他方、件の湖にて。
湖のほとりの村では漁業が盛んだが、そこの網に奇妙な機械が引っ掛かった。それをいちはやく聞きつけたのがヴィクトールというわけだ。
漁業が盛んというには、今のこの湖は非常に静かだ。まるで嵐の予兆を感じ取って逃げ出したかのように、鳥が一羽も見当たらない。
「もう展開してやがんのかアイツらは。」
「言ったろ?事態は急を要するよ。」
ガイとケイはそのキャンプのすぐ近くにまでやってきていた。
「で、その遺物ってのはどこに?」
「一部を引き揚げてもう調査してるらしいね。」
「侵入して盗み見るというのは・・・難しそうだな。ええい、ここでじっとしていてもしょうがない。湖の方を抑えに行くか。」
「そうだね、どうせなら大物が見たい。」
ブツは湖底にまだ潜んでいる。独自に調査するもよし、今の内に破壊してしまうもよし、なんにせよ実際に見るまではなんとも言えない。
「で、どうやって湖底を調べる?」
「潜るしかないだろ。」
「マジ?」
「アキラがいたら、あいつにやらせるんだけどなぁ・・・。」
アキラの肺活量なら、水中でも1時間は活動できるだろう。少なくとも前の世界ではそうだった。正確な記録は1時間22分10秒。
湖上には今は漁に出ている船はない。そこらで釣りを楽しんでいるものもいるが、生憎陸が騒がしいせいか魚がかかる様子はない。
「泳ぐのはそんなに得意じゃないが・・・。」
「頑張ってね。」
「お前のその杖は飾りか。」
「そんな便利な機能はないよ。」
「水を操れるんじゃないのか?」
「そうとは言っていない。」
肝心な時に役に立たん・・・いや、肝心な時には役に立っていたか。
「じゃあ、俺は潜るからお前は陸を見張ってろ。」
「オッケー。」
やれやれ、と水の世界に飛び込む。
(思ったよりも暗いな・・・変身してしまうか。)
巨大化はせず、等身大のまま姿だけを変える。
(もうすぐ湖底か・・・。)
すぐに水の底に到達する。底には泥やヘドロが堆積しており、足を着ければ沈んでしまいそうになる。
(ここよりも下かな?)
手から波動を出して泥を掻き上げる。するとすぐにそれは顔を出した。
(ん?これか・・・歯車、というよりは外装かな。変わった素材だな。)
手でコンコンと軽く叩いてみるが、鉄や銅ではない。とりあえず一回地上に持ってあがってみるとする。
「ぶっはぁ!・・・結構重いなこれ。」
「あ、お疲れ。」
「おう、1つ見つけたらから、これ調べるぞ。」
「うん、それと一つ。」
「なんだ?」
「バロンが来たから、一緒に実況見分するんだって。アキラも来てるよ。」
「・・・俺が潜った意味は?」
「お疲れ様♪」
ちょっと不服。