どうも。
時間軸が前編後編でバラバラやけん気をつけてな。
今回は色々とガバがひどいと思われますので心してかかりやがってくださいプリーズ。
感想ありがとう。
誤字報告ありがとう。
宝貝と宝具の違いはホントに助かったのです。
「……質問の、意味が、解らないのか」
「……ああ。解らない。本物って、どういう意味だ」
「…………なら、いい。でも、名前を、騙った、偽物か…………もしくは、本物、なら──────」
「──────いつか、殺す」
俺は、その言葉をゲーム内のロールプレイだとは全く思えなかった。ぼろぼろのマントは、まるで本物の幽霊であるかのように音も無く遠ざかっていき────唐突に消滅した。
周囲には、もう数秒前にプレイヤーが存在したという痕跡ひとつ残っていなかった。
俺は小さく体をよろめかせ、懸命に踏みとどまると、傍らのボックスシートに崩れるように座り込んだ。細い足を抱え込み、膝に額を押し当てる。閉じた瞼の裏には、コンマ1秒以下だったろうが確かに見えた、小さなタトゥーが鮮明に焼き付いていた。
カリカチュアライズされた西洋風の棺桶。蓋にはニタニタと笑う不気味な顔が描かれ、少しだけずらされたその蓋の奥から、白い骸骨の腕が伸びて見る者を手招きしている。
そのタトゥーを目にした時、叫ぶ、倒れる、脳波異常で強制ログアウトするといったどの行動も取らずにいられたのはほとんど奇跡のようなものだった。
二年に及んだSAOの攻略期間において、食い詰めた挙げ句他のプレイヤーからコルやアイテムを奪い取る
言ってしまえば、あの頃のプレイヤー全員には覚悟が無かったのだ。「HPを全損させ、相手を殺す」という殺人行為に及べるだけの覚悟が。
無論、それ自体は良い事であるし、むしろそんな覚悟はこのゲームをクリアするにあたって持ってはいけない類のものであった。
しかし、その「HP全損だけはさせない」という不文律は、《Poh》という一人のプレイヤーによって破られた。
──────多くの
2023年の大晦日の夜、フィールドの観光スポットで野外パーティを楽しんでいた小規模なギルドが襲われた。襲ったのはPohを含む犯罪者プレイヤー達30人。まずPohが1人、見本を示すように麻痺毒によって体の動きを封じられた少女の命を手に掛けた。
《
それが、SAOにおいて初めてプレイヤーの手によって殺された被害者の名前だったそうだ。
そして、その「殺人」を見た他の犯罪者プレイヤー達はその光景に自らの心理的リミッターを破壊され、その場にいたギルドメンバー全員を殺した。
──────ただ1人、奴らの気紛れによって生き残らされた少女の姉を残して。
翌日、システムには規定されていない《レッド》属性を名乗るギルド《ラフィン・コフィン》結成の告知がアインクラッドの主だった情報屋に送付された。
先刻俺にコンタクトしてきた灰色マントのプレイヤーは、少なくともPoh当人ではない。抑揚の無い細切れの喋り方は、マシンガンの様に激しく扇動的であった奴の口調とはまるで違う。
だが、あんなふうに喋るやつが、ラフィン・コフィンのメンバーには確かにいた気がする。俺はソイツと顔を突き合わせ、言葉を────そして恐らく剣も交わしているはずだ。無印のメンバーではない。かなりの上級幹部。そこまで推測できるのに、なぜ顔も名前も思い出せないのか。
……いや、その理由も、本当は解っている。俺自身が、あのトラウマともなった残虐な光景を思い出す事を拒否しているからだ。
結論から言えば、ラフィン・コフィンは2024年の元日に結成され、8ヶ月後のとある夏の日の夜に消滅した。それは自発的解散や、内紛による自壊ではない。攻略組、つまり最前線で戦うプレイヤーから50人規模の討伐部隊が組織され、剣の力によって壊滅させられたのだ。
