遊戯王 HYDYEI   作:ライターⅢ

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新しいのを書くのがこんなに楽しいとは思いもよらなかった。


Ep.1『ミッシング・ハイランダー』

春の暖かな日差しはどこへやら。まだまだ冬と言っても差し支えがないほどの冷気が人々を体の芯から震わせる。

海上都市「パシフィック」、ここでは日夜白熱したデュエルがどこかしらで行われている。そんな都市にデュエルアカデミアは存在している。そして今日、この学園で高等部の入学試験が行われていた。

午前中に筆記試験を受け、午後から実技試験が行われる。筆記及び実技での獲得点が入試での成績となり、成績優秀者上位120名が入学を認められる。

そして今、狭き門に挑戦している男、軌道遊助(きどうゆうすけ)は学園の食堂で机に突っ伏していた。

 

「あぁ……ダメだ……終わった……」

 

筆記試験があまりの難問ばかりでほとんど分からなかった彼はこの学園、世界に絶望していた。

問題は分からないが自分の点数が酷いことは分かった遊助は顔から色々な者を流して、現在ムンクの叫びのような顔になっていた。

どこからか『少年よ、これが絶望だ』という幻聴も聞こえてくる。

昼食を取る気分も失せていた遊助だったが、どこからか大量の食べ物を運んできた男子学生が目の前の椅子に座った。

 

「ひどい顔をしているな」

「あぁん? ほっといてくれ……今爆笑下ネタ考えてんだ」

 

突然話しかけられたが、今の遊助にそんなことを気にするほどの余裕はなく、馬鹿馬鹿しいことでも考えて気を紛らわそうと必死になっていた。

 

「状況から察するに筆記試験がひどい結果で終わったのだろう」

「うるせぇ、オレにはえんぴつの加護があるんだよ。コロコロ舐めんじゃねーぞ。いざとなったら鈍器だからな」

「なにを言っているかは分からないが、君のIQが低いことはよく分かった」

 

遊助の自棄的な発言を男子生徒は真摯に受け止めたうえで辛辣に返す。アカデミアに優しい誰かはいないようだ。

 

「なんだよおまぇぇぇ、敗北者を見たけりゃヨソデミロヨォォォ……オレ以外にもいるだろうが、中庭でピヨって全身にシルバー巻いてるやつとかいたぞ」

 

遊助は顔を叫びのまま男子生徒に向けると恨めしそうな顔で睨みつけたあと、席を立とうとする。

 

「実技の試験内容、場合によっては筆記が0点でも合格出来るかもしれないぞ」

「なんだと!?」

 

顔を一瞬にして叫びから元の顔に戻すと遊助は机越しに男子学生に勢いよく顔を近づける。

急に元気になったことに男子生徒はいくらか驚くが、こほんと一回咳をして取り繕うと説明し始めた。

 

「次の実技試験は難易度を自分で選べるようになっていて、勝った試験官によって点数が変わるんだ」

「ということは、一番強いヤツを倒したらいいってことだな!?」

「まぁ、そうなるな」

 

男子学生が同意したことで遊助はたちまち元気になり、席を立つ。

 

「こうしちゃいられねぇ! 合格する可能性が出てきた以上、頑張るしかないぜ!!」

「あ、おい。まだ言うことが……」

「教えてくれてありがとな!」

 

遊助は一方的に握手をすると嵐のように走り去ってしまった。

男子学生はやれやれと肩を竦めるとテーブルのうえの食事に手を付け始めた。

 

「最高難易度の試験官を倒したやつは未だ一人もいないんだがな」

 

その呟きが遊助の耳に届くことはなかった。

 

……

 

「私のターン、トロイメア軍団で総攻撃します」

「やめろー! こんなのデュエルじゃない!!」

 

どうやってその盤面になったかは知らないがエクストラリンクをされた学生のLPが0となりデュエル終了のブザーが鳴り響く。

実技試験のレベルはとても高く、試験官全員が環境デッキを用いて学生達を蹂躙していた。

試験官である教師達のレベルはとても高く勝利した学生は極僅かであった。

強力なデッキを用意した生徒も教師達の長年の経験に叶うことは出来ずに苦汁を舐めさせられていく。

そんな中、試験開始から誰とも相手していなかった教官の一人がため息をつく。

 

「今年もレベルが高い生徒は少ないですね。正直、残念としか言いようがありませんね」

 

そう口にする教官は、この試験の最高難易度を任せられている人物であった。黒のスーツに身を包み、メガネを付けた彼の姿は教員というよりはサラリーマンという風貌だが、彼は今までに挑んできた生徒を何もさせずに完封していた実力者だった。

