スペリオンズ~異なる地平に降り立つ巨人   作:バガン

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 後半部分を大幅に改定しました。これでちょっとキャッチーになった?


スペリオン・ガイ

 「おじいちゃん、おーきて。おきてくださいー?」

 「んっ・・・ああ、どうした、エリーゼ?」

 「おじいちゃんたら、お客さんと会っていたのに、寝ちゃったんですよ!お客さんもう帰っちゃったみたいですよ!」」

 「ああ、そうだったかい?」

 

 いつものように陽の差し込む温室で、いつものように椅子に腰かけているおじいちゃんを揺り起こす。ただその日のおじいちゃんの手は、私の知っていた大樹のように力強く節くれだった手ではなく、とても軽い枯れ枝のようだったのを覚えている。

 

 「それじゃあ、エリーゼは今日何の話が聞きたいかな?」

 「えーっと、また『光の人』の話が聞きたいです!」

 「そう、エリーゼは好きだね、その話が。私も・・・好きだ・・・。」

 「おじいちゃん、寝ないでください!」

 「んあっ・・・そうか、そうだな・・・。」

 

 おじいちゃんはとても眠たそうにしていた。けど、そんなことお構いなしに私はいつものお話をせがんだ。もう何度も聞いたそのお話が、私はとても大好きだったから。

 

 「けど、今日は少し違う話をしよう。」

 「違うお話?」

 「そう、過去ではなく未来の話。」

 

 傍らのテーブルに置かれた金属製の円筒をつまみながら、おじいちゃんは話をつづけた。聞きたかったお話が聞けなくて、私の機嫌はちょっとナナメだった。

 

 「よく聞いて、エリーゼ。この『キーパーツ』をキミにあげよう。」

 

 おじいちゃんは、よく何かを作っていた。それはこのキーパーツのような、小さなキカイのようなものが多かった。

 

 「きれい、くれるの?」

 「キーパーツは『願い』を叶えてくれる。いつか時が来たら、正しく使ってあげて欲しい。」

 「願いがかなうの!?大事にするね!」

 

 ペンダントのように首から下げると、まるで託された責任の重さそのもののようにずっしりとした感触が伸し掛かってくるようだったけど、その時の私は『特別なものを貰って嬉しい』とただ呑気していたものだった。

 

 「正しく使えば、きっと『光の人』は助けてくれる。そして、逆に助けてあげてほしい。」

 「『光の人』の!でも『光の人』はいつも助けてくれるんでしょ?」

 「そうだけど、そうじゃないんだよ。エリーゼも親切にされたら、おかえしをするものだろう?同じように『光の人』ともお互いに支えあっていけるようになってほしいんだ。」

 

 「『光の人』は、きっと孤独だったから。」

 「ひとりぼっち?でも、おじいちゃんたちが一緒にいたんでしょ?」

 「確かに、あそこに私たちはいた。けど、真に彼を理解してあげられたとは思えないんだ。彼の心に答えをあげられなかった。・・・エリーゼになら、その答えをあげられると思う。」

 「どうするの?」

 「わからん。エリーゼが自分で考えてね。」

 「なにそれ-!でもわかった、私にまかせてね!」

 「そうか、では頼んだよ。」

 

 優しく頭を撫でてくれたその手は、やはりいつもと違って力が入ってないようだった。今日は本当にどうしたの?と聞きたくなった時、温室にもう一人入ってきた。

 

 「じーちゃーん!エリーゼー!」

 「なによドロシー、今大切なお話をしているのよ。」

 「オレもじーちゃんの話聞きたいー!」

 

 従姉妹にあたる、私とは違う黒髪の少女のドロシー。女の子だけど、男の子のみたいな恰好をするのが好きなちょっと変わった妹のような存在。

 

 「エリーゼだけにくれるなんてズルい!オレにもなんか欲しいよー!」

 「うーん、困ったな、エリーゼに託すものしか考えていなかった。何か欲しいものがあるかいドロシー?」

 「んーと・・・じゃあ、この杖欲しい!」

 「ドロシーったら、それが無いとおじいちゃんが歩けないでしょう?」

 「いいや、そんなものでいいのなら、この杖はドロシーにあげよう。」

 「ホント?やったー!」

 

 そう言って、ドロシーは杖を剣のように掲げて喜ぶ。そんな様子をおじいちゃんはにこやかに眺めていた。

 

 「ドロシー、よく聞いておくれ。」

 「なーにじいちゃん?」

 「ドロシーは、『バロン』になりたいって言っていたね。」

 「うん、なる!エリーゼのパパみたいに強い騎士になる!それで『光の人』と一緒に戦うんだ!」

 「そうか、そうしてくれると助かるな。けどなドロシー、強いだけではダメなんだ。それと同じくらい、優しくもあってほしい。」

 「そっか、どうやったら優しくなれるんだ?」

 「そうだな・・・一番大切なのは、『信じる』ことだ。」

 「信じる?」

 「信じるというのは、ただ『疑わない』ことじゃない。自分で見て、考えて、時には疑っても、その『向こう側』にあるものを信じる、ということだ。」

 「・・・よくわかんない!」

 「ははは、そうだろうな。今のは私が体験して言ったことだから、ドロシーが自分で考えた意見じゃないもんな。」

 

