Armee du paradis ー軍人と戦術人形、地の果てにてー   作:ヘタレGalm

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キャラ崩壊注意です。
どうしてこうなった。


AR小隊最後の1人と愉快な仲間たち

 ディビッド視点

 

『ドロップゾーン上空に到達』

 

「よし、潜入チーム降下開始! 支援チームも続け!」

 

「降下、降下!」

 

 高度1万メートル、高射砲すら届かない遥かな上空で、グリフィン空挺部隊の所有するステルス輸送機が後部カーゴランプを開いた。

 床を蹴り地上に向かって身を踊らせるのは、長い髪を踊らせる戦術人形たちだ。中に無骨な軍人も混じっているが、そこは突っ込むべきところではないだろう。

 

 

 

 教本通りの高高度降下低高度開傘(HALO降下)でランディングゾーンまで降下する。高度300で開傘、滑空しながら全員が無事に地面に足をつけた。

 夜間ということもあり光学センサーには反応していないはずだ。

 

「行動開始。支援チームは警備所を襲撃、確保しろ。絶対に痕跡を残すな。潜入チームは俺に続け、行くぞ」

 

 俺の指示で一斉に行動を開始する。支援チームが別方向へ離脱し、潜入チームはちらちらと雪が舞う密林に踏み込んだ。今回、随伴する空挺隊員のうちM16は潜入、WA2000は支援と振り分けている。

 これはそれぞれの銃種を鑑みてのことだ。

 

 

 

 プラウラーやスカウトが歩哨として放たれているが、正面戦闘では障害にすらならなくともこういった作戦ではかなり警戒すべき相手になる。なにしろ見られたらゲームオーバーなのだから。

 

 行く手に、警戒するスカウト2体が見えた。

 

 迂回しようにも別の道はプラウラーが配置されているらしい。撃破するしかないことを理解し、ジョナスとFALに指示を出す。

 

「撃て」

 

「I copy」

 

 2人の持つFALとM4A1から放たれた銃弾がスカウトの制御ユニットを正確に貫徹。

 単発では効き目が悪くとも、数発まとめて当てれば十分な打撃を与えられるのだ。装甲というものは連続した弾着に弱いが故に。

 

 動作を停止したスカウトを踏み越え密林を進む。まるで全てが停止したかのように静かだが、残念ながら敵意を持つものは多い。

 たとえば、地を這う蛇など。

 

 周囲を警戒する傍ら、ジョナスのM4A1カービンに目が行った。

 

「ジョナス、そのM4はいつものMWSじゃないな」

 

『ああ、市場に流れてたジャンクパーツから作った即席の近接戦カスタムさ』

 

「ああ……それで珍しくフォアグリップなのか」

 

『リュングマンじゃなくてショートピストンも組み込んである。トドメに.300BLK仕様だ。無茶な改造した自覚はあるが性能はお墨付きだぜ』

 

「当てられるならいい」

 

 いつものゴテゴテとしたシルエットが若干スッキリしていたのだ。

 ACOGスコープもIMI製のMARSドットサイトに交換されており、室内戦を意識したカスタムだとわかる。

 小さく答えたディビッドは、ハンドサインで停止を指示する。

 

 狙撃ポイントの高台だ。

 

 本来ならここから狙撃を行うのだが、今回の目標は潜入である。

 

「ラペリングだ」

 

 持ってきた鉤つきロープを岩に突き刺し、高台から身を踊らせる。左手でロープをつかんでいるため落ちることはない。腰につけた巻上げ機で速度を調整しつつ、5秒とかからずに高台下へと下りた。

 

 他の面々も次々に下りてくる。

 全員が降下し終えたところで、再び移動を開始。すでに敵基地の敷地内であるため細心の注意を払って行動する。

 

 ダクトから中に入った。

 中には換気扇やら対侵入者用のトラップが設置されていたが、ダクトに入った瞬間銃弾が撃ち込まれるなんてことがないだけマシだ。

 HK416を構え、換気扇にストックを叩きつけて突破。すぐ後ろにいるFALがトラップの制御装置を撃ち抜いて無力化した。

 

