Armee du paradis ー軍人と戦術人形、地の果てにてー   作:ヘタレGalm

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補足すると、この小説におけるハンドガンの標準的な任務は前進観測(回避デバフ)、広域観測(夜戦視界確保)、威力偵察(攻撃)、味方人形演算補助(各種バフ)などです。


愉快な仲間たちが増えた

「どうしてこうなった」

 

 俺は、銃声鳴り響くキルハウスの中でボヤいた。

 何が悲しくてキャットウォーク上に設置された俯瞰席で模擬戦という名の果し合いを眺めなければならないのか。どうしたら遭遇戦の戦場が闘技場となるのだろうか。何をとち狂ったら23mm機関砲を乱射する戦術人形が生まれるのだろうか。

 

 決闘として始めたはずの模擬戦は、いつの間にか熾烈な塹壕戦の戦場となっていた。

 

 何故か隣に座る戦術人形SAAがコーラ瓶片手に苦笑した。

 

「あはは、ゴメンね。うちの連中は血の気が多いんですよ」

 

「いや、俺の部下も大分血気盛んみたいだ……ってそうじゃねぇよ」

 

 キレそう。

 

 全ての元凶はこの女狐だ。巧妙すぎるやり口の前に、いつの間にか模擬戦でケリをつける羽目になっていた。

 図々しくも仲間に入れてくれないか、と提案してきた後AK-47が煽るだけ煽り、全員がブチ切れたあたりでSAAが譲歩する態度を見せつつ模擬戦に誘導したのだ。それはそれは見事な話術で、俺たちは綺麗に引っかかっていた。

 今まで使われていなかったキルハウスで行われることとなった模擬戦は、代表2人と冷静に辞退したAR-15を除く9対9の遭遇戦と言うことになった。

 

 しかし、ブチ切れたADP側はルールがないことをいいことにチートを持ち出した。それが、23mm機関砲(ペイント弾)というわけだ。機関砲で手当り次第に壁を破壊した結果見通しの良い闘技場が生まれ、砲手だった416がリー・エンフィールドにヘッドショットを決められるまでキルハウスの障害物の破壊は続けられた。

 

 ジョナスがカウンタースナイプを決め、盛んに牽制射撃を撃ち込んでいたM14が裏取りしに来た黒人男にあっさり倒され、FALがCQCで彼を制圧し、銃座にたどり着いたM4が障害物に隠れる敵に対して景気よく制圧射撃を開始して今にいたるというわけだ。

 

 ちなみに、相手の戦力は戦術人形6と人間2、こちらの戦力は戦術人形7と人間1だ。

 相手はてんでバラバラながらも連携が取れており、Five-seveNおよびM1911による偵察とMG5の制圧射撃、AK-47、トンプソンによる強襲、そしてリー・エンフィールドと64式自のコンビによる狙撃が上手く噛み合っている。さらに強襲要員として元特殊部隊員と思しき黒人男、そして後方で指揮を執る日本人。有り合わせ感はあるものの、それなりの戦力を持っていた。

 

 だが、ウチはケタが違う。

 まず、ジョナスとFAL、スコーピオンというジョーカーたちがいる。本来は俺も含まれるが現在は負傷により除外だ。

 FALは中長距離戦のエキスパート、ジョナスは精度と連射を両立させたアタッカー、スコーピオンは並外れた動体視力と義体の性能にものを言わせた高回避という浪漫溢れる連中だ。彼らは単体で戦闘をひっくり返せるものの、それぞれ担当する射程が異なるという欠点を抱えている。

 大抵スコーピオンがFALのキルゾーンに敵を誘導するか奇襲で殲滅するかの二択になるが、今回は近距離戦、敵はすでにFALのキルゾーンに入っていた。

 ペイント弾仕様のグレネード弾さえあれば、の話だが。

 

 その他の人形も個々の技量が抜きん出ており、AR小隊や404小隊の人形、ロシアの試験部隊所属人形など名だたる部隊が揃っている。M14は例外だが、俺に言わせてもらえれば彼女は()()()。今でさえ連続狙撃に高い性能を示しているが、彼女の電脳の飲み込みの速さから考えるといずれは自己完結型の高スペックアタッカーになるだろう。要するにFALと同格だ。

 M4とAR-15のAR小隊は練度が通常の人形と比べて規格外、UMP45と416の404小隊も俺たちに同行してスニーキングミッションを達成し、さらに定数の半分で鉄血ハイエンドモデル2体を相手取れるくらいには熟練している。

