ラスボス系の悪役として死にたい主人公君のロールプレイ   作:醜すぎる獣の集合体

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 むぎちゃがくさってたんやで


悪役への道:五歩目

――ミュウを捕獲して一ヶ月近く経った。

 

 未だ調教は上手くいかず、悶々とした日々を過ごしている。別に敵対関係を結んでいるわけではない。

 

 どうもミュウ自身は俺に拉致られた事よりも周囲への関心が強いようで、我が家の電化製品を弄り回したり勝手に布団を占領したりと、かなり自由気ままに振る舞っている。

 

 ただ、俺が止めろと言えば不満そうな表情でやめてくれる辺り、上下関係は理解しているらしい。その証拠に逃げないし、勝手に家を出る様子もない。

 

 以前、何度かこの家から逃げ出そうとしたことがあるのだが、その時は首輪機能で即座に気絶させた。

 強制的に気絶させられることはミュウにとっても中々の負担になるらしく、何度か繰り返してやったら諦めて家で大人しくするようになった。

 しかしストレスを貯めこみすぎると何を仕出かすかわからないので、時おり能力で姿隠しをさせて外に連れて行っている。

 

 こいつの透明化はほぼ完璧で、なんならポケモンの嗅覚ですら誤魔化せるのだが、極端に興奮状態に陥ったりすると解けそうになるようだ。

 恐らく、研究所で俺に見つかっていたのはそれが理由だろう。仲間を見つけられたと思って興奮したのかもしれない。いたのはメタモンだが。

 でも研究員たちには見えてなかったしな……見る側の素質だろうか? 

 

 なお、どこにいても俺だけには見えるようにさせている。首輪が付いている限りはある程度のコントロールが効く。

 透明化の有無については、なんとなくわかるのだ。伝わってくると言うべきか。表現しがたい。

 

 最近は、以前仕事を頼んだ研究者連中の伝手を辿り、報酬を払って首輪の機能を拡張させている。

 追加したのは、身体に痛みが走るお仕置きパッチ。モンスターボール収納機能はまだつけていない。というか、この首輪だとつけられないので、新しく作った方が早いとのこと。また金が飛ぶ。

 

 それと、首輪の機能を追加する際、強制的に気絶させてから首輪を外すのだが、起きたミュウが体を抱えてよよよと嘘泣きをするようになった。

 

 鶏が俺のパソコン使って勝手に見てた昼ドラのワンシーンだ。帰った時その画面だったから気まずくなったわ。あいつもあいつで「おほー」とか興奮しながら見てたし。なんか最近あいつの私物がやたらと増えてるんだよなぁ。

 ちなみにミュウの存在はまだばれていない。

 

――さて。

 

 そろそろ悪役として活動をしようと思う。専ら違法ブリーダーの仕事しかやってなかったからな俺。

 近ごろは俺と同じような事をする連中も増えたそうなので、別の儲けも考えなくてはいけない。まあ、オトギリブランド(自称)はまだまだ健在だが。

 

 悪役としてどうするかと考えた結果、とりあえず、事業を立ち上げようかなと。ロケット団だって色々な方面で一枚噛んでるし。

 それなら研究を続けていればよかった? 殆ど利益が出ない自転車営業だから無理。あれ、俺の金だけで維持してたからなぁ。

 

 

 

 

 

 

 事の発端は、さも当然のように我が家に入り浸り、パソコンで何か見ながら寛いでいる鶏である。

 最近この安アパートの大家さんと仲良くなったらしく、図々しいことに俺の部屋の合鍵まで受け取ってやがった。親戚設定らしい。

 

「新しい事業? よくわからないですけど、サーカスが見てみたいです」

 

 土産物の煎餅をぽりぽりと齧りながら適当な返答をする鶏にイラッとしながらも却下。いや、調べてみたら建築基準法やら何やらで面倒だったからやめた。それと芸の出来る人員も必要だ。そういうのまだ早いと思うの。

 

 じゃあどうするかと考えた時、ふと思いついた。

 

「鶏」

「え、なんですか。んー。り、り……リングマ!」

 

 違うそうじゃない。

 段々と馬鹿になりつつある鶏に、ロケット団の行っている主な事業について尋ねてみる。……大体俺の知っている内容と大差ない。主に裏よりも表の方で金を稼いでいるようだ。……よし。

 

 

 闘技場を作ろう。

 

 

