麦わらの男は旅をする   作:大明神覇王

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二十四旅

 

 外来の者がアラバスタを訪れた時、その多くが一度は夢の町と呼ばれる『レインベース』へと足を運ぶ。それはこの町に聳え立つバナナワニの屋根が特徴的なカジノのある建物『レインディナーズ』があるからだ。

 賭博による一攫千金を狙う訳である。

 

そして、そんなレインディナーズのオーナー、実質、この町の支配者と呼んでも良い存在こそが……。

 

「……」

 

 黒のオールバックに鼻の中央辺りには横一線の傷跡、左手の部分は鉤爪と一体化しており、修羅場を長年生き抜いてきた風格のある男は葉巻を吸っている。

 

彼こそはサー・クロコダイルだ。

 

 彼は世界政府所属の海賊である王下七武海の一人であり、この国に居を構えてから、この国を荒そうとする他の海賊を倒し続けたことでこの国の王であるコブラを始めとして、アラバスタに住まう人々より英雄としての信頼を勝ち取っていた。

 

 しかし、信頼を勝ち取ったのはこの国に眠るらしい()()()()()()()()を手に入れるためである。

 

先ずはアラバスタに溶け込みやすいように政府側の人間、英雄として信頼させつつもその裏では犯罪結社であるバロックワークスを創設して手駒を増やし、色々と暗躍させつつ、アラバスタを転覆させるために国民を扇動する事で反乱軍を誕生させてクーデターを起こさせた。

 

流石に王国側も馬鹿では無く、バロックワークスが暗躍している事は掴まれた。もっとも、王女のビビと護衛隊長のイガラムが潜入しようとしていたのは正直言って、驚いた。

 

しかし、それは直ぐに呆れへと変わり、ちょっとした余興とばかりに冥土の土産としてクロコダイルは全てを晒してやった上で始末を命じた。これで邪魔者はいなくなり、計画は達成される。

 

その筈だった……。

 

しかし、その時から狂いは生じてしまった。

 

「何、二人に連絡が出来ない?」

 

 始末を任せたMr.5とミス・バレンタインのペアよりビビとイガラムを始末したと連絡を受けてから全く、連絡が付かない様になったのだ。

 

 

 

「Mr.3とミス・ゴールデンウィークにもだと……」

 

 更に優秀な策略家であり、任務遂行への執念を評価していたMr.3と相方のゴールデン・ウィークとも連絡がつかなくなった。そして、Mr.3らに連絡を任せた時より、アンラッキーズの二匹の帰りが妙に遅い。

 

 更に異変は組織内だけでなく、反乱の進行具合もだ。本来なら王国軍の状況は今以上に悪くなり、反乱軍は更に歩を進めて首都であるアルバーナに向かっている筈だが、動きは停滞している。

 

 

 

「何か、いや……()()()()()()()()()()っ!!」

 

 それを確信したクロコダイルは一旦、残っている上級エージェントにビリオンズなどを集結させた。だが、計画において最も重要な能力を持つMr.2・ボン・クレーは今だ、来ていない。

 

 

 

「良いだろう、何者か知らないが……来い」

 

 

 長年、修羅場を生きた経験からクロコダイルは自分の計画を乱している何者かが此処に来ることを確信し、だからこそ手駒たちにレインベースを出入りする者の見張り、不審な者を発見すれば即始末する事を命じたのであった……。

 

 

 

 

 

 

 ルフィは自分の剣になると誓ってくれたゾロと祖父であるガープ、更に彼にとっては予想外で加わってくれてうれしい存在、義兄のエースと共にクロコダイルがアジトとしている『レインベース』へと向かった。

 

『いくぞぉっ!!』

 

 もう、クロコダイル側に自分たちの存在が知られないように隠密行動をする理由は無く、どちらかと言えばルフィは肉体派だ。なので堂々と正面から見張りをしていたバロックワークスの者らへと猛進した。

 

 

「うはははは、血が滾るわ。やっぱり、悪党は殴るのが一番じゃな」

 

 ガープは本日、いつも以上に気持ちは滾っていた。何故なら孫のルフィと一緒に悪を蹴散らせる上、予想外な事に悪友とも呼べるロジャーに託されたエースとも共闘しているからだ。

 

 昔を思い出しつつも今をも楽しむ彼のボルテージはヒートアップし続ける。

 

