M14EBR-RIの日誌   作:MGFFM

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M200の一人称が「ボク」だったのに驚いた今日この頃。お待たせしました。第16話です。

皆さん台風は大丈夫でしたか?こちらは風が少し酷かっただけで特に被害はありませんでした。



第16話 市街地での撤退戦

ミサイルの攻撃を受け、コントロールを失ったマーリン ヘリは目標の工場から西南に約4キロ離れた市街地に墜落した。ネルソン達は墜落時の衝撃で体のあちこちをぶつけたくらいで大きな怪我などは無かった。しかし副操縦士は大量出血により死んでしまった。機長の方も右足を骨折してしまっている。

 

更にマーリンの墜落地点にエイレーネーの兵士達が集まり、ネルソン達を攻撃し始めた。これによりネルソン達は身動きが取れなくなり、ヘリの残骸を盾にしながらの防衛戦になっていた。

 

「いや〜敵さん練度が高いね。そこら辺のごろつきとは違うよ」

 

アリーナがリロードしながら言った。敵の隠れているところをグレネードランチャーで吹っ飛ばしたエレナが機体に隠れながらアリーナに言った。

 

「敵を褒めてる暇があったら撃ってよ!」

 

「へいへい」

 

アリーナは立ち上がり機体から上半身を出して敵に発砲。こちらを撃っていた敵の上半身に命中し、敵は倒れた。しかし他の兵士達がお返しとばかりにアリーナに向かって集中砲火する。すぐさまアリーナは身を屈めて機体に隠れたため被弾はしなかった。アリーナはマーリンのコックピット側からMG3を敵に乱射しているサイモンに叫んだ。

 

「サイモン!援護!」

 

サイモンは伏せて身を機体に隠したサイモンがアリーナに言った。

 

「悪いがこっちも忙しい!他を当たってくれ!」

 

マーリンのコックピットのガラスを貫通した弾がサイモンの近くに着弾する。サイモン「クソッ!」と言ってから再び撃ち始めた。

 

「任せろ」

 

バラライカがKord重機関銃をアリーナに向けて銃撃している兵士達に向け、そしてフルオートで撃った。体に12.7ミリが直撃した兵士は上半身と下半身が分離して絶命した。他の兵士達も直撃弾を食らいミンチと化す。

 

「全員弾の消費は最小限に抑えろ!セミオートで撃て!」

 

ネルソンはこちらを撃って来る敵をセミオートで的確に撃ち殺して行く。ネルソンの使うM27 IARはマークスマンライフルとしても使われる程命中精度が良く、ネルソンの射撃の腕と合わさり百発百中だ。

 

「俺もか?」

 

長時間撃ち過ぎたため、加熱してしまったMG3の銃身を新しい物に交換していたサイモンがネルソンに聞いた。

 

「お前は撃ちまくれ!頭を上げさせるな!」

 

「了解っ!」

 

前方の道路にはハンヴィーが2台止まっており、そのハンヴィーや建物を盾にしながらこちらを攻撃してきている。更にハンヴィーの上にはM240が搭載されており、ネルソン達の隠れているマーリンを撃ちまくっている。

 

「サイモンの言う通りロケット弾を持ってくれば良かったかもな」

 

敵に発砲してすぐさま隠れたハオレンがネルソンに言った。空になったマガジンを抜き、新しいマガジンを入れながらネルソンが答えた。

 

「確かに。LAWがあればアレも吹っ飛ばせたのにな。機長の方は大丈夫か?」

 

ネルソンは隣に居るマーリンの機長を見て言った。機長は墜落時の衝撃で右足が骨折しており、歩くどころか立つことも出来ない状況だった。しかし機長のコックピットに備え付けてあったMP5Kを手に取り接近して来る敵兵に向けて撃ちまくっていた。

 

「あぁ薬のお陰で痛みも引いて来た。今なら走れそうだよ」

 

「痛みは無くなっても骨は折れたまんまなんだから安静にお願いしますよ?」

 

