名残の花、桜人の唄   作:森熊ノ助

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読者の皆様、ごきげんよう。

まず最初に、かなり長い間。

この物語を投稿しなかったことをお詫びします。

実は、私が書いているもう一つの物語があるのですが、そちらに集中していて中々この物語を更新することが出来ませんでした。

今回は、そのもう一つの物語が、少し行き詰まってしまったので、一度自分の頭をクリアにする為。

この物語を久しぶりに更新することにしました。

長らくお待たせして、本当に申し訳ありませんでした。

それでは、物語をどうぞ。


憎悪

本当に大切なものは、失ってから気づくものだ。

 

後悔と一緒に.....。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6月2日 AM8:00 【橘side】

 

「さあて、昨日は祿乃ちゃんに勉強教えて貰ったし、今日も頑張るぞー」

 

なんの変哲もない普通の朝、今日もそうなる()()()()()()

 

 

 

 

「あれ?、祿乃ちゃんがいない」

 

その日、いつもならいる筈の道に、彼女はいなかった。

 

「おかしいな~?、もう学校に行っちゃったのかな」

 

本当に珍しいことだった。

 

彼女は僕と出会ってから、一度もこの場所での待ち合わせをすっぽかしたことがなかったからだ。

 

「まあ良いや、取り敢えず学校に行ってみよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 AM8:25 学校

 

「ねえ、ちょっと聞きたいことがあるんだけどさ」

 

「おっ、橘じゃんか、どうした?」

 

「祿乃ちゃんってまだ来てない?、朝いつもの待ち合わせ場所に行ったらいなかったんだよ」

 

「.....何の話だ?」

 

「いや、だから祿乃ちゃん...」

 

「それは誰だ?、そんなやつこの学校にはいないぞ」

 

「えっ?」

 

「お前大丈夫か?、今日なんか変だぞ」

 

「何でもないよ、ただちょっと頭が混乱してるだけさ」

 

「いや、結構ヤバそうだぜ、顔色も悪いしよ、先生には俺から言っておくから今日はもう.....」

 

「大丈夫だって言ってんだろ!、俺に構うな!」

 

「おわっ、本当にどうしちまったんだよ、お前らしくもない」

 

「...悪い、やっぱお前の言うとおり一旦帰るわ」

 

「おう、お大事に」

 

「.....」

 

 

 

 

どういうことだ?、皆は祿乃ちゃんのことを忘れているのか?、昨日まであんなに一緒にいた筈なのに、いきなり全員の記憶から消えるなんてあり得るか?。

 

 

 

 

「取り敢えず、彼女の家に行ってみよう、何かわかるかもしれない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 AM8:54 【朽花邸】

 

「祿乃ちゃん!、いるなら返事をしてくれ!」

 

彼女の家からは、人の気配が全くせず。

 

それどころか、彼女の音すら聞こえなかった。

 

何故?、彼女が僕に何も言わず居なくなるはずがない!、まさか...彼女に何かあったのか?。

 

「ん?、これは...」

 

それは、確かに彼女の字で書かれた手紙だった。

 


 

橘さんへ

 

黙って居なくなってごめんなさい。

 

これを貴方が読んでいるなら、私はもうこの街にいないということです。

 

急なことですが、、私はこの街を離れなくてはいけなくなりました。

 

昨晩、貴方が帰る直前に...ある未来を見ました。

 

それは、昼間に出会ったあの女性が、今度は仲間を引き連れてやってくるというものでした。

 

きっとそれは、現実のものになる。

 

そうなれば、私と最も近しい仲である貴方にも迷惑がかかってしまいます。

 

なので、私はこの街を去ることにしました。

 

貴方は、皆さんが急に私のことを忘れて困惑してしまうかもしれませんが、それもまた必要なことなのです。

 

私のことを覚えている者がいれば、必ず貴方にもたどり着く。

 

そうなれば、きっと貴方にも危害が及ぶ。

 

私はそれだけは避けたいのです。

 

その為に、街の人間全てから私に関する記憶を消しました。

 

でも、きっと貴方は私のことを覚えているのでしょう。

 

だから、この手紙を残します。

どうか、私のことは忘れて幸せになってください。

 

私は、いつでも貴方が幸せになってくれることを願っています。

 

さようなら、橘さん。

 

祿乃より

 


 

「祿乃ちゃん、なんでだよ、なんで僕にもっと頼ってくれないんだよ!、僕はただ.....」

君が居てくれれば、それだけで良かったのに.....。

 

「...あの女のせいか、あいつさえいなければ!?、彼女は居なくならなかった筈なのに!、あの女さえいなければぁーーー!!!」

 

 僕の中で、何か大事なものが...音を立てて崩れていった。

 

ああ、あの感情は...何だっけ?。

 

彼女が大好きだった筈の、あの感情は.....。

 

