人形、斯くあれかし   作:Rione

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ヴァルハラコラボが近いですね。
まあこの作品では今まさに勝利かヴァルハラかを選ばさせているわけですが(激うまギャグ)
とりあえずサトハチで爆死した分を取り返すべく委託を頑張りたいと思います。



プロローグ04

「──!!」

 

ゴゴン、とひときわ大きく施設が振動する。

パラパラと降り注ぐ粉塵を頭から浴びながら、エイルは頭上を見上げた。

そして、片手でタイピングを続けたままもう片方の手を耳に当て、今まで切っていた無線機のスイッチを入れる。

 

『クソッ、至急至急!! ティファレト06より全体に通達!! エージェントだ、鉄血の元締めが出やがったぞ!!』

『お前それマジで言ってる!? だとしたら戦力足りねぇぞ!!』

『ビナー隊は何処で油売ってやがんだ! 上層でやりあってんのかと思ったらそうでもないっぽいし、中層下層でも見かけてない! まさか所外にいるんじゃないだろうな!?』

『はぁ!? ケテルは書類上にしか存在しない部署だしダアトが博士だけな今、ここの最高戦力はアイツらだぞ!?』

『クソッ、ゲブラー02がやられた!! 福祉部門に手の空いてる奴はいないか!?』

『こちらケセド06、そちらに急行する! 5分持たせてくれ!!』

『ほっ、ホクマー05より報告! ビナー01の自室に侵入したところ、「ちょっと呼ばれたので部下と一緒に出立する」といった旨の置手紙が……』

『隊長格が報連相しっかりしないでどうするんだクソァッッッ!!!!』

『落ち着きなさいゲブラー01! 気持ちは痛いほどよくわかるけど──わきゃぁっ!!? お、屋内で狙撃……!?』

『ティファレト03ダウン! ネツァク05がカバーに入ってる、余裕のある奴は手伝いに来てくれ!!』

『無茶言うなこっちだってギリギリなんだっつーの!! 畜生、コイツらエージェントが出張ってきたと単に動きが良くなりやがったぞ!?』

 

最早前線は阿鼻叫喚だ。鉄血工造の首魁がまさかの参戦、それによる動揺の隙を突かれて防衛線に食い込まれ始めた。

さらに間の悪いことに、どうやらビナー隊は事が起きる前にさっさと出立……出奔? あるいは脱走? していたらしい。……そういえば、少し前に用事がある的なことを言っていたような……。

 

「……まさか、外患誘致に走った訳じゃないデショウね……?」

 

最悪の想像が脳裏をよぎる。

万が一ビナー01、ないしビナー隊全員が鉄血工造によって送り込まれた斥候であった場合、状況がより悪い方向に傾きかねない。

とその時、状況をわきまえない暢気な声が聞こえてきた。

 

『ケセド01より提案、場所と時間は未定だけど後で絶対俺達で囲んでビナー01をフクロにしよう』

『今それどころじゃねぇだろこのタコ!! ゲブラー01賛成だクソァ!!』

『後で返事しますから! 今は集中してください!!』

『いやぁ、俺はちゃんと集中しているとも。今どきコーヒー豆は中々貴重でね、変に工程をしくじる訳にはいかないからね』

『暢気にコーヒー飲んでる場合かはっ倒すぞ!!?』

『ははは、それは困るな──おっと、こんなところにまで鉄血が』

『はぁ!? お前今どこにいるんだよ!!』

『福祉部門のメインルームだが? ハハッ、流石にただのハンドガンじゃ役不足みたいだな。トビーレミントンでも手元にあればよかったんだが』

『大至急エレベーターホール閉鎖しろティファレト01ィ!!!』

『分かってるけど今それどころじゃないのよ!!』

 

と、どうやら福祉部門の方にも鉄血が侵入してきたらしい。それでも特に焦った様子を見せない辺り、ケセド01は流石の胆力と言わざるを得ないが。

とはいえ、傷病者の治療などを一手に請け負っている福祉部門の柱が倒れるのは非常に宜しくない。

エイルは一度キーボードから手を放し、脇に置いてあったコンソールを引き寄せて別のシステムを起動しながら無線に告げた。

 

「ダアト01より全隊へ通達。エレベーターホールは管理者権限で閉鎖および機能停止させマス。こちらの事は考えず迎撃に集中してくだサイ」

『助かった所長! 礼と言っちゃあなんだが後でコーラップス弾頭をプレゼントするぜ!!』

「ネツァク01は一刻も早くその特級指定危険物を廃棄しなサイ。これは厳命デス」

『ンな殺生な!?』

「殺生も何もありまセン。貴方は自爆でこの研究所を吹き飛ばす気デスか? だとすれば禁酒令を出す必要も『よっしゃ廃棄すればいいんだな任せろ! これが終わったら全部解体するぜ!!』……分かればいいんデス」

 

