「はい、こんにちはー。GGO配信者のベルでーす」
『わこつ』『わこつです』『こんにちは(昼)』『あってる』『珍しいこともあるもんだ』『わこつ』
どうもこんにちは。今日は私ベルの週7日ペースで行なっている配信の日です。……それ毎日じゃんっていうツッコミはなしですよ?
私のアバターと対面するように位置を設定してある仮想カメラに向けて手を振り、視界の隅を流れる視聴者からのコメントに反応を返していきながら、今日の配信の目的を伝える。
「なぜ今日はいつもの配信よりも早いかと言いますと、実はこんなものを
『い つ も の』『オークションから締め出されてしばらく見てなかったけど生きてたんかいワレェ!!』『この前スクワッド・ジャムでみたぞ』『まーたピトフーイの仕業か』
奴から貰った電子ペーパー型アイテムを内容を視聴者の方達も読めるようにカメラに向けると、コメント欄に奴に対するコメントで溢れかえりました。もう皆慣れきってますね。私も慣れました。電子ペーパー型アイテムは、SAOで言うところの羊皮紙アイテムと同じ立ち位置のもので、手紙と同じように情報を書いて相手に渡したり自分用のメモとしたりする為のアイテムです。そして、今回私のプレイヤーホームに届けられた彼女からのこのアイテムには
《超レアな拳銃を手に入れた。これを欲しくば本日午後2時〜5時の間にダイブし、指定した場所で待つ私にPvPで勝利して見せよ。尚、私のオークションブラックリスト入りを解除してくれた場合は無条件かつ即座にこれを渡すものとする。ついでにリアルマネーも渡しちゃう》
という内容と共に彼女が手に入れたであろう拳銃の
まあ、知ったことではないですけど。
「いやーレアな拳銃を用意したからと言って私がそんな見え見えの罠に突撃するようなおバカだと思われてるんですかねー。心外です」
『おっそうだな』『ステンバーイ…ステンバーイ…』『これはオチが見える見える』
「というわけでちょっくらピトフーイさん殺してきますね」
『い つ も の』『これはひどい』『草』『レア拳銃というあからさまな餌に全力で食いつく配信者の鑑』『ピトフーイをオークションに参加させないという鉄の意志を感じる』『強く生きろよピトネキ……』『油断したら負けるぞ、気をつけろベルたそ』
「奇襲・強襲好きなヤツのことです、またどうせ対人地雷とか埋めてるんでしょう?」
『跳躍地雷とか持ってそう』『実装されてたかわかんないけどピトネキなら持ってそうなのがあの人の怖いところなんだよなあ……』『諭吉を生贄に捧げて武器を召喚する人だから……』『今はアドバンス召喚だぞ訂正しろ』『でたよ決闘者()』
カメラにそっぽを向かせ、装備を整えていきます。普段のプレイヤーホーム内での配信で着るルームウェアから、最近新調したマルチカム迷彩のコンバットシャツとカーゴパンツに着替え、愛用の拳銃である二丁の《CZE CZ75 SP-1 Tactical》を太腿に取り付けたホルスターに納めます。これまでつけていた銃剣の代わりにピトフーイから貰った光剣を改造して取り付けたこの子は、視聴者の間では《Vell Model》等と呼ばれているらしいです。《CZ75 VM》ですか。……良いですね。特に綴りがキチンと「Vell」な所、個人的にポイント高いです。
『聞こえる……聞こえるぞ、ベルたその衣擦れの音が……!』『シュインシュインいっとるがな』『衣擦れの音というより電子音で草』
「そこの変態さん、通報しますよ」
『サーセン』『ベルたその冷たい視線と「変態さん」との罵り……アリだな!!』『通報しました』『草』『でたな草ニキ』
