転生者達の地球連邦奮闘記   作:宇宙戦争

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第19話

◇西暦2202年 白色銀河 デザリアム星内

 

 

「急げ!」

 

 

 大久保中尉は叫ぶ。

 

 白色銀河に侵入した後、中間補給基地で得たデータを頼りに真田がダイソン球殻の説を考え、本星の位置を発見した。

 

 ・・・ちなみに、ヤマトと共に行動している艦隊のとある転生者の艦長は、事前資料が有ったとはいえ、あまりにもあっさり本星の仕掛けを見破った事に内心でドン引きしていたのだが、今はどうでも良いだろう。

 

 まあ、それを言うならデザリアムの首脳部の方は、何故ヤマトが来ていきなり自分達の本星の位置を見破ったのか分からなかったので、かなり慌てふためいていたのだが、これもまたどうでも良い話である。

 

 そして、調査の為の先遣隊として先行して上陸した大久保中尉率いるMS中隊第2小隊と何故か着いてくることになったサーシャであったが、その時にヤマト艦隊はサーグラス准将率いる本星直援艦隊の迎撃を受けた。

 

 そして、激戦の末、これを撃滅したが、その際の波動融合反応によってこのデザリアム星は機械星へと変化を遂げてしまう。

 

 一方、サーシャのお蔭で生きてはいたものの、孤立する形となってしまったMS中隊であったが、ここで活躍したのがキラと大久保だった。

 

 キラはデザリアム人を見て、あることに気づいたのだ。

 

 それはデザリアム人が管理するシステムそのものがコンピューターウィルスに弱いのではないか?

 

 そういう疑問だったが、これは奇しくも二重銀河の崩壊のサーシャ生存ルートで真田が築いた疑問と同じだった。

 

 そして、キラの目論見通り、キラの造ったコンピューターウィルスにデザリアム人は大混乱となる。

 

 その間に大久保が動いた。

 

 彼はソフト面ではキラと比べると明らかに見劣りするレベルのものしか持っていなかったが、ハード面に関しては並々ならぬ知識を持っていたのだ。

 

 そして、大久保や他の空間騎兵は攻撃してくるデザリアム兵の攻撃を潜り抜けながら艦隊が内部に入る門を開けた。

 

 その隙を突いて突入したヤマトとゆきかぜは途中にあったバリヤの外部装置を破壊しながら、空間騎兵を救出しようと動いた。

 

 大久保、キラ、サーシアを始め、生き残った部隊の仲間は現在は脱出のために接岸しているゆきかぜまでダッシュしている最中だった。

 

 バリヤ装置に集中的にウィルスを流すという置き土産を残しながら。

 

 そして、何人かの犠牲を出しながら、どうにかゆきかぜ・改まで辿り着いた。

 

 

「大久保さん!MSはこのままにして良いんですか!?」

 

 

 生き残った空間騎兵隊員達やサーシアがゆきかぜ・改へと乗り込む中、キラは大久保にMSをここに置いていくのかと言う。

 

 

「入らないんだ、仕方ないだろう!それにどうせ吹っ飛ぶんだ!機密が漏れる心配はない!!それよりお前も早く乗れ!!」

 

  

 実を言うと、この大久保達が乗るMSは以前キラが乗った15メートル大の半分ほどの大きさである8メートル程までに縮小されていた。

 

 これは地球本土防衛戦で使った際のキラのものとは違い、波動エネルギーではなく、旧式のバッテリーを使っているためエネルギー出力、機動性確保の問題の解決策という意味合いもあったのだが、それ以前に15メートルの物では大きすぎて戦艦や空母クラスの大きさでないと搭載できないという欠点があった。

 

 もっとも、この8メートル大の物も巡洋艦にどうにか搭載できるという大きさだったので、元が旧式の駆逐艦であるゆきかぜ・改には搭載できない。

 

 よって、ここに置いていくしかないのだ。

 

 爆破する時間も惜しい。

 

 それにここはもうじき波動砲で吹っ飛ばされるだろう。

 

 その時に塵となってしまえば同じだと大久保は言った。

 

 かなりの暴論ではあったが、大久保の言葉も決して間違いではなかったので、キラも自分の意見を引っ込める事にして、ゆきかぜ・改の中へと乗り込んだ。

 

 そして、大久保もまた乗り込み終え、ゆきかぜ・改は離陸する。

 

 その直後、ヤマトの波動砲によって要塞の中心核に波動砲が撃ち込まれ、中心核は木っ端微塵となり、波動融合反応が発生、その爆発はデザリアム星はおろか、デザリアム星が白色銀河、更にその隣の黒色銀河にも及び、二重銀河は文字通り崩壊した。 

 

 そして、ヤマト以下の艦隊は連続ワープによってそれを回避し、無事そこから地球へと帰還することとなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇同時刻 太陽系 冥王星 軌道上 アンドロメダ

 

