魔法科高校の妖精遣いだよ……え?そんなにチートかな?   作:風早 海月

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お久しぶりです。

どうしても恋の分野は苦手で筆が乗らず一時は未完としていましたが、何とか一区切りです。



雫と栞の…

 

 

 

 

『こんにちは。現在、2095年度全国魔法科高校親善魔法競技大会6日目のお昼休憩の時間となっております。新人戦初日と同じく、解説に来ていただいたA級魔法師にして東北広域行政区警察機動隊の竹中さんと午前中を振り返って解説してまいります。どうぞよろしくお願いします。』

『はい、よろしくお願いします。』

『今日は新人戦のバトル・ボード準決勝・決勝とアイス・ピラーズ・ブレイクの予選トーナメント決勝と決勝リーグが予定されておりましたが…一高の快進撃からの歴史的快挙となりました。』

『そうですね。一昨日も話しましたが、一高と三高の男女間実力差や工夫差が激しいですね。特に一高は顕著です。森崎選手くらいしか新人戦で活躍している男子はいませんし、各試合のVTRを見ても工夫も薄いと感じますね。』

『まずはバトル・ボードです。女子は決勝進出が光井ほのか選手と北山雫選手でした。どちらも一高選手です。男子は七高と三高の一騎打ちとなりました。』

『光井ほのか選手はトリッキーなプレイスタイルでしたが、とても工夫に富んでいたのでは無いでしょうか?前の試合のイメージを利用した作戦など、とても素晴らしいものでした。北山雫選手は準決勝のパワープレーは見物でしたね。それにしても…妖精遣いがとても多いですね。一高の1年女子だけで既に御巫栞選手と北山雫選手の2人が分かっています。しかも、どうやら2人とも2人以上の妖精を使役しているようですから、妖精遣いの中でも一流と言えます。』

 

アイス・ピラーズ・ブレイク新人戦女子の決勝リーグ控え室に写るテレビ(3Dプロジェクターである)を雫はほのかと見ていた。

 

「はわぁー!私たちの事だよ!その作戦は達也さんが考えてくれたんだーっ。」

 

身体中からキラキラが溢れるように見えるはしゃぎ様に、雫も少し引く。

 

「…でも、良かったの?」

「うん。」

 

『―――この結果をもって、新人戦バトル・ボード女子決勝戦は不戦同率優勝とすることになりました。』

 

「だって、私のためにも頑張ってくれたんでしょ?」

 

ほのかは少し嬉しそうに、でも寂しそうに微笑んだ。その微笑みはとこか胸を痛める様な、そんな感覚を雫に与えていた。

 

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

 

『大変長らくお待たせ致しました。新人戦アイス・ピラーズ・ブレイク女子決勝リーグ、優勝決定戦を行います。北側、第一高校、司波深雪選手。南側、北山雫選手。』

 

会場のアナウンスが選手の紹介をすると共に、リフトが上昇して櫓に2人の姿が現れる。

 

〔涙花、響、2人とも作戦通りいくよ。〕

[もちろんだよ。あの美しすぎる身体に教えこんであげるよ。]

[そうだねっ!任せてっ!]

〔もう何も言わない…と言うか言いたくない。〕

 

ブザー音と共に、雫と深雪の魔法が閃く。

雫の全力の共振破壊に、深雪は少しだけ驚く。感覚的にギリギリ干渉力で勝った感覚で、魔法の兆候に気づいて領域干渉に割く干渉力を増やしたのは深雪にとって正解ではあった。

とは言え、それでもインフェルノを今までより強度の低いものとはいえ発動させて攻撃できる時点で雫と深雪の間にある魔法力差は歴然としていることは分かる。

 

「涙花!」

[がってん!]