アバターのインナー姿が一瞬露わになる着替えは終わったので、カメラの向きを元に戻しつつ他にも体力回復用のナノショットや予備の弾倉を直ぐに取り出せるように実体化してポケットに入れたりそれ用のポーチに入れたりして装着していきます。3分ほどで、ピトフーイと戦闘を行うための準備は終わりました。最後にCZ75に取り付けた光剣の調子を確認してから、ヤツが指定してきたフィールドへと向かいます。
「うーん、ちょっと遠いですかね……?あんまり移動するのに時間をかけても枠が勿体無いですからね……」
『俺たちは別に構わんで(にっこり)』『移動する間おしゃべりしよう(名案)』『バギーとか乗ってみる?』
「お、それいいですね。万が一地雷原とかを突っ切ることになっても高速で移動できるバギーなら大丈夫……だと思いたい」
『……いけるさ!!(爽やか笑顔)』『信じればいける』『地雷原突っ切るのは無理だと思うけどいざという時の為の盾にはなるはず。あと移動も早くなるし』『でもGGOのバギーって乗るのクソ難しかったような……?』
「馬に乗るよりは簡単でしょう。そうと決まれば善は急げです、バギーに乗って颯爽と登場してやりましょう!!」
そういう訳で、私はSBCグロッケンの大通りに店を構えるレンタルバギーの店でバギーを借り、エンジンを吹かしながらフィールドへと向かいました。
……向かい、ました。
…………むかい、む、む……むかい…………
「うごかしかたわかんない」
『草ァ!!』『ほらだから言ったジャマイカ(言ってない)』『泣かないで』『大丈夫だ、ほら、歩いていけば間に合うから』
思わず泣きそうになってしまった私を慰めるように視聴者の皆からコメントが寄せられました。しかし、その思いやりは逆に私を苦しめます。ごめんよう……バギーの乗り方わからないザコプレイヤーでごめんよう……
と、言うわけでバギーに乗るのは諦めました(血涙)。
視聴者の中にEV一強のこのご時世では絶滅危惧種の旧式マニュアルシフトバイクに乗っている方がいたらしく、バイクと同じ操作方法であるバギーの乗り方を色々と教えてもらいましたが、私にはまだ難しそうなので大人しく徒歩で行くことにしました。……シフトアップとか分からんよ。アクセルって回しとけば勝手に速度が上がるものじゃないの……?
「さて、そろそろ指定された場所に着きますね。……奇襲を警戒しておかないと」
『全然信用されてなくて草』『全部今までの行いの結果なんだよなあ…』『人はこれを自業自得という』『ブレーキをかける時はアクセルを元に戻してクラッチレバーを握り』『旧式バイクニキは成仏して』『草』
地雷を発見したら即座に爆破解除出来るようにCZ75をホルスターから抜いて構えておきます。まあ、地雷なんてものは本来見えない様に仕掛けるものですからあまり意味はないんですけどね。蛇の潜入ゲームの地雷はあれ地雷とは呼べないでしょう。どちらかというとピトフーイが襲いかかってきた時に迎撃できるように構えてる感じです。
私は息を潜めながら小声で視聴者の方達と会話をしつつ進んでいきます。……ちなみに、呼び出されたのは成人男性の身長の2倍ほどの高さを軽く超える程の巨大な岩石が多数存在する独特のフィールドで、遭遇戦と近接戦が多発するエリアです。だから奇襲や地雷を警戒してるんですけどね。
そうしてフィールドの環境音やMobが発生させる音とは違うランダムな異音を聞き分けられるように耳をすまし、ピンと糸を張ったような緊張感の中岩陰を進んでいると、突然私の視界が真っ赤に染まりました。……いえ、これは……!
「
『マシンガン!?』『いや、違う!ベルたそ、下がれ!!』
「言われなくとも!!」
瞬間に私がバックステップで大きく退くと、私が先程までいた場所の「両脇」の地面が爆ぜ、私の胴体があったであろう位置を恐ろしい数の小鉄球が薙ぎ払って行きました。これは、この人間の悪意の具現化とも言える兵器は……!
