ちょっと冒険でもしようかな』などという思考に陥り、トキワの森からニビシティ、お月見山の洞窟、ハナダシティ、トキワシティ経由でタマムシに帰ってきた。くっそ疲れた。

 

 ただ、幸いと言うべきか、骨折り損のくたびれ儲けとはならなかった。トキワの森ではビードルを捕まえ、お月見山で幾つかの化石を手に入れた。

 復元するかどうかは別として、手元に置いておこうと思う。オークションで高く売れそう。なんの化石かは今一よくわからない。

 

 

――それはそれとして、俺が安アパートに帰って来た時の事だ。

 

「あ、おかえりなさい。随分長い事家を空けていましたね」

 

 鍵を開けて中に入ってみると、鶏こと連絡係のしたっぱがエプロン姿で出迎えてくれた。

 はて、俺はこいつに合鍵を渡しただろうか。そう尋ねれば否定され、ならば何故ここにいるのかと聞くと

 

「最近、あなたにやられた他の団員がどうも仕返しをしようとしているらしくてですね。あなたの帰りが遅いと報告したところ、空き巣にくるかもしれないから留守番をしておけと」

 

 本来なら俺が帰ってくると同時に出ていくつもりだったらしいのだが、何日経っても戻ってこず、仕方なく今日までここで暮らしていたらしい。なお、合鍵は大家のマスターキーを借りていたと。

 

 生活用品等は経費で落とせるのだが、冷蔵庫の中身に賞味期限が切れそうな物があり、さすがにそれは使わせて貰ったとのこと。まあ、余らすよりはマシなので特に言う事はないのだが。

 

 なんとなく嫌な予感がして戸棚の中を確認する。……俺の買ってきた高い缶詰が幾つかなくなっているのだが。あと、冷凍していたヘルガー用の高い肉も。

 

「美味しかったです」

 

 とりあえず、逆さまにしたバケツの上で爪先立ちさせ、天井から下げた縄で輪っかを作って首を括らせる罰を受けさせることに。

 

「ごめんなさい! ごめんなさい! 出来心だったんです! 食べた後に気が付いたんです!」

 

 騒いでいる鶏を横目に、ノートパソコンを立ち上げて仕事用のメールを確認する。

 レッドさんたちに会いに行っている間は当然仕事をしておらず、整理していない所為もあり、思っていたよりも依頼メールが溜まっていた。

 

 ところで、俺の営業だが、基本的に一般はお断りである。

 ロケット団の仲介、もしくは一度受けた依頼人の紹介でもない限りは受け付けていない。

 違法行為だから慎重にならざるを得ないし、何よりも、人手が俺だけしかいないと言うのが一番の理由だ。やはり一人だと何をやるにしても限度がある。

 

 

 鶏の方を見ると、何やら未だに言い訳染みた言葉を喚き散らしていた。なんとなく、勝手に食べた缶詰と肉の感想を聞いてみる。

 

「正直ウニは普通に買うのと大差ないし、お肉はちょっと脂身が多くてくどいと思いました」

 

 トキワの森で捕まえたビードルを召喚。踏み台となっているバケツを突かせて嫌がらせをしておく。

 

「死んじゃう! 死んじゃう!」

 

 まだ大丈夫そうだ。

 実は普通に立ってもぎりぎり締まらない程度には緩めてある。よほどの事がない限りは死なない。

 

 仕事の話に戻ろう。

 

 メールで送られてきた依頼の内容を確認し、その中から出来そうなものをピックアップ。

 捕まえられるポケモンは自分で捕獲、無理そうならロケット団の在庫を確認して直接買い取りだ。弱っていたり、孵化したて、もしくは孵化寸前の卵が手に入れば仕事はぐっと楽になる。

 

 ちなみに、以前なつき度を最大にしたエーフィは、進化前であるイーブイを買って調教した。

 イーブイの事をよく知らない団員が雑に扱い、衰弱状態に陥らせていたお陰で安く買えたのだ。こういう時、ロケット団の粗暴さも役に立つ。

 

 なお、躾のやり方は……まあ、企業秘密だ。人間の観点で見れば、道徳的に褒められた行為ではないことは確かである。しかし、それでもなついてエーフィにはなるのだ。

 

「う、ぅ、ヴぉえ……」

 

 なんか不味い声が聞こえてきた。

 鶏の方を確認すると、顔を青くしながら今にも吐きそうな表情を晒している。揺らされすぎて具合が悪くなった感じか。

 もう本人も反省してる頃合いだろうし、そろそろ助けてやるとしよう。

 

 

 

 

 

 

――吾輩オトギリ。いま噴水広場にいるの。

 

 したっぱ団員をおろしてやった後、メールから読み取った幾つかの依頼を選別。基準は楽そうで報酬がそれなりに高いものを選んだ。

 そこまでやったのなら仕事をしろよと言われそうだが、今は在庫がないかロケット団の連中に確認している最中で、つまりは待機中である。

 

