・ゼロ×オリキャラのカップリング故、要注意
・シリーズ勉強中のため、設定間違っていたらごめんなさい。
・ねつ造・キャラ崩壊多し。
・ギンガ以降のウルトラ戦士が登場しない、パラレルワールドでの物語。
悪しからず。
「ゼロが太陽なら、ディアナは月だよね」
俺が久しぶりに光の国へ帰還し、隊長室でエースが作ってきたおやつを食べながら話をしていた時、師匠の一人であるアストラがそう言った。
「突然何だよ?」
「これ、マン兄さんに勧めてもらった恋愛小説なんだけどさ」
アストラはそういうと1冊の本を見せる。
「幼馴染の男女が主人公なんだけど、その二人がなんとなく君たちに似ているんだよ」
「それなら私も読んだよ。ファンタジーな感じだけど、なかなか読みごたえのある話だったね」
ゾフィー隊長がコーヒーを口に運びながら、そう言う。
「どんな話なんですか、ゾフィー兄さん?」
興味をそそられたらしい俺のもう一人の師匠―レオが尋ねると、ゾフィー隊長はゆっくりとした口調で話し始めた。
ある国に、美しく優しい姫とその姫を守る十一人の騎士がいた。
その中でも一番若い騎士と姫は、幼い頃から身分の差も超えてまるで兄弟のように育っていった。
ところが少しずつ、二人の気持ちに変化が訪れる。
お互いを異性として、恋愛対象として意識するようになったのだ。
始めにその変化を感じ取ったのは、若い騎士。
だが騎士は姫を守る立場として“身分の差”を重んじるようになったが故に、これまでのように姫と接することができなくなってしまう。
そんな騎士の態度に、姫は悩み苦しむ。
そして姫はそんな自分の姿から、騎士への想いを自覚する。
お互いを想う気持ちは同じはずなのに、すれ違ってしまう二人―。
「なんだか読んでいると、とてももどかしくてね…。どうしてそこで気づいてあげないんだとか、なんでそこで邪魔が入るんだ、とか」
「なんか騎士も自分の気持ちから逃げてるところがありますよねー。一向に自分の気持ちを認めようとしないというか…、素直じゃないというか…」
「へー…」
小説なんて読むことがほとんどない俺も、思わずゾフィー隊長やアストラの話に聞き入る。
「姫の優しく思いやりのあるが、芯の通っているところ、そして騎士の少々自分に自信がありすぎるが何よりも仲間を思う気持ち。そこがなんとなく君たち二人に似ているんだよ」
「それでゼロとディアナが似てるってのは分かるけどさ、なんで“太陽と月”の話になるんだ?」
エースが自分の作ってきたクッキーをつまみながら、アストラに尋ねる。
…クッキーはいつの間にか、半分ほどなくなっている。
「姫がね、騎士団の長にこう話すシーンがあるんですよ。『彼はまるで太陽のような人です。灼熱のような何者をも寄せ付けない強さの中にも、暖かな優しさがあります。その暖かさがある限り、私はそれを思い出すだけでとても勇気をもらえます。…でも、それ故に時々考えるんです。彼に手を伸ばすことはとてもおこがましいことなんじゃないか、って…』」
「…なるほどなー」
エースが腕を組み、うんうんと頷く。
「それでその騎士団の長はこう答えるんですよ。『それならば、姫は月のようなお方ですね。月の輝きというのは太陽のものと比べると儚いものかもしれません。ですが、優しく時に力強く漆黒の夜を照らしてくれます。私たちはあなたのことを思い出すと、どんな絶望の中でも戦い抜くことができます。…あなたはまさに、絶望という名の闇を照らす月の光―希望の光なのです。』って」
「くーっ!いいこと言うじゃねぇか」
エースがバシンと、膝を叩く。
「だから“ゼロが太陽、ディアナが月”というわけだな、アストラ?」
「うん、そういうこと」
「…だがいくら人物が似ていても、最後の結末だけは違っていてほしいものだな」
「え、どういうことだよ、ゾフィー隊長?」
いち早く反応した俺を見て、ゾフィー隊長は少し悲しそうな顔をする。
「…知りたいか?」
「…うん」
「…二人の想いが通じる前に、姫が命を落としてしまうんだよ」
「…!」
その言葉にレオやエースも反応する。
「どういうことですか…?」
レオの言葉に、ゾフィー隊長はまたゆっくりと語り始めた。
ある時、地中深くに封じ込められていた魔物が悪魔に魂を売った者によって呼び覚まされる。