「分かってるよ」

 

そう言ってまた機長はリロードを終えたMP5Kを敵の方に向けて乱射した。

 

Type89で敵兵2人を撃ち殺したユウヤが更にセミオートで撃ちながら愚痴をこぼした。

 

「あークソッ!多過ぎるんだよ!ゲームに登場する雑魚キャラじゃないんだからさぁ!」

 

「危ない!」

 

隣にいたハルカがユウヤの頭を抑えて強引に伏せさせた。直後別方向から弾丸が飛んで来て真上を通過して行った。ハルカはすぐさまM16A4を構えて撃って来た敵を撃ち殺した。敵が倒れたのを確認したハルカはユウヤの方を見た。

 

「大丈夫⁉︎お兄ちゃん!」

 

「サンキューハルカ!助かった!」

 

ユウヤはハルカにそう言ってからまた撃ち始めた。ユウヤは建物陰からこちらを狙っていた敵を見つけて、そいつめがけて撃ったが横の壁に弾は当たり、敵は隠れてしまった。そして別方向か別の敵が現れユウヤを撃とうとしたがハルカが撃ち殺しそれを阻止した。ユウヤの方も敵が建物の陰から顔を出した瞬間頭を撃ち抜いた。

 

「しゃーッ!見たかこの野郎!」

 

突然、ハンヴィーの上に搭載されているM240を操作していた兵士が何者かに撃たれて車内に落ちて行った。もう一台のハンヴィーの方もM240を使って乱射していた兵士が胸に弾を食らい倒れた。続いてハンヴィーの後ろに隠れていた兵士達が次々と撃たれ、倒れて行く。突然の攻撃にエイレーネーの兵士達は驚き、兵士の1人が叫んだ。

 

「スナイパーだ!スナイパーが居るぞ!」

 


 

フーハハハハハハハ!恐れ慄け!ひれ伏せ!どうだ驚いたか!約150

メートル先からの狙撃だ!誰も仲間が撃たれるまで気づかなかっただろう⁉︎

 

僕は聞こえて来る銃声を頼りに走って来たんだが、運良く敵の裏を取れた。今は建物の4階の窓から敵を狙撃している。敵さん、まだ僕の居る方向が分かっていないらしく弾の飛んで来た方向に向かって適当に撃ちまくっている。僕はその撃ちまくっている兵士の1人に照準を合わせてトリガーを引く。弾は見事敵の胴体に当たり撃たれた兵士はその場に倒れた。今僕が使っているサイトはACOG光学サイトで、そこまで倍率の高いものではないので精密な射撃は出来ない。しかし人形と違って人間は腹に1発7.62ミリ弾を食らえば瀕死だ。つまり当たりぁ良い。

 

景気良くバンバン撃ちまくる。当てた数より外した数の方が多いが気にしない。取り敢えず混乱してくれればそれで良い。敵が混乱している内にネルソン達が反撃を開始した。ネルソン達の方を攻撃しようとする奴らは僕が撃ち殺して行く。

 

チューンッ!と弾が横を掠めて行った。僕は慌てて伏せて壁に身を隠した。やばっこれは調子に乗り過ぎたな。場所がバレてしまったようだ。

 

この距離だと奴らの持っているSCAR-Lの5.56ミリ弾も余裕で届くので僕の居た窓に向かって兵士達が撃ちまくって来る。部屋の壁に無数の穴が開いて行く。僕は匍匐前進で隣の窓に移動してそこからM14EBRを構えた。こちらにM240を向けている奴がいたからそいつを撃ち殺してやった。そして近くにいた兵士も倒した。更に撃とうとしたが兵士達も僕が隣の窓に移動したことに気づき撃って来た。

 

ドゴォン!と壁際で何かが爆発した。クソッ!!ロケット弾か⁉︎いや、LAWみたいなロケット弾だったら壁が崩れている筈だ。となるとグレランか?