 

そこを魔法の無効化を得意とする涙花によってインフェルノの定義破綻…加熱場所(熱量の移動先エリア)の全体に、涙花の固有技能にして四十九院沓子の水面干渉のほとんどを防いだ『魔法の不活化』を行った結果、インフェルノは加熱エリアの喪失に伴い定義破綻によって効力を失う。

 

 

 

魔法とは何か。

 

答えるとするならばそれはサイオンの流れによって出来る偽の世界情報と言える。より簡単に言えば、サイオンという物が世界の形を隠して変化させていると言える。

 

魔法師は、保有するサイオンを情報式へ編集して、情報世界―つまりエイドスに送り上書きすることが出来る人物のことだ。

 

そして、涙花の特性は『遮断』つまり、サイオンの流れを遮断することによって、意味を持った魔法式を消し去っていたのだ。

 

 

 

(次はこっちっ!)

 

 

バトルボードの決勝を無くしたおかげでできた時間によって着替えたその振袖の袖口に隠してあった特化型CADを向けて、フォノンメーザーを撃つ。

とても太く成長した熱線はそのまま深雪の陣地の縦1列を貫通した。

 

9-12

 

今までリードを許したことの無い…否、1本も倒されなかった深雪側の氷柱がまとめて3本が破壊判定とされる火力は、観客席にいた達也を含む一高1年生陣に驚きを以て迎えられる。

 

「…ッ」

 

慌てずに深雪は砲撃体勢に移る。無理をして氷柱1本を飛ばしたエイミィ。それに対して防御魔法の領域干渉とインフェルノをかけつつ、半壊した氷柱3本を飛ばしに行くのは異常とも言える魔法力の強さを示している。

 

「涙花、インフェルノだけ消して」

[承知!]

「響!」

[いつでもいいよ]

 

妖精と妖精遣いの間の相性が非常に良い場合にのみ可能なブースト技…『憑依』。現代風に言うならば、妖精遣い自らの魔法演算領域と妖精の魔法演算領域の掛け合わせ…乗積魔法(マルチプリケイティブ・キャスト)が最も近い。

 

振動系に高い適性のある雫の奥の手…ニブルヘイムの逆、振動加速系領域魔法『アルフヘイム』。領域内のあらゆる物質を(フェーズ)に関わらず均質に熱振動を加速する。

 

本来ならばムスペルヘイムと名付けたいところだが、雫と響の繋がりを名前にするべく妖精の国…アルフヘイムと名付けた。

 

深雪が慌ててニブルヘイムで対抗するが、インフェルノを消す涙花をフリーにした時点でそれもまた止められる。涙花の遮断を超えるにはいくつか方法はある。だが、今の深雪には考えつかない。

 

0-12

 

均質に温められた氷は融解するエネルギーで熱エネルギーを使う。半分溶けきったところで破壊判定が出て、フルスコアで雫が勝利した。

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

「あ、雫…2種目優勝おめでとう」

「ありがとう。栞も早撃ち優勝おめでとう」

「ありがとう」

 

ホテルのロビーでばったり会った2人は不自然に会話が途切れて、変な間が空く。

 

「栞…あの時、身勝手なことしてごめん…」

「…うん」

「…怖かったんだ。血にまみれて意識を失った栞をみて、もう失いたくない、私の手の届くところにいて欲しい…って。本当に、ごめんなさい」

 

雫は腰を深く折って謝罪する。

 

「…私も、あの後何となく避けちゃって…ごめん。どんな顔して会うかとか、分からなくなっちゃって…でもね、雫、あと事は嫌じゃなかったよ。私、これでも魔法師としても妖精遣いとしても雫よりは出来ると思うよ?でも、逃げなかった。あのね―――」

「待って、その言葉は私に言わせて」

 

雫は呼吸を整える。

車椅子に座る栞を少し見下ろす様な位置関係だったが、左膝をついて右手で栞の左手をとる。そして、少し見上げて口を開いた。

 

「御巫栞さん、私と恋人としてお付き合いしてください」

「っ、喜んでッ!」

 

雫の右手の指に自分の左手の指を絡めて、それを支えに車椅子から雫へと倒れかかる。

 

そして、2つの影は1つになった。

 

 

「栞…」

「雫…」

「私は…」

「あなたの事が…」

 

「―大好きです!」

 

 

 

 

 

 





気分次第で筆をとる作品を変えているので、次回の更新は未定です。すみません。最近は筆をとる気力がなくて…感想いただけると活力になりますので、よろしくお願いします。

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