 今度は懐かしむように、うんうんと頷きながらドロシーの頭を撫でていた。 

 

 「・・・ドロシー、ひとついいかい?」 

 「なに?」

 「やっぱりその杖、少しの間だけ返してくれるかい?少しの間だけでいいから。」

 「はい、すぐ返してね!」

 「ありがとう。それから、お父さんたちを呼んできてくれるかな?今すぐ。」

 「わかった!」

 

 ドロシーは、頼まれごとを素直に聞いて走っていった。さて、とおじいちゃんはゆっくりと杖を携えて立ち上がった。それを補佐しようとするが、やんわりとおじいちゃんは断る。すぐそばの植え込みの根元に鎮座する石碑の元へ、よたよたと時間をかけて自分の足で辿り着いた。

 

 「やれやれ・・・エリーゼ、お前もお母さんたちを呼んできておくれ。今すぐに。」

 「いやです!」

 「エリーゼ!」

 

 その時の、おじいちゃんの目が忘れられない。まるでお話の中で聞いていた、若いときの虎のような眼差しだと思った。それに気圧されて、思わず私は一歩引いてしまった。

 

 「ああ、ごめんねエリーゼ。ただ・・・もう時間が無いから、その前に、みんなを呼んできてほしい。」

 「・・・いやぁ。」

 「エリーゼ、お願いだ。それにキミは孤独にはならない。」

 「おじいちゃんを一人にしたくないんです!」

 

 

 

 「そうか・・・そうだな、じゃあ代わりに、最後にもう一つ。エリーゼ、こっちへ。」

 

 左手の薬指に嵌められた指輪を今度はくれた。おばあちゃんも同じのをしているのを私は知っていた。

 

 「この指輪を、いつかエリーゼの大切な人が出来た時に渡してあげてほしい。」

 「大切なひと?」

 「私は幸せだったよ、この世界に来て、家族を持って、エリーゼたちが生まれてきてくれたことが。その幸せが、もっと続いていくように、エリーゼにその指輪を持っていてほしい。」

 

 「エリーゼは強い子だから、任されてくれるかい?」

 「・・・わかった。私、素敵な人を見つける!」

 「そうか、そうしてくれ・・・。」

 

 おじいちゃんは、とても満足そうに頷いた。そうしてそれからはもう、何も言わなくなった。

 

 「おじいちゃん・・・?」

 

 やがて、ドロシーに連れられて親族がぞろぞろとやってきて、にわかに温室は騒がしくなった。

 

 私はどうしていたんだろうか。よく覚えていないのだ。

 

 

 ☆

 

 

 それから10年余り。同じ温室の、同じ石碑のその前で跪いて祈りをささげている。

 

 窓から差し込む陽の光は陰り、温室にも暗い影を落としている。

 

 そしてもう一つ、暗い影を落とす原因がすぐそこに。

 

 『ギュォオオオオオオオ・・・』

 

 「エリーゼ!もうそこまで来てるぞ!」

 「ドロシー・・・突破されたのね。」

 「数が多すぎる!3体も来る!」

 

 そいつらは、海の向こうからやってくる。大陸の西の果てにあるこの『キャニッシュ私塾』は、その最前線となっている。かつてののどかな海沿いの城と違い、数々の大砲や戦術兵器の並ぶ要塞の姿と変わり果ててしまったが。

 

 その中で、戦士として務めを果たしているドロシーは、一張羅の戦装束を纏い、赤い靴を鳴らしながらエリーゼの元へやってきた。

 

 「ここも直に戦場になる。エリーゼは避難しろよ。」

 「私は・・・ここを守るわ。」

 「何言ってんだよ!ここも危ないって言ってんだろうが!」

 「ならばこそ、ここであの人が帰ってくるのを待たなければ。」

 「そりゃ・・・そうだけど。」

 

 「私は信じているわ。あの人は必ず来るって。」

 「・・・ああ、じゃあオレも残る。オレがエリーゼを守る。」

 「ありがとう、ドロシー。頼もしい騎士だわ。」

 

 「じゃ、行ってくるぜ。」

 「いってらっしゃい。」

 

 剣を背負った背中が、やけに大きく見えた。この3年余りの時間は、彼女たちを強くした。肉体的にも、精神的にも。

 

 「バロン部隊、前に倣え!」

 

 校庭のあった広場には、黒鉄に輝く鎧を纏い、十字架のような剣を腰に携えた騎士たちが整然と並んでいる。その前に立って檄を飛ばすのは、紅の鎧の騎士隊長。

 

 「ついに我々、バロンという剣が鞘から抜かれる時が来た。本来我々が動かなければならないという事態は、望まれるべきことではない。」

 

