ありふれない破壊者の世界最強   作:膜孥 成呶

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3話

 ステータスをチェックしてから、2週間と1日。ん、原作3・4話目?そんなのありませんよ?

 話を戻すが、現在俺達は【オルクス大迷宮】の正面入り口の広場に集まっていた。

 

 俺的には、もっとこう迷宮としての薄汚れた入り口を期待していたのだが、まるで博物館の入場ゲートのように清潔感がある。博物館のようなと比喩する理由もあり、入り口付近には受付窓口がある。ここで、ステータスプレートをチェックし、死亡者数を正確に把握するためだそうだ。いつから在るのかは、知らないが戦争中と言うのもあり戦力を正確に測るためだろう。

 

 広場には、露店などもところ狭しと並んでいて、お祭り騒ぎのようだ。浅い迷宮には、冒険者が稼ぎに来ることがある。それを狙って武器屋などの装備屋さん等が進出する、定住する商人に雑貨を売る商人が来る、人が集まれば少なからず争いが起きる、さらには犯罪の拠点とする人も現れる、戦争中に国内に問題を抱えたくない国が動く、国がギルドに依頼をする←今ここ。てな感じで、迷宮の近くには、町ができるってことだ。

 

 そんなことは、さて置き。俺達は、メルド団長とその部下達の後をついていく。大半のクラスメイトは、上京したての人の如くキョロキョロしながら後を着いていっていた。そんなにキョロキョロしていたら、スリに会うと思ったが、メルド団長の威圧できなサムシングで誰一人スリに会わなかった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 迷宮の中は、外とは無縁の静けさだった。

 高さは5m位の通路に明かりなどはなく、ただ壁が発光しているかのように、迷宮は明るかった。【オルクス大迷宮】は、緑光石の産出地で、この迷宮もその光石の鉱脈を掘ってできているのだとか。

 

 俺達は、隊列を組ながらゾロゾロと歩く。前列が、天之川らで、中列が俺やアビィ、後列がハジメ、と言う並びだ。メルド団長達兵士は、クラスの列を挟むように進む。暫く行くと、不自然に天井が高くなったドーム部屋に出た。

 

 と、その時、壁の至るところから灰色の毛玉が湧き出てきた。

 

「よし、光輝達が前に出ろ。他は、下がれ。交代で前に出てもらうからな、準備しておけよ。

 あれは、ラットマンと言う魔物だ、すばしっこいが大した敵じゃない。冷静に行け。」

 

 その言葉通り、ラットマンは速いスピードで飛びかかってきた。速いと言っても、そこまで早くもない。まぁ、目視できるようなスピードでは、遅すぎるだろ。

 

 ラットマンの目が、赤く不気味に光る。筋肉バキバキの体つきは、ネズミよりゴリラと言った方が的を獲ている。強調したいのか何なのか、ラットマンは自身の胸筋を全面に押し出す。ニワカ知識だが、ラットとは背中の筋肉の筈だったが、この世界では違うのかな?まぁ、ただのネズミだし天之川達なら問題ないだろう。

 

 間合いに入ったラットマンを、天之川、八重樫さん、坂上の3人で迎撃する。そこに、白崎さんと彼女と親しい自爆女の中村恵里と、坂上の未来の妻の谷口鈴が魔法の詠唱を始める。ぶっちゃけると、訓練を受けてないので、そこまで良いのかわ理解できない。

 

 天之川は、他の色すら呑み込む白いバスターソードを、ラットマン並みの速さで振るう。天之川の剣は、ハイリヒ王国の所有するアーティファクトの一つで、名称は聖剣だ。光属性の効果が付与されている剣は、敵の弱体化&自身の強化だ。いや、もう"聖なる"って書いて"チート"って読んで言いと思うのだが……

 

 坂上は、一言で言うと「タンク」だ。短いと思うが、坂上は空手部に入っていた恩恵か天職が、拳士であることから天之川と同じくアーティファクトの籠手と脛当てをつけている。それらは、衝撃波を打ち出せ、決して壊れないらしい。そして、なぜタンクと呼ぶのかそれは、拳打と脚撃で後方に敵を通さんとする姿勢、盾が無いのがインパクトに欠ける。

 

 八重樫さんは、サムライだったのもあり、天職は剣士だったようだ。刀のような刀身にシャムシールのような反りと柄のある武器と、抜刀術の併用で魔物を屠っていく。その手際のよさに見ていた兵士達が感嘆の声を漏らす。そうこうしているうちに、魔法の詠唱をも整ったようだ。

