まおうの作り方   作:もっち~!

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再会 Part3

五人でお城に戻る途中、王都に立ち寄った。家から持って来たい物があると、姉が言うのだ。

 

「はい、これ」

 

姉から手渡された一振りの剣。これって、以前の愛剣では無いか。

 

「この剣は、ギルに使って貰いたいの」

 

城に戻り、久しぶりに素振りをしてみた。手の平に、昔のような馴染む感覚が蘇って来た。そうなると、二刀流を視野に入れないとダメかな?黒剣の切れ味は最高である。取り回し感は聖女の剣の方が良い。

 

「ティア、二刀流を教えてくれないか?」

 

剣士系である勇者様に訊いてみた。

 

「無理…お兄ちゃんの方が剣技は上だもん」

 

それは、僕に出来無いことは、出来無いってことか…

 

「そうなると、剣聖に習うかな」

 

「ロックも無理だよ。お兄ちゃんの弟子でしょ?」

 

あぁ、確かに…僕が剣技をロックとティアに教えたような気がする。

 

「習うより、慣れてみれば?」

 

って、ルーシー。

 

「書庫に参考書があるかもしれないですよ」

 

と、ガブ。その手があるか。僕は書庫に探しに行った。

 

 

 

---マイケル・ホリック---

 

勇者パーティーの1つが、聖女を残して全滅したそうだ。その聖女は、ギルの姉のシスティらしい。偶然、近くにいた冒険者パーティーに救助されたそうなのだが、その後の消息は途絶えたと言う。

 

ギルが消え、ティアが消え、そして今度はシスティが消えた。先代勇者に恨みを持つ魔王軍の残党の仕業ではと、王都内では噂が囁かれていた。

 

「お兄様はどう思いますか?」

 

妹のメアリーに訊かれた。

 

「ギルの件は選民主義者の犯行だ。問題はティアだな。勇者が簡単にやられたり、捕まったりはしないと思う」

 

「ルシファード帝国との国境近くの町で、消息が消えたシスティは?」

 

「聖女だし、悪魔にはやられないと思うが、帝国内に拉致されたとなると、厄介だな」

 

悪魔王は準魔王と呼ばれ、それなりの強さを持っている。その上、一国の長である。叩くとなると、戦争になってしまう。魔王相手なら勇者パーティーに分があるが、国相手では分が悪い。

 

「父の話では、違う勇者パーティーに消息を捜査して貰うそうだ。その報告次第だろうな」

 

ギルバート…アイツは無事だろうか?貴族院では、魔王復活の為の生け贄にされたのではと推測されているが…

 

 

 

---フレデリック・ゴールドウィング---

 

消息不明になった愚妹の為に、国境近くの町に着いた。

 

「フレディーさん、どうしますか??」

 

勇者に訊かれた。

 

「まず、町の人に聞き込みだな」

 

「じゃ、俺達は、周辺で狩りをしてきますね。聞き込みとか、勇者の仕事では無いですからね」

 

勇者は、剣士、魔法使い、僧侶、格闘家を連れて、狩りへと向かった。残った俺が雑用をしろってことか?俺のパーティーの勇者は、仕切り屋タイプである。戦闘力はそこそこであるが、適材適所がモットーであるらしい。そんな彼にとって、俺は目の上のたんこぶであり、ジャマな存在のようだ。

 

歳上で、先代勇者の長男であり、天職が大賢者である俺に、ライバル心すらむき出しにしているし。勇者と大賢者では分野が違い、同じ土俵では比べられないのだが、そういうことを考慮せず、総合力評価をしたがる。困ったヤツだ。

 

聞き込みかぁ~。酒場かギルドがセオリーだな。まず、ギルドへ向かった。入ってすぐに、クエスト掲示板に視線が向く。国境近くである為か、討伐系のクエストが多いようだ。帝国から逃げ出し、王国内で暴れる魔物が多いのだろうな。

 

その時、俺は失念していた。最近、愚妹のパーティーが全滅していたことを、すっかりと忘れていたのだ。

 

ギルド内にある喫茶スペースを見る。こういう場所で、どのクエストにするか、パーティーで相談することが多いのだ。だが、1組のパーティーしかいなかった。コイツらに情報でも貰うかな。

 

「なぁ、ちょっと、話を訊いてもいいか?」

 

「へ?フレディじゃないの?何してんの?」

 

俺達の探し人が目の前にいた。

 

「システィ…なんで、ここにいるんだ?」

 

「へへへ、今冒険者として、生きているんだよ」

 

愚妹が嬉しそうに言う。聖女なのに、冒険者だって?いやいや、聖女は冒険者になれない。冒険者登録出来無い天職には、勇者は勿論、聖女、大賢者、剣豪、剣聖など、勇者パーティーに組み込むべき天職があるのだ。

 

って、言うか…ギルとティアまでいるし。俺は白昼夢を見ているのか?