「《クレイモア》……!」
『ヒエッ……』『圧 倒 的 殺 意』『これは殺す気マンマンですわ……』『今の爆発でピトネキ気づいたぞ、ベルたそ急げ!!』
「あー……なんかもう遅いっぽいですね」
クレイモアの爆発を何とかしのいだ直後、怒涛の勢いで流れる警告のコメントを横目に見ながら、私は思わず棒立ちになってしまいました。何故か?それはクレイモアの爆発とほぼ同時に私を囲むように出現した6本の弾道予測線を見れば分かります。
岩の壁を超えるように山なりの軌道を描く独特の弾道予測線。
ええ、はい。
ピトフーイのやつ、種別は分からないけど
「……ほんと、殺す気満々ですね」
『うわぁ……(ドン引き)』『これは草も生えない』『てか今死んだらCZ75の命が危ういのでは』『頑張れベルたそ!!』
「さて─────」
プラズマ弾頭とか、一介のGGOプレイヤーをたった一度殺すためだけにまた超高価なものを惜しげもなく使ってくれちゃって。
本当に。
「ちょっと、本気出す」
本当に、ありがたいことだ。
トリガーガードから指を閃かせ、手早く光銃剣の出力ダイヤルを回す。
ヴヴヴン、と2つの光の奔流が出現したのを確認して、私は一歩前へと踏み込み。
あ、これはダッシュじゃ死にますわ。無理無理空に逃げよう。
着弾寸前の場面で咄嗟に考えなおして思いっきりジャンプした。
直後、着弾した6発のプラズマ弾頭が辺り一面を蒸発させた。
「ッ、シャオラァァァアアア!!!」
『これは汚い叫び声』『鼓膜敗れるかと思った』『鼓膜負けてるぞ』『草』『某配管工を彷彿とさせる見事な壁ジャンプです』
触れた瞬間お陀仏確定の青い光に恐怖を覚えながらズダダダン!!と地面や壁を連続して蹴る音と共に、私の視界が爆発の寸前までいた場所から上空へと一気に移動する。長時間のプレイによって得た
「それでね!!はいはい、分かってたよっ、とぉ!!」
そして、上空で身動きが取れない私の足を貫くように現れた複数の予測線。ピトフーイからの狙撃でしょう。予測線の飛んできた方向を見れば、いつも通り身体のラインが浮き出る痴女のようなボディスーツをきたにっくき奴の姿が。
しかし、私だっていつまでもやられっぱなしなわけじゃあない。奴がプラズマ弾頭とかいう奥の手を使ってきたのだ、ならば私だって練習中の『あれ』を見せるとき……!!
イメージするのは、ライトブルーの閃光。そしてそれに付随するジェットエンジンを思わせるほどの鋭い音。
私の見ている視界がだんだんとスローになっていく不思議な感覚。それと反比例するように体を制御する思考回路はスパークするかのようにその思考速度を上昇させ、ついにこちらへと飛んでくる銃弾の軌跡、その姿を完全に把握する。
「おおおおぉぉぉぉああああああああああ!!!!!」
『これは…!』『知っているのか雷電!?』『光剣凸とかいう基地外戦法でBoB決勝までこぎつけた謎の美少女アバターが使っていた弾斬り!!飛んでくる銃弾を光剣でぶった切るとかいう意味の分からない技だゾ!!』『うっそだろお前』『出来たら滅茶苦茶かっこいいぞ!!』
視聴者の興奮と期待を一身に背負い、今、私のこれまでの研鑽のすべてを注いだ剣技が思い描いたものと寸分たがわず中空に眩い軌跡を描く─────ッ!!
「……あっ」
そして、見事に貫いた。
ピトフーイの放った弾丸が、私の足に。
私の光剣は空中で思いっきり振った反動で若干姿勢が崩れ、見当違いの方向を切り裂いていた。
「……ぐすん」
『思いっきりしくじっとるがな』『若干予測線の下でしたねー』『ある意味では視聴者の期待を裏切らないともいえる』『HPやばいぞ、おとなしく回復するんだベルたそ』『草』
「……こ、こんな事もあるって。うん」
べ、別に泣いてなんかないもん。
撃たれた衝撃で落下の軌道が変わり岩の上に落ちたのはまあ不幸中の幸いといった所でしょうか。ここなら地雷の恐怖に怯えずに済みます。え?本気出す?そんなこと言ってましたっけ?(すっとぼけ)
若干ブルーな気持ちになりながら結構高価な回復薬であるナノショットを首筋に打ち、容赦なくこちらを狙ってくるピトフーイの元へと接近していきます。近づく度に弾道予測線の表示と着弾までのラグが少なくなっていきますが、そこはなんとか気合でしのぎ続けます。思考回路が悲鳴を上げてますね。もう
「ハァーイ、ベルちゃん!!最近1対1で殺しあってないからさぁ、今日は楽しもうね!!」
そう叫びながら手に持っていた高性能小銃《KTR-09》をめちゃくちゃイイ笑顔で撃ってきます。もうここまでくれば弾道予測線は意味を成しません。必死に回避行動をとりながら近づこうと努力しますが、耳元でヒュンヒュンと弾が掠める音がする度に恐怖を感じます。
もうほんとおうちかえりたい。
「ひっ……ひええ……」
『情けない声を上げながらもしっかりと神回避を連発するベルたそ』『満面の笑みのピトフーイに怯えながらも時々拳銃を打ち返すベルたそ』『ベルたそのプレイング見てるとやっぱベルたそも上位プレイヤーの一員なんやなって』『ベルたそはきちんとライフルを持てば強いとあれほど』
そしてようやく拳銃の射程距離まで岩を飛び越え銃弾をよけとやってきました。試しにパンパンと二発ほど撃ち返してみますけど無理ですね。回避されました。やはり零距離での白兵戦がGGOで最強なのでは……?