 かれこれ十数年ぶりともなる実戦に騎士隊長の声にも自然と力が入る。配下の騎士たちには、実戦と言うものを経験していない新兵にも等しい者たちも多く、表情に出しこそせずとも内心には不安を抱えている

 

 「だが、我々がやらねば遠からず王都にもやつらの手が伸びる。それだけは避けねばならない!そのためにバロンという剣がある。最後に勝つのは、人間の力なのだ!その時こそ、我らの力を勝鬨と共に轟かせるのだ!」

 

 「おぉおおおおおおおおお!!!」

 

 隊長の言葉には確かな熱があり、新兵たちの不安を払拭するように、耳から熱が伝わった。

 

 「それでは迎撃準備開始だ!砲手は各員位置につけ!後の者は私に続け!」

 

 「イエッサー!」

 

 そうして全員せわしなく動いていく。まさしくアリのような働きぶりだ。

 

 「隊長!」

 「ああドロシーか。エリザベスはどうした?」

 「ダメでした。絶対動かないって。」

 「なに?そうか・・・ならば仕方がない。彼女もまた守るべき市民の1人だ。」

 「権限で強制撤収させないんですか?」

 「・・・みなまで言うまい。」

 「失礼しました。」

 「あの子だってもう、自分で判断ができる歳だろう。」

 「この前は『まだ嫁には出さん』とか言ってたのに。」

 「誰が出すものか。お前も準備をしろ、ドロシー遊撃兵!」

 「了解!」

 

 やれやれ、とドロシーはペロッと舌を出しながら見張り塔を目指す。途中すれ違う騎士たちに軽く敬礼をしながら、階段を駆け上がっていくとすぐだ。

 

 「もう見えてきやがったな・・・。」

 

 灰色の雲のかかった水平線に目を凝らすと、3つの影が並んでやってくるが、それらは船舶の類ではない。どれも優に50mを超える体長を持つ巨獣である。

 

 一つ目は8つの頭を持ちながらも、それら4本ずつで上顎と下顎を形成するように整列し、一頭の大蛇のような姿をしている。

 

 二つ目は空中に浮かぶ巨大な球。時折風に吹かれてうにょうにょと表面が揺れている。

 

 そして三つ目の影を見止めたその時、衝撃が身を襲った。

 

 「揺れる!もう攻撃してきたのか?!」

 「シールド急げ!砲撃はこの距離じゃ当たらんか?」

 「シールドエネルギー率まだ80%です!」

 「砲撃射程外からの攻撃です!」

 

 要塞近くの海面からいくつも伸びたアンテナの間に、電磁バリアがゼノン・プリーストの念によって張られていくが、それもまだ完全ではない。

 

 「ドロシー遊撃兵、突貫します!」

 「待て!まだ敵の攻撃は本腰ではない。砲撃射程内にまでひきつけるんだ!」

 「ならどっちみち、囮が必要になるだろ!」

 「おい!ったく、じゃじゃ馬め!」

 

 3つの円盤盾がドロシーの周りに浮かぶと、ふわりと電磁力の力でドロシーの体を浮かせて高速ですっ飛んでいく。

 

 「オラオラ!オレが相手だ!」

 

 3つ目の影、鹿の頭を持ち二足歩行する獣人。その角は電飾された木の枝のように輝いており、頭を振りみだして生み出した残像が、本体の分身となって現れる。

 

 「また増えやがった!」

 『相手は未知数の相手だぞ!戻るんだドロシー!』

 「バカヤロー!こいつと戦うのは二度目だっつーの!」

 

 ドロシーは前哨戦として、洋上でも何体かと戦っていた。この角を持つ獣『デバランチ』は、角からサイキックパワーを解放して分身や光線を放つことが出来る。しかも硬い筋肉を持つパワーファイターでもある。

 

 「こいつをバリアに近づけさせるわけにいはいかないんだよ!ここで足止めする!」

 

 『ジュバババババ・・・!』

 

 「おっと!」

 

 分身が一斉に、角からの光線を放ってくるが、ひらりと身を翻して危なげなくドロシーは回避する。

 

 その間に、残る二体の巨獣は我関せずと脇を通り抜けていくが、ドロシーにもさすがに3対1を捌ききることはできない。

 

 『よーし、砲撃開始だ!やつらを近づけせるな!』

 『イェッサー!』

 

 バリアの外で待機していた固定砲台群『雷の塔』達が一斉に火を吹き、雷の槍を投擲する。

 

 雷の槍が次々と突き刺さり、大蛇の巨獣『バラコンダ』と球の巨獣『ザイビラ』の体表を焦がしていく。しかし、その歩みを止める程ではない。

 

 『隊長!』

 『かまわん!撃ち続けろ!近づけば近づくほど、威力も上がるんだ!』

 『イエッサー!』

 

 人間は基本陸の生き物、海上戦では分が悪い。可能限り体力と装甲を削り、白兵戦でトドメを刺す。それがゼノンのとれる作戦だった。

 