騎士たちは力の限り戦ったが、その魔物を封じ込めることはできなかった。
魔物を封じ込める方法はないのかと何度も会議が開かれたが、誰もいい方法を知らなかった。
ただ一人を除いては―。
実は代々王家には“禁断の歌”と呼ばれる歌が脈々と受け継がれてきた。
その歌は「滅びの歌」と呼ばれるもので、どんな魔力を持ったものでもたちまち消し去ることができるという。
―ただし、この歌には一つ欠点があった。
それは、この歌を歌った者は歌い終わったとき必ず死ぬということ。
つまり、姫の命と引き換えに魔物を消し去ることができるのだ。
だが姫は、悩まなかった。
命を懸けて国民を、そして愛する人を守ると決めたのだ。
理由を付けて会議を中座した姫は、こっそりと魔物のところへと向かう。
なかなか姫が戻らないことを不審に思った騎士たちは姫の捜索へと向かう。
そして国の長老は、姫が王家に伝わる“最終手段”を使おうとしているのではないかと騎士たちに伝えたのだ。
騎士団員の間に戦慄が走る。特に一番若い騎士の動揺は激しかった。
自分の気持ちを認め、姫への想いを貫くと決めた騎士は、必死になって愛する姫を探した。
そして騎士たちはようやく姫を見つける。
―だが、すでに遅かった。
美しくもどこか物悲しい旋律が流れる。
姫の足元と魔物の足元には、大きさは違うが同じ魔法円が描かれていた。
「滅びの歌」はその力を発揮し始めており、魔物は呻き声を上げて、もがき苦しんでいる。
騎士は姫を止めようとそばに駆け寄るが、魔法円がバリアを張り歌を止めようとする者の侵入を許さなかった。
騎士は必死になって姫に呼びかけるが、姫は振り向くこともなく歌い続けた。
そして魔物は、この世のものとは思えぬ断末魔を上げて消え去った。
魔物が消え去ると同時に、姫の体は崩れ落ちる。
駆け寄った騎士に「なぜ命を捨てるようなことをしたのか」と問われた姫は、
息も絶え絶えに「命を懸けて、あなたを愛しているから」と答えたのだ。
そして姫は、愛する人の腕の中で息を引き取った―。
「そしてその後、姫の遠縁にあたる王子が国王として即位したが、国は乱れ争いが絶えず、そんな王のもとで騎士たちは忠誠を誓えるはずもなく、やがて多くの者が国を去っていった…。一番若い騎士は生涯をかけて姫の墓を守るため、墓の近くに小屋を建ててひっそりと暮らしたそうだ…」
「……」
「姫と騎士が夢見た平和な世界は、叶うことの無い永遠の夢となってしまったのさ…」
若い二人のあまりにも悲しすぎる結末。
自分の思いになかなか向き合えなかった騎士と、命を懸けて愛する人を守った姫のすれ違いが起こしてしまった悲劇。
「二人がもっと早く素直になれていたのなら、結末は変わったのかもしれないな…」
「“人は失ってからその大切さに気付く”と言いますが、それでは遅すぎるということですね」
エースとレオも悲しげな表情だった。
「ゼロ、君はどうだ?自分の気持ちに正直に向き合えているか?」
「俺は―」
俺は自分の気持ちにちゃんと向き合えているだろうか。
もしものことがあったとき、後悔しないように行動できているだろうか。
「戦士として生きている以上、一人の男としての感情よりも使命を優先しなければならない時がある。それは時に辛い結末を生むんだ…」
エースはマグカップに入ったコーヒーをぐっと飲み干す。
「…そういえば、エース兄さんは……」
「…お前の方が辛い思いしてるじゃねぇか、レオ」
エースとレオは視線をかわすと少し悲し気な笑みを浮かべる。
俺が不思議そうに見ていることに気づいたのか、エースがこちらを向く。
「気が向いたら、いつか話してやるよゼロ。それを聞いてお前がどうするかは、お前次第だな…。まあでもお前のことだ。きっと何があってもディアナのことを考えて行動するんだろうな…」
「ああ、きっと俺もそうすると―」
そこまで言いかけたとき、俺ははっとして顏を上げる。
そこにはニヤニヤしたエースの顔があった。
「おー おー、やっと公に認めたか、可愛い甥っ子よ」
「なっ、何をだよ!」
「とぼけるなよー」
「だから何をだよ!」
「お前がディアナのこと、好きだってことだよ」
「す、好きなんかじゃねぇよ!」
