麦わらの男は旅をする   作:大明神覇王

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十五旅

 

 

 謎の組織のエージェントであるMr.9とミス・ウェンズデーの懇願(裏がある事は承知の上で)によってルフィ一行は彼らが拠点としているらしい町、ウイスキーピークに向かって双子岬を出港した。

 

 それはグランドラインを通る事を意味し……。

 

「入るだけでも大変なのに、入った後も中々、過酷だな」

 

 グランドラインにおいては東西南北、四つの海と違って季節も天候もでたらめに巡っており、環境は常に激変する。

 

 晴天であったのに雪が降り、雷は鳴り響き、そうかと思えば春の暖かさあふれる環境に変わる、何もかもが常識外で対応するのが大変だ。

 

 

 

「そうね。ちょっとでも、ログポースから目を離せば進路が変わるんだもん。私の航海術が通用しないなんてショックだわ」

 

 ナミが言うように常にログポースによる導きを確認せねば目的地への進路を外れてしまう。だからこそ、ルフィ達はナミのナビゲートに従いつつ、常に最適な作業を行っていた。

 

「ふふ、これこそがグランドラインの洗礼だ」

 

「風も空も波も雲も何一つ、信用できない。信用できるのはログポースだけ?旅をするだけでも厳しいわよ」

 

 

 

 忙しなく働くルフィ達へ、Mr.9とミス・ウェンズデーは不敵に笑った。彼と彼女の船は小型船であるため、ウイスキーピークへの案内を兼ねて船はメリー号の横に巻き付けるようにして固定している。そのため、メリー号に乗っていたのだ。

 

「そこっ!! 止まってないで動けっ!!」

 

「こっちは別にお前たちを放り出しても良いんだからな」

 

『あ、はい……』

 

 ナミとルフィからの言葉に止めていた作業を再開した。

 

 

 

「これはこれで、退屈しないな」

 

「お前、それは皮肉か?」

 

「皮肉が言えるだけの知恵はあったんだな」

 

 ゾロが苦笑を浮かべて呟いた言葉にウソップとサンジが驚いた顔で意見を述べる。

 

「お前ら、斬り落とすぞ……」

 

「あんた達、やるなら状況がおちついてからにしな」

 

「というか、船の上でやるな」

 

『すんません』

 

 騒がしい三人に向かってアルビダとルフィが咎めると頭を下げる。

 

 常に右往左往しながらグランドラインからの洗礼に立ち向かう、ルフィ一行は……。

 

 

 

 

『ようやく、終わった』

 

 無事、厳しい状況を乗り越えた事で安堵の息を吐いた。現在、船は穏やかな天候にて穏やかな波に揺られつつ、進んでいる。

 

「ほら、皆。疲れの取れるスイーツだ」

 

 サンジが甘い焼き菓子にコーヒーやお茶などをセットで持ってきた。

 

 

 

 

「これは中々だな」

 

「ええ、本当に美味しいわ」

 

 焼き菓子の美味しさにMr.9とミス・ウェンズデーも素直な感想を言った。

 

 

 

 

「ありがとうございます。ミス・ウェンズデー」

 

 サンジはミス・ウェンズデーの感想にだけ礼儀正しい態度で礼を述べた。

 

「さて、このまま行けばウイスキーピークに辿り着くけど……」

 

 

 ナミがログポースの示す方角を確認しつつ、進むと巨大なサボテンが幾つも並ぶ島が見えた。

 

 

 

 

 

「あそこがウイスキーピークだ」

 

「私たちは先に行って、皆に貴方たちに受けた恩の事を説明するわ。きっと、もてなしてくれる筈だから合図するまで此処で待機してて」

 

 町が近づいてきた事でMr.9とウェンズデーは先に小型船で向かうと言い、メリー号より自分たちの船を下ろす。

 

「了解。期待させてもらうとしよう」

 

 ルフィが頷くと二人は一行よりも先にウイスキーピークに向かった。

 

「さて、方針について会議しようか」

 

 二人が居なくなったことで、ルフィ達はウイスキーピークにて襲撃してくるだろう連中に対処するための方針の会議を始めたのであった……。

 

 

 

 

 

 

 ウイスキーピークの空に轟音が響いた。それが先行した二人からの合図だと確信し、ルフィ一行は町へと入った。

 

「ようこそ、旅人さんたちっ!!」

 

「此処は歓迎の町、ウイスキーピークだ」

 

「来客、万歳っ!!」

 

 などなど様々な歓迎の言葉をウイスキーピークに住まう人々は送った。

 

 

 

 

「何度かこういう事をやっているようだな連中は」

 

「で、油断した奴らをバッサリか」

 

「悪くは無いんじゃないか。グランドラインの過酷な環境を抜けてからだと、油断もするだろうし」

 

「ああ、美女もいっぱいいるからな」

 