 「そのためにも、せめてこいつだけでも分断させなければ!」

 『・・・頼んだぞ、ドロシー!』

 

 バラコンダとザイビラは止まらない。デバランチだけは、ドロシーが喰らいついて離さない。無線越しにドロシーの覚悟を受け止めた体長は、自身の役割に戻った。

 

 「砲撃を片方、球形の巨獣に集中!分断させろ!」

 「イェッサー!」

 

 ザイビラに火力が集中され、それから逃れるように進行方向を斜めに変えていく。

 

 その間にバラコンダはバリア地帯目前までやってくる。すると大蛇はその大顎を8つ頭に変えて威嚇の咆哮をあげ、16の眼から熱線を放ち、雷の塔を片っ端から破壊していく。

 

 「まだまだだ!パラライズネット展開!」

 「展開します!」

 

 しかしそれを指をくわえて黙って見ている人間たちではない。隊長の指令が飛ぶと、電磁ネットが口を開き、破壊活動に勤しんでいたバラコンダを捕らえる。

 

 「成功です!」

 「よし!白兵戦だ!1番から3番隊、用意はいいな!」

 「イエッサー!!」

 

 男たちの怒声と共に、一斉に火蓋が切って落とされる。彼らはドロシーのものと同じ電磁力の円盤を背負うと、腰から十字架の銃を抜いて敵に向ける。

 

 「攻撃開始だ!クロスファイア!!」

 「クロスファイア!!」

 

 円盤の力で宙に浮いた騎士たちによる、電熱銃の十字砲火が開始される。並みの巨大生物であればこれだけでもう決着がつくところだが。

 

 「やったか?!」

 「まだだ!散会して反撃に備えろ!」

 

 銃のクールタイムにも気を抜けない。バラコンダの表面は黒く焦げて、微動だにしていないが、この程度でくたばるはずもない。

 

 『キシャアアアアアアア!!』

 

 「くるぞ!」

 

 怒り狂うバラコンダ。8つの口から揃って映える牙が不気味な紫色に光ると、見るからに毒々しい煙が吹き出す。

 

 「うわぁああああ鎧が溶けるぅ!?」

 「慌てるな!風上にまわれ!」

 

 それに触れた途端、金属は腐食を始めた。何人かが犠牲になったが、すぐさまは隊長は指示を飛ばして毒煙から逃れる。

 

 『カラカラカラカラ・・・』

 

 その隙にバラコンダは電磁ネットの罠から逃れると、不敵に笑うような声をあげる。どうやら上陸するよりも、砲台の破壊と自身の周りを飛び回る虫けらで遊ぶことにしたらしい。

 

 8つに分かれていた頭が再び一組の顎に組み直ると、バラコンダはとぐろを巻く。一体何をするつもりなのかと、隊員たちは距離をとる。

 

 『キシャアアアアア!!』

 

 「うわっ!巨大な牙が!!」

 

 8つの頭のそれぞれが毒液を固めて針を作ると、巨大な頭がそれを噛みつきの勢いで飛ばす。そうするとまるで巨大な牙が飛び出してきたかのように見えたというわけである。

 

 「なんという・・・。」

 「一瞬で3分の1が飲み込まれたぞ!」

 「狼狽えるな!落ち着いてよく見れば躱せない攻撃じゃない!」

 

 毒の牙による圧砕に巻き込まれた騎士は、一瞬のうちに潰れ死んだか、溶かされて死んだ。

 

 どよめきが生き残った騎士たちに広がるが、隊長はすぐさま指示を飛ばす。が、背中に嫌な寒さを感じていたのが内心だった。指揮官の動揺は、そのまま部隊の動揺につながる。決して面には出さない。

 

 『キシャシャシャシャ・・・』

 

 「おのれ・・・。」

 

 巻き込まれていった中には、配属されたばかりの新兵も、苦楽を長く共にしたベテランもいた。それらに等しく死を与えた悪魔はせせら笑い、隊長は不快感を露わにする。

 

 だが散っていった者たちに祈りを捧げるのは後だ。ここでこいつを倒せなければ、弔いの朝日も昇らないのだ。

 

 

 ☆

 

 

 「雷の塔、破損率70%!弾幕維持できません!」

 「4番隊から6番隊は出撃の準備を!もう一体が向かってくるぞ!」

 

 指令室となっている要塞の一部屋、元は学園の多目的ルームだった場所は非常に熱くなっていたが、交わされる言葉の中には冷え切るものもあった。

 

 遠からず戦線は崩壊する。そうなれば次に狙われるのはここ。それでも決して誰一人として逃げ出そうとはしていなかった。

 

 そして、少し離れた温室にも1人。エリーゼはまだ祈りを続けていた。傍らには一冊の本が置かれ、手のひらには金のキーパーツが握られている。

 

 「お願いです・・・どうすればいいのですか?」

 