 

次は室内で爆発が起きた。運良く爆発地点から離れた所に居た僕は怪我も何もしなかった。

 

《こちらジュピター(ネルソン)、助かった。こちらは撤退完了だ。そっちも撤退してくれ》

 

ネルソンからの通信。どうやら良い感じに僕が囮になり撤退することが出来たようだ。

 

《了解!》

 

さて、ここからが問題だ。自分がどうやって逃げるか考えていなかった。ネルソン達を逃してしまった敵さんは狙いを完全に僕に定めたようで、銃撃がより激しくなって来た。僕は部屋の中を匍匐前進で進んで行って部屋を出ると階段を全力で走って降りて行く。そして建物の裏口から外に出ると敵に見つからないようにしながら走って逃げて行く。

 

後ろからまた爆発音が聞こえて来た。あのまま部屋に篭っていたらやばかったな。取り敢えず敵がこっちに来る前に逃げないと。

 


 

エマの援護のお陰で撤退することが出来たネルソン達は道路に沿って逃げていたのだが、右足を骨折している機長を運びながらなので移動速度が遅く、敵に追い付かれそうになっていた。

 

「俺を置いて行け!このままじゃぁ追い付かれてしまう!」

 

バラライカにおんぶされている機長が言った。

 

「何映画の主人公みたいなこと言ってるんだ。置いて行く訳ないだろう」

 

と機長に対してバラライカは言った。敵がネルソン達を狙って撃って来て、近くの地面や車に弾が着弾する音が響く。ネルソンは突然立ち止まるとM27 IARを構えて撃って来た敵を撃ち殺した。他にもこちらを狙っていた敵にも撃って行く。

 

「総員、反撃しつつ後退!サイモンはそこの車から制圧射撃!敵を寄せ付けるな!」

 

「「「了解!」」」

 

サイモンは横に斜めに停めてあったセダンのボンネットの上にMG3を立てて撃ち始めた。強烈な7.62×51ミリNATO弾の弾幕に敵は追撃をやめて近くの車に隠れた。バラライカ以外の人達はセミオートで撃ちつつ隙を見て後ろに後退して行く。オットーは車の下などにセムテックス爆薬を仕掛けてから後退して行く。

 

「サイモン!来い!」

 

全員がある程度後退し終えたのを確認したネルソンはMG3を撃ち続けていたサイモンに叫んだ。サイモンは撃つのをやめてると銃身が赤くなりつつあるMG3を持ってネルソンの方を見た。

 

「来い!」

 

ネルソンはにセミオートで敵の方に撃ちまくりながら言った。ネルソンが援護射撃している間にサイモンは皆んなの元へ走って行き車に隠れた。

 

「いいぞ!」

 

そう言ってサイモンはMG3を乱射する。その間にネルソンがサイモンの後ろまで後退する。この繰り返しだ。他の人達もお互いを援護し合いながらジリジリと後ろに後退して行く。仕掛けておいた爆弾の近くに敵が来たのを確認したオットーは起爆装置を2回握った。車の下に仕掛けてあった少し多めのセムテックス爆薬が爆発し、近くに来た敵兵6人が爆発に巻き込まれて吹き飛んだ。

 

「こっちだ!」

 

爆発で発生した爆煙により一時的に視界が悪くなったのを利用し、ネルソン達は交差点を右折した後に建物内に入ってから路地に行った。そして狭い路地を走り抜けてまた道路に出ようとしたのだが、ネルソン達の目の前にハンヴィーがやって来た。急停車しまハンヴィーのキャビン上のターレットリンクに搭載されているM240がネルソン達の方に向けられる。

 

「チッ!」

 

ネルソンはM27 IARを構えてハンヴィーの銃座に座る射手を撃ち殺そうとしたが、ターレットリンクは装甲板で覆われており射手を撃ち抜くことは出来なかった。お返しとばかりにM240が火を吹いた。

 

