【仮】GGOのロリっ子配信者   作:タヌキ(福岡県産)

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明けましておめでとう御座います。
本年もこの駄文をよろしくおねがいいたします。



さて、新年早々ガバの塊を投下するとしましょうか!!
感想、誤字報告ありがとうございます!!



因みに、今回の話の中で色々と問題になりそうな発言がありますが、原作も(Pohが)こんな感じなので許してください。


この鐘の音が聞こえるか

ああ、これは死んだ。

クィネラは、自分の肩を突き破った槍の感触を感じながらそう思った。闇神、サトライザーとの戦闘中に負った傷で天命は半分以上削られ、開戦時に消費した天命もまだ回復しきっていないというのに、ここでの大量出血だ。もう助かる見込みはないだろう。闇神の虚無の心意によって虚脱感に襲われる中、彼女は自分が死ぬという事実を冷静に受け止めた。体にはもう痛みはない。いや、痛みを感じられるだけの体力も残っていないのだろう。アメリカからログインしているのであろう暗黒騎士達に突き刺さった槍など御構い無しに槍衾の中から引きずり出され、身体中の骨が折れる感触を味わいながら、クィネラはふと疑問に思った。

どうして自分は、あんなにも必死になっていたのだろう?と。

どうして、こんな危険極まりない戦場に自ら出ていくような真似をしたのだろう、と。

この世界はあくまでも自分にとって「踏み台」であったはずだ。この虚像に満ちた世界で、唯一自分が「本物である」と信じられた姉にもう一度会うための、踏み台。だから三度目の人生が始まった時、ここがアンダーワールドで、自分が《クィネラ》であると気付いた時に彼女の人生を可能な限りトレースしたし、貴族や皇帝、四帝国などというアンダーワールドの住人にとっては無駄の極みである封建制度を作り上げて公理教会の支配体制を整えたはずなのだ。

そしてそのまま、原作の彼女の通りにシンセサイズ関連の技術を作り上げ、整合騎士団を整備し、キリトに殺されたフリをして来たる人界大戦の時にワールドエンド・オールターへと向かう。自分にとってはそれだけの為の存在する、そんな世界のはずなのだ。アンダーワールド(この世界)は。

なのに、何故。

なぜ自分は、あんなにも必死になっていた?

 

皇帝や上級貴族の堕落を防ぐために、守備軍の訓練を徹底させた。

街や村の衛士も、定期的に剣技大会に出場する様に義務付けた。

整合騎士にはシンセサイズの儀式を施さず、望む者にのみ《天命減少凍結処理》を施した。

人界の守護竜に話をつけ、共闘体制を築いた。

 

全部、全部クィネラ(かのじょ)の統治には必要のないもののはずだ。守備軍を強化して上級貴族達の堕落を防ぐ必要など無く、整合騎士に自分の態度一つ、言葉一つで揺らぐような不安定な忠誠心を抱かせるような必要など無く、自分の指示に従うかどうか不明な大型ユニットなど消してしまえばよかったのに。

どうしてだろうか。

クィネラは、霞む視界の端でベルクーリが必死にこちらへと手を伸ばしているのを見た。その顔には自分に対する不信感などは無く、ただこちらの安否のみを気にする必死さだけがあった。

へんなの。定期的に記憶を奪って、貴方達の思い出を消していく私のことをこんなにも気にかけるなんて。

ポツリと、クィネラは心の中でそう呟いた。

ファナティオとの仲を取り持ったからかな?と彼女は考えて、それならありえるかも、と納得した。ベルクーリ・シンセシス・ワンとファナティオ・シンセシス・ツー。かたや移動禁止エリアへの移動という平民の禁忌目録違反者、かたや上級貴族の四帝国統一大会の優勝者。身分も違えば境遇、性格も正反対に違う2人は当初犬猿の仲といっても過言ではないほどに仲が悪かった。原作のおしどり夫婦っぷりしか知らないクィネラが驚くほどに、本当に仲が悪かった。その2人の仲を取り持ち、時には囃し立て、時にはヘタれるベルクーリの尻を蹴飛ばしたのが彼女であった。

