ストライクウィッチーズ~The Belkan Witches War~   作:クンタンク

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今回もよろしくお願いします。


復活のエース

「隊長…なんだか雰囲気がピリピリとしてませんか?」

 

「確かに…一体何があったんだ?」

 

ここは、ブリーフィングルール。

そこには、《シュネー隊》だけでなく、502のみんなまでもが全員集合させられていた。

しかし、ラル隊長からは何も言われていない。

 

その時、部屋の扉が開かれた。

 

「遅れてすまない」

 

そう言って入ってきたのは、ラル隊長と見慣れない男であった。

ただ、エリッヒはその男が間違いなくお偉いさんだというのは分かった。

 

「全員起立!」

 

ラル隊長の号令で起立する。

 

「マンシュタイン元帥に敬礼!」

 

なんと、その男はこの世界では有名な、マンシュタインだったのだ。

マンシュタインは、全員の敬礼を確認してから、座らせた。

 

「うむ、座りたまえ」

 

そして、エリッヒたち《シュネー隊》の元へと歩いていく。

 

「初めまして。君が噂のベルカ空軍の《エース》か。会えて嬉しいよ」

 

「はっ!エリッヒ・ヒレンベランドと申します!階級は中尉であります!」

 

「まあ、そう固くなるな。私は君たちベルカ人がこの世界にとって重要な存在だと思っている。敬意を払うべきなのは私の方だ」

 

そう言って、エリッヒとマンシュタインは握手する。

そして、マンシュタインは、エリッヒが只者ではないと気付くことが出来た。

 

(この男の雰囲気…間違いなく腕もあるし、冷静な判断力も持っているように見受けられる…中尉のままではもったいない男だ)

 

もっとも、エリッヒには出世欲がなく、昇進よりも最前線をエリッヒは選ぶだろう。

 

「ありがとう。まさか生きているうちにベルカのパイロットと握手出来るなんて思わなかったよ」

 

「こちらこそ、ありがとうございました!」

 

マンシュタインは、腑に落ちないままラル隊長の元に戻る。

 

「彼はいい男だね」

 

「はい、我々502は彼らに何度も救われました」

 

マンシュタインとラル隊長は、《シュネー隊》…特にエリッヒを褒め称える。

しかし、いつまでも他人を褒めていては話は進まない。

 

「それで、今日はどういう用件でしょうか?」

 

「うむ…1部の者には前々から伝達していたが、ペテルブルク軍集団による、《グリゴーリ》攻略のためのフレイアー作戦についてだ」

 

その話を聞き、ブリーフィングルームにどよめきが走る。

 

「ついに…始まるんですね」

 

「君たちの活躍によって補給路が回復し、士気が大幅に向上したため、フレイアー作戦の実施が決定された。この作戦には、502部隊…そして、君たち《シュネー隊》にも参加して頂きたい」

 

エリッヒは静かに頷いた。

 

「おや?驚かないのかね?」

 

その様子を見て、マンシュタインはつい聞いてしまった。

 

「ある程度は予測は出来ていましたから、そこまで驚きはありません。ですが、まさかネウロイの巣を攻略する作戦だとは思いませんでした…」

 

「ほう…」

 

マンシュタインはエリッヒの評価を上方修正した。

エリッヒの冷静さは、フレイアー作戦には必要になると思ったのだ。

 

「その作戦ですが、ガリアの501の例に準ずるのでしょうか?もし、そうならば、かなり危険だと思うのですが…」

 

ロスマンは、ガリアの《ウォーロック》のようなことがあれば、いくら《シュネー隊》がいるとはいえ厳しいと考えていた。

 

しかし、もちろんマンシュタインもそれについては理解していた。

 

「ウィッチは耳も早いな。安心したまえ。ネウロイのテクノロジーは我々の手に余る。もし使ってしまえば、ベルカにボコボコにされてしまうからな」

 

ははは、とマンシュタインは笑うが、この場にいる全員がブリタニアの末路を知っているため、苦笑いしか出来なかった。

 

そして、散々笑ったマンシュタインは、作戦について説明する。

 

「作戦はシンプルだ。現在ムルマンに集中しているペテルブルク軍を使い、全力で叩く。それによって、ネウロイの生産力を破壊する。そして、無防備になった巣に超大型列車砲の砲弾を撃ち込み、本体のコアを破壊するということだ」

 

この作戦に、菅野が考え込む。

 

「大体の手順は分かったが…でも、どうやってコアを見つける…あっ!?」

 