本来ならもっと初期にその手段が取られてもおかしくは無かったのだが、巧妙に隠されたラフコフのアジトの所在は攻略組の力を以ってしても見つける事は容易ではなく。最終的には、殺人の罪悪感に耐えかねたのであろう一人のラフコフメンバーからの密告によってそのアジトは発見された。
その情報を元に偵察が行われ、間違いなく問題の洞窟が奴らの本拠地だと断定されてから討伐部隊が組まれた。当時ソロプレイヤーだった俺も依頼を受けて部隊に加わった。
アジト強襲は午前3時に行われた。
部隊の人数も平均レベルも、ラフコフを大幅に上回っている筈だった。奴らのアジトとなっている安全地帯の入り口と出口を封鎖し、奴らに無血投降させることすら充分に可能と俺達は考えていた。
────いや、たった1人俺達の見通しに否と答えたプレイヤーがいた。
《墓守り》フレンダ。当時、俺は名前を聞いていただけで相対した事は無かったが、間接的に彼女に関わったタイタンズハンドの1件で彼女の苛烈さを断片的にではあるが知っていた。
グリーンやオレンジの区別無く、犯罪者ギルドや殺人ギルドのメンバーを尽く殺していく彼女は当然とばかりにこの討伐隊にも参加しており、奴らに無血投降の意志など存在しないと俺達に強硬に主張してきたのだ。
当時の俺達は半ばレッドであった彼女に対する忌避感もあり、その主張を却下。昏い瞳でこちらを見つめる彼女に強い嫌悪感を抱きながら討伐へと望んだ。
────そして、レッドプレイヤーと相対し続けてきた彼女の主張の正しさを、そしてある意味平和ボケしていたとも言える自分達の楽観さを思い知った。
ダンジョンに突入した俺達討伐隊を待っていたのは、どこからか漏れていた情報により仕掛けられた、ラフコフの奇襲だった。
罠や毒など、ありとあらゆる準備を以て行われたその奇襲によって討伐隊は当初かなりの混乱に見舞われたものの、すぐさま態勢を立て直して交戦状態へと突入した。
しかし、ラフコフと討伐隊の間には思いもよらなかった差が存在した。それは、殺人への忌避感の有無だ。
狂騒状態となったラフコフのメンバーが、どんなにHPバーを削られても降参しないと悟った時、俺達は激しく動揺した。その状況があり得るとは考えていた。しかし、いざその状況となると、ゲージを真っ赤に染めた相手にとどめの一撃を振り下ろすことに躊躇を覚えてしまった。
──────《墓守り》以外は。
自分の剣を捨て、しゃがみ込んでしまった討伐隊メンバーがいた。ソイツに群がる様にして己の獲物を突きこんでいたラフコフメンバーの首が宙に舞った。数人分の首がまとめて飛んだその光景は俺達やラフコフの動きを止めるのには充分すぎるほどのショッキングな光景で。
次の瞬間、ゲージが真っ赤に染まっていたラフコフメンバーの大半がその姿をポリゴン片へと変えた。ダメージエフェクトは彼らの心臓部を正確に捉えており、たとえHPがレッドゾーンになくとも殺しきるという執念を感じた。
僅か数秒の間に何人もの命を奪った少女は、恐らく投剣スキルのものであろうモーションの技後硬直が収まるのと同時に、何の動揺も見られない凪いだ表情で崩れ落ちていた討伐隊のメンバーにポーションを振り掛けた。そして、鞘から引き抜いた短剣で背後から襲い掛かっていたラフコフのメンバーの心臓を正確無比に穿っていた。
そこから先は、彼女の独壇場であった。純粋なプレイヤースキルで言えば攻略組である俺達の方が高かったし、もしかしたらラフコフのメンバーにも俺達と同じ位の腕前の奴らがいたかも知れない。けれども、気迫が違った。抱いていた殺意が違った。
討伐隊メンバーが制圧の為にラフコフメンバーのHPゲージを減らせば、彼女がすかさず止めをさしてそのHPバーを全損させる。止めをさすのは彼女だとはいえ、自分の一撃が他人の命を奪うきっかけとなる事に恐怖した俺達は、次第に戦う事を拒否した。