 

「「「暗き炎渦巻いて、敵の尽く焼き払わん、灰となりて大地へ帰れ───〝螺炎〟」」」

 

 魔法がラットマンに当たると、「キィィィ」と言う断末魔を上げて灰になる。本当なら魔物は、倒すと魔石を取れるらしいが、魔法の威力が強かったのか魔石すら残らなかった。エンカウントしてから数分で、ドーム部屋にいた魔物は、全滅していた。天之川くらいのレベルになると、この辺りの魔物は、タタカイニならないようだ。

 

「ああ~、うん、よくやったぞ! 次はお前等にもやってもらうからな、気を緩めるなよ!」

 

 始めてきた迷宮にテンションの上がっている、メルド団長はどうにか落ち着かせようとするが、やはりテンションは、上がりっぱなしだ。

 

「それとな……今回は訓練だからいいが、魔石の回収も念頭に置いておけよ。明らかにオーバーキルだからな?」

 

 メルド団長の言葉に白崎さん達魔法支援組は、やりすぎを自覚して思わず頬を赤らめるのだった。そこからは特に問題もなく交代しながら戦闘を繰り返し、順調よく階層を下げて行った。そして、一流の冒険者か否かを分けると言われている二十階層にたどり着いた。現在の迷宮最高到達階層は六十五階層らしいのだが、それは百年以上前の冒険者がなした偉業であり、今では超一流で四十階層越え、二十階層を越えれば十分に一流扱いだという。

 

 もっとも、迷宮で一番恐いのはトラップである。場合によっては致死性のトラップも数多くあるのだ。しかし、トラップ対策として〝フェアスコープ〟というものがある。これは魔力の流れを感知してトラップを発見することができるという優れものだ。迷宮のトラップはほとんどが魔法を用いたものであるから八割以上はフェアスコープで発見できる。だが、索敵範囲がかなり狭いのでスムーズに進もうと思えば使用者の経験による索敵範囲の選別が必要だ。

 

 そのため、俺達が素早く階層を下りれたのは、ひとえに騎士団員達の誘導があったからだと言える。メルド団長からも、トラップの確認をしていない場所へは絶対に勝手に行ってはいけないと強く言われているのだ。

 

「よし、お前達。ここから先は一種類の魔物だけでなく複数種類の魔物が混在したり連携を組んで襲ってくる。今までが楽勝だったからと言ってくれぐれも油断するなよ! 今日はこの二十階層で訓練して終了だ! 気合入れろ!」

 

メルド団長のかけ声がよく響く。ここに来るまで俺は、特になにもしていない。基本的には、ハジメと一緒に活動している。俺が弱らせた魔物をハジメが、錬成で作った落とし穴に落として倒すの繰り返しだ。

 

 再び、こっちに来た魔物をHPを1にする感覚で、攻撃をする。ハジメに万が一がないように、極力動けないくらいにしておく。ハジメは、魔物の近くに行き手を地面に突いて錬成をする。少ししか一緒に居ないが、だんだん錬成の精度が上がっているように感じる。

 

 ハジメは、魔力回復薬を口に含みながら、額の汗を拭う。技能は、使うのに魔力を使うが、ハジメの魔力は未だ2桁なので、こうやって魔力回復薬を飲むのだ。兵士達が感心したようにハジメを見ていることには気がついていないようだ。

 

 また少し、魔物を狩っていく。ハジメが徐に白崎さんの方を向く。確か原作だと昨日の夜に、白崎さんがハジメを守るとか言ったんだけ?まぁ、ハジメが奈落に落ちそうになったら……助けは、しなくて良いか。どうせ成り上がってくるんだし。

 

「香織、なに南雲君と見つめ合っているのよ? 迷宮の中でラブコメなんて随分と余裕じゃない?」

 

 白崎さんをからかうように八重樫さんが言うと、白崎さんは顔を茹で蛸のように赤くして反論する。

 

「もう、雫ちゃん! 変なこと言わないで! 私はただ、南雲くん大丈夫かなって、それだけだよ!」

 

 八重樫さんは、何か言いたげだか、何も言わずに笑っている。

 そんな様子を横目に見ていたハジメは、ふと視線を感じたのか思わず背筋を伸ばしていた。ねばつくような、負の感情がたっぷりと乗った不快な視線だ。いつも教室でハジメが、受けていたものより強い。異世界に来たこともあり、パワー差でこうも変わるとは、近くにいる俺でも、圧倒される。

 