「アンタなら即座にハニートラップに引っ掛かるね、サンジ。決めた方針は忘れないでくれよ?」

 

 目をハートに、鼻も少し伸ばしたサンジへアルビダは苦笑と共に忠告した。

 

「良いお宝があれば良いんだけど」

 

 ナミはそんな事をぼやく。取りあえずの方針としてルフィはウイスキーピークでのもてなしを受けることにした。様子を見つつ、向こうが仕掛けてきたらルフィとゾロが対応。遊撃としてサンジとアルビダが担当しつつ、支援はナミとウソップが担当という感じだ。

 

 

 

 

 

 備えはしつつ、いざ、ウイスキーピークに辿り着くと……。

 

「いらっ……オホン、マーマーマ~。いらっしゃい、私は町長のイガラッポイ。二人より話は聞いております」

 

 髪を左右に分け、幾つもロールしているイガラッポイという男がルフィ達へと近寄り挨拶した。

 

 この町は酒造と音楽の盛んな町で旅人に対してもてなす風習があるという。助けた二人の恩も兼ねて更に手厚くもてなすとイガラッポイは言い、ルフィ達は喜んで応じたのである。

 

 

 

 そして……料理や飲み物に毒が無い事を先じてルフィが確かめる。彼は生命エネルギーを巡らす事で毒物の浄化が可能であり、他者へも生命エネルギーを送る事でやはり、浄化が可能だ。

 

 それに修行にて何度も命の危機を体験したからか本来、脳の命令では動かせない髪や臓器は勿論の事、爪先や産毛まで完全に己の意思で操れる『生命帰還』も使える。

 

 胃や腸などを活発化して消化機能を増大する事により、幾ら食そうが、飲もうが即座に消化して有事に備えられるのである。

 

 

 

 

「うん、美味い」

 

 事前に決めていたハンドサインで『安全』と知らせつつ、その後はもてなしに気を良くする演技をルフィ一行は始めた。

 

「ふふ、ほらルフィ。まだまだいけるだろう?」

 

「こっちの料理も美味しいわよ」

 

 ルフィの左右にアルビダとナミが寄り添い、アルビダは酒をルフィへと注ぎ、ナミは料理をルフィの方へと運んだ。

 

「ありがとうな、二人とも」

 

 ルフィは二人からの好意に感謝する。更にアルビダの大胆な寄り添いとナミの少し恥ずかしがるような寄り添いを受けた。

 

 

 

「てめぇ、ルフィ。何てうらやま……けしからんことをっ!!」

 

「お前、その状況でそんな言葉、良く言えるな……」

 

「今のお前にはそういう言葉、使う資格無いと思うぞ」

 

 当然というか、何と言うかサンジが嫉妬の炎を上げつつルフィへと抗議したものの、今の彼はウイスキーピークの美女らを二十人ほど、侍らせているような状況である。

 

 

 

 

 ゾロとウソップは「(本当に会議の事、覚えてるのか?)」と不安になりつつ、呆れた。

 

「どうですかな、我が町は?」

 

「月並みの事しか言えないが、良い町だと思う。この町を案内してくれた二人の姿は見えないが」

 

「はは……ゴホン。マーマーマ~、二人はまた仕事に行っています。色々と大変なのですよ」

 

 少し図星を突かれたような表情をしたものの、ルフィに近づいてきたイガラッポイは悟られないための苦笑を浮かべて答えを返した。

 

 

 

「みたいだな……しかし、与えた恩にしてはでかいもてなしをされちまった。だから、又返させてもらうよ。あんた、何か大きな使命を抱えてるようだが何なら、力を貸すぞ」

 

「っ!? い……いえいえ、何を言うんですかルフィさん。私はただの町長、使命なんか、そんな大げさな物はありませんよ」

 

 ルフィの言葉に大きな驚愕をしつつも、なんとか、苦笑のそれへと変えて焦りも残した言葉を発した。

 

「そう言うなら、それでも良い。だが、おれが言った事は本気だ。覚えておいてくれ」

 

「ふふ。気持ちはありがたく受け取っておきます。どうやら、ルフィさんは素晴らしい善人だという事は分かりました」

 

「ええ、ルフィは本当にこれこそ善人ってくらいの善人よ」

 

「この世界じゃ一番って言っても過言じゃないさ」

 

 イガラッポイへナミとアルビダが補足する。

 

「だからこそ、自慢の団長だ」

 

「憧れでもあるしな」

 

「おれたちにとっての誇りさ」

 

 ゾロにウソップ、サンジも又、ルフィの事を讃えた。

 

「ふふ、慕われていますな」

 

「ああ。嬉しい事にな」

 

 こうして、もてなしを受け続けたルフィ達はそのまま、眠りについたのであった(無論、演技であるが)……。

 

 

 

 

 

 ルフィ達が眠った事でイガラッポイは外へと出た。

 

 

 

「すまない、素晴らしき旅人たちよ。せめて良い夢を見てくれ」

 

