乙女ゲー主人公はヤンデレでした   作:でち公

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番外編だオラァ!

ただ単にこの話がやりたかっただけなんですけどね。

次話投稿時に新しく番外編の章を1番上に作って移動させときます。多分それの方が見やすいだろうし。

じゃそういうことで初投稿です。



番外編
Ex.1 春の陽気に誘われて


 今日はとてもいい天気だ。春特有のぽかぽか陽気に柔らかい風が木々の幼い緑を揺らし、風に乗って流れてくる仄かな花の香り。

 

 こんな日にこそお昼寝をするべきだろうと、私レインはそう思う。

 

「オルドと一緒にお昼寝したいなぁ」

 

 そう呟いてみるも私はオルドが住んでいる家を知らない。というのもオルドは学園が終わるといつの間にか消えているのだ。ほんの少し目を離した瞬間にはもう居なくなっているため後をつけることも出来ない。家を知っていれば今日みたいな休みの日でもオルドに会いに行けるんだけど……。

 

「できればずっと一緒に居たいのに」

 

 しかしそうは言ってもどうにもならないのも事実。仕方がないので絶好のお昼寝ポイントに一人で行って寝ることにしよう。

 

 そうと決まれば早速準備をする。とりあえずは財布と鞄、それにシートとタオルケットを準備して……。そこで机の上に置いていた宝物の小袋が目に入った。……これも持っていこうかな。

 

 これを抱いて寝ればきっと幸せな夢が見られると思うから。

 

 大切な小袋を服の内ポケットに入れ込み、玄関のドアノブをガチャリと捻り外へ出る。

 

「いってきます」

 

 

 

 

 

 

 とりあえずはまだお昼ご飯を食べていないし、軽く食べてから行こう。そう思ったので屋台村へと向かうことにした。

 

 そしてしばらく歩くと屋台村に着いた。さて何を食べようかな? そんなことを考えながら歩いていると知り合いのおばさんが話しかけてきた。

 

「あらーレインちゃんじゃない! 今日はどうしたの?」

 

「ええと、お腹が減ったのでお昼ご飯を食べようと思いまして……」

 

「そうなのね、ほらじゃあこれあげるわ! うち自慢のベル豚の串焼きよ!」

 

 そう言っておばさんは串焼きを5本ほど包むとこちらに渡してきた。

 

「わ、悪いですよ」

 

「いいのよ、レインちゃんには色々と世話になったのだから」

 

「で、でもこれ売り物ですし……」

 

「んーそうねぇ。そうだ、私この前レインちゃんに腕の怪我を治してもらったじゃない?」

 

「えっ、ああ、はい」

 

「それのお駄賃てことで貰ってちょうだいな」

 

 そう言っておばさんはカラカラと笑ってグイッと押し付けてきた。ここまで言われてしまっては受け取らない方が逆に失礼に当たるだろう。

 

「えっと、それじゃあ有難くいただきますね」

 

 そう言って串焼きを受け取った。それじゃあお昼寝スポットに行って食べようかな……。そんなことを考えていると今度は別の屋台のおじさんから声がかかった。

 

「おぉ!? レインちゃんじゃねえか! 串焼き持ってるってことは昼飯買いに来たんだな?」

 

「ええ、まあ、そうですけど」

 

「じゃあ俺んとこのも持っていきな!」

 

「お、ならうちのも持って行ってくれ!」

 

「あたしんとこも持っていきなよ」

 

「うぇえ!? ちょ、ちょっと待ってください!」

 

 おじさんがそう言ったのを皮切りに近くで屋台を経営してた人達がどんどん売り物を持ってきては私に手渡してくる。皆とてもいい笑顔で渡してくるものだから断るに断れずに受け取るしかなかった。

 

 

 

 

 

 両手いっぱいに抱えた食べ物を持ち歩きながらどうしようかと悩んでしまう。屋台村の人達が沢山食べ物をくれたのは嬉しいけれどさすがにこの量を私1人で食べきるのはかなり厳しい。

 

 だからといって彼らの好意を無下にはしたくないし、食べ物を無駄にするのも嫌だ。

 

 ……仕方ない頑張って食べよう。

 

