学戦都市アスタリスク 愚者の足掻き   作:8674

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起死回生

「──えー、マクフェイルの尊い犠牲によってなんとかここまで来れたわけだが……。沙々宮──俺らにはやっとかなきゃならんことがあるな?」

 

 

「──さらばマクフェイル、お前のことは忘れない」

 

 

 文字通りの犠牲を甘んじて(無理やり)受け入れてくれた強者(脅迫のせい)にはやはり敬意を払うべきだろう。その思いは二人の中で言葉なく交わされていた。

 

 

 行人と紗夜は二人で上を向きながら敬礼、そして黙祷。

 

 

 これにて第三部、完。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……さて、ふざけてる場合じゃねぇな」

 

 

「同感。おそらくこのドアの向こうにフローラはいる」

 

 

 行人と紗夜は目の前の扉を見据えて、それぞれ拳銃型の煌式武装(ルークス)を起動し突入の準備をする。相手は手練れだ。綺凛もいればそれこそ百人力だったのだが、怪我で動きが鈍い状態では連れてくることもできない。

 

 

 ついでにこの戦闘では一切経験の無いタッグで望むことになっている。初めて組む相手にどれだけ動きを合わせれるかわからないが、敵の強さがわからない以上各々で戦うのもまずい。ここはチーム戦である《獅鷲星武祭(グリプス)》に出た経験のある行人の腕の見せ所だろう。──最悪の場合はもっと別の手段に出ざるを得ないが。

 

 

「沙々宮、敵がこっちを上回る強さだったら、俺がそのフローラって子を捨て身でそっちに渡す。その後は敵を抑えるから、その子を連れて逃げろ」

 

 

「……行きなり何を言い出す」

 

 

 紗夜はまだ《星武祭(フェスタ)》に一回しか出てない。ならば今回の《鳳凰星武祭(フェニクス)》で果たしたかったはずの夢があるはず。それに比べて行人にはそういったものは無い。ならばここでの犠牲に適任なのは行人だ。

 

 

「──お前には果たしたい夢があるはずだ。だったらここでつまずいちゃ……」

 

 

「私の目的は父さんの武器の宣伝。そしてカミラ・パレートの擬形体を倒して、やつに父さんの武器を認めさせてやることだ。別段《星武祭》にこだわるようなものじゃない。──それに、誰かが犠牲になるような夢なんて、私も綾斗も、みんなごめんだ」

 

 

「…………」

 

 

 ……どうやらこの後輩は、見た目よりもしっかりした心を持っているようだ。

 

 

「──先輩はやけに死亡フラグを建てたがる。そんなに死に急ぐようじゃ、この先フローラを助けれるか心配でしょうがない」

 

 

「……言ってくれるなぁ……。──わかった、そこまで言うなら、そっちこそ先にくたばるなよ?」

 

 

「大丈夫、肉壁になるとしたらそっちだから」

 

 

「お前はシリアスブレイクをしたがるなぁおい……」

 

 

 なんとも締まらない会話だが、向こう見ずだった思考も少し落ち着いてきた感覚だ。そもそも自分を犠牲にするとか、まったく自分は何を考えていたのか。

 

 

「そんじゃ……俺から突入するぞ」

 

 

「……了解」

 

 

 小声で伝えて行人は《RS Five-seveN》を構えながら、音が出ないようゆっくりと扉を開ける。そこに広がっていたのは多大な柱が立つホールだ。明かりはランタンのような物だけで全体的に薄暗く、ただしその奥でぐったりとする猿轡をされた少女の姿だけはハッキリと見えた。

 

 

「…………!」

 

 

 少女──おそらくフローラだろう──はこちらに気づきハッとするが、行人は声を上げようとするフローラを自分の口の前に指を置くことで制した。

 

 

(あの子以外の気配は感じないが、絶対にこの部屋にはいる筈だ。──上で見た人影から推測するに、敵は『影』を使う能力者)

 

 

『行人後ろ!』

 

 

 するとそこで行人の左後ろから黒く巨大な棘が現れ、胴体の脇腹辺りに向かってきた。既に敵はこちらの位置を把握しているようだ。ニアの警告がなかったら今ので戦闘不能に陥っていただろう。