 ポケモンバトルと言うのは間近で見ると確かに激しいのだが、スポーツ感覚で行うためどうにも生温い印象だ。

 ないと言う訳ではないが、ポケモンが死んだ事例と言うのも非常に少なく、瀕死と言う状態もどちらかと言うと気絶、あるいは失神しているだけの状態に近い。

 

 きっとスリリングな激しい試合を観戦したい連中もいるはずだ。というか絶対にいる。必ず屑どもは潜んでいる。

 

 俗深い奴らのために金も用意しておく。賞金はもちろんのことだが、賭け事要素を入れて駄目な大人を生産してやろう。秩序を荒らせ。

 

 

 

 

 

 

――とりあえず、まずは小規模なものから始めることにした。

 

 規模を大きくし過ぎると賞金やかけ金で出すものが足りなくなる。

 地面を深く掘ってヤマブキに繋げ、地下に作ることにした。いや、タマムシだとロケット団のアジトが邪魔だったから。ヤマブキならまだなんとかなる。入り口は複数、人の目が見えない場所に作っておく。

 当然、ディグダの穴には気を付ける。

 

 事前調査の段階で結構かかったが、違法建築なので幾らかは抜いてほんの少しだけ安くなった。

 当然、腕の確かな職人だ。少なくとも裏では。金にがめついが、口が堅いと評判である。

 

 ポケモンの力を借り、機材やら何やらを運び、それでいて人様にばれないようにするには凡そ半年ほど掛かるそうだ。

 上乗せするからもう少し早くしてくれと頼めば、他の地方にいる部下や弟子、知人に声を掛けて三ヶ月ほどで仕上げると言っていた。ちょろいぜ。金は偉大。

 

 その間、俺は違法ブリーダーやってポケモン売買をしつつ、工事がある程度進んだところで社会のはみ出し者たちを金で釣って雇う。主に禿とモヒカン。

 

 町を徘徊して治安を悪くするように伝える。こうすれば住民は怖がってしばらく外に出づらくなるだろう。職人たちの姿も視認されにくくなるはずだ。

 職質されることもあったそうだが、出歩いているだけなので文句の謂れはない。逆にロケット団を捕まえろと言い返してやったらしい。まあ、無理だろうな。警察関連にも紛れ込んでるみたいだし。やりたい放題である。

 

――そういえばヤマブキシティってナツメがいたな。今はいるかどうかわからないけど、将来的にジムリーダーになって透視とかされたら面倒だ。

 銭ゲバ職人に透視の対策はないかと聞けば、一応、個人のプライベートを守るためのコンクリ素材があり、それで外側を覆えばある程度エスパーポケモンに対する牽制になると言う。サイキック能力を使う変質者は結構いるらしい。エロ同人のネタだしな。

 

 思いがけぬ出費に懐が寒くなるが、珍しくドラゴンポケモンの依頼が来ていたため、それを成功させれば補填できそうだ。やたらと額が高い。二千五百万か。

 ミニリュウからカイリューにするの初めてだ。しかも期間が一ヶ月もない。金持ちの道楽だなこりゃ。あまり私を舐めない方がいい。後日しっかりと育てたカイリューをくれてやった。

 そうそう、躾は禄にしていない。俺はなんとか大丈夫だったけど、運が悪ければ噛まれて死ぬかもな。

 

 あと、ピクシーを常時発情状態にしてくれませんかとかいう闇深い系の依頼ほんとにやめてほしい。一千万も出すんじゃないよ、無理だから。

 

 いまは周りを警戒して、自分でポケモンを渡すときは顔を隠すように心がけている。悪役って身バレしたら駄目じゃんと思って。

 幸い、今までの取引相手には名無しとか偽名で通してるから大丈夫大丈夫、まだばれてない。

 

 

 

 

――てんやわんやしつつ、無事に地下闘技場が完成。諸々の法律をぶっちして作られた裏の闘技場である。

 

 防音はたぶん完璧。サイキッカーやエスパータイプの対策もたぶんばっちり。耐久面もたぶん優秀。観客の入場可能数は凡そ二百人。リングは中々大きめに作った。

 入り口は少しわかりづらいところに、それでいて客が詰まらないように複数拵えたので、滅多な事では気づかれない。

 諸々の設備と合わせて頭を抱えたくなるような額を使ったが……まあ、まだ大丈夫なはずだ。

 

 客引きは世紀末どもに任せた。基本的に駄目そうな奴、金の使い道が下手な奴がターゲット。

 あの禿ども、裏社会にどっぷりと嵌っているわけではないのだが、妙な伝手やコネ、土地勘を持っているお陰で、たまにロケット団よりも優秀なんじゃないかと疑いそうになる。

 