 迷宮の階層は、数キロ四方で、未知の階層ではマッピングも同時にやらなければならない。そのマッピングをするには、数十人規模の人数で半月から一ヶ月ほどかかるのが普通だが、65階層まで到達した冒険者達が47階層まで正確にマッピングしてあるため、迷ったりトラップに引っ掛かることはない。

 

 二十階層の一番奥の部屋はまるで鍾乳洞のようにツララ状の壁が飛び出していたり、溶けたりしたような複雑な地形をしていた。この先を進むと二十一階層への階段があるらしい。そこまで行けば今日の実戦訓練は終わりだ。神代の転移魔法の様な便利なものは現代にはないので、また地道に帰らなければならない。一行は、若干、弛緩した空気の中、せり出す壁のせいで横列を組めないので縦列で進む。

 

 すると、先頭を行く光輝達やメルド団長が立ち止まった。訝しそうなクラスメイトを尻目に戦闘態勢に入る。どうやら魔物のようだ。メルド団長の索敵能力は、すごいものだ。

 

「擬態しているぞ!周りをよ~く注意しておけ!」

 

 メルド団長の忠告が飛ぶ。その直後、前方でせり出していた壁が突如変色しながら起き上がった。壁と同化していた体は、今は褐色となり、二本足で立ち上がる。そして胸を叩きドラミングを始めた。

 

「ロックマウントだ!二本の腕に注意しろ!豪腕だぞ!」

 

 メルド団長の声が響く。天之川達が相手をするようだ。飛びかかってきたロックマウントの豪腕を坂上が拳で弾き返す。天之川と八重樫さんが、取り囲もうとするが、鍾乳洞の歪な地形のせいで足場が悪く思うように囲むことができない。

 

 坂上の人壁を抜けられないと感じたのか、ロックマウントは後ろに下がり仰け反りながら大きく息を吸った。

 

 直後─────

 

グゥガガガァァァァアアアアーーーー!!

 

 

 

 部屋全体を震動させるような強烈な咆哮が発せられた。その威圧と空気の振動により、天之川達は怯んでしまう。

 

「ぐっ!?」

「うわっ!?」

「きゃあ!?」

 

 これは、ロックマウントの固有魔法“威圧の咆哮”だ。魔力を乗せた咆哮で一時的に相手を麻痺させる。それをまんまと食らってしまった光輝達前衛組が、一瞬硬直してしまった。

 

 ロックマウントはその隙に突撃するかと思えばサイドステップし、傍らにあった岩を持ち上げ香織達後衛組に向かって投げつけた。動けない前衛組の頭上を越えて、岩が後衛組へと迫る。後衛組が、準備していた魔法で迎撃せんと魔法陣が施された杖を向けた。避けるスペースが心もとないからだ。

 

 しかし、発動しようとした瞬間、俺達は、衝撃的光景に思わず硬直してしまう。

 なんと、投げられた岩もロックマウントだったのだ。空中で見事な一回転を決めると両腕をいっぱいに広げて香織達へと迫る。「か・お・り・ちゃ~ん!」という声が聞こえてきそうである。しかも、妙に目が血走り鼻息が荒い。後衛組は、「ヒィ!」と思わず悲鳴を上げて魔法の発動を中断してしまった。

 

「こらこら、戦闘中に何やってる!」

 

 慌ててメルド団長がダイブ中のロックマウントを切り捨てる。後衛組は、「す、すいません!」と謝るものの相当気持ち悪かったらしく、まだ、顔が青褪めていた。

 そんな様子を見てキレる若者が一人。正義感と思い込みの塊、そう我らが勇者天之河光輝である。

 

「貴様……よくも香織達を……許さない!」

 

 どうやら気持ち悪さで青褪めているのを死の恐怖を感じたせいだと勘違いしたらしい。彼女達を怯えさせるなんて!と、なんとも微妙な点で怒りをあらわにする天之川。それに呼応してか彼の聖剣が輝き出す。

 

「万翔羽ばたき、天へと至れ───〝天翔閃〟!」

「あっ、こら、馬鹿者!」

 

 メルド団長の声を無視して、光輝は大上段に振りかぶった聖剣を一気に振り下ろした。

 刹那、詠唱により強烈な光を纏っていた聖剣から、その光自体が斬撃となって放たれた。曲線を描く極太の輝く斬撃が僅かな抵抗も許さずロックマウントを縦に両断し、更に奥の壁を破壊し尽くしてようやく止まった。

 