彼に負けた学生の中には全国大会出場者など、確かな実力を持った者もいたがそのことごとくを叩きのめして来ていた。

 

「そろそろ試験も終わりですね。この私に勝てる学生はいなかっ(ry」

「あ、いたいた! 最高難易度の先生!!」

 

教官の嘆きを遮るように会場に現れたのは元気な声が響く。あまりの声の大きさに周囲の目線が会場の入口に集まる。

視線が集まっていることをものともしないで茶髪の少年は笑顔で教官の下まで歩いていく。

 

「君は?」

「エントリーナンバー500番くらい! 軌道遊助っす! お願いしゃす!!」

 

The・体育会系とでも言うべき挨拶で教官にお辞儀する遊助だったが、挨拶をされた教官だけでなく周囲の人間全員が呆気に取られる。

 

「わ、分かりました。それではデュエルしましょうか」

「はい!」

 

教官がデュエル場の上にまで移動し、デュエルディスクを展開する。

後から追いかけてきた遊助もデュエルディスクを展開してデッキを差し込む。

 

「準備完了! お相手よろしく!」

「えぇ、始めましょうか」

 

お互いのデュエルディスクにLP8000の数字が表記される。

 

「「デュエル!!」」

 

「受験生は先攻・後攻を選べますがどうしますか?」

「どうしますかってそりゃ勿論、後攻で!」

「ほう……後攻ですか」

 

怪訝な顔付きで遊助を見る教官。

それもそのはず、現代遊戯王において先に相手の動きを妨害する布陣を作ることが最も勝利に近い手段であり、それを行うには先攻を取ることが重要だからだ。

しかし、彼は妨害の布陣を作ることよりもドローと攻めを重視した。今まで戦ってきた受験生に当てはまらない選択をしたことに教官は少なからず驚いていた。

 

「本当にいいのですね?」

「もちろん! どんなデッキが相手でもオレはどんとコイキングだぜ!」

「はぁ、ただの馬鹿か天才か……見極めさせてもらいましょうか。私のターン、私は手札から【ドラコネット】を召喚。効果によりデッキから【ギャラクシーサーペント】を特殊召喚します。そして、二体のモンスターでチューニング! 現れろ、レベル5【星杯の神子イブ】」

 

電子世界の龍と銀河の蛇龍が混ざり合い、星の神子となった少女を呼び寄せる。少女は教官の方へと向くと能力でデッキから新たなカードを加えさせる。

 

「イブの効果によりデッキから永続魔法である【星遺物の守護竜】をサーチします。そのまま発動して、効果により私は墓地から【ギャラクシーサーペント】を特殊召喚し、フィールドの2体のモンスターでリンク召喚、リンク2【水晶機巧ーハリファイバー】。ハリファイバーの召喚時効果によりデッキから【ヴァレット・シンクロン】を特殊召喚。そして、墓地に送られたイブの効果で【星杯の守護竜】をデッキから特殊召喚。守護竜でリンク召喚、守護竜エルピィ。星杯の守護竜の効果により、ハリファイバーのリンク先に【ギャラクシーサーペント】を特殊召喚。ギャラクシーサーペントでリンク召喚、【守護竜ピスティ】。ピスティの効果で除外されている【星杯の守護竜】を特殊召喚。【星杯の守護竜】で【ストライカー・ドラゴン】をリンク召喚。【ストライカー・ドラゴン】の効果で【リボルブート・セクター】をサーチ。【ストライカー・ドラゴン】と【水晶機巧-ハリファイバー】で【スリーバーストショット・ドラゴン】をエクストラモンスターゾーンにリンク召喚。【守護竜エルピィ】の効果で【アブソルーター・ドラゴン】をリンク先にリクルート。【スリーバーストショット・ドラゴン】と【アブソルーター・ドラゴン】で【守護竜アガーペイン】をエクストラモンスターゾーンにリンク召喚。【アブソルーター・ドラゴン】の効果で【ヴァレット・トレーサー】をサーチ。【守護竜アガーペイン】の効果でエクストラデッキの【琰魔竜 レッドデーモン・アビス】を特殊召喚。【守護竜アガーペイン】、【守護竜ピスティ】、【守護竜エルピィ】の3体で【ヴァレルガード・ドラゴン】をエクストラモンスターゾーンにリンク召喚。【リボルブート・セクター】を発動しその効果により手札の【ヴァレット・トレーサー】を特殊召喚。【ヴァレット・トレーサー】の効果で【星遺物の守護竜】を破壊して【エクスプロードヴァレット・ドラゴン】をリクルート。【ヴァレット・シンクロン】と【エクスプロードヴァレット・ドラゴン】を使って【ヴァレルロード・S・ドラゴン】をシンクロ召喚しその効果により墓地の【スリーバーストショット・ドラゴン】を装備します」