 

 

(……こりゃ常に影の位置を把握しなきゃならないな)

 

 

 部屋全体には明るくはなくともあの光源が無数にあるようだ。注意深く見てみると床に壁に天井、あらゆる場所に『影』がある。先のように予期せぬ位置からの奇襲、はたまた上下左右からの攻撃による拘束──敵がとってくる手段は山ほどある。

 

 

 ──獲物が来る可能性がある場所に罠を仕掛けない狩人はいない。なんらかの予想はしていたが、これがやつが用意した『罠』なのだろう。それも極上の餌まで用意している。行人たちは文字通り誘い込まれた。

 

 

『次! 肩と足に来るよ!』

 

 

「ッチ! あぁクソッ!」

 

 

 先に続いて前後から挟んでくる形で肩を狙う第二波を行人は身を捻って避け、太ももを狙う第三波を星辰力(プラーナ)を集めた箇所に斜めに当てそれを逸らす。

 

 

「ほう、今のを凌いでみせるか。完全に不意をつもりだったんだがな」

 

 

「──生憎と、不意打ちの類いには慣れているもんでね。お前の攻撃がどこから来るか予想するなんて容易いことだ」

 

 

 フローラがいる柱から声がして、そこを振り向くと先ほどまでいなかった黒ずくめの、目は死んでいて無機質な声の男が立っていた。間違いない、車に乗っていたあの男だ。

 

 

 牽制としてそんな言葉を投げかけるが、半分は嘘だ。影による攻撃を避けれたのはニアがそれを感知したからだ。──そしてそれは万応素(マナ)や星辰力を使ったものにしか反応しない。やつが能力ではなく武器を使ってきていたら、行人は反応もできずやられていただろう。

 

 

 ──だがそれより厄介なことがある。

 

 

「そうか。だとしても、俺には関係が無いことだ。──俺の邪魔をすれば、この娘の命は保障しない」

 

 

 そう言ってフローラの首筋に行人を襲ってきた棘が突きつけられる。

 

 

 やはりだ。元々この男には生気が一切感じられない。まるで人形のように、着々と任務を遂行するエージェント(黒い猫)。……そんな人物にとっては、自分がどうなるかなど問題にすらならない。現にこの男はこちらが動けば容赦なくその棘を動かし、フローラの喉を刺し貫くだろう。

 

 

「わかったなら、まず装備している全て捨て、……お前の持つ《純星煌式武装(オーガルクス)》をこちらに渡せ」

 

 

「……チッ」

 

 

 行人は舌打ちをしながら装備している煌式武装、手榴弾をやつに見えるようにして捨て、《数多の偽り(ナイアーラトテップ)》を投げ渡す。男はそれをキャッチして口を開く。

 

 

「……やけに素直だな」

 

 

「その子に死なれちゃ意味がないからな……。──それに……」

 

 

「…………?」

 

 

 そこで言葉を止めて行人はニヤリと笑みを浮かべ、それに反応して男は目を細めて身構え、こちらへの警戒を強める。……が、

 

 

「──ふんッ!!」

 

 

「ぐはッ……!!」

 

 

 男には行人とまったく関係ない場所からの蹴りが顔面に飛翔する。それは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「勝手に私の発動体に触らないでほしいなぁッ!!」

 

 

 《数多の偽り》の発動体を持っていた男の手の中から、脚だけ無理やり出したと同時に男と同じくらい容赦ない蹴りを放ったニアのものだった。




 ギリギリ一日がたたないうちに投稿できました。

 別の書いたりゲームしたり動画見たりゲームしてた中でよく投稿できたなと思います……(遊んでただけ)

 えーまぁそれは置いといて、ようやく自分が思い描いてたもの(行人とニアの共闘)を書けました!

 では、次回もお楽しみn

行「この作品楽しみしてる方3ケタもいねぇだろ」

 お前(いろんな意味で失礼だから)一回黙れ。

行「アベシッ!(°o°C=(_ _; 」
        ↑  ↑
        行  作 

 邪魔が入りましたね、ではまた次回!

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