そして、その後で彼女が見せたのは、ただただ「人を殺す効率」だけを追求した動き。間違っても彼女の様な幼い見た目の少女がやっていい動作では無かった。
戦闘が終了したとき、討伐隊からは2名、最初の奇襲で命を落としてしまった者たちが出てしまい。
──────ラフィン・コフィンのメンバーはその約13倍、27名のプレイヤーが命を落としていた。そしてその全員が《墓守り》によって止めをさされて殺されたプレイヤーでもあった。
正に「蹂躙」とも呼べる暴力の前に戦意を失い、崩れ落ちたメンバー達を尚も殺そうとしていた彼女を、俺は考え無しに止めに入った。きっとこの時の俺は、墓守りの殺意に恐怖で震えていたラフィン・コフィンのメンバーが被害者に見えていた。
「やめろ!もうソイツらに抵抗する意志は無いだろう!!」
振り下ろされた短剣を、俺は当時愛用していたエリュシデータで受け止める。すると、彼女は初めて自分以外の討伐隊メンバーを認識したとでも言うような表情で顔を上げ、
「人を殺した奴らを生かすって言うの?……無駄な事を……」
「殺される事に恐怖を覚えている奴を殺せば、それはレッドプレイヤーと同じだぞ!!」
「……それが?」
「ッ!?」
「……元から私はレッドプレイヤー。ただその相手が同じレッドプレイヤーなだけよ」
駄目だ。この子と俺は見ているモノが違う。
俺はその時点で言葉での説得を諦め、ダメージ判定が出ないギリギリのラインで彼女を取り押さえる事にした。半ば無抵抗に俺に取り押さえられた彼女は、無感情な目で黒鉄宮に送られるラフィン・コフィンの生き残りを見つめていた。
「……アイツは、いないのか……」
そう、小さく呟きながら。
さっきの灰色マントのプレイヤーが、俺の行動によってその戦闘で生き残り、黒鉄宮の牢獄に送られたラフコフメンバー6人の誰かなら、俺は戦後処理中のどこかのタイミングで会話している筈だ。口調を覚えているのに顔も名前も思い出せないのは、俺がラフィン・コフィン討伐の一件を無理矢理に忘れようとしてきたからだ。
誰だ。誰なんだ。あの灰色マントはラフコフ生存者6人の誰かでなければならない。俺はその名前を全員知っているはずだ。深く深く埋めた記憶を、引きつるような痛みに耐えて掘り返そうとした──────
その時。
俺は、今更にすぎる一つの可能性に気付き、喘いだ。
あの灰色マントの、金属的に歪んだ声。ごく低い囁きしか発しなかったあいつが、フルボリュームで叫んだらどうなるか。
耳の奥に、1週間前に聞いた音声ファイル内の絶叫が蘇る。
『これが本当の力、本当の強さだ!愚か者どもよ、この名を恐怖とともに刻め!』
『俺と、この銃の名は《死銃》…………《デス・ガン》だ!』
同じだ。間違いない。声の波形は限りなく一致する。あいつが──────
あの灰色マントが、《死銃》なのか?もしそうならば、俺は、GGOにダイブして注目され、《死銃》のターゲットとなるという今回の任務を早くも達成した事になる。
しかし、しかし。こんな展開があり得るなどとは全く考えもしなかった。《死銃》がSAO生還者で、その上元ラフィン・コフィン所属の殺人プレイヤーである、などとは。
そして、それはつまり──────
──────人を殺した奴らを生かすって言うの?……無駄な事を……
「──────ッ!!」
脳裏に浮かんだその言葉に、俺はダンッ!!と勢いよく腕をシートの上に打ち付けた。周囲のプレイヤーが何事かと俺の事を見てくる気配を感じるが、そんなものに構っている余裕は無い。
「……正しかったって言うのか……?あの時、アイツらを……」
生かさず、全員殺していればよかったのか?