 ヤマトが二重銀河を崩壊させたのとほぼ同時刻。

 

 この冥王星(ヤマト世界)では、時空管理局と地球連邦の平和的な(・・・・)会談が行われていた。

 

 

「・・・」

 

 

 アンドロメダ級戦略指揮戦艦一番艦アンドロメダ。

 

 本来の世界ではガトランティス戦で散っていた筈の戦艦ではあったが、この世界ではまだ健在だった。

 

 もっとも、改・アンドロメダ級であるしゅんらん及びその二番艦のネメシスが竣工してからは旧式と化してしまった艦型ではあるが、同艦はアンドロメダを含めて5隻も建造されており、事実上の戦略指揮戦艦の主力の座は未だこの艦型にある。

 

 そして、この席に座る男もまた、ガトランティス戦時と変わらぬ男であり、地球防衛軍でも片手で数えるほどしかいない名将の一人、土方竜だった。

 

 土方は相手の言い分を聞いて、じっと目を瞑ったままだったが、それに相対しているクロノからすれば、胃を痛めるような事象でしかない。

 

 

(くそっ!なんでこんな役が回ってくるんだ!!)

 

 

 クロノは現在、100隻以上もの艦隊を率いる提督だった。

 

 これだけを見れば、偉大なようにも聞こえてくるが、先程アンドロメダに対して時空管理局から出した要請(・・)を考えれば、そんな爽快感など感じる暇もない。

 

 ちなみにクロノが手渡した時空管理局の要請(・・)は以下の通りである。

 

・地球連邦は時空管理局の管理下に入ること。

 

・その際、地球防衛軍は解体すること。

 

・地球連邦の持つ全ての技術を時空管理局に渡すこと。なお、今後、その技術の活用は管理局の許可なしには行わないこと。

 

・この3つの条件が飲まれない限り、時空管理局は地球連邦を武装テロリスト集団と断定し、武力鎮圧を開始すること。

 

 まあ、要約するとこんな感じであったが、言うまでもなく喧嘩を売っているとしか思えない。

 

 いや、と言うより、戦争の最後通諜そのものだろう。

 

 ただし、中学生や高校生クラスの人間が書くようなレベルのもの、という但し書きが着くが。

 

 当然、こんな条件を出された方は面白いわけもなく、パネルに映るアンドロメダの艦橋に居る防衛軍兵士を見るだけでも、かなり殺る気の視線をこちらに向けている。

 

 そして、黙ったままだった土方が遂に喋った。

 

 

「確認するが、これはそちらの意思なのだな?そして、これを断れば今すぐにこちらに武力制裁を行うと」

 

 

『そ、それは・・・』

 

 

 クロノは言葉に詰まる。

 

 なにしろ、言葉を少しでも間違えれば、自分の命はまず間違いなくないのだ。

 

 それにこちらに後ろめたい気持ちがある以上、毅然として答えられる訳もない。

 

 実際、土方はクロノがそうだと言ってくれば、すぐにでも攻撃を開始するつもりだった。

 

 土方に交渉を任せた連邦政府からも謝罪要求を向こうが飲まなければ向こうの用件を聞く必要はないと言われているし、場合によっては攻撃も許可されている。

 

 そして、その“場合”の中には向こうが謝罪を行わずに、向こうがふざけた要求を出してきたものも含まれていた。

 

 これは転生者達も同調しており、転生者達にとっても、これ以上時空管理局に甘い顔を見せるわけにはいかないという意見が大半であり、開戦やむ無しというのが彼らの心情でもある。

 

 

「それで、どうなんだ?」

 

 

『い、今すぐではありません。この艦隊はあくまで交渉のための護衛です』

 

 

「ほう?」

 

 

 土方は意外な顔をするが、額面通りには受け取らない。

 

 まあ、100隻もの艦隊で来ていて戦う意思がないと言うのを真に受ける人間は、よほどの馬鹿か、頭がお花畑な人間くらいしか居ないのだから当たり前だが。

 

 

「では、返答は拒否だ。交渉だけなら直ちに帰りたまえ。そして、次に会った時は敵だ。その時は問答無用に攻撃する」

 

 

『わ、分かりました』

 

 

 そう言ってクロノはパネルから消える。

 

 

「・・・本当に素直に帰りますかね?」

 

 

 副司令が懐疑的に言う。

 

 

「おそらくダメだろうな。さっきの返答はあの提督の独断だ。一部が暴走する可能性がある」

 

 

「では?」

 

 

「全艦、第二種戦闘配置だ」

 

 

「はっ」

 

 

 その言葉に副司令は全艦に第二種戦闘配置を命じた。

 

 そして、その直後、案の定、暴走した向こう側の一部からアルカンシェルが発射され、防衛軍側の駆逐艦が3隻ほど一気に沈められたことから、防衛軍からの反撃が開始され、後に第二次冥王星会戦と呼ばれる艦隊決戦が発生することとなる。


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