もう、どうでも良いか。

 

だって、彼女はもう居ないんだから。

 

ねえ、そうでしょ?。

 

 

 

 

.....祿乃ちゃん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

AM10:00 【アサギide】

 

「アサギよ、この辺りで間違いないのか?」

 

「はい、先日訪問したのはこの近くです」

 

「ふむ、それにしては妙だな」

 

「妙とは?」

 

「本当にその者が異能に目覚めているのであれば、力を使った際の残滓が残っておる筈なのだが、それが感じられない、どうやら誰かが意図的に隠しているようだな」

 

「もしや、彼女自身が我々に見つからないために隠したのでは?」

 

「となると厄介だぞ、朽花の一族の得意分野は情報収集と隠蔽、つまり彼女が完全に我々の動きを把握したうえで動いていることになる」

 

「それなら、まず彼女の友人を訪ねた方がよろしいかと、どうやら彼女とかなり親密な様子だったので、彼女の居場所を知っているかもしれません」

 

「そうか、その者は何処に?」

 

「まずは彼女の家に行ってみましょう、もしかしたらそこに彼女の友人がいるかもしれません」

 

「そうだな、今はそれしかできることがない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

AM10:15

 

「あれが彼女の家か?」

 

「ええ.....おや、誰かいるようですね」

 

「お姉さん、さっき言ってた友人さんじゃない?」

 

「そうね、話しかけてみましょうか」

 

「じゃあ私行ってくる、おーい」

 

「ちょっと!、待ちなさいさくら!」

 

「あの~、朽花さんって人の居場所知ってる?」

 

「ぉ....ぇ..k..b.」

 

「えっ?、何て言ってるの聞こえないよ」

 

「さくら!、何か様子が変よ、離れなさい!」

お前らさえ...いなければぁーーー!!!

 

「えっ?」

 

 

 

 

何かが切れる音がした。

 

何かが滴り落ちる音がした。

 

それは真っ赤で、そして鮮やかで.....。

 

ああ、あれは私の血なんだ。

 

頭がそう理解した瞬間、私の目の前は真っ暗になった。

 

 

 

 

「さくらぁーーー!!!」

 

「アサギ!、落ち着け」

 

「嫌、嫌よ、さくらが、さくらが血を流して...嫌ぁーーー!!!」

 

「待て、冷静さを失うではない!、お前までああなってしまうぞ」

 

「でもさくらが」

 

「落ち着け、まだ完全には死んでおらん、今すぐ手当てすれば助かるのだ!、故に今はあやつを退けることを考えねばならん!」

 

「ガタガタ五月蝿いんだよ、さっさと消えろ!」

 

「ぬっ、アサギよ、あやつは本当に一般人なのか?」

 

「どういうことです」

 

「ふむ、あやつが先程から放っておる尋常ならざる殺気、あれは此方側の人間にしか出せぬものだ」

 

「お前らさえ、お前らさえいなければ、彼女はいなくならなかったんだぁ!」

 

「お主、さっきから何を言っておるのだ!」

 

「.....お前らのせいだ、お前らが彼女を探しになんか来たから!、彼女は僕の前から居なくなった!、お前らさえ来なければ、彼女はまだ僕と一緒に居たはずだったのに、お前らは!、そんな僕たちのささやかな幸せを奪ったんだ!」

 

「頼む、話を聞いてくれ!、我らはただ朽花殿と話し合いたいことがあるだけなのだ!」

 

「黙れ!、黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!」

 

「くっ、話ができる状態ではないな。 アサギよ!、さくらを連れて早く逃げるのだ!」

 

「ですが!、お爺様はどうするのです!」

 

「儂は、こやつをなんとか足止めする!、故に.....早くさくらを連れてここを離れよ!」

 

「...わかりました。お爺様、どうかご無事で!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ、アサギたちは撤退したな」

 

「どういうつもりだ貴様?、たった一人で何をするつもりだ!」

 

「ふっ、舐めるなよ小僧!、儂とてこの国を守護する対魔忍の一人...高々少し能力を持った程度の若輩者に負けるほど衰えてはおらんわ!」

 

「ふうん、僕も舐められたもんだね(面倒だな、()()()使()()()

 

二人が睨み合い、まさに一触即発の状況。

 

その時だった。

 

 

 

 

「二人とも、その辺りでやめておきなさい」

 

 

 

 

「.....祿乃ちゃん?」

 

「ええ、そうよ」

 

 

 

 

彼女が...祿乃ちゃんが現れたのは。

 

 

 




さあ、いよいよ第1章も終わりを迎えそうです。

再び橘君の前に現れたの主人公。

彼女の目的は何なのか?。

次回『再開』

では、また次のお話でお会いしましょう。

感想や評価などを頂ければありがたいです。

以上、森の翁でした。


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