まおうの作り方   作:もっち~!

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思い違い

---ロック・ゴールドウィング---

 

両親と共に、サタンキャッスル島に向かっている。同行メンバーとして、他のギルド所属のアークプリースト、アークウィザードの2名が同行している。サタンキャッスル島のの周囲には出入りを制限する結界で囲っている為、出入りの為のドアと呼ばれる結界を操作して、上陸するそうだ。

 

これで、兄ちゃんと会える。どんな形であれ、兄ちゃんと会えるのである。最悪、遺骨を拾うだけになるかもしれない。覚悟はしている。俺も、両親も。

 

アークプリースト、アークウィザードの二人は、正体を晒したく無いと理由で仮面を着けていた。先代勇者に協力して、害が及ぶのを防ぐ為らしい。

 

ドアに対して、母が呪文を行使し、いよいよ魔の領域へと侵入した。事前に想像していたのと違い、穏やかな海が広がっていた。

 

「穏やか過ぎる。魔王は復活していないのか?」

 

父達が魔王退治に来た時は、もっと荒れていたそうだ。空をカモメの集団が、暢気に飛び交っているし。海も空も風も穏やかであった。

 

島に近づき、碇を降ろして、小舟で上陸するそうだ。この島は遠浅らしく、座礁する危険があるらしい。そして…上陸。綺麗な砂浜が広がっていた。魔物の気配をまるで感じ無い。もしかしたら、兄ちゃんは生き延びているかもしれない。

 

記憶を頼りに城を目指す父。30分ほど歩くと、城の前に出た。城の扉は手を掛けると、すんなりと開いた。

 

「臨戦態勢を取ってくれ」

 

父から指示が飛んできた。俺と父は剣を手にして構える。が、魔物や魔族の気配を感じない。

 

「復活はしていないようだな」

 

城の中に足を踏み入れた父。その時、何かの気配を感じ、剣と剣がぶつかり合う音が響いた。

 

「呼び鈴をならさずに入るって、空き巣と同じじゃないか!」

 

はぁ?魔王城って、呼び鈴があるのか…

 

「えっ!ギルなのか?」

 

攻撃してきた者の顔を確認して、父がうめくように声を出した。

 

「僕はギル・バートンだ!黒魔術を食らい、既に親子の縁は切れている」

 

父と激しく打ち合う兄ちゃん?

 

「ロックの相手は、ボクがする」

 

えっ!いきなりティアが俺に斬りかかってきた。剣を交える俺。母は、呆気に取られ、誰かに制圧されている。背後にいたアークウィザードとアークプリーストの姿は消えているし…ワナだったのか?

 

剣聖である俺がティアに押されている。先代とはいえ勇者である父は、兄ちゃんに押されているし。どういうことだ?

 

「ギル!どういうことだ?」

 

父の怒声が飛んだ。

 

「空き巣まがいをする者に、怒りを感じたまでです」

 

呼び鈴を鳴らさなかったことに、激怒している兄ちゃん。

 

「なんで、ティアがいるんだ?」

 

父の怒声は、俺の相手にも飛んだ。

 

「お兄ちゃん無しの生活なんか無理だもん」

 

って、いつの間にか、目の前にはシス姉、フレ兄がいるし…

 

「どういうことだ!」

 

父は、兄ちゃんから距離を取った。

 

 

 

---ギル・バートン---

 

元父親とは言え、呼び鈴を鳴らさずに、家に入るとは…許せる行為では無い。

 

「何しに来たんだ?」

 

「魔王の復活を確認しに来た!」

 

魔王の復活?はて?

 

「この家には魔王なんていない。だから、出て行ってくれないかな?」

 

元父と、元弟の剣先が僕達に向いている。兄さんは元母に対し、牽制しているようだ。

 

「ギル…一緒に帰ろう」

 

「帰れない。呪いを受けていて、どこにいようと、深夜0時には、ここに強制転移してしまう。だから、もう、ここでしか暮らせない」

 

「ティア…システィ…フレディ…お前達は帰れるんだろ?」

 

僕への説得をあっさりあきらめ、他の兄妹に狙いを変えた元父。まぁ、天職なしの僕なんか、要らないもんな。

 

「「「拒否!」」」

 

速攻で拒否する兄妹達。

 

「ローゼンタール・ゴールドウィング、ロッテル・ゴールドウィングよ。久しぶりだな」

 

いきなり、ルーシーさんが元両親に声を掛けた。

 

 

 

---ローゼンタール・ゴールドウィング----

 

同行してきたアークウィザードが仮面を外しながら、声を掛けてきた。なんだって…コイツ…

 

「どうしたのさ?もう遠い記憶で覚えていないかな?」

 

忘れない…コイツのことは絶対に…

 

「ルシファー!」

 

あの時、準魔王であるコイツは屠り損ねた。なんで、ギル達の傍にいるんだ?