通信切断。

エイルは手早くコンソールを操作し、エレベーターを含めた昇降機能の遮断にかかる。階段だけはどうしようもないが、エレベータを閉鎖するだけでもだいぶ違ってくるはずだ。

さて、次はここを開いてコードを入力して……よし。

 

「これでエレベーターは全て停止しマシタ。さて、続きに取り掛かるとしマスカ」

 

戦術人形にインストールするプログラムは7割がた完成している。

残るは最後の難関、自身の記憶と人格を移植する工程だ。特に記憶だけは何が何でもしくじる訳にはいかない──今までの努力が全て水の泡となってしまう。

 

「スクリプト404から502まで接続……確認。プロトコル『ヒューマニズム』正常動作……訂正、エラー確認。不確定因子は徹底的に排除しマショウ」

 

カタカタカタとキーボードを打鍵し続ける。完成はそう遠くないが、しかし時間もそう残されてはいない。

一刻も早くタスクを片付けなければ──そう思った矢先。

 

「──ッ!!?」

 

先ほどとはケタ違いの強さの轟音と振動がエイルを襲う。

そして、それを近くした次の瞬間には──彼の体は、()()()()()()()()()()()()壁に叩きつけられていた。

 

■ ■ ■

 

「クソッ、至急至急!! ティファレト06より全体に通達!! エージェントだ、鉄血の元締めが出やがったぞ!!」

 

余りにも予想外の事態に、ティファレト06が無線機に怒鳴りつける。それの返答も怒鳴り声で帰ってきた辺り、他部門も本当に余裕がなくなっているのだろう。

 

『お前それマジで言ってる!? だとしたら戦力足りねぇぞ!!』

『ビナー隊は何処で油売ってやがんだ! 上層でやりあってんのかと思ったらそうでもないっぽいし、中層下層でも見かけてない! まさか所外にいるんじゃないだろうな!?』

『はぁ!? ケテルは書類上にしか存在しない部署だしダアトが博士だけな今、ここの最高戦力はアイツらだぞ!?』

「クソッ、どうなってやがる……!」

 

ティファレト06が吐き捨てたその時、

 

「──はっ?」

 

いくつもの重なった銃声が耳朶を打つ。

隊員たちが見ている前で、弾丸の雨を食らったゲブラー02が困惑の声と共に口から深紅を吐き出しながら崩れ落ちた。

 

「なっ──ゲブラー02ィッ!!?」

『クソッ、ゲブラー02がやられた!! 福祉部門に手の空いてる奴はいないか!?』

『こちらケセド06、そちらに急行する! 5分持たせてくれ!!』

 

 

大慌てで他の隊員がカバーに入り、その隙を突いて彼を回収する。

パッと見た限りではかなりの重症──だが幸いなことに福祉部門で動ける人員がいたため、この場さえしのげばどうにかなりそうだ。

──だが、悪い知らせというのは得てして重なっていくものと相場が決まっている。

どうにかなりそうかと思った矢先に、下層エリアで仕事にかかっているはずのホクマー隊から悲鳴が届いた。

 

『ほっ、ホクマー05より報告! ビナー01の自室に強硬侵入したところ、「ちょっと急用が出来たから行ってくる、何かあったら任せた」といった旨の置手紙が……』

「はぁ!!?」

『隊長格が報連相しっかりしないでどうするんだクソァッッッ!!!!』

 

ゲブラー01、魂の咆哮。

元より反りが合わずに実力行使に関する徹底さだけを認めていた相手が、こともあろうにその職務を放棄して出奔したのだ。その怒りは計り知れない。

 

「落ち着きなさいゲブラー01! 気持ちは痛いほどよくわかるけど──!?」

「副隊長危なっ、ぐ──!!?」

「うわっ!!? お、屋内で狙撃……!?」

 

ドンッ! とティファレト06がマシンガンを依託射撃していたティファレト02の体を突き飛ばす。

その直後、鉄血の自律人形たちの頭上を通り越して(うち何体かには頭頂部に直線に被害を与えて)飛来した大口径の弾丸が、ティファレト06の左足を吹き飛ばした。もしも彼が咄嗟に対応していなければ、ティファレト02は()()()()()()()()()()()確実にこの世から退場していただろう。

 

「くそっ、ティファレト02を庇ってティファレト03がダウンしやがった! ネツァク05がカバーに入る、余裕のある奴は手伝いに来いマジで!!」

『無茶言うなこっちだってギリギリなんだっつーの!! クソが、コイツらエージェントが出張ってきた途端に動きが良くなりやがったぞ!?』

「マジでか!?」

『ああ、多分だが──なっ、しまっ──!!?』

「何が──!!?」

 

聞き返した瞬間、無線機越しに爆音が響く。

それと同時、凄まじい衝撃と閃光がティファレト06を含めた中央本部にいる隊員たちを襲った。

そのあまりの強さに、彼の体は容易く吹き飛ばされ──

 

──そこで、意識はぷっつりと途絶えた。






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