 換気口を蹴り抜いて突入口を形成、飛び降りる。赤色灯に照らされた室内は薄暗い。

 そのタイミングでAR-15から通信が入った。

 

『指揮官、ターゲットは3ブロック先です。巡回は緩いですが接触は避けるのが賢明かと』

 

「わかってる」

 

 体内通信で答えて、電子扉から部屋を出た。

 光学迷彩マントは敢えて持ち込んでいない、というのもマントに触れられたらジ・エンド、しかも遮熱光学迷彩とはいえ至近距離まで近づかれたら勘のいい敵は気づいてしまうからだ。

 

 大方の鉄血兵がスリープモードに入った基地内を移動することしばし、M4 SOPMODⅡが囚われていると思しき部屋の前まで来た。ここまでノーキルノーアラートだ。

 

「UMP45、ハッキング頼む」

 

『りょーかい……5秒後にオープン』

 

 銃を抱え、扉のそばで待つ。ハッキングで扉が開くと同時にスタングレネードを投げ入れて突入だ。

 

『4……3……って待って、中から解錠操作が!』

 

「な……!?」

 

 即座に立ち上がり、ヘッドラインに銃口を突きつける。扉の解錠捜査ということは敵がいるということだ、クソッタレ。

 

 プシュ、という音と同時に扉が開く。

 引き金を引こうとした指は、出てきた人物の声によってかろうじて止められた。

 

 

「よう、パイ食わねえか?」

 

 

「何やってんだオイ」

 

 出てきたのは、出来立てと思しきアップルパイを抱えた鉄血ハイエンドモデル・処刑人。エプロン姿のハイエンドモデルというシュールな姿には一周回って呆れすら感じられる。

 

 馬鹿だ。

 

「今すぐアップルパイを落とさないように床に置いてから両手を挙げなさい、処刑人。従わないのならば非常に残念ですが撃ちますよ」

 

 M4A1が警告をかけたが、よだれのせいでいろいろ台無しだ。

 一応彼女の名誉のために擁護しておくと、このご時世天然モノの林檎や砂糖というのは貴重であり、それをふんだんに使ったアップルパイなど滅多にお目にかかることのできないモノなのだ。しかも、匂いからして純天然品。

 

「おうおう、そんなに警戒しなくてもこの体勢だったら撃てないっての……デストロイヤー、客人来たぞ! そろそろゲームやめろ!」

 

「りょーかーい! ほら、ソプ子も」

 

「わかってるよー、でもさ沼ってるハンターどうする?」

 

 処刑人の声に反応して、奥から2つの声が帰ってきた。

 ……っち、最悪ハイエンド×4とこの狭い空間でやり合うのか。処刑人の様子から鑑みてドンパチは避けられそうだが、覚悟は決めておかないとならない。

 

 ふと、M4の愕然とした声を聞いた。

 

「SOPⅡ!? 何やってるの!?」

 

「久しぶり、M4。この通り私は無事だよー?」

 

 ひょっこりと顔を出したのは白い髪に赤のメッシュを入れた戦術人形。間違いなく、IOPハイエンドモデルのM4 SOPMODⅡだった。

 

「まあ入ってくれ。この通り攻撃するつもりはさらさらないし、貴官らに協力する用意もある」

 

『ディビッド、どうするの? 判断は貴方に任せるけれど』

 

「潜入チーム各位、話を聞いてみる価値はあるだろう。ついでに言うとM4 SOPMODの置かれている状況も確認したい」

 

『オーケイ』

 

 体内通信で密談を交わしつつ、処刑人に頷いて見せた。

 

 トラップの類がないことを確認し、案内されるままに部屋へと入る。伏兵もなし、光学迷彩による揺らぎもなし。不気味なほどにオールクリアだ。

 

 部屋は据え置き型ゲーム機の筐体やPC、モニターが並んでおり、所謂ゲーム部屋の類だと推察できる。人をダメにするクッションやポテトチップス等の軽食類もあり、それだけで一日費やすことが出来そうだ。

 ご丁寧に、人をダメにするクッションの上は1人の鉄血ハイエンドモデルが占拠していたが。

 