 縋る思いで本のページを捲るが、そこに答えはない。最後のページに書かれた、『始まりの場所で迎えを待つ』とあるだけ。

 

 その場所の心当たりには、ここしかなかった。あの日、この場所でドロシーは持ち出した召喚の法術を試して、すべてが始まった。

 

 「ドロシーには、このキーパーツの使い方が分かったのかしら?」

 

 以前、これは特別なボルトが中に入っていると聞いた。それと何かが関係あるのかしら?キーとつくからには、どこかの鍵だということだったけれど。

 

 出来ることなら本人から聞きたいところだけれど、生憎とこの場にはいない。

 

 と、そんなことを思い至った時、温室は幕がかかったかのように暗くなった。そして耳障りな、何かが這うような音も聞こえてくる。

 

 「へっ、なに?!」

 

 見上げてみれば、その理由は明白だった。人の顔ほどの大きさのある巨大なヒトデが、数えきれないほど温室のガラスに張り付いていた。ヌルヌルとした粘液を滴らせ、アケビのように裂けた口と牙を見せつける。

 

 「きゃあああああ!!キモイ!!」

 

 およそ年頃の娘が出していい声ではないが、とにかく絹を裂くよな悲鳴が温室に響いた。

 

 このヒトデたちこそ、ザイビラの体を構成していた『ビラQ』である。それらがガラスを割って雪崩れ込んでくるのだから、さあ大変。

 

 「いやあああああああ!!」

 「伏せろ!」

 

 ビラQは牙を剥いてエリーゼの金髪に降り注ぐが、そこへ割って入る影あり。

 

 「うへぇ、思ったよりも汚ねえ。」

 「ア、アキラさん。」

 「おっす、今戻った。うひー、くちゃい。」

 

 ベタベタの粘液に鼻を曲げる赤いパーカーを着た青年、アキラ。その手には刀身に彫りの入った青龍刀が握られているが、それもベタベタだ。

 

 「これは明らかに戦う相手の戦意を削ぐ効果あるな。おっと。」

 「きゃっ!まだ来ますわよ!」

 「下がってろ。お前に何かあったら合わせる顔がねえぜ。」

 

 降り注ぐビラQの群れを、刀を回転させて弾いていく。あたりには異臭を漂わせる体液がまき散らされるが、エリーゼのスカートのすそには一滴たりともかからない。

 

 「大したことはないけど、数が多いな。それでエリーゼ、アイツを呼ぶ方法はわかったのか?」

 「いいえ、まだです。ただドロシーなら何かわかるかも・・・。」

 「ドロシーか、それならもうすぐ・・・。」

 「うぉおおおおおおお!!」

 「来たな。」

 

 ビラQの幕を破ってドロシーが降ってきた。

 

 「ドロシー、大丈夫か?」

 「へ、平気・・・あのヤロー、よくもやりやがったな。」

 「ドロシー、すぐに聞きたいことがあったのだけれど。」

 「後にしてくんね?ヤツが来る。」

 「あなたにしかわからないのよ!このキーパーツの使い方は!」

 「キーパーツ?」

 

 ドロシーは埃を払いながら立ち上がると、エリーゼの言葉に首を傾げた。

 

 「キーパーツなら、あそこの穴に差し込めばいいだろ。」

 「え?穴?」

 「石碑の真ん中に、目立ってるだろ?」

 「え?え??たったそれだけ?」

 「大体、その使い方ならじいちゃんから聞いたろ。」

 「えぇ??そんなこと、あったかしら?」

 「あったよ。ああ、そういえばエリーゼだけ途中で出てったんだっけ。」

 「そんな・・・まさか・・・。」

 

 どうにも、エリーゼは大きな勘違いがをしていたらしい。だが、本当にエリーゼの中にそんな記憶はない。

 

 「でも、そういわれてみれば記憶に曖昧なところが・・・?」

 「なんだよ、キーパーツの使い方がなんか関係あるのかよ?」

 「そう、そうね。今関係あるのはそっちね。もう一度あの人を召喚したいの。今度は私の手で。」

 

 そういってエリーゼは石碑へと向かう。たしかに石碑の中央には穴がある。と言っても、ガラス玉が埋め込まれて透明に見えるだけなのを、穴と表現しているだけなのだが。

 

 「これを・・・どう考えても入らないと思うのだけれど。」

 「違うよ。もっと願いながら入れるんだよ。」

 「願う?」

 「オレの時は『光の人』に会いたいって願った。そうしたらカギ穴が収まった。それだけ。」

 「それだけ?」

 「そうだよ。禁書にはそう書いてあったし、そうしたらアイツに会えた。」

 「そう・・・。」

 

 意外と簡単なことだと、拍子抜けしたけれど、今は幻滅している暇はない。ビラQは今なお増え続け、ガラスの向こうには大きな影が映ってきた。

 

 「来たぞ!」

 「エリーゼ早く!」

 「わかってる!えっと・・・願う、私の願いは・・・。」

 