俺は恥ずかしくて思いっきり否定したが、逆にその慌てようが俺の嘘を暴いていた。
「その態度が何よりの答えだよ」
何杯目かのコーヒーを淹れながら、冷静な声でゾフィー隊長が俺にそう言う。
そしてアストラが俺に最後の追い打ちをかける。
「ウルトラ兄弟でそのことに気づいていないの、メビウスだけだよ」
ニヤリとした顔で、そう告げる。
変な汗が伝う。
「お、俺は別に、そんな目でディアナのこと見てねーし…」
悪あがきだと分かっていても、俺は粘る。
最後まであきらめなければ、必ず何とかなる… はず。
「ふーん、そっかぁ。ディアナのこと好きじゃないんだ…」
アストラがさっきよりも意地の悪いニヤリとした顔で俺を見る。
「じゃあ、僕がもらってもいいよね?」
「…は?」
「いやね、前々から結構タイプだなーと思ってたんだよね。何事にも一生懸命だし、可愛いし…」
「……」
「照れた顔すごく可愛かったし…。絶対よく似合うだろうな、ウエディングドレス…」
頭に血が上って来るのが分かる。アストラの言葉が途切れ途切れでしか入ってこない。
気がついたらアストラに詰め寄っていた。
そして隊長室に響き渡る声で言い放った。
「ディアナはぜってぇ誰にも渡さねぇ!例えそれが師匠でもな!」
「はい、100点満点。よく言えました」
ほんの少しの沈黙の後、アストラが笑顔でそう言って俺の頭を撫でる。
「……は?」
アストラの言葉の意味が分からない俺は口をぽかんと開けたまま、目の前の師匠を見つめる。
「ゼロ、お前はアストラに一杯食わされたんだよ…」
もう一人の師匠―レオの呆れた声がする。
「……どういう…、ことだよ?」
「…お前がわざと喋るように仕向けたんだよ」
「そんなことも分からんのか」とでも言いたげな師匠の顔。
コーヒーにむせたであろうゾフィー隊長の様子とクックッと笑ったエースの様子に、
自分のやらかした失態を完全に把握した俺。
全身が燃えるように熱くなる。
「うわああああああああああ!?」
思わず絶叫する俺。
「安心して、ディアナのこと恋愛対象として見てないから。可愛いと思っているのは事実だけど、あくまで“妹”として可愛いってことだから」
「うわあああああああああ!!!!?」
言葉が出なくて、とりあえず叫ぶしかない情けない俺。
そして部屋の隅で膝を抱えるようにして蹲る。
「アストラ、あまりゼロをからかうな…。セブン兄さんになんて言われるか…」
「別にからかってないよ?素直になってもらっただけだよ」
「……」
「おーい、ゼロ?」
エースがそばに来て俺の顔をのぞき込むように姿勢をかがめる。
「大丈夫か?」
「…イージス使って今すぐアナザースペースに帰りたい」
「まあ、落ち着け…」
落ち着かせるようにぽんぽんと背中を叩いてくれたエースにそっと尋ねる。
「…なあ」
「ん?」
「その… いつから知ってたんだ?」
「俺はお前が修行から戻ってきた後だな」
「…一番早く気づいたのは誰なんだ?」
「多分、80だろうって話だ。でも誰にも言ってないって聞いたけどなぁ。なんせセブン兄さんにも言わなかったって話だし…」
「…ああ……」
80先生か…。なんとなく、思い当たる節はあった。
「ゼロ」
落ち着いたゾフィー隊長の声に俺はそちらを振り返る。
「皆、ゼロのことが可愛いんだ。叔父としていろいろ世話を焼きたいんだよ…」
「…それは、どうも」
どう答えていいか分からず、とりあえず礼を言う。
「まあ、マンに『余計なことはせず、静かに見守れ』って全員釘は刺されてるから安心してね…」
相変わらずウルトラマンは暴走しようとするウルトラ兄弟の制裁役らしい。
ゾフィー隊長の表情からも、その力がどれほどのものなのかが分かる。
俺がだいぶ落ち着いたころ、慌ただしい足音が隊長室に近づく。
「ゾフィー!」
勢いよく入ってきたのはウルトラマンと親父、そしてジャックとタロウだった。
「どうしたそんなに慌てて…」
「どうもこうもない!のんびり皆でコーヒータイムなんてそんな暇はないぞ!」
いつもと違うウルトラマンの様子に、全員の表情が変わる。
「何があったんですか?」
エースが立ち上がってウルトラマンに近づく。
「言うより見た方が早い…」
ウルトラマンは空間投影パネルにある姿を映し出す。
