魔法科高校の妖精遣いだよ……え?そんなにチートかな?   作:風早 海月

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お使い、よろしくね!

風紀委員となった達也を攻撃する者達のことを調べようとする3人の少女たちのことは雷電の電脳世界情報収集によって分かっていた。

 

「だから、あの3人が危ないことしようとしたら守ってあげて欲しいの。お願いね。」

[…しばらくは栞の下から離れるけどいいのですか?]

「構わないわ。あの3人、雷電じゃないけど、危なっかしいから。裏の道を見たことない無垢な子達だから。」

[分かりました。じゃあ行ってきます。]

「あ、待って。」

[…?――!!]

 

お使いに早速出かけようとする紗彩を引き止めて、栞は紗彩の頬に(サイズ感が違うのでロマンチックにはならないが)キスをする。

すると、紗彩の着ていた(正確には衣装も体の一部だが)服がシンプルなワンピースからポップなオフショルダーワンピースに。

 

「私の干渉力を少しだけ分けておいたから、いつもより強く魔法が使えるよ。上手く使ってね。」

[…ありがとうございます。では行ってきます。]

 

 

 

紗彩は御巫家の屋敷から飛んで行った。

 

 

「さて…響……より雷火の方がいいかな。雷火は雷電の言ってたブランシュを探ってくれる?」

[ふっ、別に倒してしまってもいいのだろう?]

「いや、探るだけにしておいて。表立って動くのは得策じゃないわ。今家の業務を増やしたくないもの。」

 

家督を継いで、分家との仲も父が生きているからギクシャクしていないが、それでも反発は強い。しかも父の寿命はもうそんなに長いわけではない。父が事切れた時、分家がどのように動くかは分からない。

その準備も進めなければならないのにこれ以上業務を増やすのは下策と言える。

 

「雷電は例のアレを続行して。瑞葉、今日は甘い玉子焼きにしてちょうだい。楓、響は私に付いてきて。さ、今日も学校行きましょう。」

 

 

 

 

 

 

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「あれ?栞焼けた?」

 

学校着いて、直ぐにほのかに言われたのはその一言だった。

 

「あ、夏用のサンシェード使っちゃったかも…」

 

メラニンの生成が出来ない栞は、家に全自動サンシェード全身塗布装置を設けているのだが、そのサンシェードは色をある程度変えられる。やろうと思えばアバターも不可能ではない。

その中でもよく使う6種類は番号で色の設定を省略出来るようにしているのだが、その番号を間違えてしまったようだ。

 

「前から思ってたけど、栞ってアルビノなんだね。」

「うん。目は数ヶ月に一回ナノマシン入れてるから問題ないけど、肌は家にサンシェードの塗布装置があるから、それで夏用は少しだけ色つけてあるんだ。」

「「へぇ〜。」」

 

だからこそ、ホクロも出来ないし将来的にシミも出来ない。まあ紫外線を浴びればその分皮膚がんになりやすいんだが。

 

「でも、今のサンシェードはすごく性能いいから、塗ったらフィルムになるでしょ?だからみんなも塗った方がいいと思うんだけどね。フィルムだから1日落ちないし、使いやすいよ?」

「あはは…」

「私の家にはあるよ。」

「雫の家置いてあったっけ?」

「うん。私焼けるの嫌いだから、お父さんにお願いした。」

「…もしかして全自動?」

「うん。」

「羨ましい…」

「私の所もそうだよ?」

「え、この中で全自動装置ないの私だけ!?あれ!?置いてある家の方が少ないはずだけど!?」

 

全自動サンシェード全身塗布装置の一般普及率はなんと1.2%である。単価はもちろん、メンテナンスも補充剤もそこそこする。そこまでして置くくらいなら普通に塗るという人がほとんどだ。

 

「私は医療保険で出るから。」

「なるほどね。」

 

まあ出なくても買えるくらいの実家ではあるのだが。

 

 

 

 

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その日の夜、ほのかが雫の家に泊まるようで、それについて行って家まで見送った(透明化したまま)紗彩は急いで帰宅していた。

 

(司波深雪は九重八雲と繋がっていた!これは栞にお伝えしなければ…!)

 

赤毛のB組の少女を含めた3人はよりにもよって紗彩が張り付いたその日に、尾行なんてして撒かれて逆に窮地に陥っていた。

紗彩は最悪に備えて障壁魔法を展開する一歩手前でいたが、その前に深雪が援護に入ったのだった。

 

(それにしても…雫やほのかが伏せるほどのキャストジャミングをものともせず魔法を行使するとは…事象干渉力が高い?雫以上に?雫は百家の平均を上回る魔法力を有しているのに?…九重八雲との繋がりといい、兄の司波達也の異常な体術の強さと魔法技術といい、果てには生徒会室に霜が降りるほどだとか。司波家の本質はもしかしたら………)

 

 

 

 

 

紗彩の危機感を共有するのはもう1人だけいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ふう…いいわ。とりあえずプランAは終了。当面は経過観察かしら?)

 

電脳世界でとある工作をしていた雷電は、ようやく一仕事を終えてもとのサーバーに戻ろうとした。その時、不意に異質な通信形跡を見つけた。

 

(え?これって…国防陸軍の特殊部隊が一般回線に割り込んでる?内容はもう時間が経ちすぎてあらかた削除されてるけど……この割り込み先、栞の同級生だった子のそれよね?……司波家……断片的にサルベージできるかしら。………特尉、トーラス、101?ダメね。電脳世界だと検索は出来ないから一旦戻りましょう。それにしても………司波達也は軍の特殊部隊から通信を受けるような人物なの?)

 

 

 

 

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「―――うん、2人ともご苦労さま。言いたいことは分かった。」

 

達也がシルバーの特化型CADのシルバーホーンを使っていることを踏まえれば、トーラスというのはトーラス・シルバーのことだ。

 

FLTは軍にCADを卸しているメーカーのひとつで、特に有名なのはトーラス・シルバーのループ・キャストだ。

 

「明らかに司波家はおかしいことは分かったよ。資料を見る限り、父親である司波龍郎はFLTの株主。恐らく椎原辰郎は彼の偽名だよね。……若しかすると、あの魔法技術はトーラス・シルバー本人だからかもね。そうなれば軍との繋がりも分からなくない。特に101旅団だっけ?あそこは魔法の専門部隊でしょ?」

[そうよ。さっき調べたもの。]

[ですが、それは九重八雲との繋がりは見えてきません。]

「…もしかしたらその旅団に大天狗がいるのかも。風間玄信と言えば九重八雲門下の筆頭でしょ?彼がそこにいれば、それを介して九重八雲との親交もあるのかもしれない。」

[…情報が足りませんね。]

[あ、今見つけたんだけど、司波家と四葉が秘匿通信してる記録があるわ。]

[………なるほど、四葉なら納得できますね。]

「つまり、司波兄妹は四葉関係者。それなら九重八雲との接点も軍とのコネクションも、FLT(フォア・リーブス・テクノロジー)も、深雪の()()()()()()()()も、一直線に並んだね。」

 

 

四葉家(アンタッチャブル)と国防軍、そして九重八雲。

 

栞と2人の妖精は司波家の秘密の大半を暴いたのだった。


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