菅野はひかりを見つめる。

そして、マンシュタインを睨みつける。

 

「まさか…ひかりを利用するつもりなのか!?」

 

「えっ?私?」

 

菅野は、マンシュタインがひかりの『接触魔眼』でコアの位置を特定しようとしているのだと考えた。

その言葉に、他のメンバーもマンシュタインをなんとも言えない表情で見つめる。

 

しかし、その中でも《シュネー隊》の面々だけは普通だった。

 

「絶対にダメだ!ひかりを死なせるつもりか!?」

 

「落ち着きなさい。菅野さん」

 

「先生!確かにひかりの『接触魔眼』は強い!それは認める!だがな、この中ではまだまだ新人のひかりにやらせることじゃねぇ!」

 

「作戦開始はまだ先のはずです。それまでに私がひかりさんを強化します」

 

ロスマンは、ひかりが作戦の要になると考え、ひかりを特訓しようとする。

しかし、マンシュタインの口から衝撃的な事実を伝えられる。

 

「残念だが…作戦開始は7日後だ」

 

「はあ!?」

 

あのラル隊長でさえも、これには理解が出来ないという様子だった。

 

「どういうことでしょうか?作戦は今から1ヶ月後のはずでは?」

 

「本来ならそうだ。だが、ここで我々の予想外の事態が発生した…《グリゴーリ》が動き出したんだ」

 

「なっ!?」

 

「動いた!?」

 

ネウロイの巣である《グリゴーリ》が、動いたという恐ろしい報告…

 

「もしここでまた、補給路を失えば戦線は崩壊する。もはや悠長に待っていられないのだ」

 

マンシュタインの言っていることは正しい。

しかし、それでも菅野はひかりを死なせたくなかった。

 

「俺はこんな作戦反対だ!仮に巣を破壊出来たとしても、ひかりが死んじまったら意味がねぇ!」

 

菅野のその言葉に、他のウィッチたちも立ち上がり抗議する。

 

「そうです!いくら戦況が厳しいからって、誰かを犠牲にするような作戦は絶対にダメだよ!」

 

「エリッヒ中尉も何か言ってください!」

 

そして、今までずっと黙り込んでいたエリッヒに、ジョゼが一緒に抗議するよう求める。

しかし、エリッヒは静かに呟いた。

 

「そもそも…本当にひかりなのか?」

 

「「「えっ?」」」

 

エリッヒの口から出てきた言葉に、ウィッチたちはポカーンとする。

そこに、マンシュタインが追い討ちをかける。

 

「その通りだ。雁淵『軍曹』ではなく雁淵『中尉』に、コアの発見を任せる」

 

「えっ!?雁淵中尉って…まさか!」

 

ロスマンは何かに気が付いた。

マンシュタインはその間に腕時計を確認する。

 

「そろそろか…」

 

マンシュタインがそう呟くと、窓の外を何かが通っていった。

 

「今のは…」

 

「ウィッチ?」

 

一瞬だったため、ほとんどの者は今のがなんだったのか理解出来なかったが、ひかりは違った。

 

「…!今のって…!」

 

ひかりは正体に気付き、嬉しそうにブリーフィングルームを飛び出していった。

その様子をみんなは、不思議そうに見つめていた。

 

「これで…502は正しい形となる。現場の判断でよく頑張ってくれたな。ラル少佐」

 

「…ありがとうございます」

 

「では、よろしく頼むよ」

 

そう言って、マンシュタインは去っていった。

残されたラル隊長の元に、ロスマンとエリッヒがやってくる。

 

「どうやら…ひかりさんの件に関してお咎めなしのようですね」

 

「その代わり、少々面倒なことになったがな…」

 

2人の会話を聞いたエリッヒは、ひかりの事情について質問する。

 

「ひかりは…何か特別だったのか?」

 

「ああ、かなり特別な存在だ。そういえば、お前たち《シュネー隊》にはひかりのことを詳しく話していなかったな…この際だから、話してしまおう」

 

そして、エリッヒはひかりに関する事情を全て聞かされた。

ひかりは502にとても馴染んでいたため、話を聞かされたエリッヒは驚いた。

 

「まさかそんな事情があるとはな…だが、そうするとひかりはどうなる?」

 

「おそらくはもう、この基地に居られないでしょう…なぜなら…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

基地の外、滑走路でひかりは走っていた。

 

「やっぱり!あれは…あれは…お姉ちゃんだ!」

 

ひかりの視線の先には、自分の憧れの対象である、雁淵孝美が着陸していた。

 

「お姉ちゃん!」

 