 さて、困った。まさか本当に願いを叶えるために使うことになるなんて夢にも思っていなかった。おじいさまはこのことを予測して託してくれたのだとしたら、責任は重大だ。と言うか、よくもそんな大事なものをドロシーは持ち出してくれた。

 

 「この世界を、みんなを守って・・・。」

 

 ともかく、今はこの事態を脱するのが先決だ。当たり障りのない願いを唱えてみるが、なんの効果もない。

 

 「なんで?」

 「おいエリーゼ、まだかよ!」

 「本当に『願う』だけでいいの?」

 「とにかく強く願え!」

 「ちょっと急いで。」

 「そんな漠然としたものでいいの?!」

 

 「漠然としてじゃなく、もっと具体的にエリーゼの欲しいものを願えよ。なんか、なんかあんだろ?」

 「なんかってなによ!」

 「なんかはなんかだよ!」

 「お前らちょっと急げ。角付きがこっちに来るぞ。」

 「じゃあドロシーがもう一回やればいいじゃないの!」

 「オレの願いはもう叶っちまったからダメなんだよ!あの時オレは・・・。」

 

 『ギォオオオオオオオオオオオウ!!』

 

 「おいでなすった!」

 「ああもう!オレはあの時、『お前を笑顔にしてほしい』って願った。そしたらアイツが来た。だから、お前の願いが答えなんだよ!」

 「私の願いが?」

 「そうだ!お前の願いならアイツはなんでも叶えてくれる!」

 

 ついに要塞の防衛網を突破し、デバランチが迫る。

 

 「これ以上近づけさせるな!総員撃て!」

 「了解!!」

 

 外では戦場に出ている者に飽き足らず、司令室にいるものもすべてが銃を手に取り、デバランチとバラコンダを迎え撃つ。しかしそれを一切意に介する様子も見せない。

 

 「隊長!共に戦えて自分は満足であります!」

 「馬鹿者!最後まで諦めるな!それでもゼノンの騎士か!」

 「ハッ!申し訳ありません!」

 「援軍は必ず来る、それまで持ちこたえるぞ!」

 

 ビラQも温室へとさらに雪崩れ込む。

 

 「これはちょっとどころか、相当キツくなってきたな。」

 「ならアキラは休んどくか?」

 「ぬかせ。師匠が先にダウンしてたまるか。」

 

 それでも彼らは諦めない。

 

 「私の・・・私の願いは・・・。」

 

 世界の平和?そんなものお題目に過ぎない。いや確かにそう願うこともあるが、それよりももっと大きな願いがある。もっともっと大きくて、矮小な願い。

 

 この胸に抱えるにはあまりに大きく、この手で掴むにはあまりにも小さな、指輪にかけた願い。

 

 「もう一度・・・。」

 

 石碑はキーパーツを受け入れた。

 

 「もう一度、会いたい。」

 

 エリーゼの意思に呼応するように、キーパーツは回転音をあげる。

 

 するとどうだろう。観音開きのように石碑は開き、中から黒い金属板が現れる。表面にはキズひとつなく、光を放って見えた。

 

 やがて光は強まっていく。しかしその光は優し気なものであり、ビラQだけが力を失ったようにポトポトと落ちていく。

 

 「なんだ?何の光?」

 「同じだ、あの時と・・・!」

 

 そして光の向こうからやってくる、一人の男。

 

 「・・・おかえりなさい、ガイさん。」

 「ああ、ただいま。」

 

 その姿を見止めた時、エリーゼは微笑んだ。男、ガイは自分の出てきた石碑を振り返るが、すぐに目の前にいるエリーゼたちに向き直り、同じく微笑んだ。

 

 「待ってたぜ!ガイ!」

 「おう、ドロシー。お前は大分変ったな。」

 「・・・てっきりツバサが呼ばれてくるものだと思ったが。」

 「やーっかましい。俺もちょっと不安だったわい。」

 「そ、そんなことありませんわよ!ちゃんとガイさんのことを思いながら・・・。」

 「ホントに?」

 「・・・実はちょっとだけおじいさまのことも。」

 「おい!」

 

 光が収まったところで、敵が再び動き出す。しかしアキラとドロシーは余裕そうに言い放つ。

 

 「大体、来るのが遅いぜ。このまま俺たちだけで全部片づけちまうところだったぜ。」

 「よく言うだろ、主役は遅れて出てくるってな。」

 「俺に言わせれば遅れ過ぎだけどな。颯爽とヒロインを助けたところなんかまさしくヒーローだぜ。」

 「ほーう、では誰があの巨獣を倒すのかな?」

 「・・・頼んだぜ、相棒。」

 「ああ、まかせとけ。」

 

 そこに茶化す雰囲気はなく、2人の男はただ拳を合わせる。

 

 「ガイさん・・・。」

 「行ってくるぜ、お嬢さん。」

 「あっ・・・。」

 