そうして2人が100年ほどのすったもんだの末に結婚の許可をクィネラに求めて来た時は、まるで難攻不落の要塞を攻略したかの様な達成感に包まれたのを覚えている。……いや、まて。そもそも、これもクィネラがやる必要は無い事のはずだ。原作通りに事を運べば、自然とくっついて子供までもうける、そのはずだ。それなのに何故、自分は原作から外れる様な事をしていたのだろう。

そう考えれば、色々とあった()()()()()()()()が思い出されてきた。

 

四帝国の三代目皇帝を全員整合騎士団に入団させた。暴君そのものだった彼らもベルクーリやファナティオに揉まれに揉まれ、最終的には素直な好青年へと変貌した。それによって帝国貴族全体が引き締まり、結果としては良かったのだが。

生真面目すぎて皇帝の不興を買ったデュソルバートを整合騎士団にスカウトした。整合騎士団でも生真面目っぷりを遺憾無く発揮したデュソルバートは少し、いやかなりウザかった。美人の奥さんと可愛い子供を持っている分その苛立ちは増した。

イーディスは西ノーランガルス帝国の守護竜との対話の旅の途中に出会った。出会った当初から妹扱いしてきてかなり辟易とした。今回ばかりは大人の体で来るべきだったか、と考えたほどだった。まあ、剣の腕は確かだったので後でスカウトしたのだが。

シェータは統一大会の優勝者ではあったが、その過程が過程であったために例外的に禁忌目録違反者として扱う事になった。一回本気で怒らせて切られそうになったのを覚えている。……あの時ほど、自分の《金属武器による攻撃無効化》の属性をありがたく思ったことはない。

 

他にも、色々とあった。ダキラに襲われそうになったり、ベルクーリの浮気調査に何故かシェータ共々ファナティオに駆り出されたり、デュソルバートの強制執務から抜け出すためにネルギウスに犠牲になってもらったり……ああ、そうか。

クィネラはふと気がついた。彼女の視界では、暗黒騎士達が手に持った槍や剣を振り上げていた。まるで処刑人の様に、ゆっくりゆっくりと上がっていくその死神の刃を無感動に見つめながら、彼女はふ、と力の無い笑みを浮かべた。

 

 

 

単純な話、長すぎたのだ。

400年という年月は、目を閉じ、耳を塞いでただ決めた道筋を辿るには、些か長すぎた。

認めよう。

自分は、この世界に「生きていた」。

この世界を、この世界の住人を、愛していた。

 

 

 

諦めることなく、死にかけの体でこちらへと来ようとするベルクーリに、もういいよ、と言おうとして、言葉の代わりにクィネラは血を吐いた。ごひゅ、という咳と共に口から漏れ出た血が、彼女の身を包んでいた血濡れのローブを更に血で汚す。その光景を見た暗黒騎士達が、興奮した様に雄叫びをあげて一斉に彼女に向けて掲げた自分たちの得物を振り下ろした。

 

ぶし、と血飛沫が赤い空に舞った。

 

 

 

 

 

 

【踊る】ベルたそを探すスレ【大捜索】

 

 

 

1 名無しのゲーマー

 

ここは本日未明突然行方知れずになったSAO生還者ロリバーチャル配信者ベルたそを探すスレだお。

 

それ以外の話題については他の場所で語るんだお。

ベルたそについて話したければ下記のベルたそについて語るスレに移動するんだお。

 

 

【金髪】配信者ベルについて語るスレ【幼女】→『URL』

【拳銃】配信者ベルについて語るスレ【オンリー】→『URL』

【リンクまとめ】ベルたそについて語るスレPart3〜8 →『URL』

【人外】ベルたそについて語るスレ【幼女】Part9←NEW!!

 

 

 

127 名無しのゲーマー

みいいいつけえええたああああああああああ!!!!!