 一応、メールのひとつを例として挙げる。

 

『はじめまして。

 わたしは俗にいう(自主規制)でして、しかし人相手には(自主規制)の方が勝ってしまい未だに(自主規制)できません。

 しかしながら昔から(自主規制)が(自主規制)ので、雄のラルトス二体を(自主規制)のように、それでいて(自主規制)に育てていただけませんか? お願いします。

 報酬は前払いで二百万、成功したあかつきには、後払いで四百万円を払わせていただきます。さらに、追加で幾らか出す予定です。

 どうかよろしくお願いします 』

 

 こんな感じ。

 報酬が高いのは別の地方のポケモンなのと、あとはまあ雄固定の手間賃だろう。こんな俺に頼むくらい切実な願いのようだ。是非とも叶えてやりたい。

 

 さて。本格的にやる事がなくなった。

 

 家に帰れ? まだ無理。

 

 あの鶏が命の危機が去ったことに安堵し、その安心感から盛大に吐瀉物をぶちまけてくれたため、部屋中に饐えた臭いが充満しているのだ。

 

 お仕置きを施した俺が言うのもなんだが、あいつ結構間抜けと言うか、アホキャラなんじゃなかろうか。

 ああ、でもあれだ、悪役の部下って、必ず何かをやらかす間抜けがひとりはいる印象だ。そう思うと、途端にあの鶏が欲しくなってきた。サカキに言ったらくれないかなあの鶏。

 

「――もし、そこのお方」

 

 割とマジでそんな事を考えていると声を掛けられた。

 ちらりと視線を向ければ、そこには黒い短髪を綺麗に揃えた女性が、気遣うようにこちらを窺っている。

 

「大丈夫ですか? 具合が悪いのなら日陰のある場所で休んではいかがでしょうか?」

「……ああ、いえ。少し悩み事があっただけです。ありがとう。ところであなたは?」

「そうでしたか、失礼しました。わたくし、エリカと申します」

 

――エリカ?

 

「……ああ。はい。いえ、これはどうも。オトギリと言います」

 

 そうか、エリカか。そういえば原作だとタマムシシティのジムリーダーだった。今はどうか知らないけど。サカキの印象が強すぎてそちらの方を覚えていた。

 でも、ちゃんと思い出せたよ。

 

「はい、よろしくおねがいいたします。ところで、お悩み、と仰っていましたね? どうでしょう、よろしければわたくしに打ち明けてみませんか? お話しするだけでも気が楽になると思うのですが……」

「ははは、いやいや。実は気に入った人材がいましてね。引き抜きたいのですが、どうしようかと」

「まあ、立派じゃありませんこと。それなら、まずはその方にお話をしてみては?」

「ええ、時期を見てそうしますよ。ところで……あー、エリカさん? エリカ嬢? なんとお呼びすれば?」

「エリカ、で構いませんわ。敬語もおよしになって。きっとあなたの方が年上でしょう?」

「……ありがとう。そうするよ。エリカはどうしてここにいるんだい?」

「はい、とても良いお散歩日和だと思いまして、こっそり抜け出してきたんです」

 

 くすくすと。エリカが悪戯っ子のような笑みを浮かべる。

 それからしばらくどうでもいいような話を駄弁り、十分ほどする彼女は晴れやかな表情で立ち上がった。

 

「それでは、わたくし、そろそろお暇せていただきますね」

 

 引き留める理由はない。愛想笑いで会釈を返し、エリカを見送りつつ自分も自宅へと帰る。

 去り際に、ちらとエリカを見れば、優し気な表情で見知らぬ老婆の手を引いていた。

 

――偽善者が。

 

 反吐が出そうだ。

 

 

 

 

 

 




 がわ゛い゛い゛な゛ぁ゛み゛ん゛な゛

 今回は全体的に甘ったるい回ですね。
 これで多少ヒロインたちをおろそかにしてもいい訳が立つ。
 レッドさんたちが懐いているのは、主人公が『いいお兄さん』を演じているから。

 ちなみに、手紙の依頼主が欲しいのは自分の事を本当の親のように慕ってくれる子供だそうです。双子のおとこのこが欲しいらしいです。
 なんで自主規制したかって? クイズ形式ってやつですよ。心の中で文字を当てはめるタイプ。楽しんでもらえたら嬉しいです。まって、行かないで。


 感想を見ていると、みなさんこの主人公の事を色々と見てくれているようで、とても嬉しいです。好き。
 評価、誤字報告等、本当にありがとうございます。とても嬉しいです。いっぱいちゅき。



キーアイテム:少女たちの手作りペンダント

 オトギリ(偽名)が他の町に連れて行ってくれた際、自分たちの貯めた小遣で買ったものと、自分たちの家にあるもので作った簡素なペンダント。
 小指の爪程度の黒っぽい石と、それから黄土色のひも、それから僅かばかりの細工が施されている。感謝と信頼の証。


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