ネルソン達はハンヴィーに牽制射撃しながら隣の建物に転がり込んだ。その後を敵の歩兵部隊が追う。アンナがAK-102を構えて発砲し、ネルソン達の後を追って建物に入ろうとして来た敵兵を撃ち殺した。アンナが愛用していたAK-108は前回の戦いで完全に壊れてしまだったので今は予備として持っていたAK-102を持って来ていた。アンナは最後にM67破片手榴弾をドアの方に投げ込んでその場を後にした。

 


 

今日学んだこと、脱出は計画的にしなければ痛い目に合う。ネルソン達と合流出来ないまま僕は敵から逃げていた。今は道路の隅に停めてあった車に寄りかかって座っている。日記の続きでも書こうかと思っていると遠くから車のエンジン音が聞こえて来た。チラッと見てみると向こう側からハンヴィーが一台こっちに来ている。

 

このまま車に隠れてやり過ごすか。と、考えていたのだがふと悪魔のささやきが聞こえてしまった。

 

 

あの車を奪えば良いんじゃね?

 

 

いやいやいやいやいや、相手はハンヴィーだぞ?しかも上にはM240・・・いやあれはミニミか。まぁどちらにせよ軽機関銃を載っけている。いくら人間より丈夫なこの身体でも5.56ミリのシャワーを浴びたら死ぬ。しかしミニミの射手はこちらに気づいている様子はなく、今は左側を見ている。今ならいけるかもしれない。

 

「(・・・・・これが成功したらかっこいいな)」

 

僕は苦笑いをするとM14EBRを構えた。ACOGサイトを覗き込みハンヴィーの上の銃座に座っている敵に照準を定める。綺麗に頭に当てれる自信は無いので上半身を狙うことにする。ターレットリングに装甲板が付いているタイプじゃなくて良かったよ。僕は息を吐くとトリガーを引いた。撃ち出された7.62ミリ弾は射手の胸元に命中し、撃たれた敵は苦しそうな表情をしながら車内に落ちて行った。続けて運転手を狙う。通常型のハンヴィーのフロントガラスは普通のガラスで防弾にはなっていなかった筈!運転席に向かってバン!バン!バン!っと3発撃った。弾はフロントガラスを貫通し、運転手に3発とも当たった。運転手を失ったハンヴィーは左にカーブして店に突っ込んで停止した。ハンヴィーから降りて来た敵兵を撃ち殺して行く。僕の存在に気づいた2人が反対側のドアから降りてハンヴィーを盾にしながら反撃して来た。僕は慌てて車に隠れる。敵が銃撃をやめた瞬間またM14EBRを構えて大まかな狙いをつけて乱れ撃ち。弾は当たらず敵はハンヴィーに隠れてしまった。もう1人がどさくさに紛れて銃座に座ろうとしていたので撃ち殺してやった。

 

さて後1人だな。などと考えながらサイトを覗いていると敵と目が合った。ん〜〜?あれってもしかして戦術人形のL85A1じゃね?いつものカラフルで派手な服装じゃなくてデジタル迷彩服を着ていたから分からなかった。

 

L85はフルオートで撃って来る。良いよなぁ5.56ミリ弾はフルオートでも安定して撃てて。僕の使うM14EBRなんてフルオートで撃ったら7.62×51ミリNATO弾の反動がやばいから照準がブレるブレる。だからセミオートで撃ってる訳なんだけどね。いや・・・・でも確かL85は重心が後ろに寄り過ぎていてフルオート射撃時の安定性は悪いとか聞いたことあるぞ。ならばセミオートで撃った時の命中精度が高いこちらの銃の方が有利なのでは?