 

128 名無しのゲーマー

>>127

上の続き!!こちらTwister班!!アメリカサーバーにて新作ハードコアVRMMOのβテスター募集といういかにもな呟きを発見!!

 

さらに韓国サーバーにてキムチ香るこんな呟きを発見!!動画の内容からこの2つは同一仮想世界と思われたし!!

 

→『URL』

 

129 名無しの生還者

>>128

よくやった!!……いや、それにしてもこの内容は……

 

130 名無しのゲーマー

韓国、アメリカ、中国の民間有志が共同で立ち上げた完全新作VRMMOのテストサーバー、ねぇ……

 

いや、ありえねえだろ(真顔)

 

131 名無しのゲーマー

>>130

なぜにそう言い切れる?別におかしくは無い内容だとは思うが……

 

132 名無しのゲーマー

>>130

韓国アンチなら別の板でやれ

 

133 名無しのゲーマー

>>132

そういうお前が一番の嫌韓野郎ってな。

 

>>131

ヘイ、ガイズ。時間は無いが特別授業だ。

 

現在発売されてるVRMMOの基幹システムは何か言ってみ?

 

134 名無しのゲーマー

《The Seed Packages》、通称TSPだろ?

 

突如ネットサーバーに公開されたフリーソースのVRMMO構築用プログラム……あっ

 

135 名無しのゲーマー

あっ(察し

 

136 名無しのゲーマー

えっ(察せない

 

137 名無しのゲーマー

>>134 >>135

いい勘してるぞ、1ベルたそポイントをやろう

 

>>136

大丈夫だ、説明はする。

 

いいか、現在発売されてるVRMMOは全てこのTSPを基に構築されてる。

 

じゃなきゃザ・シード連結体なんて大掛かりなシロモノを用意できないからな。

 

そしてこのプログラムの出所は日本だ。だから他の国で発売されてるVRMMOは日本の開発したソフトのローカライズ版だったりする。

 

お隣の国とかはそれが顕著だな。《シルラ・エンパイア》とか

 

138 名無しのゲーマー

??????

 

えーと?つまり?現在のVRMMO開発には必ず日本のプログラムが使用されてるって事でおk?

 

139 名無しのゲーマー

>>138

イグザクトリィ!!

 

140 名無しのゲーマー

>>137

まてまて、それは理由にならないだろ。

 

確かに現在発売されてるゲームはアメリカ製のGGO含めTSP使用がほとんどだけど、だからこそTSPを使用しないVRMMOの作成をしようって思う奴らはいるんじゃ無いのか??

 

それこそ反日感情高めの国とかは日本製のプログラムなんぞ使いたく無いだろ

 

141 名無しのゲーマー

>>それこそ反日感情高めの国とかは日本製のプログラムなんぞ使いたく無いだろ

それは言い過ぎだろ、と言えないところが東アジア関係の怖いところなんだよなあ……

 

だがまあ結論から言うとだな「TSP未使用でVRMMOを作成するのは不可能」だ

 

142 名無しのゲーマー

>>141

……は?

 

どゆこと?別に作れるんじゃ無いの???流石にアメリカとかは作ってるでしょ

 

143 名無しのゲーマー

>>142

あー、正確には「TSP未使用のVR空間はTSP使用のVR空間より出来が遥かに悪い」だな。

 

俺の知り合いが正にそのTSP未使用仮想世界の構築をしようとしてるんだがな、TSPのクオリティに辿り着くことは個人レベルじゃ実質不可能らしい。TSP開発以前に作られたSAOやそのサーバーのコピーを使用して作成されたALOは正に「オーパーツ」なんだと。

 

144 名無しのゲーマー

>>143

話が盛大にそれてるから戻してもいいか?というかここはベルたそ捜索板であってVRMMOの講釈垂れる場じゃねえぞ

 

145 名無しのゲーマー

>>144

すまん。つい。……後で話していい?