 

「悪いが、今日のおれはいつも以上に燃えているぜっ!!」

 

 そして、ボルテージが上がっているのはガープだけでなく、エースもだった。

 

 彼は悪魔の実の能力者で自然の化身と化す『自然系(ロギア)』の一種、炎を司る『メラメラの実』を食べた。これにより、身体を炎へと変化させられるし、炎を放出できる。

 

 今回は祖父のガープ、何より愛する義弟のルフィと共闘できる嬉しさで身体も精神もいつも以上にヒートアップしていた。

 

 

 

「世界にはいくらでも強豪がいるんだな。おれももっと強くならねぇと」

 

 ガープもエースもゾロにとっては鬼神のようであり、その強さに感銘を受けながらもいずれ越えてみせるという決意を持ち、奮起して剣を振るった。

 

 

 

 

「押し通らせてもらうぞっ!!」

 

 ルフィはクロコダイルを倒すその意思を激しく燃焼させながら、先ずは邪魔者たちを蹴散らしていった。

 

『ぐああああっ!!』

 

 四人の戦意がヒートアップするに伴って振るう武威は高まり続け、敵対している者らからすれば天災が如き、暴威に他ならないものへと達する。

 

 

 

 

 『うぎゃああああっ!!』

 

 成す術無く、ビリオンズもそして上級エージェントも蹴散らされる中……。

 

 

 

「(つ……強すぎる)」

 

 バロック・ワークスのエージェントがMr.1であるダズ・ボーネスはルフィらの強さに内心、そう漏らすしかない。

 

 しかし、満足感はあった。何故なら……。

 

「(英雄(ほんもの)はこんな世界にもいたんだな)」

 

 昔からそうなりたいと思った存在、ヒーローと呼べる存在、ルフィに会えたからだ。

 

 見よ、あの悪を許さんと猛る義憤。悪を倒すために本気で行動するその勇姿。慢心も油断も無く、真剣に状況を見据え、悪の暴挙を粉砕してみせている。

 

 あれこそ、正にヒーローと呼ぶべき存在だろう。

 

 

 

 

「(おれには努力も根性も足りなかったんだな)」

 

 ルフィに感動しながら、彼は自分のこれまでを思い返す。

 

 バロックワークスのエージェントになる前はウエストブルーで賞金稼ぎをしていた。それは憧れていた民衆を救うヒーローになろうと考え、ならば海賊を倒す賞金稼ぎこそがそうだろうと考えたからだ。

 

 しかし、この悪が蔓延る世界で『正義』を貫く事は困難であり、結局はヒーローになる事を諦めた。

 

 

 

 

 

「(お前は諦めないでくれ)」

 

 しっかりと英雄(ほんもの)の姿を目に刻みつつ、内心、ルフィにヒーローであり続けて欲しいと内心でエールを送った。すると……。

 

「(っ!! 嬉しいものだな……)」

 

 彼は知らないが、見聞色の覇気によってダズの意思を読み取ったルフィは頷いて見せ、ダズは喜びつつ、気絶したのだった……。

 

 

 

 

 

 

「ふふ、見事なものね」

 

 敵だけが倒れ、ルフィ達が己らの健闘を軽く讃え合っているとミス・オールサンデーが声をかける。

 

「戦いに来た訳じゃないようだな」

 

「ええ、正直私じゃ勝てないもの。だから、恩をまた売りに来たのよ。貴方達をクロコダイルの元まで案内してあげるわ」

 

「案内するのはおれ一人で良い」

 

 オールサンデーの言葉にルフィはそう返す。これは元から決めていた事だ。クロコダイルに一人で挑む事は……。

 

「しっかりやり遂げるんじゃぞ、ルフィ」

 

「クロコダイルが相手でも、お前は勝つ。なんせ、おれの弟だもんな」

 

「誰を怒らせたのか、存分に後悔させてやれ」

 

 

 ガープにエース、ゾロはオールサンデーと共にクロコダイルの元へと向かおうとするルフィへ見送りの言葉を送った。とはいえ、ルフィが帰って来るまで待機はするし、倒した者たちを海軍へと連行出来るための準備はするのだが……。

 

「行ってくる」

 

 こうして、ルフィはクロコダイルの元へと向かったのであった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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