 ちなみに制限時間つきのトーナメント方式である。制限時間が過ぎると引き分け。シンプルイズベスト。

 

 戦わせるのは、世紀末の禿どもが拾ってきた底辺トレーナーども。上は五十代、下は十代前半まで選り取り見取りだ。

 こいつら借金があったり諸事情により働けなくなった連中なので、金をちらつかせればある程度は言う事を聞いてくれる。裏切りそうになったら、万が一のために付けた機能で闘技場を爆破させて観客諸共生き埋めにしてやればいい。爆発はロマン。

 

 営業時間は深夜帯。二時間前後。多く見積もって三時間ほどとっている。

 

 初日は客がやや少なめで、トレーナーもおっかなびっくりだったが、進行役のレフェリーが豪く盛り上げてくれたお陰で後半は文字通り熱気に包まれていた。リングの上がポケモンで血まみれだ。

 金は入ったのだが、賭けに勝った連中にも幾らか配ったため、稼ぎは心もとない。それでも程々に満足できる結果だった。

 

 ああ、そう言えばロケット団に伝えるのを忘れていた。

 

 プライベート用の携帯に掛ける。もしもし? ああなってこうなってそうなったんだけど、一枚噛んどく? みたいな内容を伝える。

 

「……いや、私は遠慮しておく。ただ、他の企業にも呼び掛けてみよう」

 

 断ったのは様子見だろうか。

 それよりも、スポンサーを募るのを忘れていた。さすが悪役歴が俺より長いだけの事はある。こういう所は素直に見習いたい。

 

 世紀末どもの働きが予想以上に大きいので、これからもどうだろうと尋ねてみると、殆どの奴が頷いてくれた。残りの連中は……ああ、血が駄目なのか。去る者は追わず。ただし、口止めをしておく。初めての殺人は、出来れば特別なものがいい。

 

 そうそう、試しに鶏とミュウを連れてきたのだが、鶏の方は血を吹き出すポケモンを見て一瞬でダウンした。なんでコイツロケット団やってるんだろう。

 意外だったのはミュウで、最初は食い入るように見ていたが、途中から観客にあてられて「ミ゛ギュ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛」と腕を振り上げながら非常に汚らしい鳴き声でコールしていた。エイリアンかな。

 

 専用のマイルーム作ってよかったと安心している。ほら、よくアニメとかで地下施設に登場する支配人が立ってる、少し高い位置にあるガラス張りの部屋。憧れだ。

 透明化が解けかかっていたので、すかさず気絶させて窓から離す。見られてないよな、たぶん。此奴はしばらく出禁だ。

 

 

 

 

 一週間ほど続けたところ、投資をしてくれるらしい企業が何社かついた。スポンサーゲット。なんと警察のお偉いさんもいる。組織の腐敗は鉄板。

 彼らからの紹介で、闇落ちした武道家や格闘家の武術派トレーナーを引き込むことが出来た。試合がさらに過激になり、血に飢えた屑どもも大喜びだ。そのうち犯罪人もくれるらしい。

 

 サカキには感謝している。嬉しいからメタモンの研究結果を少しだけ流してあげよう。

 くれてやったのは医療関連のやつなので問題はない。向こうがでかくなるのなら、こちらもでかくなればいい。金さえあればもっと色々できる。

 

 

 実入りが良くなったお陰で、他の所にも施設を造ることを検討中。どのあたりに作ろうか。規模も考えなくてはいけない。いま稼働している場所の設備を充実させるのもありだろう。

 

 あとは、この闘技場をどれだけ長く保たせることが出来るかだ。

 他の企業も自分が噛んでいた事をばれたくないだろうし、たぶんきっと全力で誤魔化してくれる。その分、優先的に甘い汁を吸わせてやればいい。ブラック企業だって、法律や人権よりも儲けを重視するのだから。

 

 

 

 

――俺たちの悪役は、これからだ!

 

 

 

 いや、まだ終わらないからね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 ちょっと急だけど本格的に地盤固めに出始めた主人公君です。もう少し色々な方面に手を出していただきたいと思います。
 なお、設定は基本的にガバガバな模様。タマムシはロケット団の天下なため、今はまだ警察関連の組織が腐っているとかそんな設定。捕まえてもすぐに釈放されちゃね。
 これ闇闘技場なんて作ったら治安一気に悪くなるんじゃないかな。エリカ様とナツメさん可哀想。まあ、こっそりやるから。こっそり。


 ※トーナメント戦であるという文章が抜けていました。色々修正。

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