その言葉は口の中から出ることは無く、解けて消えていった。しかし、俺の頭の中にはその選択肢がぐるぐると渦を巻いては澱のように心の底へと溜まっていった。
「第一回、BoB反省会ぃ……」
『わこつ……』『わこつ……』『わこつ』『元気出して』『ネコチャンの動画でも見て元気出して』
「どうも皆さんこんにちは、クソザコGGO実況者のベルです……どうも、GGOやっててごめんなさい……」
『(´・ω・`)ナカナイデ』『元気だせよ』『頑張れ』『落ち込むなって』『こういう事もあるって』
気力を振り絞って、ビーズクッションにもたれ掛かります。人を駄目にするその触感に包まれながらも、私の心は今日のフィールドの様に雨模様です。ザーザー降りです。
視聴者の皆さんの勧めもあり、すっかり愛銃となった《CZE CZ75 SP-1 Tactical》を携えて出場した第4回
そして、なんとそのサトライザーさんは私と同じ「拳銃とナイフオンリー」という同士でありライバルであったのです。私は同好の士を見つけて喜びました。そして同じ拳銃使いとしてどちらの腕が良いのかを試す良い機会だと思いました。
自慢ではありませんが、私はGGOプレイヤーの中でも割と上位に入れるだけの実力は持っていると思います。更にGGOのヤベー奴筆頭であるピトフーイとかなりの数の戦闘をこなしているお陰で、外道な作戦にも奇襲にも対応出来るだけの反射神経も鍛えられていたはず。
ですが、結果は秒殺でした。私が秒殺されました。
「……ぐすん」
『かわ……元気出して』『きゃわ……落ち込むなって』『かわ……また次があるって』『はいかわいい』『お前は黙ってろォ!!(´Д⊂(^o^ <ドゴォ』『辛辣ゥ!』『草』『でたな草ニキ』
試合時間は1分半ほどでしたが、実際の戦闘時間は10秒にも満たなかった筈です。背後から忍び寄ってきたサトライザーによって心臓を穿たれ即死。……実際の所は戦闘ですらない、ただ一方的な「殺害」でした。
「……次は、次は負けません!!」
『よく言った!!』『それでこそ男だ!』『ベルたそは女だろオラァン!?』
とまあ、こんな感じで落ち込んでても何も始まりませんね。視聴者の皆さんに心配をかける訳にもいきませんしそろそろ立ち直るとしましょう。
「そういう訳で、今回はちょっと真面目に戦ってみようと思います!!」
『……あれ?反省会は?』『しっ!言ってやるな……』『気分転換は大事』『と言う事はゲテモノ拳銃じゃないと?』
「そうです!でもCZ75は今回はお休みです。たまには真面目に銃撃戦をやってみようと思います!!」
『真面目な銃撃戦……?』『拳銃で?』『まともな銃撃戦だな!(洗脳済み)』『wktk』
私はビーズクッションの魔力から逃れると、勢いよく立ち上がってメニュー画面を操作し、一丁の拳銃を実体化させました。
「今回使うのはこれです!!《ワルサー P99》!!」
『おっ』『普通の拳銃だ』『騙されるな!!コイツだってなにかしらのゲテモノ要素が』
「ないです」
『なん……だと……!?』
私が取り出したP99は、ドイツの銃器メーカーであるワルサー社が制作した自動拳銃で、現在CZ75の次に私が好きな拳銃です。
全体的にコンパクトにまとまったフォルム。人体工学に基づいて作られたグリップは握りやすく、バックストラップの変更で使用者に合わせた太さに調節する事だって可能。そして特徴的なのは組み換えを必要とせずとも左右でスイッチ可能(「アンビ」ともいう)なマガジンリリースレバーです。
トリガーガードの下部と一体化するように取り付けられたレバーはアバターの都合上小さな手の平である私に使いやすく、実はこのゲームを始めた際に私が初めて購入した記念すべき初拳銃なのです。
「これ、私が初めて買った拳銃なんですよ」
『ベルたその初めて……?』『ガタッ』『ガタッ』『ガタッ』『通報しといたわ』『草』『草ニキそろそろ喋ろう』
「私の手にジャストフィットでして、配信を始める前の
『拳銃ってメインアームだっけ……?』『立派なメインアームやぞ(洗脳済み)』『まあその人がメインアームって言えばメインアームになるから……』
と、言う訳でP99を片手に私は砂漠フィールドへと出発。雨により泥濘む地面に悪戦苦闘しながらも、数体のMobをキルできました。当たり前の事ながらこの銃には銃剣が取り付けられてないので、接近戦は愛用のナイフである《USSR NRS》を使用してこなしていきます。