 

フィールドに並ぶドラゴン達。

震えて眠れ、これが現代デュエル・モンスターズだ。

自己満足と言っても差し支えがないほどのソリティアを終え、フィールドには攻撃力4200でなんでも効果を無効できるドラゴン一体に、漫画版レモン強化体、強すぎるドラゴン新規とモンスター効果絶対止める姉さんが並んだ。

 

「最高難易度って聞いてたけどまさかここまでえげつないソリティアをされるとは思ってなかった……」

「それが仕事なので」

 

遊助の意気消沈する姿を眺めて、試験官は大変楽しそうな顔をしている。

 

「私はカードを二枚伏せてターンエンドです」

 

教官

手札1枚

LP8000

■:伏せカード

召:召命の神弓―アポロウーサ

ア:琰魔竜 レッドデーモン・アビス

S:ヴァレルロード・S・ドラゴン

ト:ヴァレット・トレーサー

■□□□■

アS□ヴ□

―召―□―

□□□□□

□□□□□

 

遊助

手札5枚

LP8000

 

 「ん〜! よっし、張り切っていこうか!! オレのターンドロー!! きたきたきたぁー!! 手札から【冥王結界波】を発動だ!!」

「そのカードは……!!」

 

遊助が発動したカードを見て、教官が顔を顰める。

たった今彼が発動したカードはフィールド上のモンスターの効果を全て無効にするというカードであり、この効果に対してモンスターの効果の発動を許さないという非常に強力な効果を有している。

 

「私のモンスターの効果を止めましたか。ですが、この数を突破出来ますか!!」

「突破してみせますよ。速攻魔法【ツイン・ツイスター】を発動! 手札を一枚捨て、伏せカード二枚を破壊!」

 

フィールドに突風が巻き起こり、伏せカード二枚を破壊する。

 

「オレは手札から【召喚僧サモンプリースト】を召喚! 手札の魔法カードを一枚捨てて効果発動!デッキからレベル4モンスターである【キラートマト】を特殊召喚! 二体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築! ランク4、【励輝士ヴェルズビュート】!」

 

二体のモンスターが光玉と化し、現れるは星の騎士。

星の騎士は相手フィールドにそびえ立つドラゴンに目を向けると、手にした剣に力を込め始めた。

 

「ヴェルズビュートのエクシーズ素材を取り除いて効果発動! 先生のフィールドのカードを全て破壊するぜ!」

 

遊助の言葉とともにヴェルズビュートが光の一閃を放つ。

その一振は全てのドラゴンを完膚なきまでに破壊し、フィールドを無に帰した。

 

「オレはカードを一枚伏せてターンエンド」

 

教官

手札1枚

LP8000

□□□□□

□□□□□

―□―励―

□□□□□

□□■□□

遊助

手札0枚

LP8000

■:伏せカード

励:励輝士ヴェルズビュート

 

「逆転されてしまいましたか。やりますね、しかし、私も負けませんよ。フィールド魔法【リボルブート・セクター】の効果により、墓地から相手のフィールドのモンスターと同じ数【ヴァレット】モンスターを特殊召喚します。私は墓地から【ヴァレット・トレーサー】を特殊召喚! そして私は手札から【輝光竜セイファート】を召喚。手札の【嵐征竜―テンペスト】を墓地に送りデッキから【アブソルーター・ドラゴン】を手札に加えます。墓地に送ったテンペストの効果、墓地の二枚のドラゴンを除外して特殊召喚します。更にフィールドに【ヴァレット】モンスターがいるため、手札から【アブソルーター・ドラゴン】を特殊召喚します。【ヴァレット・トレーサー】の効果でフィールドの【リボルブート・セクター】を破壊してデッキから【マグナヴァレット・ドラゴン】を特殊召喚。【ヴァレット・トレーサー】、【輝光竜セイファート】、【アブソルーター・ドラゴン】、【嵐征竜―テンペスト】でリンク召喚、リンク4【ヴァレルソード・ドラゴン】!!」

 

四体のモンスターが矢印となり、現われるは銃刃の龍王。

龍王は遊助を睨みつけると大気を震わすほどの号哭を発する。

 

「更に手札から【死者蘇生】を発動。墓地から【ヴァレルロード・S・ドラゴン】を特殊召喚。【ヴァレルソード・ドラゴン】の効果で、【マグナヴァレット・ドラゴン】を対象に守備表示にして二回攻撃できるようにします。対象に取られた【マグナヴァレット・ドラゴン】の効果、このカードを破壊してフィールドのモンスターを墓地に送ります。厄介なエクシーズモンスターには退場して頂きましょうか!」