 そんなことを考えながら絶好のお昼寝スポットに向かっていると何処からか音が聞こえた。耳をすまして聞いてみるとその音は誰かが歌を歌っているということが分かった。

 

 聞いたことも無い歌、けれど何故かとても懐かしくて、心の底から安心してしまうようで、とても眠たくなる歌だ。その優しげな歌声にふらふらとまるで吸い込まれるように向かって行ってしまう。

 

 そうしてしばらく歩いた先には風に揺られて草同士が擦れる度に耳触りのいい音を奏で、太陽の光に照らされてキラキラと光る草原。そんな草原にある丘にポツンと生えた木の陰で誰かが座って歌を歌っている姿が見えた。

 

 まるで一枚の絵画のような光景に私は一瞬立ち尽くしてしまった。

 

 ハッと気を取り直し、一体誰だろうと目を凝らして見てみると歌っていたのはオルドだった。暫くじっとみていると不意にこちらに顔を向けたオルドとバッチリ目が合ってしまった。

 

 互いの間に流れる沈黙の時間。なんだろう、凄く居心地が悪く感じてしまう。

 

「……聞いていましたか?」

 

「う、うん。とてもいい歌だったよ」

 

「そうですか」

 

 オルドはそう言うと顔を真っ赤にして俯いてしまった。普段の無表情から一転して恥ずかしそうに俯くオルドに何だか、こう胸の奥が高鳴るというか、何だろう尊みがオーバーフローを起こしてしまう。

 

「隣に座ってもいいかな?」

 

「どうぞ」

 

 その言葉を聞いてオルドの隣へと座り込む。屋台村の人達から貰った食べ物を膝の上に置くとオルドが驚いたような目でこちらを見ていた。

 

「随分と食べるんですね」

 

「あっ、いや違うよ!? これは屋台村の人達がくれたって言うか……」

 

「ああ、なるほど。レインはこの国の人達から好かれていますからね」

 

「えっ、そ、そうかな?」

 

 唐突に褒めてきたオルドに思わず照れてしまう。

 

「ええ、この国の人達から少し話を聞きましたがレインは怪我を負った人たちに無償で治療してくれたり、清潔な水をくれた等と皆さん嬉しそうに教えてくれましたよ」

 

「そ、そうなんだ……」

 

「怪我をしても貧困層の人達は治療が満足にできない事が多いですからね。それを無償でしてくれるレインには心の底から感謝してると言っていましたし、レインが創り出す水は一度も腹を下したことがないから有難いと言っていました」

 

「あはは、何だかそんなに褒められると恥ずかしいね」

 

 手放しに褒めてくれるオルドに少し気恥ずかしくなり、話題を逸らすように屋台村の人達から貰った食べ物を彼に手渡す。

 

「一緒に食べよ?」

 

「ん、いいのですか?」

 

「勿論だよ、私一人じゃこんなに沢山のものを食べきれないからね」

 

「では有難くいただきます」

 

 そう言うとオルドは受け取ったものを食べ始めた。美味しそうに食べるオルドの姿にとてもほっこりとした気持ちになってしまう。

 

 ……今度私も何か作ってみようかな。

 

 そんなことを考えつつ、私も取り出した食べ物を食べ始めた。

 

「この串焼き美味しいですね」

 

「ベル豚のお肉らしいよ?」

 

「へえ、ベル豚っていうとあの魔物ですか。まあ比較的狩りやすい魔物ですし、市場にも出回りやすい肉ですね。……それにしてもこのタレすごく美味しいですね。一体どうやって作ってるんでしょう」

 

 今度作ってみようかな、なんて呟くオルドに少し驚いた。

 

「オルドって料理出来るの?」

 

「まあ、それなりに」

 

「そ、そうなんだ」

 

 思わずオルドがエプロンを着けて料理をしている所を想像してしまう。何だろうとても似合っていそうだ。それにオルドも料理が出来るのならそこに私も並んで一緒に料理をしたい。

 

 その光景を想像すると何だか幸せな気持ちになれた。こうなんというかまるでおしどり夫婦のような……。そこまで考えたところでふにゃりと破顔してしまう。

 