 

L85は弾切れを起こしたようで銃撃が止んだ。その隙に僕はM14EBRを構えたが、体を隠さずリロードをしている程相手も馬鹿では無い。これは撃っては隠れての泥仕合いになりそうだな・・・・。それにぶっちゃけると僕はL85を殺したく無いなと思っている。さっきのSPAS-12やガバメントみたいに殺さず、同じI.O.P社製の人形同士仲良く出来ないだろうか?いやしかしこちらから攻撃を仕掛けたのに仲良くしましょうって言うのは色々とおかしいだろう。

 

そんなことを考えているとリロードを終えたL85が撃って来た。僕は車に隠れた。チッ、撃つタイミングを逃してしまった。やはり人形同士だから仲良くなんて出来る訳ないな。人間同士だった殺し合いをしてるんだ。人形同士仲良くできる訳ないか。うん。

 

「往生際が悪いですよ〜!さっさと死んじゃってくださーい!」

 

と言いながらL85は撃って来た。

 

《うるさいへっぽこ欠陥銃!》

 

と僕は言い返しながら撃ち返す。L85は直ぐにハンヴィーに隠れてしまい弾は当たらなかった。

 

「欠陥銃は貴方も同じでしょう!」

 

L85がフルオートで撃って来た。僕が隠れている車はもうボロボロだ。

 

《あれは環境が悪かっただけでM14は普通に名銃だわ!》

 

M14EBRを乱射するがアイツ隠れるのが早くて弾が当たらん。弾切れになってしまったので車に隠れてリロードする。

 

「私だってイギリス陸・海・空軍の主力小銃として使われ続けている名銃です!」

 

L85は僕がリロードをし終えて車から体を出す瞬間を狙っていたようだったから僕は車からM14EBRだけを出してL85の居る方向に適当に撃った。銃撃にL85が怯んだ隙に僕は車から上半身を出してちゃんと構えて撃った。

 

《ハッ!100発に1回は動作不良を起こす欠陥銃を渡された兵士が可哀想だよ!》

 

「何を〜⁉︎」

 

L85が怒ってこちらに1マガジン分乱射して来た。

 

《ははっ、図星で言い返せないのかな?給弾不良、排莢不良しまくりの欠陥銃さんよぉ‼︎と言うか見た目からダサいんだよアンタは!》

 

「黙って聞いてればペラペラと・・・・殺してやるッ!」

 

完全にキレたらしいL85はフルオートで乱射して来る。僕もすかさず反撃する。車に隠れて銃撃を凌いでいると突然L85からの銃撃が止んだ。ゆっくりと車から顔を出すと、ハンヴィーがバックし始めていた。運転席にはL85が乗っている。彼女はハンヴィーを僕の方に向けるとアクセル全開でこちらに突っ込んで来た!運転席を狙って撃つがL85は伏せているようで当たらない。エンジンを撃ちまくるが映画みたいにド派手に爆発してくれる訳も無く、ハンヴィーを止めることは出来ないと判断した僕はハンヴィーが僕に突っ込む直前に何とか回避した。盾にしていた車を吹き飛ばしながら僕の真横をハンヴィーが通り過ぎて行く。ハンヴィーは急停止すると運転席からL85が降りて来るとL85A1を構えて突撃して来た。よく見ると彼女の持っているL85A1の銃身に銃剣が付けられているじゃないか。まさかアイツ銃剣突撃をするつもりか⁉︎

 

「死にさらせぇぇぇ‼︎」

 

彼女は叫びながら突っ込んで来る。僕は咄嗟にM14EBRのトリガーを何度も引いた。彼女の銃剣は惜しくも僕には届かなかった。いや、かなりギリギリだった。僕と彼女の距離は1メートルも無い。あと少し僕が撃つのが遅かったら僕は刺されていたな。

 

僕の放った弾は彼女の右足を吹き飛ばし、腹に多数の風穴を開けていた。アスファルトの地面に血溜まりが出来て行く。

 

僕はL85に銃口を向けた。死んでしまう前に情報を引き出してみるか。

 

《お前らは何をするつもりなんだ?チャリオットとは何だ?》

 

虫の息のL85は僕の方は見らず空を見ながら言った。

 

「平和の創造・・・・それが・・・指揮官のやろうとしていること。チャリオットは・・・平和の創造を・・・行う為の、キーアイテム・・・」

 