待ちに待った姉との再会…それは感動的なものになると思われた。

名前を呼ばれた孝美は振り返る。

 

「ひかり、どうしてあなたがここにいるの?」

 

そして、久しぶりの再会とは思えないほど、キツい声で話し始めた。

 

「お、お姉ちゃん…?」

 

これにはひかりも動揺する。

しかし、孝美は止まらない。

 

「あなたの本来の任地はカウハバ基地だったはず…それなのに、なぜここにいるの?」

 

「えっ…そ、その…」

 

「あなたはここに居るべきではないわ。今すぐ荷物を纏めてカウハバ基地に行きなさい」

 

孝美は言葉を捲し立てて、基地へと歩いていく。

 

「どうして…お姉ちゃん…」

 

現実を受け入れられないひかりは、滑走路で立ち尽くすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

基地の格納庫には、孝美の復活を喜ぶ者たちが集まっていた。

 

「孝美!ようやく来やがったな!」

 

「お久しぶりね。菅野さん」

 

「おう!お前の居ない間、ひかりがめちゃくちゃ頑張ってくれたんだから感謝するんだな!」

 

菅野の話を聞いて、孝美は悲しそうな表情をする。

 

「孝美?」

 

「いえ、なんでもないわ…」

 

孝美は、ひかりのことを頭に浮かべたが、それを振り払って挨拶をする。

 

「本日から、第502統合戦闘航空団に配属になりました。雁淵孝美です。階級は中尉です。よろしくお願いします」

 

みんなから拍手が沸き起こる。

 

「リバウ以来ですね。ラル隊長」

 

「ああ…お前が戻ってきてくれて本当に嬉しく思う」

 

孝美のことをよく知らない《シュネー隊》以外は、孝美の復活を本気で喜んでいた。

ジョゼに至っては、涙を浮かべながら喜んでいた。

 

「それと、さっきから気になっていたのですが…」

 

孝美は『F-14D』に目を向ける。

 

「この機体はなんでしょうか?まったく見たことがないです」

 

「おお!孝美もこれが気になるのか!?」

 

「ええ。リベリオンの新型かしら?」

 

孝美は『F-14D』をリベリオンが新たに開発した航空機だと考えた。

そして、答えはラル隊長が教える。

 

「それはベルカの戦闘機だ。それも、空母に艦載可能な艦上戦闘機だ」

 

「ベルカ…?もしかして『ベルカ公国』のことですか?」

 

「そうだ」

 

「これがベルカの…」

 

孝美はベルカの『F-14D』をじっくり眺める。

 

「明日、孝美のブランクがどれほどのものなのか調べるために、模擬編を行う。孝美、問題ないな?」

 

「はい、問題ありません」

 

「よし、それじゃあ解散」

 

そして、ウィッチたちは解散した。

この時、エリッヒは別の場所でベルカ本国にある連絡を入れていた。

 

『《グリゴーリ》攻略は危険だと、言いたいのだな?』

 

「そうです。やはり…ウィッチと列車砲だけだと確実ではありません。それを確実にするためにも、力を借りたいのです」

 

『ふむ…分かった。どうにかして、そちらに攻撃出来るよう計画しておく。衛星の状態にもよるが、恐らくは問題ないだろう』

 

「ありがとうございます」

 

『いや、いい。君たちは最前線で頑張ってくれているんだ。本国からの攻撃でしかサポート出来ないのが残念だよ』

 

「それでもありがとうございます。あの兵器の攻撃力があれば、百人力です」

 

『ふっ、そこまで言われたらなんとかしないとな。通信終了』

 

話し終えたエリッヒは、一息つく。

 

「これで…何か問題があっても問題ないだろう…電子戦機の連中に、座標送信を任せるとしよう」

 

そう呟き、エリッヒは自分の部屋へと帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

孝美とクルピンスキーが模擬戦を行っていた。

 

「まだまだー!」

 

「はあ!」

 

模擬戦が始まる前は、いくらかブランクのある孝美が不利だと誰もが思っていた。

しかし、孝美はブランクを感じさせないほどの動きを見せ、クルピンスキーを相手に善戦していた。

 

「すごいな…」

 

「まったくです。ついこの間まで怪我をしていたとは思えません」

 

地上では、孝美の強さにラル隊長とロスマンが驚いていた。

 

「仕方がない!『マジックブースト』!」

 

クルピンスキーは、長期戦になると不利になると考え、固有魔法を使い短期決戦に持ち込むことにした。

 

「クルピンスキー中尉が、模擬戦で本気を出すなんて…」

 

