紅蓮の災厄   作:獄華

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モンスターの教義

「今理雄が呼んだけど私の名前はミラルーツ。ルーツで構わないわ」

 

―――この子がルーツなんだ。

 

 

伊里愛玲里は真っ白な肌に赤い双眸を持つ少女をジィと見た。

理雄から聞いた話によれば遊園地であの男に身体を貫かれた後このルーツが死の淵から自分達を救ってくれたらしい。

 

その救世主の正体は正しく夢で出会った少女であり……今は現実として玲里は向かい合っているのだ。

無論それは玲里だけに言えることではなく理雄を除いた4人も同じである。

夢の中で会った少女が実際に目の前に現れたのだから狐に頬を摘ままれたような話だ。

 

 

「まぁ、彼からも話があった通り。あの事件を巻き起こしたのは人間じゃないわ」

 

 

「では、誰がいや……何者がやったんだ?」

 

 

人間じゃないと口にしたルーツに銀陽は恐る恐る問う。

犯行直後を捉えた来園者がネットに挙げたという動画や画像は今では調べても関連する物は何一つ出てこないのだ。

 

このネットの時代に。

国が圧力を掛けてまで消した動画の中に何が写し出されたか……そこに犯人の正体もあるはずなのだ。

この答え(真実)を銀陽は知りたかった。

 

―――まぁ確かにあれは人間ではないよね……。

 

 

桜花は瑠奈と実際に遊園地で大量殺人事件を起こした犯人が暴れる様をこの目で見ている。

男が切断したと思える人間の首や腕、果ては木々まで薙ぎ倒し理雄の父親を殺そうとしていた。

あれが人間技じゃ無いのは確実だ。

 

 

 

「冗談だと思うかも知れないけど犯人の正体はモンスターよ」

 

 

 

「モンスター……?」

 

 

その答えに到底信じられない口調で銀陽は呟く。

この現実の世界でゲームやアニメや小説なんかに登場する架空の生物が犯人だと?。

 

「おいおいお嬢ちゃん。いくら俺でも現実とゲームの区別くらいはつくぜ。それじゃあなにか、ゲームの中からモンスターが飛び出してあんな事件を起こしたってのか?」

 

 

冗談半分で蒼王はルーツに聞いた。

 

「ルーツよ。アイツも『私』もゲームの中から来たんじゃない。別の世界から来たの―――

 

 

 

 

 

貴方達人間を全て滅ぼすためにね」

 

見た者まで嬉しくなるような悪意を感じさせない屈託のない笑みを浮かべながら彼女は言った。

静寂が場を支配し、6人全員に異常な緊張感と悪寒が走る。

 

 

「あら、どうしたの?。蛇に睨まれた蛙みたいに黙りこくっちゃって」

 

「ルーツさんは……」

 

 

荒い息を整えながら瑠奈は話す。

 

 

「私達を殺すつもりですか?」

 

 

恐怖に彩られた6人全員の顔を見てルーツはフッと笑った。

 

 

「まさか殺るならもう殺ってるよ。こんな世間話なんてわざわざしないで」

 

ふぅ、と6つの重い息が上がる。

……尤も安堵していいのかはまた別問題だが。

それから6人はルーツから色々なことを聞かされた。

 

 

 

ルーツの世界では元々人間とモンスターが同時に存在していたが『ある龍』が人間達を滅ぼそうと決意。

結果人間達は全滅しモンスター側が世界の支配者になったという。

ところが龍はその結果に満足せずどんなものも映す龍の目がこの世界を発見してこの世界の人間達も滅ぼすことを決意した。

遊園地で暴れたモンスターはその先兵に過ぎない。

これからも人間を滅ぼすためにどんどん送られて来るようだ。

ルーツもモンスター側に属するが龍のあまりの横暴非道ぶりに嫌気を覚え10個の勾玉を信頼出来る人間達に託すこととした。

あくまで人間が自分達の意志でモンスター達を退けられるように。

それで選ばれたのが理雄達だったのだ……彼女の眼鏡に叶う強固な友情と絆を持つ者達と判断されて。

勾玉の中にはモンスターが入っており2週間前に説明を受けた理雄を除いて5人は自分が手にしたモンスターを知らされた。

 

玲里は雌火竜リオレイア

 

桜花は桜火竜リオレイア亜種

 

瑠奈は金火竜リオレイア希少種

 

理雄は火竜リオレウス

 

蒼王は蒼火竜リオレウス亜種

 

銀陽は銀火竜リオレウス希少種

 

 

全員が飛竜種(ワイバーン)のリオスに属する勾玉を手にしていた。

何れもリオレウスは空の王者、リオレイアは陸の女王の異名を持つらしい。

その通り名に蒼王と桜花は二人して「「格好いい!」」と絶賛し、他の四人からは少し冷めた目で見られた。

こうして本来の目的であった勉強会は潰れ、この日は祖龍ミラルーツのモンスターの種族や種類、勾玉、何故人の姿を持つようになったのかなど……様々な説明を受けて終わった。




そろそろ他の4人の同級生を活躍させる物語も考えなくては

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