平和の創造ねぇ・・・SPAS-12も似たようなこと言ってたっけな。人類殲滅だの何だのとも言ってた。

 

《お前達がやっているのは平和とは程遠いただのテロ行為だ》

 

L85は僕の方を見て擬似血液を吐きながら笑った。

 

「ふふ、ふふふふ。あなた、達には分からないでしょうねぇ・・・・。ゲホッ!ゲホゲホッ!・・・ふ、ふふふ・・ゲホッガホッ・・・ふふふふ・・・・」

 

血まみれになりながらもとても楽しそうに笑う彼女を見て僕は恐怖を覚えた。

 

「全て・・は・・・深愛なる、指揮・・・・官・・・・の・・・・・為に・・・・・・」

 

L85は弱々しく右手を上げるとピースサインを作った。

 

Pea(ピー)........ce()...............」

 

そう微笑みながら言ってL85は死んでしまった。彼女の死に顔はとても安らかなものだった。エイレーネーのやろうとしている事がイマイチ分からない。平和の創造?人類の殲滅?何故そんな狂ったことをしようとしているのかが分からない。

 

まぁ兎に角、ネルソン達と合流しないとだな。

 


 

エイレーネーの兵士達を何とか撒いたネルソン達は建物の中に隠れて休憩していた。市街地を思い装備を抱えたまま走り回っていたので流石のネルソン達も息が上がっていた。

 

「ブラックホーク・ダウンって言う映画の状況に似てる気がするよ」

 

ソファーに座って水を飲んだサイモンが言った。それにハオレンがツッコんだ。

 

「ヘリコプターが落とされた事以外は状況は全く違うだろう。それに今そんな話をするな。縁起でもない」

 

「よし、HQとの連絡が取れた。救助用のヘリが来てくれるぞ」

 

長距離用無線機と睨み合いっこをしていたネルソンが皆に言った。右足を骨折している機長を守りながらこのまま作戦行動をするのは無理なのでネルソンは本部に救助ヘリを要請していた。

 

「で、何処に来るんだ?」

 

サイモンの質問にネルソンはポケットから地図を広げて机の上に置いた。

 

「えぇ〜〜っと、ここだな」

 

ネルソンは今いる場所から遠く離れた所にペンで丸を描いた。それを見たサイモンは顔をしかめた。

 

「おいおい、この距離を歩いて行くのはちとキツイぞ」

 

「そこら辺にある車を掻っ払うか?」

 

ユウヤがサイモンに提案したが、それにハオレンがダメ出しをした。

 

「昔の旧車なら直結させたりしたキー無しでもエンジンを始動させることが出来たんだが、最近の車はそれが出来なくなってる」

 

「じゃぁやっぱり歩くしかないか」

 

サイモンが座っていたソファーから怠そうに立ち上がりながら言った。

 

「ヘリが来るのは何時なんだ?」

 

床に置いていたKord重機関銃を持ち上げたバラライカがネルソンに聞いた。

 

0430(マルヨンサンマル)

 

全員が自分の腕時計を見て時間を確認した。市街地を逃げ回っていたお陰でかなりの時間を要してしまい、現在の時間は3時13分だ。作戦開始時刻から既に約一時間も経過している。

 

「後15分でここまで行くのは無理だ。もうちょっと近い場所にLZを設定出来ないのか?」

 

「またミサイルにヘリが撃ち落とされて良いのなら。近くに変更することも出来るが?」

 

「近かろうが遠かろうがミサイルは飛んでくるんだから同じだろ」

 

「いや、ここならミサイルは飛んで来ない」

 

木製の椅子に座っていた機長が言うと、地図を指差しながら説明を始めた。

 

「恐らくアイツらが使っているのはスティンガーみたいな携帯型のSAMだ。となると射程距離は長くても10キロ。ミサイルは目的地だった工場から飛んで来たら工事から直線距離で11キロのここミサイルの射程外だ」

