それいけ!バスターマン! 作:バスターバインバイン
やぁ!
私の名前はバスターマン!
趣味でヒーローをやっている者だ!
トレードマークは赤!トマトよりも元気だぞ!
好きな食べ物はレバーで、嫌いな食べ物などないのだ!ホントだよ!
チビッコのみんなも、好き嫌いをしていては私のようになれないぞ!
野菜もたくさん食べなさい!
さもないと、あの悪党のように血祭りにしちゃうぞ〜!!
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「サブロー…ッ、あ、ぁあ…がぁ、ゲホ!」
「ぅああ…かぁちゃん…!」
「コポッ、ゴポポ…」
ここは静閑な住宅街だった。
最近そこそこ有名になってきた窃盗系ヴィラン、スマートブラザーズがムチムチマダムのブランドバックをひったくるまでは。
スマートブラザーズは、その巧みな連携と厄介な個性から、ヒーロー達の追跡をことごとく振り切ってきた、中堅のヴィランだ。
多くの実績や経験を積んできた彼らは、俺らに盗めないものなんてねぇ、俺らを止められるものなんてねぇ!そう信じていた。信じていたのだが…
「よぉし、ようやく捕まえたぞぉ〜!お前らヴィランも懲りないな!!罪なき市民の生活を脅かすなど、このバスターマン!この、バスターマンの目の赤いうちは、絶対に許さないんだから!!」
ガンマだった肉塊から気泡が漏れる音、兄弟達のすすり泣く音が、しんと静まった住宅街に響き渡る。
「ほら、お前ら困ったちゃんは、叩いて、叩いて、叩いて!腐りきった内面を晒さないと改心しないからなぁ!ほんと、困った子猫ちゃんだよ君たちは!善良な市民の方々の爪の垢でも煎じて飲みなさい!ただし!来、世、で、な!」
真っ赤で巨大な触腕が何度も、何度も肉塊に振り下ろされる。ガンマはコンクリートごと粉砕され、混ざりあい、嗚呼、ついには道路のシミになってしまった。
「ふぃ〜、制裁完了!オイオイ今日も暑いなオイ!バスターマンは早くこのしんどくて気持ちイイ制裁を終わらせて、駆けつけ一杯したいぞ!そうは思わんかね、お、ま、え、ら!」
表面が流動する赤銅色の全身スーツに身を包んだ男が、腰から生える巨大な触腕で震えるヴィラン共を掴み、持ち上げる。
そう、この男こそが!哀の戦士、バスターマン!!
「た、頼む、もう抵抗しないから…二郎の、ベーターの命だけは、勘弁してくれ…」
「うぅ、あ、アニキ…」
お調子者だった末弟は、先程地面のシミになってしまった。ハラワタが煮えくりかえるほどの憎悪と、歯の根が合わなくなるほどの恐怖を抱きながらも、せめて。残されたたった一人の弟だけでも助かって欲しい。アルファは覚悟をきめ、懇願した。
予想もしていなかった殊勝な反応に、バスターマンは目を見開いて。
「そんなことは聞いてねぇ〜!!!」
アルファの胴体を握りつぶし、足元のコンクリートへ叩きつけた。
「人の話はちゃんと聞けよ〜!!先生も言ってたろ!言葉が通じないのなら!こうやって、身体に、ココロに、魂に、直接!ぶち込むしかねぇだろうが!オラ、オラ、オラオラオラオラオラァ!」
アルファの全身をくまなく丹念に叩き潰し、またもや地面のシミに。
「っしゃあ〜制裁完了!いやぁ、話を聞かないクソガキの教育は大変ですわ、ほんまに。世の善良な親御さんというのは、実に偉大なもんですなぁ〜」
「うぅ、うぁぁあああああ…」
「お、お前、どうしちゃったんだよ…おい、気を強く持て!まだ、仲間を失っただけだ。そうだろ?お前はまだ生きている!仲間の遺志で!な?仲間の死を無駄にするなよ!あ、が、け!!絶望を抱きながらも、一歩前に足を踏み出せることが、個性なんかよりもよっぽど強い、人のココロの強さなんだろうが!」
「あぁあああああ…」
「はぁ、もうマヂでキレそう…でもまだだ!俺がコイツを見捨てたら、誰がコイツを救済するんだ!「そこまでだ!」
「な!?この声は!?」
頭上から黒い影が降下し、目にも留まらぬ速度で手刀が振るわれ、ベーターを持った触腕が切り落とされる。
その人影はベーターを抱き抱えるや、即座にバスターマンから距離をとった。
「くそ、また犠牲者がでてしまったか…」
その名は、バスターマンの頼れる先輩、オールマイト!
「おお、オールマイト先輩じゃないかぁ!そのガスマスク、とても素敵!このバスターマン、自慢の先輩に会えてとても嬉しいぞ!元気だったかい?」
「元気どころか、怒り心頭だ!一体、何人殺せば気がすむんだ、マサヒロ!」
オールマイトはバスターマンと対峙しながら、憔悴しきったベーターを傍のヒーローに預ける。
「おいおい、勘弁してくれよオールマイト先輩。俺はただ正義の名の元にクソヴィラン共を制裁し、この街を清潔にしているだけじゃあないか。ほら、悪は根絶しなきゃ!もう俺は、無辜の市民の悲しい顔を見たくないんだよう…」
「戯言はもういい。君は危険すぎる。必ずここで打倒する。」
腹をくくり、戦闘態勢に入るオールマイト。
「なんか、今日のマイティ感じ悪くない?まぁ、そういう日もあるよね。分かる分かる。あ、ちなみにオラ、行ってみたい言葉があったんだわ」
バスターマンは、ヒーローの肩を借りて離脱しようとしたベーターを指差して、
「ソイツはもう死んでいる!!」
「あわびゅ」
ベーターは近くのヒーローを巻き込んで爆発四散。辺り一面に視認が困難になるほどの血煙が立ち込めた。
「な、ハウントドーーーーッグ!!」
「んん、制裁完了!いやぁ、今日のビールはきっとうまいぞぉ!それでは、いい子のみんなは熱中症には気をつけろよ、さらば!フハハハハ!!」
視界が回復する頃には、バスターマンは影も形もなく消えていた。
「クソォ、また救えなかった!何がNo.1ヒーローだ…っ!!ちくしょう…」
翌月、この街における犯罪発生数は8割ほど減少したという。すこいぞバスターマン!!
やっつけ一杯。
オールマイトとは戦えないよ。マブダチだし。負けるし。
ちなみに、今日のオリキャラ紹介です。
・長男アルファ(本名: 綾時凶夜)
半径500m以内の全周方向の生体反応を、遮蔽物を透過して感知することができる。頭が回る。責任感が強い。リーダー格。
・次男ベーター(本名: 綾時二郎)
体重より軽い無機物を手元にワープさせることができる。太鼓持ち。
・三男ガンマ (本名: 綾時三郎)
搭乗したことのある乗り物に変身できる。お調子者。ア○アに変身して二人を乗せ逃亡しているところ、頭に相当するボンネット部分を我らがバスターマンにクリバスターされた。