「ほっ、ほっ……よいっしょっと!!」
「あっは!!凄いね凄いね!!……おっと!?」
そして、数分ほど撃って撃たれて回避してのやり取りを互いに繰り返していると、遂にピトフーイの操る《KTR-09》の残弾が切れました。ガチ、と音を立てて弾を吐き出すのをやめた愛銃に思わず舌打ちをしながらもマガジンを取り替えようとする奴の懐に潜り込みます。2、3秒で小銃のリロードを終えてしまう変態的な技術を持つピトフーイですが、その数秒で私には充分です。
「レア拳銃よこせぇぇぇ!!!」
『完全に物欲の申し子と化してて草』『拳銃集めはベルたその趣味だから……』『拳銃につられてノコノコとやってくる幼女(弱くない)。イイと思います』
零距離での近接戦闘。曲がりなりにも
「アッハハハハハハッ!!!いいねぇいいねぇ、やっぱり殺し合いっていうのはこういうのじゃないとダメだよねぇッ!!」
「ッ!?ク、ソぉッ!!」
『!!!???』『な、何が起こったんだってばよ……?』『良くわからんが凄い攻防だったということは理解した』
が、次の瞬間にダメージを受けていたのは私の方だった。
驚愕に目を見開きながら必死に地面を蹴り飛ばし、ピトフーイとの距離を取る。……視界が狭い。どうも奴に片目をやられたようだった。しかし、飛び去る瞬間に光剣を振ったのが当たったのか、奴の体にも大きく真一文字に切り裂かれたようなダメージエフェクトが現れていた。……銃剣に改造している為に若干威力が弱まっているとはいえ、GGO内トップクラスの威力を誇る光剣の一撃を受けても沈まないとは。奴の防具が良かったのか、奴のステータスが私と同等に高いのか。
両方だろうな。そう考えながら、私は狭く遠近感の狂った視界に内心舌打ちしてピトフーイへと話しかけた。
「……まさか反応出来るとは思ってなかったけど」
「いやー、びっくりした?ベルちゃんと
「……こっちもまさか躊躇なくKTRを捨ててくるとは思わなかったよ」
『うわぁぁぁぁああああ超高価な傑作銃がぁぁぁああああ!!!』『ピトフーイこの一戦のためだけにいくらつぎ込んでんだよ……』『少なくとも諭吉先生がダース単位で吹き飛んでる模様』『うわぁ……(ドン引き)』
ピトフーイは、私の攻撃にリロードが間に合わないと見るや、私に向かってひょいとマガジンを放り投げ、KTRを剣のように構えたのだ。マガジンは目くらましにもならなかったが、流石に間に差し込まれたKTRを溶断するのには一瞬のタイムラグがあった。奴はその一瞬で破壊されたKTRから躊躇なく手を離し、マトリクスよろしく超絶技巧の回避をしながら、二の腕のホルダーから取った投げナイフで私の右目を切り裂いたのだった。
「よーし、ここまで楽しませてくれたお礼に私からのプレゼントだよ、ベルちゃん」
『どうしよう嫌な予感しかしない』『安心しろ、俺もだ』
「プレゼントって?」
「私が見つけた激レア拳銃のお披露目!じゃーん!!」
そう言って、ピトフーイは若干離れた位置で仮想の息を整える私にも見えるようにして腰のホルスターから「二丁の」拳銃を引き抜いた。そして、その二丁拳銃を見た瞬間、私は驚きで現在片側しか開かない目を見開き声をあげた。
「そ、その拳銃は……!!」
「《アーセナルファイアアームズ AF2011-A1》。しかも貴重なDBDCタクティカルバージョンだよー。しかも二丁。ほらほら、欲しいんじゃない?」
「む、むむむぅ……」
ピトフーイがまるで猫じゃらしのようにひらひらとAF2011を振って見せびらかしてきます。私は隙を見せてしまうという理性の警告を聞きながらも、思わずついーっとその拳銃の軌跡を目で追ってしまいます。欲しい。欲しい欲しい欲しい!!かっこいい!!
