魔眼のヒーローアカデミア   作:角キサ

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緑谷出久:オリジンⅠ

――折寺中学校――

 

「よーし、お前ら席に着け〜」

 

担任教師の声でその場にいる全員が席に着く。

全員が着席したことを確認すると教師はこれから配布するであろうプリントを手に持ちながら話し始めた。

 

「お前らも三年生だ。そろそろ進路を、将来を考えなきゃ行けない時期だな。なのでこれから進路希望のプリントを配る!」

 

言いながらプリントを配る。

全員にプリントが行き渡ったところで教師は生徒に向き直る。

 

「けど皆、だいたいヒーロー志望だよね〜」

 

クラスの面々の大半が返事をするが如く個性を使った。

それを見た担任は頭を掻きながら、

 

「うんうん、みんないい個性だな。けど、校内での個性使用は原則禁止な!」

 

等と注意しながら話を進めようとした矢先、だ。彼が声を上げたのは、

 

「センセー!」

 

そのよく通る声にみんなの視線が集まる。ふんぞり返り、机に足を置いている彼へと、

 

「みんなとか一緒くたにすんなよ。俺はこんな『没個性』共と仲良く底辺なんざ、行かねーよ」

 

彼の名前は爆豪勝己。出久の幼馴染みであり、個性【爆破】。掌の汗腺からニトロのような汗を出し、それに着火することで爆発を起こすという個性を持っている。

しかし性格に難ありで、今のような発言を繰り返し反感を買うこともしばしば。

今だって、

 

「そりゃねーぜ!勝己!」「そーだそーだ!」「ふざけんなー!」

 

等と周囲から怒号が飛んでいる。

 

「モブがモブらしくうっせー!」

 

等と煽りを入れるものだから火に油を注いでいるようなものだ。

 

「あー、確か爆豪は雄英高だったな。志望校」

 

と、教師が言うと爆豪への怒号は収まり、ざわつきへと変わった。

 

「雄英って国立の?」「今年の偏差値79だぞ!?」「倍率も毎度やっべぇって……」

 

そのざわつきに気分を良くしたのか爆豪は机に飛び乗り、ポーズをつけながら、

 

「模試じゃA判定。俺はウチ唯一の雄英圏内。あのオールマイトをも越えて、俺はトップヒーローとなりッ!必ずや!高額納税者ランキングに名を刻むのだ!」

 

「そういや、緑谷も雄英志望だったな」

 

と、爆豪の勢いの良さを止めるためか、教師が名簿を見ながら言い放つ。

 

「おー、緑谷もか」「緑谷が個性を発動してるところ見た事ないな」「けど緑谷ならいけんだろ!頭もいいし!」

 

と、周りが再度ざわつき出すと出久に向かって爆豪が個性を使いながら殴り掛かる。

出久はそれをすんでで躱す。

 

「コラ、デクゥ!躱してんじゃねぇぞ

 

周囲のクラスメイトは思った。「やべぇ、逃げよう」と。事実教室の外まで退避している者もいた。

 

「没個性かどうかすら怪しいテメェがぁ……なんで俺と同じ土俵に立てるんだァ!?」

 

青筋浮かべながら出久へと構える爆豪。

出久はその爆豪の様子を見て、一つ溜息を吐く。

 

「僕はちゃんと個性持ちだよ、かっちゃん。それに、僕がどこに立つのも僕の自由でしょ」

 

「アァ!?」

 

一触即発。そんな言葉が最も似合う。そんなシーンが教室内では繰り広げられていた。

 

――――――――

 

――放課後。

 

帰ろうと荷物を纏めていたところを爆豪に呼び止められる。二人の男子生徒を引連れて。

 

「……なに?帰りたいんだけど」

 

「まだ今朝の話は終わってねェんだよ」

 

「今朝の話?あれ以上話すことないでしょ」

 

「あるんだよ、ボケ!……一線級のトップヒーローは、大抵学生時から逸話を残してる」

 

「うん、そうだね」

 

爆豪の言う通り、トップヒーローと呼ばれている人間の大半は学生時から何かしらのエピソードを持っている。

 

「俺はこの平凡な私立中学から初めて、唯一の雄英進学者っつーハクをつけてーのさ。まぁ、完璧主義なわけよ」

 

「……それで?」

 

爆豪は一歩出久に近付き、肩に手を置く。

 

「もし万が一、いや、億が一にもお前が雄英に受かったら困るわけ。だから雄英受けるな。な?」

 

「みみっちいね。かっちゃん」

 

「……あ?」

 

爆豪のこめかみに筋が浮かび上がる。

 

「みみっちいって言ったんだよ。意味は……図書室にでも言って調べてきたら?じゃあね」

 

とだけ言い残して出久は教室を出ていった。

 

「緑谷言うなぁ……」「あそこまで言えんのは『幼馴染み』故、なのかねぇ」

 

爆豪は、そう言った男子生徒をギロリと睨みつけ、黙らせる。

 

「あのクソデクゥ……!」

 

忌々しげに爆豪は呟く。


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