 パラパラと部屋の壁から破片が落ちる。「ふぅ~」と息を吐きイケメンスマイルで香織達へ振り返った光輝。香織達を怯えさせた魔物は自分が倒した。もう大丈夫だ!と声を掛けようとして、笑顔で迫っていたメルド団長の拳骨を食らった。

 

「へぶぅ!?」

「この馬鹿者が。気持ちはわかるがな、こんな狭いところで使う技じゃないだろうが! 崩落でもしたらどうすんだ!」

 

 メルド団長のお叱りに「うっ」と声を詰まらせ、バツが悪そうに謝罪する光輝。香織達が寄ってきて苦笑いしながら慰める。その時、ふと白崎さんが、崩れた壁の方に視線を向けた。

 

「……あれ、何かな? キラキラしてる……」

 

 その言葉に、全員が香織の指差す方へ目を向けた。

 そこには青白く発光する鉱物が花咲くように壁から生えていた。まるでインディコライトが内包された水晶のようである。白崎さんを含め女子達は夢見るように、その美しい姿にうっとりした表情になった。やはり流石と言ったところか。天之川の行為は、すべて裏目に出てしまう。

 

「ほぉ~、あれはグランツ鉱石だな。大きさも中々だ。珍しい」

 

 グランツ鉱石は、結婚(・・)などの指輪、ネックレスなどに使われる鉱石だ。

 

「素敵……」

 

 白崎さんが、メルドの簡単な説明を聞いて頬を染めながら更にうっとりとする。そして、誰にも気づかれない程度にチラリとハジメに視線を向けた。もっとも、八重樫さんと俺と檜山だけは気がついていたが……

 

「だったら俺らで回収しようぜ!」

 

 そう言って唐突に動き出したのは檜山だった。グランツ鉱石に向けてヒョイヒョイと崩れた壁を登っていく。それに慌てたのは、メルド団長だ。

 

「こら!勝手なことをするな!安全確認もまだなんだぞ!」

 

 しかし、檜山は聞こえないふりをして、とうとう鉱石の場所に辿り着いてしまった。メルド団長は、止めようと檜山を追いかける。同時に兵士の一人がフェアスコープで鉱石の辺りを確認する。そして、一気に青褪めた。

 

「団長! トラップです!」

「何ッ!?」

 

 しかし、メルド団長も、騎士団員の警告も一歩遅かった。檜山がグランツ鉱石に触れた瞬間、鉱石を中心に魔法陣が広がる。グランツ鉱石の輝きに魅せられて不用意に触れた者へのトラップだ。言葉の裏には針千本、万の偽り万の嘘ってことだ。

 魔法陣は瞬く間に部屋全体に広がり、輝きを増していった。まるで、召喚されたあの日の再現だ。

 

「くっ、撤退だ! 早くこの部屋から出ろ!」

 

 メルド団長の言葉に生徒達が急いで部屋の外に向かうが……間に合わなかった。部屋の中に光が満ち、俺達の視界を白一色に染めると同時に一瞬の浮遊感に包まれる。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 空気が変わったのを感じた。次いで、浮いていた体がドスっと地面に落ちる。どうにか体勢を立て直し俺は、地面に立つ。クラスメイトのほとんどは、尻餅をついていたが、メルド団長や兵士、天之川達など一部の前衛職の生徒は既に立ち上がって周囲の警戒をしている。

 

 どうやら、先の魔法陣は転移させるものだったらしい。現代の魔法使いには不可能な事を平然とやってのけるのだから神代の魔法は規格外だ。

 

 この65階層は、ゲームのボス部屋のように広いが、橋一本で上へ行く階段と下に下りる階段が両端にある。そろそろ変身が必要になってくるかな?

 どちらが登り階段かを確認したメルド団長が、険しい表情をしながら指示を飛ばした。

 

「お前達、直ぐに立ち上がって、あの階段の場所まで行け。急げ!」

 

 雷の如く轟いた号令に、わたわたと動き出す生徒達。

 しかし、迷宮のトラップがこの程度で済むわけもなく、撤退は叶わなかった。階段側の橋の入口に現れた魔法陣から大量のガイコツの魔物が出現したからだ。更に、通路側にも魔法陣は出現し、そちらからは一体のベヒモスが出てきた。

 その時、現れた巨大な魔物を呆然と見つめるメルド団長の呻く様な呟きがやけに明瞭に迷宮に響いた。

 

「まさか、ベヒモス…なのか……?」




次回、とうとう主人公がディケイドに変身します。ライダー要素が少なくてすみません。多分次回からもっとライダー要素が、増えると思われますので、次回も見ていただけると幸いです。

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