 

「何で携帯式のヤツだって分かるんだよ」

 

「もし中射程のSAMを奴らが持ってたら俺たちはもっと手前で撃ち落とされていた筈だ」

 

「成る程ね。じゃ〜時間も無いことだしさっさと行きますか」

 

「ちょっと待って、エマはどうするの?」

 

支度を始めるサイモンをエレナが止めた。

 

「そう言えばアイツ来るの遅いな」

 

「エマから連絡は?」

 

「15分前に敵を撒いたからこっちに合流するって言う連絡が最後」

 

「エマに連絡して現在地を確認してくれ」

 

「了解」

 


 

今僕は敵から奪ったハンヴィーを運転しているのだが、マニュアル車の運転なんて初めてだ。やり方自体は知っているんだけど実際に動かすのは今回が初だ。なので僕は慣れない手つきでギアを操作し、ノンストップで市街地を走っていた。て言うかクラッチ操作難しくない⁉︎ハンヴィーを発進させるのにもかなり手こずってしまったんだけど。

 

▶︎戦術人形人形XM8からの通信を受信。

 

慣れないマニュアル車の運転に手こずってきるとエレナから無線が来た。

 

《はい、こちらコメット(エマ)

 

《今何処にいるの?》

 

《先程教えてもらった集合地点に向かっています。もう少しで到着しますよ》

 

《なるべく早く来て。救助のヘリが来るLZまで行かなきゃだから》

 

お、それは丁度良い。この奪ったハンヴィーが役に立ちそうだな。

 

《了解しました。全速力で向かいます!》

 

エレナとか僕が敵のハンヴィーに乗ってきたら驚くだろな〜。反応が楽しみだ。

 

 

 

時々建物の壁とかにぶつかりながらハンヴィーを走らせているとネルソン達が居ると思われる小さな1階建ての建物が見えてきた。僕は速度を落としながらギアを下げ、建物の目の前でブレーキを踏んで停車させたが、ブレーキ時にクラッチの操作をミスってしまいエンストさせてしまった。まぁ、ハンヴィーを止めることは出来たし結果オーライと言うことで。

 

エンジン音を聞きつけたネルソン達が窓から僕が運転席にいるのを見て驚いている。良いねぇ、その反応。それを待っていたんだよ。あ、建物からエレナが出て来た。

 

「ちょ、それ何処で手に入れたの⁉︎」

 

運転席から降りた僕にエレナは詰め寄る。僕は笑顔で答える。

 

《敵から奪って来ました!》

 

「ナイスだエマ!これでLZまでひとっ走りだ!」

 

サイモンが笑顔で僕の頭をワシャワシャと乱暴に撫でて来た。

 

「良くやったエマ。これで時間内にLZまで行ける。バラライカ!運転頼む。アリーナ、エレナ、ハオレン、サイモン。護衛頼む。残りはここで待機だ」

 

「「《了解》」」

 

ネルソンの指示で皆んなが一斉に動き出した。僕は呼ばれなかったからここで待機だな。

 

「じゃ、また後で」

 

そう言ってエレナは片手を上げた。僕も上げ返す。

 

《また後で》

 

エレナはハンヴィーの後部座席に座ってドアを閉めた。サイモンはハンヴィーの銃座に座り装備してあったM240の残弾などを確認している。あ、バラライカにエンストさせちゃった事言わないと。

 

《バラライカさん!実は止める時に「エンストさせたんだろう?分かっているよ」あ、はい。そうです。すいません》

 

バラライカは何事も無かったかのようにエンジンを再スタートさせた。

 

「それじゃぁ行って来る」

 

バラライカはそう言うとハンヴィーを一度バックさせてから目的地へと向かった。無事にLZまで行けることを祈るばかりだ。




どうだったでしょうか?そしてL85A1好きの指揮官方、誠に申し訳ございません。

次回はいよいよ目的地である工場に突入する予定です!お楽しみに!

ご感想お待ちしております!

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