それを見て部屋の空気が一気に変わった。
―暴君怪獣タイラント。
シーゴラスの顔、イカルス星人の耳、ベムスターの腹、ハンザギランの背中、バラバの腕、レッドキングの脚、そしてキングクラブの尻尾を持つ合体怪獣。
ウルトラ6兄弟を苦戦に追い込んだことで有名な怪獣だ。
「太陽系で目撃されたタイラントだ…。かつて私たちが戦った個体よりもはるかに強い…」
「太陽系で目撃って… まさか行き先は…!」
「…地球だ、間違いなく」
親父の言葉に皆の顔色が変わる。
「地球って… 今はディアナが…」
「ああ。…だが、今のディアナでは、もしかしたら……」
「…倒せないってことですか?」
レオの言葉に苦しそうに頷くタロウ。
「俺に行かせてくれ!」
考えるよりも先に口が動いていた。
「俺を地球に行かせてくれ、ゾフィー隊長!」
隊長は静かに俺を見つめていたが、ふっと表情を和らげると一言。
「いいだろう」
そう言うとパネルを操作し始めた。
「…よし、これでいい。ゼロ、君は一刻も早く地球へ向かいディアナと協力してタイラントを倒すんだ」
「おう!」
「ああ、それと」
「なんだよ隊長?」
今まさに部屋を出ようとしていた俺に隊長が声をかける。
「現在の地球の様子を見てきてくれないか?調査期間は10日間だ」
「…分かった!」
今度こそ俺は隊長室を飛び出した。
ウルトラの星を飛び立ち、すぐさまイージスを身にまとう。
空間を移動しながらさっきまで話していたことを思い出す。
『ゼロが太陽なら、ディアナは月だよね』
(俺が、太陽…)
太陽はいつでも地球を暖かい光で照らすという。
俺は、お前を照らすことができるような光だろうか。
…いや、必ず照らして見せる。
お前が闇の中にいた俺を月明かりのような優しさで照らし見守ってくれたように、
俺はどんな時でもお前を強く時に暖かな光で照らし導いてみせる。
『ゼロ、君はどうだ?自分の気持ちに正直に向き合えているか?』
あの日、誓った。「もう離さない」と。
必ずお前を、守ってみせると。
何があってもそばにいる。お前を見捨てたりしない。
俺がいる限り、お前を死なせたりしない。
俺は―。
「『命を懸けて、あなたを愛しているから』…」
目の前には、青く美しい星・地球。
その美しさにしばし見とれていたが、すぐさま本来の目的を思い出し現場へ急行する。
(……いた!)
数機の戦闘機、そして一人のウルトラ戦士―ディアナがタイラントと戦っているのが見える。
膝をつくディアナのカラータイマーが不吉な音を出している。
だがタイラントはここぞとばかりに突進していく。
「行かせるかよっ!」
俺はイージスをしまい、ウルトラゼロキックの体勢に入った。
「ウォラアァア!!」
俺の右足はタイラントの顔面を直撃した。
タイラントをふっとばし、ディアナを背に庇うように立つと、後ろでディアナが息を飲むのが分かる。
―久しぶりに感じる、ディアナの“輝き”。
それは見送った日よりも、どこか強くなっていた。
心臓が高鳴るのは急いでいたせいか、ディアナのせいかよく分からない。
「…久しぶりだな」
「ゼロ… どうして…」
「ま、いろいろとな」
あくまで落ち着いているふうを装う。
はっきり言って、すげぇかっこ悪いとは思う。
「…ほら」
手を差し出すとディアナの手が重なる。
ぐっと引き上げるようにして立ち上がるのを手伝うと、じっとこちらを見つめてくる。
「なんだよ」
「…ありがとう、来てくれて」
「…礼はこいつを倒してからな」
すぐに視線をタイラントに戻す。
少し赤い頬が気付かれてなければいいけど。
「行くぞ!」
「うん!」
俺とディアナはタイラントに向かっていく。
自信がありすぎるのはよくないって親父や師匠は言うけど、これだけは言わせてくれ。
俺とディアナなら、どんな相手にも負けることはないと思う。
だってこいつは、この俺を闇<絶望>から救ってくれた月<希望の光>だからな。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
久しぶりの更新となってしまいました。
遅くなり申し訳ありません。
今回は前回の話の続きでゼロ視点です。
次回の更新をお待ちください。