魔法科高校の妖精遣いだよ……え?そんなにチートかな?   作:風早 海月

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少女の叫び

栞はその光景を見て柄じゃないほどに焦っていた。

 

(ブランシュがハイパワーライフルとか聞いてないけどぉ!?雷火のアホォ!)

 

ブランシュの調査を命じてあった雷火曰く、[栞の力なら楽勝な相手だぜ。ろくな装備もねぇ。]だそうで、防御や隠遁が得意な紗彩を雫に、戦闘力の高い雷火をほのかに回していたので、手元にいる手札は殺傷力の低い楓とドジっ娘瑞葉だけだ。雷電は電脳世界でブランシュ全体の指揮系統の破壊に勤しんでいる。

 

栞の魔法力は雫以上深雪以下。

その魔法力の一部を楓に分け与えて背中を任せているのでハイパワーライフルなんぞ受けたら一溜りもない。

 

(くっ…中華街の若作りが!余計なことしてくれる!)

 

周公瑾がここで手を出すとは思わず、栞は思わず内心口調がみだれるが、そんなでもハイパワーライフルによる射撃は止まってはくれない。

 

ハイパワーライフルの特性上連射性と機関部の脆弱性はどの国でも対魔法師戦力として危惧されるものの一つだ。

だが、それも一度に4丁のそれが構えられたらそんな悠長なこと言ってられない。

 

(障壁魔法だと破られる!ならば!)

 

加速系魔法とは、ベクトルを操る魔法である。とされているが、それは間違いだ。どちらかと言えば『ベクトルを加える』魔法だ。ベクトルを加えることによって合成ベクトルが結果変わるという訳だ。つまり――――

 

「はね返せなくても、軌道を反らす位は出来るのよね。」

 

とはいえ、情報強化でもされてたら無理なんだが。

 

(あ、魔法師にハイパワーライフル持たせたら強そうね。)

 

 

 

栞の思考(妄想)がサディスティックなのはともかく、防戦一方なのは否めない。

 

〔瑞葉!やらかしてもいいから1発デカいの!〕

[は、はい!頑張ります!]

 

瑞葉は栞の肩から地面に移動すると、地面に小さな掌を向け力を込める。

 

[え?ええ!?わ、わわわわ!]

 

瑞葉は地下水脈から水を呼び寄せた。

だが、それは間欠泉並の量と熱を有するものだった。

 

「熱っ!?瑞葉!いいから撃て!」

[は、はい!ごめんなさぁい!]

 

熱々の温泉(約100°C)を浴びたブランシュメンバーは栞を撃つ所ではなくなる。

 

「今が好機なり!楓、瑞葉、ヅラかるよ!」

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

 

「くっ!」

「雫!」

 

こちらもハイパワーライフルに手間取っていた。

 

[オラオラオラァ!雷火様のお通りだ!]

[バカですか!?マルタイをほっておいて敵に突撃する馬鹿はいません!]

[くそぉ!弾持ってくれば良かった!]

[ここで戦略級魔法使う気ですか!?]

[ああん?力なんて使ったもん勝ちよ!おらぁ!]

[いやだから、突っ込むなつってんやろ?]

 

紗彩はキレるといつもの丁寧口調からエセ関西弁になります。しかも中途半端なエセ関西弁です。

 

[自分、ここで1回正座しろや。]

[嫌だね。オレはオレの道をゆく。ごーいんぐまいうぇい。]

 

大して発音の良くない英語が煽っているようにしか聞こえないが、雷火の守備する方角の敵はどんどん減っていく。

そんな中、図書館棟屋上からキラリとした光を感じた雫はほのかを自分の体ごと押し倒す。

 

―パン………パン!

 

「そ、狙撃!?」

「ハイパワーライフルの狙撃型だね。口径が伸びてる分初速も速い。でも、連発出来ない。」

 

狙撃型ハイパワーライフルのほとんどはボルトアクション方式である。これは機関部の脆弱性を連射性の更なる低下を許容しても改良したい所であった。

 

「ほのか、光学術式、レーザーならここからでも!」

「うん!」

 

部活用の遠距離支援CADでこちらも狙う。

周りは栞の妖精さんを信頼して任せている。

 

雫の手持ちでは殺傷力が高すぎるが、レーザーならいい具合に調整可能だ。

 

「雫、観測お願い!」

「うん。」

「発射!」

 

ほのかが発動したレーザー魔法は銃口の先にある魔法式座標から一直線に狙撃手へ向かう。ほのかのCADのスコープはレーザーの光で見えづらいため、雫は自分のCADのスコープをのぞき込む。

レーザーは光なのである程度距離があると曲がってしまう。それを計算に入れて指示を出す。

 

「近弾。左、1ミル。上、0.3ミル。」

「了解!」

 

2発目を撃つ。

 

「命中!狙撃銃機関部に命中!敵狙撃手を無効化!」

「やった!」

 

 

 

果たして、ほのかの魔法が凄いのか、雫の観測感覚が凄いのか。

 

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

一高の中のテロリストを一掃した所で、部活棟前に集まっていた生徒達の中には雫、ほのか、栞の3人の姿もあった。

 

だが、栞は明らかに様子がおかしかった。

 

[いやぁぁぁ!]

[瑞葉、やかましい!雷火んとこ行っとけや!]

 

紗彩は必死に止血するが、元より回復系は苦手。妖精の中で回復に秀でているのは響だが、彼女は別任務で近くにはいない。

 

紗彩に余裕がなくなるのも当たり前だ。

 

「はぁはぁ…紗彩、私は大丈夫だから。銃弾も貫通銃創だから。」

[何言ってるん!?太ももの血管撃ち抜かれよってからに!]

 

栞は離脱する時にほのかたちを撃った狙撃手に狙われていた。

ちなみに瑞葉も回復系は素養があるが、取り乱していてそれどころではない。

 

『はい保健室。』

『あ、安宿先生ですか?』

『ごめんなさい、会長の七草よ。』

『1-Aの北山です。部活棟前に重傷者1名。大腿部貫通銃創。動脈損傷、出血多量。意識レベルは1。名前は御巫栞。同じく1-Aです。身体の大きさに対して出血量が多く意識レベルが上がる可能性があります。彼女付きの妖精が回復系術式で治癒を試みていますが芳しくありません。』

『直ぐに緊急搬送車両を用意するわ!安宿先生もそちらに向かってもらうわ!』

 

 

 

〔紗彩、雷電に伝えて。もし私が意識を取り戻さなくてもプランAはフェイズ2へ移行してって。お願い………ね。〕

 

 

 

それを最後に栞は目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

「安宿先生!通報時から容態急変!意識レベル300!」

「間に合わないわ!ここで止血縫合します!」

「栞ぃぃぃ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 




次回、入学編完結。

8/11、10:00頃までに投票で多かった方が次話で結ばれ(?)ます。

さあ、叫んだのは誰でしょう?

  • ほのか

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