 

あー、じゃあ話をベルたそ捜索に関係のある方向に戻すとだな。まず動画を見ると分かるんだがな?動画じゃ聞こえてる音声は日本語か英語だけなのよ。

 

おかしいだろ?何で米中韓合同ならプレイヤー同士の会話で韓国語や中国語が聞こえない?

 

あと、この仮想世界で使われてるオブジェクトのデザイン……というか描画の系統が完全にTSPのそれなのね。あと、サーバーをハックしてテストプレイヤーを攻撃って、やる意味ある????ないだろ。やるとしたら純粋に田代砲でも何でも使って鯖を落とすぞ?

 

146 名無しの生還者

なるほど。とりあえずこれが米中韓合同開発の仮想空間ではない、もっと言えば日本かの開発した空間かもってことは理解した。

 

んで、ベルたそはこの仮想世界にいるってことでいいのか?どうやって分かった?

 

147 名無しのゲーマー

>>146

『URL : 画像』

はいこれ、ベルたその配信が切れる前に一瞬映った仮想世界のURL的なやつね。そもそもこうやってベルたそがキャラをコンバートできるって事は、ベルたその行った仮想世界……仮称で「ベル世界」ってするけど、ベル世界はTSPを使用して構築された仮想世界な訳。おk?

 

148 名無しのゲーマー

おk。てかコテハンつけた方がいいぞ考察ニキ

 

149 名無しのゲーマー

今北産業

 

150 名無しのゲーマー

借金取り立て配信中にベルたそが幼女の頼みでコンバート

 

コンバート先がプライベート設定だったらしくて配信との紐付けが消える、ベルたそ行方不明

 

捜せえええええええええ!!!←イマココ

 

151 名無しのゲーマー

状況よく分からんけどトンクス

 

152 名無しの考察者

で、twisterを見たら韓国と中国とアメリカのサーバーで呟きの内容が違うクセに同一と見られる仮想世界の話をしてる訳だ。

 

そして今さっき見つけたんだがな?日本でもこんな呟きが見つかった。『URL』

 

153 名無しのゲーマー

……は?これマ?

 

154 名無しのゲーマー

ペインアブソーバってなんぞ?VRゲーマーニキ達解説よろ

 

てか、痛みでベッドから起き上がれないってなにそれこわい

 

155 名無しのゲーマー

>>154

ペインアブソーバって言うのは仮想世界内での痛みを軽減……もっと言えば無くすためのシステムだゾ。

 

これが無ければオイラ達VRゲーマーはHPが尽きるまで剣で斬り合ったり銃を撃ち合ったりとかできないし、もっと言えば仮想の痛みでもクソ痛いからショック死の危険すらあるかもしれない

 

156 名無しの考察者

>>153

残念ながらマジだ。しかもこの呟き、内容に他の呟きとの共通点があるのよ。

 

みんなも言ってる『ペインアブソーバ無し』ってトコなんだがな?

 

そしてコイツはALOプレイヤーだ。どうもコンバートするまではベルたそがいた場所にいたらしい。

 

157 名無しのゲーマー

あっ(察し

 

158 名無しのゲーマー

ちょっと待て、それってもしかして

 

159 名無しの生還者

ベルたそ、ペインアブソーバ無しの仮想世界に放り込まれた?しかもこの呟きの内容的に米中韓のプレイヤーが日本人プレイヤー虐殺してるんだよね?

 

え?そんな世紀末の中にベルたそ行っちゃったの?

 

160 名無しの考察者

かもしれない

 

161 名無しのゲーマー

あの幼女ぶっ殺す!!!

 

162 名無しのゲーマー

>>161

まてまてまて、落ち着け!?ベルたそに散々「危険がありますよ」とか「キャラロストが」とか言ってたのあの子だからな!?

 

一応引き止めてたからなあの子!最終的にベルたそが面白そうって突っ込んじゃったけど!!

 

163 名無しのゲーマー

つまりベルたそが悪いってんのかァアン!?

 

164 名無しのゲーマー

いや助けに行かねえとやべえだろこれはよ!?