 ポンとエリーゼの頭にガイの手のひらが乗せられる。その動作にエリーゼは既視感を覚える。

 

 

 

 『ギォオオオオオオオオオオオウ!!』

 

 

 

 「シカに、ヘビに、ヒトデか。なんとも珍妙な取り合わせだな。だが何が来ようが、俺は負けん!」

 

 左胸に右手を当てて、空へと掲げる。

 

 『ギョギョギョ・・・』

 

 光が集まっていく様にデバランチは、いや、その場にいるすべてが目を奪われていく。

 

 

 ☆

 

 

 「あーあー、帰ってきちまったな。」

 「おのれ・・・再び我らの敵となるか。」

 「そりゃそうだろう、お前らの方が人類の敵なんだから。」

 「ま、俺は所詮外様の部外者よ。好きにするがいいさ。」

 「貴様、さてはわかっていて・・・。」

 「さあな。サイコロの目を操る能力は持っていないのでな。」

 

 遥か遠方、海の彼方の鉄の島で、『光』の帰還を歯噛みする者あり。

 

 

 「あの光は・・・。」

 「隊長!」

 「うむ、援軍が来た。それも最強のな!」

 

 戦場に、『光』に希望を取り戻す者あり。

 

 

 光は人の姿となって地上に降り立つ。

 

 「来たな、ようやく。」

 「ああ、待ってたぜ!」

 「スペリオン・・・!」

 

 光の人、昔話ではそう言われていた。それが今現実となり、銀の体に翡翠の光を胸に抱いて人々の前に帰ってきた。

 

 光の人、『スペリオン・ガイ』の登場だ!

 

 『ッシャ!!行くぜ!』

 

 デバランチの鼻っ面を、その拳が歪ませる。2万tを超える巨体が軽く宙を舞い、海へと落ちると、熱を帯びた戦場にスコールを降らせる。

 

 『キシャアアアアア!!』

 

 『おっと!』

 

 すぐに行動を始めたのはバラコンダだった。再び8つの頭に分かれると、それぞれの口が牙を立てようと飛び掛かる。が、スペリオンにはそれをひらり躱すのは造作もない。お返しにと、すれ違いざまに尻尾を掴んでブンブンと振り回し、地面に叩きつける。

 

 「おー!強いぞ!」

 「いいぞガイー!」

 

 先ほどまでの苦戦がまるで嘘のように、二体の巨獣は手玉にとられていく。しかしこの程度では巨獣たちの勢いも止まらない。

 

 『うん?うえっ、気持ちわりぃ!』

 

 分裂していたビラQたちは、今度はスペリオンの体に群がり始めた。その数は見る見るうちに増え続け、あっという間にスペリオンの体を拘束するほどの大きさになった。

 

 『ブルルルルル・・・!』

 『キシャー!!』

 

 それに呼応するように、バラコンダとデバランチも息を吹き返してスペリオンを襲う。

 

 『こなくそぉ!離れやがれ!』

 

 「おっ、スペリオンを援護しろ!!」

 「了解!!」

 

 息を吹き返したのは巨獣たちばかりではない。ゼノンの騎士たちも闘志を滾らせ、スペリオンの背中に張り付くザイビラを銃撃で焼く。

 

 『ギュルルルルル・・・!』

 

 「ヒトデがはがれたぞ!」

 「よし、あのヒトデの群れは我々で引き受けるのだ!」

 

 「俺たちも負けてられん、行くぞドロシー!」

 「おう!」

 「二人とも気を付けて!」

 

 人間たちは再び分裂したビラQを相手にする。

 

 『頼んだぞ、こっちは任せろ!』

 

 デバランチは角を発振させると、再びサイコパワーを顕現させる。

 

 『ブロロロロロ!』

 

 『分身か!』

 

 1体が2体に、2体が4体に、と8体に増えたデバランチは、スペリオンを囲むと角から光線を発して攻撃する。

 

 バラコンダも頭を一つにまとめて、目から光線を撃ってくる。

 

 『はっ、これぐらいなんてことねぇ!スペークリングシャワー!』

 

 スペリオンは空中で回転すると、光の雨を巨獣たちに降らせる。

 

 『貴様の本体は・・・そこか!』

 

 『オボロロロロロロロ・・・』

 

 光の雨を浴びる分身の中から本体を見つけ出すと、腰を据えて腕に力を込める。

 

 『ビーミングスマッシュ!』

 

 『ゴバァアアアアアア!!』

 

 光を収束させた手刀が降り抜かれ、デバランチの腰を両断する。

 

 『まず一体!』

 

 『キシャアアアアアアア!』

 

 仲間が倒されて怒ったのか、バラコンダも威嚇の声を荒げる。今更そんな威嚇が何になるのか、スペリオンは油断せずに構える。

 

 しかし何を思ったのか、16個の眼を使って目ざとくも人間たちを探すと、

 

 『ゴバァアアアアアアアア!』

 

 「うぉおおお、また毒煙だぁ!」

 「溶けるぅ!」

 

