転生者達の地球連邦奮闘記   作:宇宙戦争

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第23話

◇西暦2202年 地球(ヤマト世界) 参謀本部

 

 

「それで、ダゴン将軍をやっつけてしまったと」

 

 

「はぁ、その通りです」

 

 

 原作通り、ガルマン艦隊はやって来た。

 

 まず、地球にボラー艦隊を追う形で偶々侵入したガルマン艦隊の艦艇の1つは原作同様、ヤマトの航空隊に滅多撃ちにされて撃沈し、続くラジェンドラ号の一件でも偶々(・・)警備のために通り掛かったヤマトと山南率いる太陽系外周艦隊が対応したのだが、ここでは原作より戦力が多かったお蔭か、ラジェンドラ号が助かるどころか、ガルマン艦隊を1隻残らず撃沈したのだ。

 

 当然、ダゴン将軍の乗っていたであろう艦船もここに含まれている。

 

 つまり、原作よりも1、2ヶ月程早くダゴン将軍は戦死してしまったのだ。

 

 そして、原作とは違い、ラジェンドラ号は無事バース星に帰ったのであるが、ここで考えてみよう。

 

 原作でダゴン将軍が死んだ後、ガルマン帝国が取った行動を。

 

 あの後はフラーケン率いる潜宙艦隊と東部方面軍司令長官であるガイデル率いる機動要塞が直々に出張ってきて、ヤマトを見事に捕獲してしまったのだ。

 

 その為、結果的に旧作の歴代登場人物のなかで、彼がヤマトに唯一勝利した人物という称号を頂いたのである。

 

 そして、ダゴン将軍が戦死した今、彼がどういう行動を取るか?

 

 まあ、簡単に考えられるのは潜宙艦隊によるこちらへの通商破壊、あるいは直々に出張る形で地球に侵攻してくるかだ。

 

 そこまで思い付いた時、転生者達は慌て出した。

 

 

「ま、不味いぞ!あんなチート要塞を相手に出来るのか!?」

 

 

 そう、ガイデルの機動要塞は内部でさえ重厚な空間磁力メッキが張り巡らされており、ヤマトの波動砲はおろか、ヤマト自身が体当たりしたって破れない程の固さなのだ。

 

 要塞外部の固さなど言うまでもないだろう。

 

 実際、原作では要塞外部にヤマトの主砲を撃ち込んでいたが、かの要塞はケロリとしていたのだから。

 

 しかも、ヤマトを捕獲した後、ガイデルは地球を侵攻しようと発言していたが、もしデスラーが気づかなければ本当にそのまま地球は侵攻されていただろう。

 

 焦るのも当然と言えた。

 

 

「やはりデスラーがベムラーゼをやっつけた時みたく、何処かに穴を開けてそこに波動砲を撃ち込めば・・・」

 

 

「理屈はそうだが、何処にどうやって穴を開ければ良いんだ?。あの時はブラックホール砲の発射口にコスモタイガーが突っ込んだからなんとなったが、あの機動要塞にそんな大きな主砲みたいなのがあるかどうか分からん。波動砲の威力で強引に破壊しようにも今の波動砲はハイパーデスラー砲程の威力はない」

 

 

「では、この世界の白色彗星の時みたいに波動防壁を纏わせて突っ込ませればどうですか?」

 

 

「・・・良い案かもしれないが、果たして同じ手が通用するかね?」

 

 

「しかし──」

 

 

 転生者達は色々議論を行っていたが、そこに秘書官が入室してくる。

 

 

「どうした?」

 

 

「それが・・・」

 

 

 秘書官がもたらした情報。

 

 それは地球連合艦隊がプラントに向かったという情報であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「拒否します」

 

 

 プラント周辺の警護艦隊として派遣された地球防衛軍の司令官は地球連合──厳密にはユーラシア連邦と東アジア共和国──の要求にそう答えた。

 

 彼らの要求は簡単に言えば『占領政策は大変でしょう。お手伝いしますよ』であったが、違った見方をすれば『俺達にも分け前寄越せよ!こらぁ!!』であった。

 

 ちなみに、大西洋連邦はここに含まれていない。

 

 彼らは彼らで、今回の地球防衛軍のプラント攻略によって、“とある処理”に奔走するはめになっていたのだ。

 

 そして、それを見た両国はチャンスとばかりに防衛軍の手伝い(火事場泥棒)に来ていた。

 

 しかし、当たり前だが、地球防衛軍が許す筈はない。

 

 彼らは彼らで、侵略者という汚名を被るリスクを犯してプラントを攻めたのだから。

 

 おまけにザフトの件など、色々とやることが有るのだ。

 

 しかし、当然、それでは連合の方は納得しない。

 

 彼からすれば、プラントと戦争していたのは自分達であり、地球防衛軍など横からしゃしゃり出てきた勢力に過ぎない。

 

 よって──

 

 

「・・・そうか。では、仕方あるまい」

 

 

 そう言って地球連合側は通信を切った。

 

 

(何をするつもりだ?)