 

165 名無しの考察者

と、言うと思いまして

 

166 名無しの生還者

こんな事もあろうかと!?

 

167 名無しのゲーマー

>>166

生還者ニキ、何歳だよ……

 

168 名無しの考察者

ちょっと違法臭いけどマルチコンバータープログラム作ったよ。

 

ザ・シード連結体にキャラデータとアカウントがあれば向こうの仮想世界に強制的にコンバートできるプログラムだよ。

 

ただ、これ片道切符だからキャラデータ戻せるかどうか分かんないからね、気をつけろよ。

 

あとこの仮想世界マジで危なさそうだからな、マジで気をつけろ『URL』

 

169 名無しの生還者

逝ってくる(即決)

 

170 名無しのゲーマー

いってら(非ゲーマー勢)

 

171 名無しのゲーマー

それ大丈夫なんですかねえ……

 

ベルたそマジで無事でいてくれ(懇願)、逝ってくる(白目)

 

172 名無しの考察者

向こうのデータ形式ガン無視でアカウントデータ送るから向こうの管理者がどうするか次第かも。

 

ただ、呟き曰く助けを必要としてるらしいから日本勢の人手はあるだけいいんじゃないか?

 

管理者もこれだけドンパチやってるなら張り付いてるだろうし。いやそもそもなんでそんな状況になってるのか分からんのだけど

 

173 名無しのゲーマー

へーえ!!面白そうなことやってるじゃん!!!

 

174 名無しのゲーマー

あっ

 

175 名無しのゲーマー

えっ、ちょ

 

176 名無しのゲーマー

ピトフーイテメエこれは遊びじゃねえんだからな!!?

 

真面目な状況なんだからベルたそ助けに行ってあげてマジで(懇願)

 

 

 

 

 

 

「イッツ・ショーウ・タァ—————イム」

 

SAOで暗躍していた当時の決まり文句を口にして、さっと右手を持ち上げるPohの向こうに、赤い兵士の手で乱暴に押される車椅子と、それに懸命に付き従う、灰色の制服姿の少女が見えた。

ああ、やめて。それだけは。

アスナの胸中に悲痛な懇願が溢れるが、それを言葉にすることは出来なかった。クラインが跳ねる様に立ち上がろうとし、すぐに押さえつけられた。それでももがくクラインの姿に、アスナは溢れる涙を抑えきれない。

 

「……ンン?」

 

Pohは、目の前に運ばれてきた車椅子、それに力無く座り込むキリトの姿を見ると、訝しそうな唸り声とともにつま先でこつんと、椅子から下がる細い脚をつついた。しかし、それに反応を示さずにただ虚ろな表情で俯き続けるキリトの姿に、Pohは失望した様な溜め息を吐くと彼に話しかける。

 

「何だこりゃあ……?おい、ブラッキー、起きろよ。聞こえてんのか、黒の剣士サマよ?」

 

かつての二つ名で呼ばれたキリトは、しかし全く反応をしなかった。当然だ。ただでさえ脳にダメージを受けてSTLで治療を受けていたのに、今度はその治療中にSTLから逆流した電流で脳ではなくフラクトライト—————つまりは魂を焼かれたのだ。それがどれだけのダメージであるのかを、アスナは今はこの場にいないクィネラから説明されている。

黒いシャツ越しにも分かるほどに痛々しくやせ細った体を背もたれに預け、顔を深く俯かせているキリトにPohは苛立ったように声を上げ、彼が座っている車椅子を蹴倒した。

 

「おいおいおーい、嘘だろ!締まらねえぜ、こんなんじゃよ!せっかく《墓守り》の邪魔がねえ場所で殺せると思ったのによぉ……おい、起きろって!!ヘイ、スタンダップ!!グッド・モー……ニン!!」

 

