それらが苦手な方にはおすすめしません。
「ほら、一度深呼吸して……」
「すー……はー、すー……はー」
「──どうだ?」
「な、なんとか……」
教会の子供、ダンを深呼吸するように促す。これによって一応喋れるくらいにまでは落ち着いた。
「それで、何が聞きたい? フローラを救った熱き冒険談でもしたらいいか?」
「い、いえ、僕は──なんでフローラちゃんを助けれたのか……聞きたくて……」
「それは……一体どういう意味だ?」
──質問の意図がよくわからなかったので、思わず聞き返してしまった。子供が捕まっていて、自分がそこで動けて、だから助けに行ったのは普通だと思っていたのだが。
「え、えっと……フローラちゃんが捕まっていたとき、た、確か警察とかにも、伝えれなかったんですよね? だ、だったら、なんでそれなのにフローラちゃんを助けれたのか不思議で……。だ、だって、自分たちでしかなにもできないって、すっごく不安なことで、なのになんで、フローラちゃんを助けれたのか──」
「うん、まあ、それはごもっともな意見だな」
相変わらず自身無さげに言うが、それは別段間違ったことではない。
自分しかできない何かがある……。それは自身になることもあれば、かえって緊張のような負担になってしまうこともある。
「──ダン、それを伝えるために、お前に聞かなきゃならんことが二つある」
「は、はいっ!」
──しかしそれを乗り越えれるのが人間でもある。ならばこの少年には、それをじっくりと教えなければならないだろう。
「──お前から見て、フローラは可愛いか?」
「……へ?」
その質問はまだ無垢で純粋な子供には早すぎたか、その顔に一瞬で火がつき、そしてリンゴのように真っ赤になってしまう。ついでにそれを横から聞いているテレーゼも少し苦笑い気味だ。
「ふ、フローラちゃんは、か、かわ……かわいい……と思い……ま……す」
「そうか……ならば教えよう、なぜ、我々がフローラを救えたか。その理由のひとつを……。──古来より男とは、戦にて身を投げるように戦いへと臨んできた生物……その理由とは……!」
セクハラで訴えられても問題ない上司の質問みたいになったが、ある意味男にとってこれは重要な問題である。まるで悟りを開いた仙人のような雰囲気をまとい、その壮大たる威厳(笑)を持って行人は口を開く……!
「──可愛いのためだッッッ!!!!」
「…………」
「可愛いとは男──いや時には女すらも惚れさせ虜にしてきた! つまり、可愛いには何者すら抗うことはできない!」
いつもの行人を知る人物が見ればこれは替え玉だとすら思わせるだろうその威厳。外にいた筈の子供たちをも惹き付けるそれは、何故か大地を、空を、空気を、全てを(声量で物理的に)揺らした。
「世界中の歴史……人間より上位という神とやらが出てくる神話においても、彼らはその可愛さに魅了され、女を連れ去ったり不倫したりとか……まーしょうもねぇことやらかしてる。──何故か? それは──彼女らが!! 可愛いからだッッ!!」
「……そろそろいいのではないですか?」
「あ、すいません。つい熱くなってしまいました」
流石にとがめてくるテレーゼに行人はお辞儀する。
なにせリーゼルタニアに来る前から、色々と鬱憤が溜まっていたのだ(何故かはあえて言わないが) それこそ、何度頭を叩き割りそうになったか覚えていない程に。だから……これくらいは許してほしかった(無理だけど)
「ま、まあこれが理由の全てじゃないが、それでもその一つなのは本当だ。テレーゼさんや他のシスターたちも、お前らが可愛いから守ってくれる。──見過ごせないんだよ、やっぱり」
「は、はあ……」
いまいち納得できたとはあまり言えないだろうが、さほど問題かと言われればそうでもないので大丈夫。時には『考えるな感じろ』の心も大事なのである。
「──んで、二つ目だな。今度のはちょっと自分でもできてるかわからんから、他人の言葉を使わせてもらうぞ」
さっきまでの気迫ある男はいずこへ、今度は落ち着きのある──例えるならば、こう……イギリスでゾンビにやられた男爵のような雰囲気だ。
『──ノミっているよな? ちっぽけなムシケラのノミじゃよ。あの虫は我々巨大な人間にところ構わず戦いを挑んでくる。これを『勇気』と呼べるだろうかね』
「え!? えーっと……」
ダンだけに留まらず、回りにいた子供たちもどんどん考えだすが、それがわかった子はいないようだ。──実は以前感銘を受けた某有名漫画の名言をパクるだけなので、知っている子もいると思っていたのだが……、やはり貧富の影響が強く表れているのだろう。
『ノミ共のは『勇気』とは呼べんなぁ』
──ならばちょうどいい。こんな人権など無慈悲に捨てられる世界、娯楽の一つや二つは宣伝しておいた方が、彼らにとってもいいだろう。これは文字通り、人間讃歌を表す台詞……
『では『勇気』とは一体何か!? 『勇気』とは怖さを知ることッ! 『恐怖』を我が物とすることじゃあッ!』
「おおおォォォッ!!」
「これが! ツェ○リのおっさんの名台詞だぁッ!」
子供たちは一斉に声をあげる。ただしこれは自分の台詞ではないので、少々複雑な気分だが。──というか、これ色々と大丈夫だろうか?(作者の声)
「──ダン、不安ってのは誰だって感じるものだ。俺も、お前も、テレーゼさんも、ここのお姫様も、みんな不安とかそういう負の感情を感じる。──例外なんて、一人もいない」
人間とは、曰く、感情の生き物だ。正の感情も負の感情も全て合わさってできているのが、人間という生き物だ。笑いも、怒りも、悲しみも、喜びも、全て人間の一部であり、それから切り離すことは誰一人としてできない筈だ。少なくとも、行人はそう思う。
「──お前の引っ込み思案は、もしかしたらそこから来るものもあるかもな。でも、それは全てお前の一部だ。否定する必要はない。自分を誤魔化して、不安を感じないようにしたり……色々と試行錯誤して頑張ってみろ。どれくらい難しいかはわからないが……俺はそういうのは、すごく楽しいもんじゃないかって思うよ」
『……先輩!? 永見先輩!? 聞こえますか!?』
ダンの頭を撫でながら、できるだけ優しく伝えていた場に、端末からクローディアの叫び声が響いた。
「……ダン、俺から最後のアドバイスだ。──これからの未来において、絶対に自分を見失うな。絶対に……俺みたいになるな」
「────え?」
「──ありがとうございました……」
いきなりで意味のわからない言葉に困惑するダンに、行人は見向きもせずに教会を後にした。
──行人にとって、自分を見失ったことは今までで一番後悔したことだ。元来自分には才能がない。努力でその差を埋めれたとしても、世界の内の中堅程度が限界だろう。
だが当時の行人にとっては、そんなもの興味もなかったのだ。ただ目的さえ果たせれば、それ以上を望むことは……。
それが消えた今、行人は未だにさまよっている。そんな行人だからこそ、
はい、ご存じの通り、今回は頭おかしくなりながら書いていました。
最近、楽しんでくださる方もいる一方マンネリ化も進んでいるのかなと感じたので、かなりパロ要素が強くなってしまいました。
あからさまに台詞流用していたりしますし……もうこれわかんねぇな。消されないかビクビクしています((( ;゚Д゚)))
今回の話を要約すると、ただただ行人がキャラ崩壊しただけです。ストーリーもなにもないです(多分)
ではまた次回、お楽しみに!