 

マグナヴァレット・ドラゴンがヴァレルソード・ドラゴンの弾倉に吸い込まれていき、リロードされるとヴァレルソードはヴェルズビュートに銃口を向けて弾丸を発射する。

射出された弾丸をまともに受けてヴェルズビュートが爆散した。

 

「バトルフェイズに入ります。【ヴァレルソード・ドラゴン】で攻撃」

 

ヴァレルソードの頭部に付いた二つの刃が前方に移動して合体させると、遊助目掛けて突撃する。

 

「だったら、リバースカード【リビングデッドの呼び声】を発動! 効果によりオレは墓地から【キラートマト】を特殊召喚するぜ!」

「関係ない、そのまま攻撃します! ヴァレルソードの効果でキラートマトの攻撃力を半分にして、自身に加算する」

 

【ヴァレルソード・ドラゴン】

ATK3750

 

キラートマトが果敢にヴァレルソードに立ち向かうが、呆気なく踏み潰されて破壊される。

 

遊助

LP8000→5000

 

「くッ、破壊された【キラートマト】の効果でデッキから【デストルドー】を攻撃表示で特殊召喚!」

「サベージで攻撃!」

 

襲いかかる龍を前にして、デストルドーがなんとか抵抗を試みるがあっさりと破壊される。

 

遊助

LP5000→3000

 

「【ヴァレルソード・ドラゴン】でダイレクトアタック!」

 

ヴァレルソードが遊助の眼前に立ち、二度目の攻撃を行おうとする。

しかし、その攻撃は突如現れた戦士により防がれた。

 

「墓地の【タスケナイト】の効果。オレの手札が0枚の場合、墓地から特殊召喚してバトルフェイズを終了する」

「ツイン・ツイスターの時に送っていましたか。私はこれでターン終了します」

 

教官

手札0枚

LP8000

ソ:ヴァレルソード・ドラゴン

S:ヴァレルロード・S・ドラゴン

□□□□□

□□ S□□

―ソ―□―

□□タ□□

□□□□□

遊助

手札1枚

LP3100

タ:タスケナイト

 

「オレのターンドロー!」

 

遊助が気合いを込めてドローし、カードを手札に加える。

そして、ニヤリと笑みを浮かべる。

 

「行くぜ! オレは【強欲で貪欲な壺】を発動!! デッキの上から十枚除外して二枚ドロー!」

 

迷うことなくデッキの上からカードを十枚除外してカードを二枚手札に加えた。

 

「オレは手札から【BF―精鋭のゼピュロス】を召喚! そして、【タスケナイト】と【BF―精鋭のゼピュロス】でエクシーズ召喚!」

 

遊助のフィールドにサムライが立ち、刀を構える。

 

「 ランク4、【ガガガザムライ】! エクシーズ素材を一つ取り除いて効果発動! 【ガガガザムライ】は一度のバトルフェイズ中に二回攻撃が可能となる」

 

エクシーズ素材が刀となりガガガザムライに装備され、二刀流の構えをとる。

 

「なるほど、火力を増やしたというわけですか。ですが、私のフィールドには攻撃力3000のサベージとヴァレルソードがいます! あなたのフィールドのモンスターで越えることは不可能です!」

「越えてやるさ、今からな! 自分の墓地にモンスターが五体存在し、それらのモンスターが同名でない場合このモンスターは特殊召喚できる! 」

 

遊助が手にしたカードをデュエルディスクに置くがフィールドにはなにも現れない。

 

「デュエルディスクの故障?」

「姿を今見せるぜ。生まれた時は違えど想いは変わらない、同盟を束ねる宇宙(そら)の機竜! その力で全ての軍勢を蹴散らせ! レベル8【影星軌道兵器ハイドランダー】!!」」

 

遊助の口上と共に雲を切り裂き、八首の機龍が現れた。

機竜は機械でありながらヴァレルソードの号哭とは比べ程にならないほどの音量で強大に吼える。

 

【影星軌道兵器ハイドランダー】

ATK3000/DEF1500

 

「ッ……これがあなたのエースモンスターというわけですか」

「そういうこと。ハイドランダーの効果発動! デッキからカードを三枚墓地へ送り、同名のモンスターがいない場合相手のカードを選んで破壊する!」

「ギャンブル効果ですね」

「墓地に送られたのは【ライオウ】、【スケープゴート】、【ローンファイア・ブロッサム】! 墓地に同名カードはいないので【ヴァレルソード・ドラゴン】を破壊だ! 結束のストレンジ・ストリーム!!」