 

「あれ?兄さん、どうしたの?」

 

どうしたのって、俺が訊きたい。

 

「ギル…お前、生きていたのか…なんで、帰って来ないんだ?」

 

「う~ん。ここじゃ、話しにくいな。今日は、ここまでにして、帰るか」

 

「うん、帰ろうよ、お兄ちゃん」

 

もの凄く嬉しそうなティア。どういうことだ?俺はギル達に付いていくと、光の渦に囲まれて、知らない場所に転移していた。

 

「転移魔法か?」

 

「転移術だよ。僕には魔力が無いからね」

 

ギル…お前は一体、天職は何になったんだ?転移系のスキル持ちって、聞いたことが無い。転移魔法であれば、大賢者は勿論、勇者が覚えられるはずだが。

 

「ギル、お前の天職は何になったんだ?」

 

「まだ決まっていないんだよ。経験値が足り無いらしいよ」

 

苦笑いしているギル。

 

「で、ここはどこだ?」

 

「お城の中だよ。お城を住居として使っているんだ。呪いを受けてね、この城から離れて暮らせないみたいなんだよ」

 

城?たしか、ギルは強制転移で、サタンキャッスルに飛ばされたんだよな…って、ここは魔王城かっ!

 

ティアもシスティも、他の仲間達も装備をはずし、部屋着に着替えていた。妹達も、ここで暮らしているのか…おいおい…勇者と聖女が魔王城で暮らすって、ダメなんじゃないか?

 

「兄さんもここで暮らさない?」

 

ギルからの誘い。俺は無意識の内に頷いてしまった。

 

「兄さんの部屋は、好きな空き部屋を使ってね。書庫の本は、基本的に持ち出し禁止だよ」

 

魔王の書庫があるのか。それは興味があるなぁ。俺は、ギル達と暮らすことにした。その時、俺の脳裏から、俺のパーティーメンバーのことがすっかりと抜け落ちていた。

 

 

翌日、あの町に転移すると、俺のパーティーメンバー達が見当たらなかった。宿に泊まった記録すらない。まさか、俺を放置して、違う町に行ったのか?今回の案件では経験値は稼げないしなぁ。アイツなら、やりかねない。上昇志向が強いし。

 

「兄さんはフレディ・バートンっていうGクラス冒険者で登録してあるからね。姉さんはFクラスに昇格していて、ティアと僕はDクラスなんだよ」

 

ステイタスの複数所有が出来るとは…あのルーシーって女性は、何者なんだ?ギルのナビゲートピクシーと言っていたが、種族はなんだろうか?俺の知らない魔法を知っているようだし。人間では無いのは確かである。

 

って…ティアとシスティのブラコンは暴走気味のようだ。自宅の時のように、ティアはギルと添い寝をし、システィはギルと入浴をしている。俺の付けいる隙が無い。

 

「今日の目玉は…また邪龍が出たようだな。これにする?」

 

ギルがクエストの相談をし始めた。邪龍…ちょっと待て!そんなヤツが出るのか?Aクラス級では無いのか。いや、特S級指定されていてもおかしく無い。それほど、邪龍は倒すのが困難な魔物である。

 

「美味しく無いんだけど…」

 

ティアは喰うことが前提なのか?

 

「昇格ポイントも高いし、いいんじゃない?」

 

って、システィ。簡単に決断できる相手ではないぞ。

 

「じゃ、決定だね。兄さん、今日の獲物は邪龍だよ」

 

って、笑顔で言うギル。このパーティーって、最強の勇者パーティーになるのか?

 

「ティアのジョブって、なんだ?」

 

「ボクはバーサーカーだよ。お姉ちゃんはアークプリーストで、お兄ちゃんもバーサーカーなんだよ」

 

楽しそうに説明をするティア。

 

「ついたパーティー名は、ブレインマッスルだって…」

 

システィが苦笑いしている。ブレインマッスルだと?『脳筋』ってことか…とても、勇者パーティーと呼べるメンバーでは無いらしい。

 

「バーサーカーが4人で、アークプリーストが一人…で、兄さんのアークウィザードが加入で、希望通り、魔法使いの補填が出来たし」

 

ギルが嬉しそうに話している。そして、狩り場へと向かった。狩り場は森の中にある広場のような場所だった。

 

「ここが邪龍達のエサ場だよ。ドラゴン以外の気配を感じると、狩りに来るんだ。ほら!来たよ」

 

空にドラゴンの群れがこっちに向かって飛んでくるようだ。

 

「ギル、作戦は?」

 

「殲滅することだよ、兄さん」

 

それは目的であって、作戦では…などと考えていると、目の前では次々に邪龍が地面に落ちてきている。ギルとティアの二人が『一刀両断』を連発して、邪龍の羽を使えなくしていた。落ちて来た邪龍達は、ギルの仲間達の打撃で、次々に頭部を粉砕されていく。その戦い方は手慣れているようだ。

 

 

 

---マイケル・ホリック---

 

システィの捜索をしに行った、パーティーのメンバー全員が行方不明になったそうだ。その中には天職大賢者のフレデリック・ゴールドウィングも含まれていた。これでゴールドウィング家の子供はロック・ゴールドウィングだけになってしまった。

 

「どう思う?」

 

父が、ギルバートの父に訊いた。

 

「魔王が復活したのか?それならば、納得がいく。真面な勇者パーティーで無いと、魔王は倒せないからな」

 

噂通り、ギルバートは生け贄になって、魔王が復活したのだろうか?

 

「俺と彼女とロックで、サタンキャッスルに行こうと思う」

 

先代勇者、先代大賢者、そして、剣聖見習いか…

 

「待て!その戦力じゃダメだ。盾役の騎士、回復専門のアークプリースト、火力重視のアークウィザードが必要だ」

 

先代の騎士は父だったらしい。

 

「アークプリーストとアークウィザードって、現在いるのか?」

 

「全国のギルドに調査を依頼してある。見つかり次第、同行を打診しようと思う。だから、少し待て」

 

ギルバートの、その後の調査は決定らしい。

 

 


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