地中から勢いよく飛び出し、私を腹の中に収めようと襲いかかってくるワーム。そのデカイ口の中に、P99で鉛弾を撃ち込みます。そして横にローリングしてワームの飛び掛かりを回避すると、弱点にダメージを受けてのたうち回るワームの表皮を切り裂くようにナイフで切り裂きます。真っ赤なダメージエフェクトが引かれると同時に、断末魔の叫びを上げたワームはポリゴン片となって消え去ります。
「ふう。これで3体目ですね」
『乙』『普通に強いんだけどなぁ……』『ベルたそを瞬殺とかサトライザーどれだけ強いんだよ』『ワーム狩りに定評のあるベルたそ』
残弾の少なくなったP99のマガジンを交換しつつ、私は周囲にMobやプレイヤーの影が無いか探します。しかし、割と本降りの勢いな雨によって視界は妨げられて遠くが見渡せません。うーん……どうしましょうかねこれ。放送の枠は割と時間が余ってるので、出来ればあと1、2回ほどMobの戦闘かPKをやりたいのですが……
「……っ、とぉ!?」
と、そこまで考えた時。突然足下がぐらりと揺れたかと思うと、ズン!と地面が大きくすり鉢状に陥没しました。何が起こったのか分からずに目を白黒させる私の視界に、すり鉢状に陥没した地面の中心部で強烈な存在感を放つ巨大な顎を持つモンスターの姿がうつりました。
「あっ」
『フィールドボスやん』『あっ……(察し』『頑張ってベルたそ!!ここで貴方が勝てば、レアアイテムがきっとドロップするはずよ!!次回「ベルたそ、死す」。デュエルスタンバイ!!』『それベルたそ死んどるやんけぇ!!』
「不味いですってそれはぁ!!」
途端に全身を貫くように現れる
思わず大声で叫びながらすり鉢状となり歩く事もままならない足場を転がります。仮想とはいえ砂まみれになりながらも転がった私が1秒前までいた場所を、ガトリングから放たれた鉛弾の嵐がバターでも切り裂くかのように容易く吹き飛ばしていきます。
「あっこれ死んだ」
『諦めるな!!』『頑張れベルたそ負けるなベルたそ!!』『アリジゴク型のフィールドボスか、強いけど頑張ってな』
「簡単に言ってくれちゃってえ!!」
地面を切り裂く土煙に冷や汗を流しながらも、私はすり鉢から抜け出そうとボスから離れるように動いていきます。しかし、ゾリゾリ、ゾリゾリと砂に足を取られながらの前進。弾道予測線が体に照射された時だけ全力で回避運動をしますが、その度にズズッと下に滑り落ちてしまい、中々上へと上がれません。
振り返ってP99でボスの体に何発か弾丸を撃ち込んでみましたが、敵のHPバーが1ドット分も減っている気がしなかったのですぐに諦めました。
「取り敢えず、何はともあれ外に出ないと……!あぐっ!?」
『まずい』『まともに食らったぞ!?』『HPの減りがヤバいですね……』『ベルたそ、退却も視野に入れといたほうがいいぞ』
「その退却が出来そうにないんですよ、ね!!」
とうとうガトリングの直撃を受けてしまい、私のHPバーがぐんとその面積を減らし、色をオレンジへと変えました。回復薬をすぐさま使用しながら、私はこの圧倒的不利な状況に歯噛みします。このままではボスに対して何も出来ずに嬲り殺されてしまいます。
プロテクターのお陰である程度のダメージは軽減する事ができますが、流石にこう何度も直撃を食らうと不味いです。プロテクター自体の耐久値の問題もありますし。
「火力不足……なら、コイツで!!」
『出たぁ!!』『シュワちゃん愛用の拳銃やんけ!』『マグナム来た、これで勝つる!!』
P99には悪いですが、明らかにボスの装甲に対する火力が足りていません。なので私はP99を一旦ストレージに戻し、何丁か携帯している拳銃コレクションの中から現時点での最高火力を誇る拳銃を取り出します。
《IMI デザートイーグル》。
アメリカの大口径主義の象徴がコルトM1911であれば、これは大口径主義の終着点とも言うべき拳銃で、なんとその口径は弾丸径12.7mmの.50AE弾を使用できるという拳銃にあるまじき大口径。
そのゴツい見た目通りに動作の安定感は凄まじく、また弾を撃った後の反動も凄まじいです。
正直、.50AE弾はデザートイーグルや他の一部のマグナム拳銃でしか使用する事ができない特殊な弾薬のために値段も高く、私としてはあまり使いたくない類の武器でもあります。
ほら、あまり
「死に晒せ……!」
『マズルフラッシュ凄えwww』『これはきっと凄まじい威力を叩き出してくれるはず……!』
いつも使っている拳銃に比べて大型のため、ステータスが足りずに片手打ちは出来ず両手でしっかりと構えて撃ちます。お前本当に拳銃かよ、と言いたくなるマズルフラッシュが薄暗い砂漠に一瞬煌めき、結構な反動が腕に来ます。