騒々しい音とともに横倒しになった車椅子から、痩せた体が地面に投げ出された。アスナとクラインが同時に立ち上がろうとして兵士の剣に押し止められた。隣では、体中に傷を負ったエギルも低い怒りの声を漏らし、リズベットとシリカ、それにアスナの近くに突き飛ばされてきたロニエが細い悲鳴を上げる。しかし、Pohは気に留める様子もなく、キリトに近寄ると乱暴にひっくり返した。

 

「なんだよ……マジでぶっ壊れちまってるのかよ。あの勇者サマが、ただの木偶かぁ?」

 

未だしっかりと抱いたままだった一本の黒い剣を奪い取る。引き抜くと、主人でないものが自分を持っていることに怒りを示すかの様に、ギリィン、と荒い音を立てた。盛大な舌打ちとともに、Pohがその剣を車椅子に向かって投げつけようとした。その時—————

 

「ぁ……。ぁー……」

 

キリトが、か細い嗄れ声と共に、両手を黒い剣へと弱々しく伸ばした。

 

「おっ!?動いたぜ!!なんだ、コイツが欲しいのか?……ほら、なんとか言えよ!!」

 

Pohは、焦らすように黒い剣を動かしてから、それを無造作に放った。そちらに動こうとするキリトの腕をぐいっと掴み、引っ張り上げる。そしてばし、ばしん!と音を立てて、Pohの左手がキリトの頬を張った。それを見たアスナの視界が、憤怒のあまり薄赤く染まった。しかし、再び立ち上がろうとするよりも早く、クラインの血の滲むような絶叫が響き渡った。

 

「てめぇが!!てめぇが、キリトに触るんじゃねえ—————ッ!!」

 

片腕で掴みかかろうとするその背中を、背後から太い剣が貫き、容赦なく地面に縫い付けた。がふ、と大量の血を吐き出しながらも、クラインは自分の体を引き裂いて、なおも前に進もうとする。

 

「てめぇ……だけは……!!許さ……ね……」

 

どかっ!!と鈍い音が響き、2本目の剣がクラインの背中を貫いた。

未だ枯れないことが不思議なほどに、止めどない涙がアスナの両目から溢れ。

 

「……だれか、たすけて……」

 

そんなか細い声が、アスナの口から漏れ出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

からん、ころん。

からん、からん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然、鐘の音が鳴った。

唐突に静まり返った群衆、その1人であるアスナは見た。

Pohの右腕が、まず音も無く斬り落とされた。斬り落とされたPohの体からぶしゅ、と血が噴き出すよりも先に、クラインに剣を突き立てていた2人の赤い兵士の首が宙を舞った。

ばしゃあ。

血の噴水が、3箇所に出来た。首を飛ばされた赤い兵士の体は小刻みに痙攣し、その体が力無く崩れ落ちる前に光の粒となってこの世界から退場した。2人の血を浴びたクラインは痛みを忘れたような呆然とした表情で、彼の目の前に立つ2人の首を落とした人物を見上げた。

彼女は、真っ赤だった。

否、真っ赤なケープをその身に纏っていた。ケープについたフードを深めに被り、吹き出した血を頭から被らないようにしていた彼女は、血の噴水が粗方出終わった後にそのフードをバサリと払った。

からん、と鐘が鳴る。音の出元を見ると、彼女が握っている短剣、その柄に取り付けられた鐘の音だった。

 

「……おいおいおい、マジかよ」

 

腕を失った痛みに顔を顰めながら、Pohは苛立ちを隠そうともせずに突如現れた人物—————少女に向かって叫んだ。

 

「またオレ様の邪魔をするのかよ、墓守りィ!!!」

 

その叫びを受けた墓守り—————ソードアート・オンライン唯一のPKK(プレイヤーキラーキラー)、フレンダは完全な無表情でPohを見る事なく一つ呟いた。

 

 

 

「……見つけた」

 

 

 

 

 

「……間に、合った」

 

スーパーアカウント03、地神テラリアこと桐ヶ谷直葉(リーファ)は、目の前に横たわる2人を見て、安堵の吐息を漏らした。

生まれた時からの付き合いである初期不良呼び込み体質によって、何故か敵陣のど真ん中に転移したリーファはスーパーアカウントの戦闘力を存分に生かして一騎当千の大乱戦を繰り広げていた。