 それでいいのか鉄血ハイエンド。

 

「ハンター、ほら休憩入れろ。何ムキになってんだ?」

 

「まだだ……あと一周したら出てくれるはず……」

 

 当のハンターはゲームジャンキーと化していた。ダメだこりゃ、手遅れだ。

 

 ……そうじゃなくて、だ。

 

「で、処刑人ドノ。何がお望みだ?」

 

「とりあえず夜食入れてからにさせてくれ、一番頭の動くハンターがこれじゃ話にならん」

 

「それも……そうか」

 

「と言うわけだ、お前らもパイ食わねえか?」

 

「ひひひ、処刑人のパイは美味しいよ?」

 

 

 

 

 

 

 十数分後

 

 うん、その、なんだ。

 鉄血ハイエンドモデルが焼いたと思しきアップルパイは最高に美味かった。楽園ですら基本的に天然品は食べられないのだ、素材がいいとしか言えない。ついでに言うと紅茶も天然モノだった。

 こんな飯にありつけたのは、何年振りだろうか。

 感極まって泣きたくなる俺たちを見回して、処刑人は自慢げに笑った。

 

「食材は裏ルートで入手していたんだ。ナパーム弾と偽って輸入していたから中身開けられてバレる心配もなかった」

 

「……過去形か」

 

「ああ、そうさ。……やっちまったんだよ、俺の部隊が」

 

「それでトップに切られたか? だとすると話というのはここからの脱出と推察できるが」

 

「……ああ」

 

 処刑人は、肯定した。彼女の後を引き継いでハンターが話を続ける。

 

「俺たちがPMC『Armee du paradis』に求めるのはここにいる4人の身柄の保護だ。代価は鉄血内部の情報、そして戦術人形M4 SOPMODⅡのグリフィンへの引き渡し。あとそうだな、食料事情もどうにかしてやるよ」

 

 対価としてはトントン、と言えるかもしれない。

 もちろん、敵であったはずの鉄血ハイエンドモデルを迎え入れると言うハイリスクに目を瞑れば。

 だからこそ対価を釣り上げる。

 

「駄目だな、その場合グリフィンからもあんたらを隠し切らなきゃならん。鉄血からの攻勢激化、最悪はあんたらの裏切りも考えられないわけじゃない」

 

「そ、それは……」

 

「処刑人、落ち着け。……エドワーズ、その場合は交渉決裂と見て、この基地ごと吹き飛ばすぞ?」

 

 なるほど、そう来たか。だがツメが甘いな、こちらは電子戦のエキスパートが2人も来ているんだ。

 

「自爆は悪人の美学、か。……そうだな、その脅しは通用しないとだけ言っておこう。まあ、このまま手ぶらで帰るのも性に合わないし、メリットも魅力的ではある。……武器の指揮官預かりとリミッター設定、IFFユニット組み込みで手を打とう」

 

「考えたな。確かに私たちは電子戦に弱いから有効だ……仕方がない、その条件を飲もう。それに、メリットに追加だ。……私たちは、腐ってもハイエンドだぞ?」

 

 その言葉と共に、ハンターが儚く笑う。

 所詮は戦闘しか能がない我が身を嗤うかのように。

 

「オーケイ、とりあえず事情を全て説明しやがれ。俺はディビッドと違って理詰めの人間なんだ」

 

ジョナスが吐き捨てた。




はい、脳内劇場のSOPちゃんと処刑人ドノが綺麗にプロットを粉砕してくれました。あと1話、基地に戻るまで続きます。

処刑人:主婦力の塊。ハンターの面倒を見ていたらこうなった。

ハンター:平時はダメ人形。そこそこ頭は回るが電子戦は無理。ゲームジャンキー。

デストロイヤー:基地の主。処刑人とハンターとSOPⅡを匿っていたら敵認定された。ゲーヲタ。

SOPⅡ:鉄血殺すウーマンだったはずがどうしてこうなった。次で説明入れます。ゲーヲタ。

キャラ崩壊どころか半分オリキャラ化しているじゃねぇか……。


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