 申し訳ないと語るかのような表情で呟く。

 

「良い奴らなんだよな」

 

「海賊なら、罪悪感も無いんだけど」

 

 イガラッポイの後ろにはMr.9とウェンズデーの二人が居た。実はイガラッポイは二人と同じ組織に所属するエージェント、Mr.8であった。

 

 

 

 この町に住むのは、正体も居場所も謎のボスからの指令に従う犯罪組織が【バロックワークス】に所属するエージェントたちである。

 

「まったくだよ。本当にあいつらが私たちの邪魔を?」

 

 がっしりとした体格を持つ大女、ミス・マンデーが現れて問いかけた。

 

「それは確かだ」

 

「恩を受けたのも事実よ。でも、脅威になるだけの実力はあるわ。特にルフィという男には……」

 

 Mr.9たちが答える。表情と言葉には後悔も見えていた。何故ならここまでの航海中、ルフィ一行が悪い奴らでは無い事は十分に理解させられ、更には居心地の良い航海を楽しませられたからである。

 

 

 

「ならば、仕方ない。我が社は非情だ、ボスのために働くのみだ」

 

 そして、眠らせたルフィ達を襲撃しようと他のエージェントも集合させたが……。

 

 

 

 

「一度だけ言う。おれたちに争うつもりは無い」

 

「やるってんなら相手になるけどな」

 

 ルフィとゾロが堂々と眠っていたはずの建物から出て、ルフィが闘気を軽く漂わせ、ゾロも刀を構える。

 

『っ!?』

 

 ただ、威嚇しただけのそれに全エージェントが動けなくなった。二人に挑めば打ちのめされるだけの未来しか想像出来なかったからである。

 

「イガラッポイさん、どうかおれたちに挑まないでくれ」

 

 念押しの言葉にMr.8は頷くしか出来ない。

 

 

 

「ん、新手だ……二つは覚えがあるが、もう二つは無い。しかも、悪魔の実の能力者だな」

 

 気配感知、見聞色の覇気によってルフィは新手が接近している事を察知した。因みに悪魔の実の能力者の特徴として、生命エネルギーは燃え盛る様に巡っているというのがある。

 

 

 身体を常人のそれとは異なる体質などに作り替えるためだろう……。

 

 

 

「話は後だ、待機していろ。良いな?」

 

 Mr.8に命令しつつ、ルフィはゾロと共に新手、悪魔の実の能力者の元へと向かった。

 

 

 

 

「ったく、なんでおれたちが面倒な事を……」

 

「まったくよね」

 

 身を隠しながら、ルフィは悪魔の実の能力者の二人の男女を観察する。

 

 男の方はチリチリになっているような髪型でサングラスをかけており、数字の5が幾つか書かれたコートを着ている。

 

 この男はMr.5であった。

 

 女は日傘を持っていて、帽子を被りレモンの柄のワンピースを着ている。

 

 Mr.5のパートナーであるミス・バレンタインだ。

 

 

 

 

「どうやら、複雑な事態になってきたようだ」

 

 見聞色の覇気によって、Mr.5たちの意思を読み取る事で、ある事態が起きている事をルフィは把握した。

 

「ゾロ、あの二人を任せて良いか?」

 

「当然っ!!」

 

 ルフィの言葉にゾロは頷き、Mr.5達へと姿を現した。ルフィも又、ゾロが答えたと同時に姿を消しており……。

 

 

 

 

「仕事熱心で何よりだ。お前たちは素晴らしい忠ラッコに忠ハゲタカだな」

 

『!?』

 

 Mr.5らとゾロの戦いを観察していたアンラッキーズの背後からルフィは呼びかけ、二匹は大きく震え上がって驚愕した。

 

「一日と経たず、出会うなんていう奇妙な縁を祝してお互い、何も起きなかったって事で此処は手を打たないか?」

 

 気軽に提案しつつも闘気は巡らせるルフィに対し、密偵などそういった仕事に誇りを持つ自分たちが簡単に背後を取られた事で二匹は更なる実力差を悟り、パートナー同士、顔を見合わせるとこの場より去って行ったのだった……。

 

 

 

 

 

そして、Mr.5とバレンタインの方もゾロが軽く一蹴して気絶させたので、後はルフィが生体エネルギーによる干渉で二人の生命エネルギーの巡りを激しく乱す。

 

 こうする事で長い時間、脱力状態、行動不能となるのである。

 

 そして、二人を背負ってMr.8らの元へ戻った。

 

「この二人の標的はウェンズデーとイガラッポイさんだ。詳しい話を聞かせてくれないか?」

 

「……分かりました。全てをお話ししましょう」

 

 

 イガラッポイは少し、考えたのち頷くのだった……。

 

 

 

 




 アンラッキーズは可愛い(比率としてはラッコが99.9%、ハゲタカは00.1%)

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