加速したクルピンスキーは、孝美を速度で圧倒するが、それでも孝美はクルピンスキーの動きを目で追えていた。

 

「そこ!」

 

そして、クルピンスキーの動きを予測して偏差射撃を行った。

それは見事に当たり、クルピンスキーをペイント弾で染め上げた。

 

「勝者!雁淵孝美中尉!」

 

審判をしていたサーシャが、孝美の勝利を宣言する。

 

「いやぁ〜強いね。孝美ちゃん」

 

「クルピンスキーさんも、流石ね」

 

「これなら、下で見てる『雪男』君にも勝てるかもね〜」

 

「『雪男』君?」

 

「エリッヒ中尉のことだよ〜。彼、めちゃくちゃ強いんだよ?向こうは戦闘機なのに、僕は全戦全敗だよ」

 

「っ!?そんなに強いの!?」

 

信じられないといった表情で、孝美は地上にいるエリッヒを見る。

何が何だかよく分からないエリッヒは、孝美とクルピンスキーに手を振る。

そして、しばらく手を振った後、どこかに走っていった。

 

「…あの人がそんなに強いなんて…」

 

「見た目からは想像つかないよね〜…まあ、能ある鷹は爪を隠すって言うし、『雪男』君もその類いかも」

 

そう言いながら、クルピンスキーは時間を確認する。

 

「おっ?もうお昼ご飯の時間だよ?」

 

「あら?じゃあ食堂に行きましょうか。今日は私がお昼ご飯を作るわ」

 

「ほんとに!?孝美ちゃんの料理楽しみだなぁ〜!」

 

孝美とクルピンスキーは格納庫に入る。

そこで孝美は新しいことに気が付いた。

 

「…この機体は?」

 

「うん?ああ、電子戦機のことかー」

 

孝美が見つけたのは電子戦機である『EA-6B』だ。

 

「昨日の孝美ちゃん…『F-14D』に夢中だったからね。気付かないのも無理はないよ」

 

「なんだか恥ずかしくなってきたわ…それにしても、電子戦機なんて聞いたことないけど、戦闘機とは違うの?」

 

そんな孝美のために、クルピンスキーはこの前聞いた情報を元に、孝美に説明した、

 

「電探を無力化するなんて厄介ね…」

 

「でも、『雪男』君たちはネウロイ相手には意味がないって悲しそうにしてたけどね」

 

クルピンスキーは、電子戦要員の顔を思い浮かべた。

彼らは仕事がないと嘆いていたのだ。

 

「ベルカの技術力は凄いわね…扶桑に分けてもらえないかしら?」

 

「あはは!それは絶対に無理だよ。仲の良いリベリオンにすら軍事技術は絶対に提供しない国なんだから」

 

「むぅ…それもそうよね…残念」

 

少しだけ頬を膨らませた孝美と笑うクルピンスキーの元に、エリッヒが現れた。

 

「2人ともお疲れ」

 

エリッヒの手にはコップが握られていた。

その中身は水である。

 

「おお!気が利くね『雪男』君!」

 

「ありがとうございます。ヒレンベランド中尉」

 

「同じ中尉なんだから、エリッヒで構わないよ」

 

「分かりました。エリッヒさん」

 

「敬語も必要ない。普通でいいさ」

 

「…分かったわ」

 

エリッヒは2人の横に並び、一緒に食堂へと向かう。

 

「噂に聞いていたが、まさかクルピンスキーに勝てるほど強いとはな…」

 

「ちょっと『雪男』君…負けて悔しいんだから傷口を抉るようなことしないでよ〜…」

 

「すまんすまん。でも、悔しいなら特訓しないとな。食事の後、私と戦うか?」

 

「やだよー!どうせ僕のことをいじめるんでしょ?」

 

「いじめじゃない。特訓だ」

 

「僕からしたらいじめだよ!しかも、大体ストライカーを壊した後とかに特訓させるじゃないか!絶対サーシャちゃんから何か言われてるよね!?」

 

「もちろん言われてる。クルピンスキーが次から壊さないよう粛…特訓するよう言われてる」

 

「粛清って言いかけたよね!?絶対に粛清って言おうとしたよね!?」

 

「いや、粛清(とっくん)だ」

 

「ふふふ…」

 

そんなクルピンスキーとエリッヒの様子を見て、孝美が笑う。

 

(2人とも、仲が良いのね)

 

まだ言い争っている2人を見て、孝美はそう思うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回はここまでです。

次回もお楽しみに!

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