 

 

 防衛軍側の司令官はそう思いつつも、戦闘になったケースを考える。

 

 こちらが使えるのは、自分が乗る戦艦(主力戦艦。防御力が通常のものより上。無人艦艇誘導能力有り。波動砲無し)が1隻と、無人戦艦(波動砲有り)と無人駆逐艦がそれぞれ1隻ずつの計3隻。

 

 他の艦艇も居ないことはないが、例の第二の火星消滅事件や新たに現れたガルマン艦隊の来襲を受けて、その調査に向かったり、あるいは地球本土の防衛に戻ったりしている。

 

 なので、この3隻がプラント占領部隊に対する最後の砦だ。

 

 ・・・いや、訂正しよう。

 

 この艦がやられてしまえば、無人艦艇は運用できなくなるので、この艦が事実上の最後の砦である。

 

 しかし、それは不味い。

 

 何故なら、この艦は確かに通常の主力戦艦よりは装甲が厚く設計されているし、波動防壁も強力なものを積んでいるが、代償として波動砲は無い。

 

 同行している無人戦艦には有るが、敵が撃たせてくれるかどうかは微妙なところだろう。

 

 何故なら、相手の数は大小様々ではあるが、約60隻程の数が居るのだから。

  

 ざっとこちらの20倍である。

 

 そして、敵の艦艇の性能は今一つよく分からない。

 

 大きさはこちらと同等程度であるが、こちらのタキオン粒子エネルギーすら上回るエネルギーや、高性能なミサイルを搭載している可能性がある。

 

 

「しかし、やるしかない」

 

 

 司令官は悲壮な覚悟を固めていたが、その後、危惧通り起こってしまった戦いでは、意外な結末を辿ることとなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇ガルマン帝国 東部方面軍 機動要塞

 

 

「ダゴンがやられたか・・・」

 

 

 東部方面軍司令長官ガイデルは、有能な部下の一人であったダゴンが戦死したと聞いて、どうするべきか悩んでいた。

 

 このままデスラー総統が示した方針通り、バース星を攻略するか、それともダゴンを討ち、帝国の顔に泥を塗った地球に復讐戦を挑むか。

 

 原作ではヤマトを捕らえた時点で、バース星はボラー連邦のプロトンミサイルによって消滅していた為、迷わず地球攻略を公言したガイデルであったが、この世界にはまだバース星が存在しているため、デスラー総統の方針を完全に無視するわけにもいかなかったのだ。

 

 なにより、バース星の位置的にもし地球攻略を優先した場合、ボラー連邦に背後を突かれる危険性がある。

 

 そうなると、健全な策としては、まずバース星を攻略して、その後にバーナード星に造り上げた前線基地を拠点に地球攻略を開始する。

 

 これが安全策だろう。

 

 しかし──

 

 

「やはり、帝国の顔に泥を塗った存在は捨て置けんな」

 

 

 ガイデルはそう思う。

 

 ガイデルに限らず、ガルマン帝国人はガミラス人の祖先だけあってプライドが高い。

 

 その彼らからしてみれば、自分達の顔に泥を塗った存在は捨て置けなかったのだ。

 

 ・・・もっとも、今回の事は彼らから手を出してきたので、逆恨みではあったのだが。

 

 

「それに手駒はある。これを使えば、通商破壊戦は可能だな」

 

 

 ガイデルの手駒。

 

 それはフラーケン率いる潜宙艦隊だった。

 

 彼らを使えば、地球連邦の通商破壊も可能だろう。

 

 補給基地としてはバーナード星を使えば良いのだから。

 

 

「そして、バース星攻略には総統からお預かりした新鋭空母艦隊を以て当たる。うむ、これで行こう」

 

 

 ガイデルはバース星攻略に、原作でのバーナード星の戦いの後、この世界では既に亡きダゴンが率いていた新鋭空母艦隊を差し向けることを考えていた。

 

 原作ではこの艦隊はヤマト討伐に向かったのだが、この世界のこの時点では、ヤマトの脅威を十分に認識出来ておらず、ヤマトを通常の地球戦艦と同等のように考えてしまったのだ。

 

 更にダゴンが戦死するのが原作より早すぎた為、地球の軍事力を過大評価?することになってしまい、まずバース星の問題から片付けることにしたという訳であった。

 

 かくして、バース星は原作より苛烈なガルマン・ボラーの攻防戦に巻き込まれる事となる。


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