 毒煙を吐き出して人間を襲いだしたのだ。

 

 『くっそ!なんと卑怯な!』

 

 たまらずスペリオンは手を回転させて風を起こして毒煙を吹き飛ばす。そんなことをすれば隙を見せることになるのは明白だったが、当然見過ごすわけにはいかない。

 

 『キシャシャシャシャシャ!』

 

 『くっ、やっぱりな!』

 

 予測された通りバラコンダはスペリオンに巻き付いた。アミメニシキヘビは大型の動物さえも絞め殺すことが出来るというが、バラコンダもその類にもれず強靭な膂力を持っている。

 

 そして大顎を開いてスペリオンを丸呑みにしようとしてくる。

 

 『だが、俺に腕と脚しか武器がないと思ったのは、誤算だな!オプティックファイバー!』

 

 『ギョロッ!?』

 

 スペリオンの後ろ髪、光の繊維が、バラコンダの上顎を吹き飛ばす。

 

 「スペリオンがやったぞ!!」

 「バンザーイ!!」

 「まだ油断するな!」

 

 あっと言う間に2体の巨獣が倒れたが、未だビラQは宙に浮かんでいる。

 

 「見ろ!ヒトデたちが死体に集まっていくぞ!」

 「何をする気だ?!」

 

 きっとろくでもないことだ。切断されたデバランチの上半身と、吹き飛ばされたバラコンダの上顎にビラQは集まり、まるで継ぎ木のように接着されてしまった。

 

 『合体しやがった!』

 

 『グギュルルルルルルル!!』

 

 合体魔獣『バラランチ』の出現である。目には光が灯っておらず、とても生き物のような挙動をしていない、まるで前後を間違えた着ぐるみを着ているようである。

 

 『こいつ、まるでゾンビか!』

 

 「キモーい!」

 「けどつええ!」

 

 虚ろな焦点で、天変地異のように光線が辺り一面にばら撒かれる。スペリオンも負けじと果敢に挑むが、切っても叩いても手応えがない。

 

 『ちょっと・・・強敵かもな。うわっと!』

 

 残されたバラコンダの下顎の蛇頭が、スペリオンの足元を掬う。そのままデバランチの上半身でマウントを獲ると、また無茶苦茶な打撃を繰り出してくる。

 

 『グギュルルルル!』

 

 『くそっ!タガが外れたのかよ、なんつーパワーだ!』

 

 

 「スペリオン!」

 「がんばれスペリオン!」

 「ガイ!」

 「ガイさん!」

 

 負けるな!立て!声援がスペリオンの耳に、心に届く。

 

 『うっ、おぉおおおおおおおおお!!負けられるかよ!』

 

 スペリオンは最後の力を振り絞り、バラランチを押し返す。

 

 『スパークルラッシュ!』

 

 手を閃光で包み、苛烈な拳の嵐を浴びせかかり、バラランチの体は徐々に後退していく。

 

 『たとえ痛みを感じない体だとしても、この勢いまでを殺しきることはできまい!』

 

 『グ・・・グ・・・グ・・・』

 

 「今だ!!」

 「トドメを!!」

 

 腕を胸の前で交差させ、胸の翡翠のクリスタルに力を集中させる。

 

 『はぁあああああ・・・!!クリティカルフラッシュ!!』

 

 手を前に掲げると、胸の光が増大して敵を包み込む。

 

 『グシャ・・・ガァアアアアア!!』

 

 『くらえぇええええ!!』

 

 光の奔流が収まると、バラランチの体は糸の切れた人形のように動かなくなり、しばしの静寂が流れる。

 

 『・・・終わりだ。」

 

 簡素に最終宣告が成されると、バラランチの体がスパークし、やがて大爆発に消えていった。

 

 「やったあああああ!!」

 「やったぞぉ!!」

 「隊長!」

 「うむ!」

 

 そして爆炎は天まで届き、雲を切り裂き、斜光が差し込んだ。

 

 

 「ふぅ、やってやったぜ。」

 

 自身の体を光に分解すると、ガイの姿に戻ってしばし満足げに青空を見つめていた。

 

 「ガイー!」

 「おーい!」

 「ガイさーん!」

 

 自分を呼ぶ声に振り替える。

 

 「やったな!さすがだぜ!」

 「ああ、色々と助けられたのもあるけどな。」

 「海上の方ももう片付いたらしい。あっちの方がキルスコアの方が高いんじゃないか?」

 「そうか、まあ一安心だな。」

 

 「ガイさん。」

 「ん?」

 「おかえりなさい。」

 

 一歩引いていたエリーゼの言葉に、ガイは微笑み返した。

 

 「ああ、ただいま。」

 

 とりあえず、平和は守られた。しかしこれは終わりではない、まだ戦いは続いている。海から、空から、宇宙から、更なる強敵がやってくる。

 

 だがスペリオンは負けない!どんな苦難も仲間と共に乗り越えていく!

 

 


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