これは割と勘違いされる事が多いのですが、別に非力な少女だからといってデザートイーグルなどのマグナムを撃てば反動で肩が外れる、と言ったことはあまりありません。それは射撃姿勢の問題であって、姿勢が悪ければゴリマッチョでも肩は外れます。
GGO内の拳銃カテゴリの武器でトップクラスの威力を誇るデザートイーグルの弾丸を食らったボスのHPは全体の量に比べればほんの少ししか減っていませんでしたが、それでも先程P99で攻撃した際とは比べ物にならない程の減少量です。
「よし、効いてる!!今のうちに……!」
『流石はデザートイーグル』『拳銃だけで勝てたりする……?』『バカ野郎ベルたそは勝つぞ!』
丁度弱点の部位を貫いたらしく、動きを止めたボスの隙をついてすり鉢状の巣から抜け出します。そして比較的安全地帯なこの場所からデザートイーグルで攻撃していくことに決めます。
「おりゃおりゃおりゃおりゃあ!!!」
『シュワちゃん!!』『I'll be back!!』『反動が凄いはずなのに、ベルたそ凄いな』
全部で9発のマガジンを撃ち尽くしてはリロード、撃ち尽くしてはリロードを繰り返していきます。持って来ている.50AE弾のマガジンは10個。他の拳銃でもダメージを与える事は可能ですが、デザートイーグルほどのダメージを与える事は不可能なので時間が不味いことになります。
「……チィ!!弾切れ!!」
『撤退か!?』『いや、撤退は許可できない』『ベルたそ、君の相棒を信じるんだ!!』『こうなりゃ賭けるしかねぇ!!』
「ォ、オォ──────ッ!!」
そして、とうとう弾切れを起こしたデザートイーグルをストレージに仕舞います。先程巣から抜け出す際に着弾したであろう顎の付け根に全ての弾を集中させていた為、残りのHPは後5割といったところまで減っていました。しかし、これ以上拳銃でまともにダメージを与えられるものはありません。
ここで撤退か?
一瞬、配信時間との兼ね合いからここで退くかどうかの選択肢が思い浮かびましたが、視聴者からのコメントに一世一代の賭けに出ることを決めます。
ガトリングの斉射を全速力で避けながら、メニューを神がかった正確さで操作した私が取り出したのは、伝家の宝刀《CZE CZ75 SP-1 Tactical》。2丁のそれを両手に構え、私はすり鉢状の巣、その中心部に居座るボスに突貫します。
「あい、きゃん、ふらぁぁぁぁあああい!!!」
『あっ』『えっ』『えっ』『あちゃー……』『これは駄目かも分からんな……』
巣の縁で勢い良く踏み切り、
「いけ!!デカネード!!」
『そんなんもっとったんか』『おっ』『おっ』『これは行けるかも分からんな(テノヒラクルー』『草』
私はお守り代わりにストレージに保管していた巨大プラズマグレネード、通称《デカネード》をジャンプした瞬間にボスへと投げつけました。寸分違わず狙い通りの軌道を描いて飛んでいったデカネードは、私に狙いをつけていたガトリングの砲門前に行き─────
「ジャストォ!!」
『ヒューゥ!!』『ベルたそ△!!』『汚え花火だ』『あれ、でもこのままだと』
ガトリングが放たれた瞬間、誘爆してボスに容赦無いプラズマの爆風を浴びせます。複数人のチームの中心で放てば瞬時にそのチームを蒸発させる事のできるほどの威力です。何発か誘爆する際に飛んできたガトリングの弾が命中してHPが削れましたが問題無いレベルの被弾です。
そして、ボスのHPは残り1割。出来れば残りの5割全て吹き飛んでしまった方が有難かったのですが、それは諦めます。
「死ねぇ!!そしてレア拳銃落とせ!!アリジゴクモドキ!!!」
そして、私が構えたCZ75の銃剣が、プラズマグレネードの爆風で傷付いたボスの装甲を貫き──────
【多分】ベルたそについて語るスレPart7【生還者】
1 名無しのゲーマー
ここは流星のごとく現れたSAO生還者(かも知れない)ロリバーチャル配信者ベルたそについて語るスレだぞ。
それ以外の配信者については他の場所で語るんだぞ。
アンチはアンチスレ建ってるからそっちに行くんだぞ。まあアンチに人権なんて無いんだが。
【アンチ】ベルとかいうクソニートwww→『URL』
780 名無しのゲーマー
えー、なお、容疑者は「デザートイーグルが欲しかった」等と供述しており……
781 名無しのゲーマー
うーん、これは情状酌量の余地なしですね
裁判長、いかがなさいましょう
782 名無しの裁判長
>>781
うむ
被告人ピトフーイには1ヶ月のベルたそオークション出禁を言い渡す
783 名無しのゲーマー
ぞん゛な゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!