 

ハイドランダーがエネルギーを溜めて、発射準備を行う。

 

「ならば、【ヴァレルソード・ドラゴン】の効果でハイドランダーを守備表示にします!」

 

ヴァレルソードが勇猛果敢に空へと飛び上がり、ハイドランダーに銃撃を行うがそれを受けても機竜は意にも返さず八首それぞれの頭部からエネルギー光線を放つ。

真正面から攻撃を受けたヴァレルソードは悲鳴を上げる間もなく倒された。

 

「ヴァレルソードは倒されましたが、これで私ライフポイントを削りきることは不可能となりましたね」

「それはどうかな?」

「なんだって!?」

 

自身の思惑を否定された教官が聞き返すと、遊助は墓地から一枚のカードを発動した。

 

「墓地のゼピュロスの効果! フィールドのハイドランダーを手札に戻して自身を攻撃表示で特殊召喚! 効果で400ダメージを受ける!」

 

遊助

LP3000→2600

 

「自分のモンスターを戻した?」

「ハイドランダーは墓地に同名モンスターがいない限り何度でも手札から特殊召喚できる!」

 

再度現われる遊助のエースモンスター。

ハイドランダーは先程と同じようにエネルギーを溜め始める。

 

「ハイドランダーは一度フィールドを離れることで再び効果を発動することができる! 効果発動! 墓地に送られたカードは【ブレイクスルー・スキル】、【幻銃士】、【貪欲で強欲な壺】! 結束のストレンジ・セカンド!!」

 

ハイドランダーのエネルギー光線がサベージに降り注ぎ、完全に焼却する。

 

「なぜ、同名カードが墓地へ送られないのですか!?」

 

ハイドランダーの効果で同名カードが墓地に送られないことに疑問を抱いた教師が叫ぶ。

 

「そういうデッキだからだ!」

「そういうデッキ……とは?」

「このデッキに同名カードはない! 全てが違うモンスターであり、違う魔法・罠だ!」

「な、ということはあなたのデッキはハイランダー構築ということですか!?」

 

遊助のデッキの秘密を知った教師が驚愕する。

デュエル・モンスターズには数多のテーマ群があり、そのテーマを集める、或いは掛け合わせることによって強力なデッキが完成するようになっている。

中にはテーマに属さないものの強力な力を持つカードはあるが、 デッキを作る際にはそれらを主役に数枚投入するのが普通だ。

しかし、遊助のデッキは強力なモンスター及び魔法・罠ですら一枚だけしか入れないようにしてある。

ハイランダー構築はグッドスタッフと違って自分に制限を課すだけのデメリット構築でしかない。

しかし、彼はそのデメリットを受け入れ戦うことを選んでいる。

 

「バトルフェイズだ! ゼピュロス、ガガガザムライで攻撃!」

「くわッ!?」

 

教官

LP8000→4500

 

「更にガガガザムライで攻撃!」

 

教官

LP4500→2600

 

「これで終わりだ! 流転のハイドラ・バースト!!」

 

ハイドランダーが全エネルギーを充填した一撃を教官に向けて放つ。

 

「私の負けです」

 

教官

LP2600→0

 

教官のライフポイントが0となり、ピーという無機質な音がデュエルディスクからなり、デュエルの終了を告げた。

 

……

 

「お疲れ様でした。最高難易度の私を倒した貴方はおそらく合格でしょう。アカデミアからおって通知が届くと思いますので待っていてください」

「うっす、ありがとうございました!!」

 

深々とお辞儀をすると、踵を返してデュエルフィールドから去ろうとする。

 

「最後に質問していいでしょうか」

「なんすか?」

 

声をかけられた遊助が不思議そうに教官の方を振り向く。

 

「あなたはどうしてデッキをハイランダー構築に?」

「……会いたいヤツがいるんです。このデッキはそいつとの大切な思い出で、このデッキを使っていればいずれ出会えると思っているんです」

「その会いたい人というのは?」

「無敗のプロデュエリスト、一条不敗(いちじょうふはい)

 

遊助はそれだけ言うとデュエルフィールドから立ち去っていった。

 

「まさか、彼が一条不敗と知り合いだったとは……」

 

教官は驚いた様子で遊助の去りゆく背中を見つめる。

突如としてプロリーグに現れた期待の新星、一条不敗。そのデュエルは対戦相手の全てを粉砕する絶対的なものであり、秀麗な見た目から女性人気も高い。

未だ黒星はなく、ダークホースと呼ばれるほどの実力を有している。

 

「彼の人生に幸運を」

 

教官は遊助のこれからを案じ、無事を願った。


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