アラバスタにあるカジノの町、『レインベース』にある中で最大のものこそが『レインディナーズ』。そのオーナーこそがアラバスタ王国の転覆を狙うサー・クロコダイルである。
そして、ルフィはクロコダイルの右腕とも言える存在、ミス・オールサンデーに連れられてレインディナーズの裏口から内部へと入り、クロコダイルの居る部屋へと向かう。
「この部屋の先に彼が居るわ」
「そうか、案内してくれて感謝する」
オールサンデーは大きな部屋の扉の前まで辿り着くと脇に移動してルフィに入る様、促し、ルフィは頭を下げて礼を言う。
「良いのよ、私は私のためにやっているだけだから。それにしても不思議ね。貴方を見ているだけで貴方がクロコダイルを倒せると思わせられるなんて……」
「称賛は受け取っておく。受けた恩はしっかりと返させてもらうから安心しろ」
「ええ。そうさせてもらうわ」
ルフィの言葉に微笑むとオールサンデーは部屋より去って行った。それを見送ったルフィは部屋の扉を開けて中へと入ると……。
「ふん、オールサンデーめ。最後の最後に裏切りやがるとは……やはり、他人は信用できねぇな」
葉巻を口から離し、紫煙を吹かしながらクロコダイルはルフィを見て、呟いた。
「そんな事を言うなら、お前は組織の頭としては失格だな」
「はっ、生意気な口を聞いてくれるじゃねえかクソガキが。おれにとってバロックワークスは所詮、唯の手駒だ。さて……」
クロコダイルはルフィの言葉を嘲笑うとそのまま、彼を観察し……。
「お前だな。散々、おれの計画を引っかき回してくれたのは?」
「そうだ。ビビとイガラムさんからお前がアラバスタを滅ぼそうとしていると聞いたからな。こうして、お前を倒しに来た」
「ち、王女共はやはり生きていたのか。それにおれを倒すだと……笑えねぇ冗談だ」
ルフィの宣言にクロコダイルは嘲笑を浮かべる。
「おれはいつでも真剣だ」
その言葉にルフィは答えつつ、次の瞬間にはクロコダイルに接近していた。
「(速いな……)」
自分に対し、左の五本指を合わせ、旋回を加えた貫手を繰り出そうとしているのを見ながらもクロコダイルは余裕だった。
何故なら、彼は悪魔の実の能力者であり、【自然系】の『スナスナの実』を食べた人間。
自然系の能力者は基本として自然物へと身体が変化するが故に物理攻撃は通用しなくなる。無論、打撃など通用する訳が無いのだ。
「(!?)」
だが、クロコダイルは長年、修羅場を生き抜いたが故の経験で培われた勘によってルフィの攻撃に危機を感じ取り、身体は勝手に回避へと動いた。
「おぐっ!!」
ルフィの貫手がクロコダイルに炸裂したが直前に身体が後退したので、直撃自体は避けることが出来た。しかし、それでも受けた衝撃は彼の内部へと浸透し搔き乱す。
「(馬鹿な、こんなガキが覇気使いだとぉっ!!)」
自然系の能力者には物理攻撃は通用しないのは基本である。しかし、物事には例外は存在するのだ。
人体、あるいは物体へ纏わせる覇気が【武装色の覇気】。これが使われているならば例え、自然系の能力者であっても物理攻撃は通じてしまう。
「しいっ!!」
ルフィは攻撃を回避されても動じず、追撃に彼の顔面へと右手の指全てを折り曲げ立てた状態で突き出した。いわゆる熊手染みた攻撃であり、くらえば顔面が捥ぎ取られるだけの脅威を感じさせられる。
「うくっ!!」
なんとか頭を傾ける事で頬を裂かれつつ、回避したクロコダイルは即座に右手でルフィの首を掴んだ。その直後にルフィの右手はクロコダイルの首を後ろで掴み、左掌はクロコダイルの腹部に押し当てられる。
「死ね」
しかし、クロコダイルはルフィの行動を気にはしない。何故なら今の状態はクロコダイルが勝利を確信するに十分な状態だからだ。
『スナスナの実』の能力によって彼の掌は触れた物体の水分を奪う事が出来るため、人間ならばミイラへと変えられるのだ。つまり、ルフィの死は確実であるが……。
「(なっ、身体が……!?)」
クロコダイルは驚愕する。急に自分の身体が動かせなくなった事で力が使えなくなったからだ。これはルフィがクロコダイルの首の後ろを掴んでいる事で右手から生命エネルギーを流して、彼の生命エネルギーに干渉。
エネルギーの流れを乱す事で力の使用を封じ、身体の動きも封じているのである。
「少なくとも、お前を倒すまでは死ぬ訳にはいかないな」
そう言って、ルフィはクロコダイルへ押し当てている掌より強烈な衝撃を放ち、内部へと浸透させる。
「お、が……」
首の後ろを掴んで固定している事で衝撃は一つの逃れも無く、クロコダイルの体内を搔き乱し、それによって彼は血塊を吐く。
「六王銃っ!!」
ルフィはすかさず、右手と左手をクロコダイルより離してすかさず、両手の拳を上下にクロコダイルへと押し当てると六式の最大奥義を放った。
「ぐふっあああああっ!!」
爆発の如き衝撃の伝導によってクロコダイルは凄まじい勢いで吹っ飛び、床を転がっていった。
「う……お……が、は……ごほ、ごほ……クッ、クハハ。まさか、お前のようなガキに追い詰められちまうとはな」
ルフィが構える中、クロコダイルは弱弱しくも立ち上がり、血塊を吐き出しながら苦笑を浮かべ、ルフィを憎々し気に睨みつけた。
「ふざけるな……おれはもう、
そう、クロコダイルは一度、ある存在に敗北させられていた。だからこそ、その屈辱を晴らすがために力を蓄え、リベンジし今だ、果たせていない野望を実現しようとしたのだ。
それがために彼は勝利への執念を燃やし、身体の限界すらも超えてルフィを打ち倒さんと迫る。
「そうか、お前にも勝ちたい理由があるんだなクロコダイル。その勝利への執念は見事。だが……」
ルフィはクロコダイルへ語り掛けつつ、拳を握り……。
「ごぶはぁぁぁぁっ!!」
「この勝負、勝つのはおれだ」
クロコダイルを己の拳撃により、打ち倒し勝利を掴んだのであった……。