784 名無しのゲーマー
>>783
これはお前が悪い
785 名無しのゲーマー
>>783
どうするんだよ明日からベルたそふて寝して配信しなくなったら
786 名無しのゲーマー
ガチ泣きだったぞ
787 名無しのゲーマー
ガチ泣きベルたそかわいい……かわいくない?
788 名無しのゲーマー
>>787
かわいいけどそれ以上にかわいそうだった
789 名無しのゲーマー
お前……フィールドボス倒して喜んでる最中の幼女キルして楽しいか?
790 名無しのゲーマー
>>789
いやだってベルちゃんスナイパーライフルの初撃避けたんだよ!?
なんか私もよく分かんない超反応でキレイに躱したんだよ!?
そりゃあ全力で殺しに行くしかないじゃん!?
791 名無しのゲーマー
>>790
いやー今回のこれはマジで擁護できないわ
それでベルたそからドロップしたのがよりにもよってCZ75だもんな
792 名無しのゲーマー
ああほら見ろピトフーイ
ベルたそのツイート止まってるぞ
793 名無しのゲーマー
私のせい!?
……うん、これは私のせいだね
794 名無しのゲーマー
取り敢えず謝ってこーい
795 名無しのゲーマー
てかピトフーイもコテハンつけたら?
796 名無しのゲーマー
謝罪の時にCZ75返すのとなんか手土産にベルたそが持ってなさそうな拳銃渡すといいぞ
797 名無しのゲーマー
>>795
面倒くさいからパース
>>796
うーん……あの子大体の拳銃持ってそうだからなー……ベルちゃんに光剣渡したら喜んでくれると思う?
798 名無しのゲーマー
>>797
マ?
799 名無しのゲーマー
>>797
マ?
800 名無しのゲーマー
>>797
ママ?
801 名無しのゲーマー
ベルママァ……
802 名無しのゲーマー
>>797
ベルたそがフォースの力を得てジェダイの騎士になるのか……
803 名無しのゲーマー
フォースの力
804 名無しのゲーマー
草
805 名無しのゲーマー
>>804
でたな草ニキ
806 名無しのゲーマー
草ニキもコテハンつけようぜ
807 名無しの草
草
808 名無しのゲーマー
ホントにつけてて草
809 名無しの生還者
今度ベルたそと戦ってみようと思う
810 名無しのゲーマー
生還者ニキ!?
811 名無しのゲーマー
遅かったじゃねえか……!(歓喜)
812 名無しのゲーマー
ベルたその続報マダー?
813 名無しの生還者
なんかめっちゃ喜ばれてて困惑
>>812
現在調査中だ
それを確かめるためのベルたそとの戦闘でもある
814 名無しのゲーマー
>>813
wktk
815 名無しのゲーマー
>>813
ちなみにどんな作戦で行くとか決めてる?
816 名無しの生還者
>>797
ピトフーイ、今も見てるか?
お前が光剣をベルたそに渡すなら俺も光剣を使おうと思う
817 名無しのゲーマー
>>816
みてるよーん
本気?私も参戦していい?
818 名無しのゲーマー
お前ベルたそ泣かした事忘れてるだろ
819 名無しのゲーマー
>>818
失礼だなー
忘れてなんかないよ?ただそれとこれとは別なだけ
820 名無しのゲーマー
>>818
ピトフーイなんだから諦めようぜ……
821 名無しの生還者
それで?渡すのか渡さないのか?
822 名無しのゲーマー
渡すよ
CZ75返して光剣渡して、あわよくばデザートイーグル買わせてもらう
823 名無しのゲーマー
>>822
オイ
824 名無しのゲーマー
>>822
オイオイオイ死んだわアイツ
825 名無しの生還者
>>822
よし
じゃあTwisterのDMでベルたそとコンタクトを取ってくる
826 名無しのゲーマー
>>825
いってらー
よし、じゃ善は急げって事で今からベルちゃんとこ行ってくるね
827 名無しのゲーマー
それは善なのか……?
828 名無しのゲーマー
ベルたそ、拗ねてないといいけど
829 名無しのゲーマー
拗ねたベルたそもそれはそれでアリ
なんか感想欄が曇リト展開を望んでいたので。
ほら!!
お望みどおり曇リト展開書いたぞ!!!
どうだ!!!!
次は生還者ニキが本編に登場する(はず)だぞ!!!!