スペリオンズ~異なる地平に降り立つ巨人   作:バガン

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剣よ花よ その2

 「お前は一体なにをやっているんだ。」

 「まあ、そう思われてもしょうがないわな。」

 「そう思うも何も事実だろ。」

 

 久しぶりに通信鏡越しに会ってみればこれだ。変わっていなくてむしろ安心するが。

 

 「しかし、アイツの短刀がこの世界にもあったとはな。勿論、俺の知ってるアイツの直接の物ではないんだろうけど。」

 「だから辞退させてもらった。俺の物でもないんだし。」 

 「元からお前の物でもないだろ。」

 「そうなんだけど、そうなんじゃねえよ。要は心の問題だ。俺は過去に縛られない!」

 「そうか、その発言自体が過去に縛られているようなもんだが。」

 「ぐぬっ。」

 

 だからこそ、新しい自分に切り替わりたいなだろうけど。

 

 「まあ、せいぜい今のうちに太いパイプを作っておいてくれよ。問題起こすことになるから。」 

 「俺も大概だが、お前も大したもんだな。犯行予告とは。」

 「あくまでゼノンの法に触れる可能性があるってだけだ。そこまで大きくするつもりはない。お前がもみ消せる程度にしておく。」

 「お前は俺を何だと思ってるんだ。まあ、元気そうでよかったよ。」

 「皆元気さ。」

 

 元気すぎて逆に圧倒されることもあるが。

 

 「ま、元気そうなの確認だけでいいや。じゃあな。」

 「おう、またな。」

 

 パッと、アキラの映っていた鏡が光を失って、代わりに自身の姿が映る。自分で見ても判るぐらい、疲れた顔をしている。

 

 「おーいーガイー、話終わったかー?」

 「終わったよ。今度はなんだよ?」

 「また壊れた!」 

 「また『壊した』の間違いだろ。」

 

 デュラン先生が頭を悩ませているわけが今ならよくわかる。ドロシーを放置しておくと、日に3度は問題を持ってくる。

 

 「まあ、別な鋼鉄を用意した方がいいのか一考の余地はあるな。柔軟性のあるものがいいのか、それとも思いっきり硬くするのがいいか。」

 「ぶつくさ言ってないで直せ。」

 「お前ももうちょっと頭使いながら振り回せ。」

 

 ドロシーが見せたのは根元からポッキリ折れてしまった一振りの剣。ガイがゼノンの修行を始めたドロシーのために作った電撃剣である。

 

 ゼノンの電気を通しやすくするために、通電性の高い金属を合成して作ってあるのだが、どうやら熱で折れたらしい。熱が発生しているという事は、抵抗が発生しているということで、通電性がまだまだ足りていないのか、それともドロシーのゼノン電撃が強すぎるのか。

 

 「まあいい。予備をもってけ。」

 「なんで予備があるんだ?」

 「すぐ壊すと思ったから新しく作っておいたんだよ。」

 「さすが!じゃ、もらってくぜ!」

 「もっと大事に扱えよ。ったく。」

 

 剣そのものの耐久力に限界がくるなら、通電させる量をコントロールするスイッチを作った方がいいか。とにかくガイは頭を使わせられる。

 

 こんなに悩むのはいつ以来だろうか。生み落とされてから研究所にいた間は、こんな風に悩むことはなかった。そのころは、とりあえず作れば結果がついてくる恵まれた環境にあったからだ。その結果が何を招くのかも知らずに。

 

 ただ決定的に違うと感じることがある。

 

 「なんだか楽しそうですね、ガイさん。」

 「そう?」

 「ええ、昔の事をを話してくれる時のお爺ちゃんみたいでしたわ。」

 「・・・そんなに老けてみえるか?」

 「雰囲気の話ですわ。」

 

 鏡でもう一度自分の顔をよく見てみる。やっぱり疲れている顔だが、わずかに口角が上がっている。

 

 「ね?」

 「そうだな・・・。」

 

 開拓者となったツバサもこんな気分だったんだろうか。

 

 ツバサも頭がよかったし、何より創意工夫の情熱を持っていた。アキラに鍛えられて、体も出来上がっていた。頭脳と身体のハイブリッドだ。

 

 それでもすべてが順風満帆ではなかった。時に人と争い、どん底に突き落とされたりもした。と、日記には書いてある。

 

 「これもなかなかゆっくりと読む機会が無いな。要点だけ纏めてくれればよかったのに。」

 「お爺ちゃんにはすべてが大切だったんですわ。」

 

 だからと言って背負いすぎな気もするが。責任感が強いというかクソ真面目と言うか。確実に損な性格だ。

 

 ともかく、旅の間ずっと借りっぱなしだったこの本も結局読み切ることが出来なかった。

 

 「でしたら、私が聞かせて差し上げますわ。」

 「寝物語でとか?」

 「ま!いけないんですわガイさんたら。」

 「あー、冗談だ。」

 

 お嬢さんに対してしていい話じゃなかった。深く反省。

 

 「でも、その内お話する機会もあるかもしれませんわね、枕元で。」

 「おいおい。」 

 「冗談ですわ♪」

 

 コイツー、可愛いやつだなチクショウ。

 

 「あー・・・。」

 「ど、ドロシー?いつから?」

 「ついさっき。スマン、邪魔したな。」

 

 剣のポッキリ折れたドロシーが、いつの間にか後ろにいた。

 

 「・・・って、またお前壊したのか!」

 「スマン、思い切って放出してみたら、ロウソクみたいに折れちまった。」

 

 やっぱ耐熱性無いとダメだな。

 

 「いや、いっそレーザーブレードでも作ってみるか?」

 「おっ、なんか新しく作ってくれるのか?」

 「その前にお前は、もうちょっと物の扱いを覚えたほうがいい。」

 「お前は女心の扱いを覚えたほうがいい。」

 「ドロシー!」

 「うへぇ、エリーゼが怒った!」

 

 じゃあ今度、普通に遊ぶことを約束してみようかな。生憎、この世界のデートがどんなものなのかを知らないが、

 


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