《アーセナルファイアアームズ AF2011-A1 DBDCタクティカル》は、イタリアのアーセナルファイアアームズ社が制作した世界中に多数存在する
左右二つの《コルト M1911》を貼り付け合わせたような外見のAF2011ですが、別に本当に二丁のコルトガバメントを溶接しているわけではなく、左右一体になるようにあらかじめ設計されてから作られています。それはそれで頭がおかしいのですが、さらにこのDBDCタクティカル仕様はなんと高速弾の.38スーパー弾と、亜音速弾の.45ACP弾という異なる二つの口径の弾を発射し、一回の射撃で同じ場所に時間差で二発の弾丸が着弾するとかいうとかいうほんと一般人からしてみたら何食って考えたらこんな拳銃設計できるのか分からないと言いたくなるようなゲテモノ拳銃です(最上級の褒め言葉)。
『キタァァァァァァ!!!』『遅かったじゃないか……!!(歓喜)』『ゲテモノ拳銃が出るたびにどんどん慣れていく自分がいる』『Welcome to our side.』『なんか大昔のゾンビ映画でみたことある気がするゾ』『さてはお前おっさんだな』『ここのコメント欄時々加齢臭がするから困る』『←そういうお前の好きなキャラは?』『ゲームのジルがめちゃくちゃエッッッで好きだったゾ』『草』
「これが欲し「欲しい!!!」……そんなに欲しい?」
「超欲しい!!!」
今の私は目がキラキラと輝いていることでしょう。なんといってもあの憧れのAF2011が目の前にあるのです。金で他人から買ったのかダンジョンの奥深くでドロップしたのかは知りませんが、これは命をかけて奪いに行かねば。
「ちなみにオークションの出禁解いてくれたら即あげちゃうけど」
「ころしてうばいとる!!!」
「……あー、うん。まあ私もここで殺し合いが終わるのはなんか消化不良だし、と」
「しねぇぇぇぇぇぇえええええ!!!」
ころす。じゅううばう。わたし、もっとつよくなる。
若干残念そうなピトフーイの様子には目もくれず、私は光剣を腰だめに構えたYA☆KU☆ZAスタイルで突撃しようとする。
「でさぁ、ベルちゃん。私ちょっと前に『めちゃくちゃ練習した』って言ってたじゃん?」
「うおおおおおおおおおお!!」
『ピトフーイの話も聞いてやれwww』『これはちゅーるを前にした猫の様ですな』『猫耳ベルたそ……アリだな!!』『ベルたそもALOにおいでよう』『何言ってるんだ、ALOには拳銃が無いだろ?』『皆ベルたその判断基準拳銃になってて草』
「私が練習したのって何もベルちゃんと渡り合えるだけの格闘技術だけじゃなくてね?」
『ん?』『まさか』『あっ(察し』『いつかやるとは思ってたけど』『夢の戦いが実現か!!』
そういうと、ピトフーイは見せつけるように私に銃口を向け、その銃口の下、マウントレールに取り付けられた特徴的な筒に触れた。それを見た瞬間、私の背筋に凍えるような悪寒が走り、奴の懐に踏み込みかけていた足を止めた。
次の瞬間。
「ベルちゃんみたいな
私の目の前を、見覚えのある光の奔流が通り過ぎていった。私の目前を通過する際に、獲物を食いそびれた事に不満を示すかのようにバヂィ!!とスパークしたそれは紛れもなく「拳銃の銃身に取り付けられた」光剣のものであって。
AF2011に気を取られすぎて頓死一歩手前で冷や汗を流す私の前に、二丁拳銃+光銃剣という私のトンデモ装備をAF2011で真似たピトフーイが立ちふさがった。
誤字報告、感想ありがとうございます。