 

「覚えていてくれたか。まぁ、今はルーシーと名乗っているんだよ」

 

今この場で屠りたいが、ティアとギルに、ルシファー、システィ、フレディ相手では、無理である。

 

「なぁ、今日はゆっくりと話が出来そうだな。リビングで話でもするか?ギル、それでいいか?」

 

ルシファーの言葉に頷くギル。洗脳されたのか?

 

「洗脳?されていないよ。ルーシーさんは、僕の先生だもの」

 

笑顔で答えたギル。心が読めるのか?

 

 

大広間に、大きなテーブルがあり、皆で腰掛けた。ギルの仲間が、紅茶や珈琲を入れ、サーブしてくれた。

 

「ローゼンタールよ、天職の意味を知っているか?」

 

いきなり、妙な事を言うルシファー。

 

「天から与えられるジョブだ。それがどうした?」

 

「それは違う」

 

ギルが、反論してきた。

 

「天職とは、目標なんだって」

 

「目標?」

 

「そう…神が生まれた子のステイタスの伸び代を考えて、努力した結果を見せているにすぎない」

 

新たな説を唱えるギル。天職無しのギルらしい考えではあるが。

 

「証拠はあるのか?」

 

「うん。有るよ。この本に書かれているんだ」

 

1冊の書物をメイドさんが持って来てくれた。そのメイドさんの顔を見て驚く、私と妻…

 

「ガブリエル様…どうして、ここに?」

 

神の使いである熾天使であるガブリエル様であった。現役勇者だった頃、何度かお会いしていた。

 

「愚問ですよ。あなた方人間は誤解をしている。魔王は悪神ではなく、神の末席ですの」

 

熾天使様からのお言葉に、衝撃を受けた私達。魔王って、神だったのか…

 

「人間って言うのは、なにか目的が無いと、努力をしない生き物です。ですから、神の末席に居る者が、魔王となり、人間達に、努力、研鑽をさせる為に、存在しているのです」

 

え…教会の教えてと違う。

 

「教会?あれは、人間の作り上げたシステム。作った者の都合の悪い教えは無くし、都合の良い事だけを説いているにすぎない。現に、その書物を読めないでしょ?」

 

手渡された書物に目を通すが、知らない言語体系で書かれていた。

 

「ソレは、神が使う神格言語で書かれている、真実の書物です。本来は、神、天使、悪魔だけしか読めませんが、ギルは言語マスターのスキルがあるので読めるのです。その書物が、私達の教本です。それを読めない者が、聖典を書けると思いますか?」

 

人間に理解の出来無い文字…神官であっても読めないのだろう。

 

「ちょっと待ってください。何故、悪魔が読めるんですか?」

 

「悪魔は天使の末席です。神に仕えるのが天使であり、魔王に使えるのが悪魔なだけで、天使も悪魔もジョブの一種なんですよ」

 

熾天使様から、衝撃の真実が語られた。じゃ、私達は、命を削り、なんで悪魔や魔王と戦うんだ…

 

「のうのうと生かさない為の神からの試練です」

 

笑顔で言い切る熾天使様。

 

「天職が無いギルは、神に選ばれた存在です。努力次第で、なんのジョブにもなれるんです。天使だったり、悪魔だったり、魔王だったりね」

 

まさか、次代の魔王候補はギルなのか…ギルは生け贄では無く、覚醒待ちなのか?この場で切り捨てるべきか?

 

「ローゼンタールよ!ギルは、お前達に殺させない。私達が護るからね」

 

ルシファー、熾天使様だけでなく、ティア、システィ、フレディからも殺気が漂い始めた。この戦力相手だと、勇者チームが3つくらい必要か?

 

「ローゼンタールよ、戦力を読み違えているぞ。準魔王は全員転生している。まだ覚醒はしていないが、戦力的には、申し分無いくらいだよ」

 

魔王の配下には準魔王と呼ばれる悪魔王、魔獣王、魔物王、魔龍王、魔法使いの王などがいた。

 

「その知識も違うわよ。天使長、精霊王っていう正義の味方も、実は準魔王なんですからね」

 

笑顔であるが目が笑っていない熾天使様の口から、真実が語られていた。まさか、強力な味方であり、魔王討伐に欠かせない戦力である天使長様、精霊王様までもが、準魔王と言うのか…

 

「人間達は、思い違いをしている。激しくなっ!ギルのことを蔑む?それ自体が、間違っているんだよ」

 

勝ち誇ったような表情のルシファーが笑った。

 


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