 細々としたところは俺やFALが仕込んでいく必要があるが、紛れもなく俺が知る中の最強クラスに分類される連中だ。DEVGRUの連中や今の俺に匹敵する戦闘力を持っているだろう。

 

 だからこそ、ここから先は勝負にならないのだ。

 

「……え? 待って待って、おかしいですよねアレ。動きが……あっ、トンプソンが死んだ(死亡判定)!」

 

 スコーピオンが飛び出し、様子を伺っていたトンプソンを強襲撃破。彼女を狙おうとした64式自は9A-91の射撃の前に呆気なく倒れされる羽目になった。

 MG5が弾幕を張ろうとするが、FALとジョナスの猛射が頭を押さえて撃たせない。M1911が咄嗟の判断でスモークを焚いたが位置が悪かった。敵陣に焚くのではなく障害物と障害物の間に焚くべきだったな。さらにはそれを隠れ蓑にして移動するか陽動にして反対側をこっそり動くかだ。

 スモークに向かって盛んに撃つAKは、その位置が丸見えなことに気がついていない。残念、45姉の存在を忘れた君たちの負けだ。

 

 45が別角度から放つ銃弾がAKを無力化し、M4が今度は制圧射撃を開始した。射角を割り出したFive-seveNがMG5にそれを伝えたが、残念ながら警戒するべきは彼女ではない。常に最大戦力の動向を気にするべきだった。

 うちの狼たちが襲いかかる。

 

「無駄無駄ァ!」

 

「あなた達はまだまだね」

 

「チェックメイトだ……ごふっ!?」

 

 おっと、あの日本人なかなかやるな。最初からガン待ちしてやがったか、ジョナスがやられた。武器はアサルトライフルなどではなくただの拳銃だが、ヘッドラインに照準を合わせて待っていたのだ。

 

 しかし、その彼もスコーピオンの曲芸撃ちの前に屈服し、残るFive-seveNもFALにあっさりとヘッドショットを貰って伸びるはめになった。

 

「そこか!」

 

 MG5が立ち上がり、サイドアームを抜いた。MP7はこの状況ではいい判断だ。ばらまかれた4.6mm弾をFALが回避しきれず、数発もらって死亡判定。だが、後ろには気をつけよう。そこはM4のキルゾーンだろう? 

 

 23mm機関砲の猛射を喰らい、呆気なく吹っ飛ばされた。

 

「勝負はついたな。これで満足か?」

 

「あはは、寄せ集めかと思ったら一人一人が化け物だ。まあ、いいですよ。あたしが望んだ結果ですし」

 

 隣のSAAが完全にトオイメをしている。完敗とまでは行かなかったものの、実質3人に捻られたようなものだからな。ガス抜きのつもりがコテンパンにしてしまったのだ、さすがにそんな目もしたくなるか。

 

 というか、本来こんな開けた場所はFALとスコーピオンの独壇場だ。グレネードと曲芸撃ちの前にあっさり瞬殺されていたはずだが、彼女たちは手加減したのだろう。

 

 キャットウォークから下りると、実に晴れやかな顔をしたスコーピオンが歩いてきていた。

 

「なははー、あたしってばやっぱり強いねぇ!」

 

「おいおい、ガン待ちなど反則技だろう……」

 

 ジョナスが心做しかしょげているのは、待ち伏せに綺麗に引っかかったからだろう。まあ、今どきガン待ちは見ないからな。銃口突きつけて待機など普通はしない。

 

「はあ……とりあえず合流するにあたってのわだかまりは取れたか?」

 

 全員を見渡すと、若干の不承不平は残っているようだが反対する者はいなかった。

 

 

 

 

 

 

 とりあえず、目下最大の問題は人数が一気に2倍に増えたことだ。

 しかも全員が全員所属する組織からMIA判定を食らっているというおまけ付き。厄介ごとの予感しかしない。

 とにかく、指揮系統をはっきりさせることから始めることにした。

 

 すなわち役職作りと部隊編成だ。

 

 黒人の男ことロニー・スレッジハマーはどうやら俺たちと同類らしい。すなわち、元特殊部隊でリーダーを張っており、任務中にMIAとなったわけだ。編成は1人では全然手が回らないため早速手伝ってもらうこととした。無論FALとUMP45、そして俺を散々振り回してくれやがったSAAも、だ。

 

 5人で夜通し協議した結果、我らがADPは4個戦闘班と2個支援班という編成となった。戦闘班の班長はリーダー格の人間、人形を意識しているが、実際上手くいくのだろうか。