そんな中、遠目に見たところで暗黒騎士に襲われた飛竜が墜落するのが見えたのだ。急いで道を文字通りに斬り開きながら向かうと、そこでは今まさにその命を散らされようとしている1人の少女と、何本もの槍に体を貫かれた状態で力無くもがく1人の男性の姿があった。周囲の暗黒騎士達は、そんな自分達が生み出した悲惨な光景を気にも留めずにゲラゲラと笑っていた。……いや、もしかしたらこの悲惨な光景を生み出したという事自体に笑っていたのかもしれない。

ふざけるな。

持ち前の正義感に従って、手に持ったGM装備《ヴァーデュラス・アニマ》を振るい周囲の敵を一掃する。血飛沫を上げ、光の粒となり元の世界へと送還されていく敵兵達は気にも留めずに、リーファは自身の使うスーパーアカウントに設定された能力を発動させた。

《無制限自動回復》。周囲の広範な空間から自動的にエネルギーを吸収し、自分や他の動的・静的オブジェクトの耐久値を回復させる能力。発動のために右足を踏みしめると、血に染まった大地には不釣り合いなほどに清々しい新緑の香りが辺りに漂う。

 

「……えーーーーいっ!!」

 

そして、気合と共に集めたエネルギーと思わしき光を2人に向けて放つと、少女の体はすぐさま回復を始め、数十秒もすれば怪我を探すのが難しいほどに回復しきり、すうすうと規則正しい息をし始めた。槍が刺さっている男性は、刺さったままではあるもののその顔には血色が戻り、その傷口から再び滝の様な出血が始まった。一瞬焦ったリーファだったが、直ぐに男性の体から槍を引き抜き、もう一度再生を施せば少女と同じ様に回復した。しかし、彼女ができるのはオブジェクトの耐久値、この世界で言うところの天命を回復させることのみであるため、彼らがもし何かしらの精神的ダメージを受けていれば、その時は回復することは出来ない。

しかし、今はその事については考えずに、周りの敵を寄せ付けないことだけを考える。広範囲を攻撃できるソードスキルを連発しながら、いざとなれば自分が犠牲になる覚悟を決めて、リーファは戦い続けた。

 

そして、その瞬間は割と直ぐに来た。

 

突如、赤い兵士の波を切り裂く様に真っ白な光が走ったのだ。その光はリーファをも巻き込み、彼女の体を真っ二つに両断した。

 

「えっ……がほ!?」

 

痛み、と言うよりも熱さに驚きながらも感覚の無い右足を、腕を使ってどうにか踏み込ませて回復する。自分の下半身が目の前で光に変わり新しい下半身が生え変わる光景をまざまざと見せつけられながら、リーファはこちらへと近づいてくる1人の女性に気がついた。

彼女が着込んでいたのは、純白の鎧。その顔は美しく整っており、しかし今はリーファですら恐ろしく感じるほどの怒りに歪んでいた。

 

「……この者たちの回復は、貴方が?」

「……ええ、はい。そうです……」

 

倒れ込んだままだったリーファにそう尋ねた女性は、気圧されて「貴方、私も巻き込んで攻撃してましたけどね」とは言えなかったリーファに「ありがとうございます」と一言告げると、赤の集団に向けて静かに宣言した。

 

 

 

「私の名は、ファナティオ・シンセシス・ツー。……貴様ら、死に方を選べると思うなよ」

 

 

 

そして、蹂躙が始まった。




因みに、クィネラの《金属武器による攻撃無効化》はセントラル・カセドラル内でしか発動しないという事になっています。

……たぶん、メイビー、きっとそう。

第4回イカジャムが開催されるそうですが

  • 自重なんてしないゼ☆(キラッ)
  • いや自重しようぜ……(震え声)
  • 参加はやめようそうしよう(名案)

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