 第1戦闘班は俺を班長とする本部分隊を意識して編成した。有事においては指示を出し、激戦区に駆けつけて支援を行う部隊だ。俺以下FAL、MG5の3人。

 第2戦闘班は404小隊とAR小隊の混成だ。どのような状況にも対応できる中央即応集団であるが、主に偵察任務、潜入任務を意識している。UMP45以下UMP9、416、M4A1、AR-15だ。

 第3戦闘班は狙撃チーム。うちが擁するライフル人形は全員ここに編入した。リー・エンフィールド、M14、64式自、M1911だ。観測をM1911が担い、64式が周辺警戒と中距離攻撃を行う。

 第4戦闘班は強襲チームだ。トンプソンとAK-47、スコーピオンを突入役として、ロニーとジョナスでバックアップする。

 

 一方、支援班に関しては戦闘班の全体的なバックアップを意図している。

 第1支援班、通称諜報班のリーダーはUMP45に兼任してもらい、実行部隊として第2戦闘班や第3戦闘班を当てることとした。任務には諜報に加え、電子戦や心理戦も含まれるためだ。偵察および前進観測としてSAAとFive-seveNを専属とする。

 第2支援班、通称基地班は完全な後方部隊となる。9A-91を筆頭とする(彼女しかいない)基地開発班や日本人ことリョータロー・オグラによる火力支援班だ。

 特に、リョ―タローがヘリや戦闘機を含む乗り物の操縦に長けているというということは朗報だった。これでヘリが自由に使えるようになる。

 

 

 

 そろそろ東の空が白くなり始めてきた頃合いに大あくびとともにSAAとロニーが去った後、一通りの編成をラップトップPCに打ち込んだところでFALが俺の顔を覗き込んできた。

 

「どうした、相棒」

 

「何か言いたいのはあなたじゃないの?」

 

 確かに、それは図星だ。

 この気配りもできて俺よりも優秀な頭脳を持つ7年来の戦友に何よりも相談したいことがあるのは確かだ。しかし、彼女に打ち明けてもいいのかという躊躇もある。

 

「……たまには素直に話してしまいなさい。楽になるわよ」

 

「楽に、か……難しく苦しいことは確かだが、これは俺が背負わなければならない問題な気がするが?」

 

「なに言っているの、私はあなたの副官でしょう。ねえ、相棒?」

 

 その言葉が決め手だった。

 

「はぁ……俺は正直悩んでいる。SAAの『脱出路を教える』という言葉に釣られて彼女たちを受け入れてしまった。彼女たちの戦力が魅力的だったということもあるが、それ以上にここにいる面々の生還を優先してしまったんだ」

 

「いつになく弱気ね、ディビッド。……なによ、簡単なことじゃない」

 

 そこで言葉を切り、FALは俺に向かって笑いかけた。

 

「私たちはあなたについて行くわ。それに、同じ死線をくぐったらいがみ合いなんてどうでもよくなるのよ」

 

戦士の本性(Nature of warrier)、か」

 

「そんなところね」

 

「確かに、そうかもしれん。俺たちは少々自由に過ぎるからな」

 

「大丈夫、()()()はそんな人間たちの集まりだった」

 

 それも、そうか。懐かしい、つい7年前だというのに随分と昔のことに思える。ああ、そうか。もうD()E()V()G()R()U()()()()()()()()()()()()()()からか。

 

「いがみあって、ぶつかって、殴りあって……でも、最後には本当の意味での戦友になれたでしょう?」

 

 過ぎ去りし日々を懐かしむFALは、どこか儚く見えた。

 堪らず、片腕で抱き寄せる。

 

「大丈夫だ、FAL。俺は、お前のそばから消えないさ」

 

 耳元で囁いた。びくっとなってしまう彼女が可愛い。

 ああ、俺にも何かを可愛いと思える心は残っていたんだな。

 

「ありがと、ディビッド……ずっと、そばにいてね」

 

 紅くなった顔で小さく呟かれたその言葉が、やけに耳に残った。まるで不吉の予兆のように。

 

「あのー、私の前でいちゃつかないでくれますかー?」

 

 すまん、45。




部隊編成終わりました。
ロニーは黒人の大男、リョータローは日本人のスリムなおじさんです。ディビッドと同年代。ちなみにジョナスも同年代です。

そろそろFALちゃんがデレてきます。砂糖を吐く準備はオーケーですか?

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