「急に笑いだしてどうしたのですか?」

 

「ううん、なんでもないよ!」

 

 よし、今度絶対にオルドを誘って一緒に料理をしよう。それで一緒に作った料理を2人で食べればきっと幸せなこと間違いなしだ。

 

 そこからはオルドと話しつつ、食べ物を食べ進めていっているとふと思い出したことがあった。

 

「そう言えばオルドが歌ってた歌って初めて聞くものだったんだけど、何処の歌なの?」

 

「……さあ、何処の歌なんでしょうね。私にもよく分からないんです。ただ、唯一覚えていた歌を口ずさんでいただけですので」

 

 そう話すオルドはどこか懐かしそうで、それでいて悲しそうな、まるで遠い故郷を思い出すかのような目をしていた。その姿を見て胸がちくりと痛んだ。

 

 時折オルドは何処か遠い目をする。彼が何を思い出しているのかは分からない。けれど彼がそんな目をする度に不意に何処か遠くに行ってしまうのではないか。また、私の前からいなくなってしまうのではないか。そんな考えが私の頭の中を過ぎるのだ。

 

 もう私の目の前からいなくならないで欲しい。次オルドがいなくなってしまえば私はきっと耐えれない。もうあんな思いはしたくないのだ。

 

「レイン、私の服を掴んでいますがどうかしましたか?」

 

 心配そうに私の顔を覗き込んでくるオルドに言われて初めて自分がオルドの服の裾を掴んでいることに気がついた。

 

「……なんでもないよ」

 

 手を離そう。そうは思うけれど私の意思に反して彼の服の裾から手が離れることは無かった。オルドはそれに何を言う訳でもなく、残っていた食べ物を食べ始めた。今はその心遣いが嬉しかった。

 

 そうして暫くオルドの服を掴んでいると、ようやく心が落ち着いた。それと同時に安心しきったことで眠気が出てきてしまった。元々昼寝をするために外に出てきたというのとこの暖かな木漏れ日がより一層眠気を増してくる。

 

「ごめんオルド、私ちょっと眠るね」

 

 オルドにそう言って私は木に背中を預けて目を閉じた。しばらくの間微睡みの中にいると思わず身体が横に倒れ込んでしまった。けれど特に衝撃もなく、ちょうどいい柔らかな感触が私の頭を支えてくれた。それに疑問を抱けるほどの思考は残っておらず、それどころかふんわりと鼻をくすぐる安心する匂いと優しく頭を撫でられる感覚により深く微睡んでしまう。

 

 そして遂に夢の中に旅立ってしまうその時に、不意に私の耳にとても懐かしい歌が届いた。そうだ、この歌は私が寝付けない時にあの男の子が……歌っていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 ━━━━━おやすみレイン、いい夢を。

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

「この聖女やりおるわ……」

 

 人の膝の上にいきなり倒れ込んで眠り出した聖女を見て思わずそう呟いた。寝たら寝たでさっさと放置して帰ろうと思った矢先に人の膝の上に倒れ込まれたものだから動くに動けない。

 

 それにしても随分とまあ気持ちよさそうに眠りやがる。

 

 髪は女の命だと聞くので人の膝の上で勝手に眠りやがったすやすやと人の膝の上で眠る聖女に仕返しを兼ねて髪を軽く弄る。

 

 ……すごいサラサラだなこの髪。

 

 暖かな海の色を思わせるアクアマリンのような長い髪。きっと手間暇かけているんだろうなということは容易に伺える。しばらくの間弄ってはいたが、つまらなくなったのでやめた。暇だしまた歌でも歌うかな……。

 

 聖女の目の前で軽く手を振ってみたりして、聖女が完全に眠っているのを確認をする。流石に人前で歌うのはなけなしの羞恥心が刺激される。聖女が完全に眠り込んだのを確認すると起きないように小声で歌い始めた。

 

 前世で散々聞いていたこの乙女ゲーで一定の条件をクリアすることで聞ける曲。まあ、よく覚えているもんだよな。もう数十年経っているというのに頭の中にべったりとこびりついているもんだから驚愕ものだ。

 

 そういえばこの歌、なんかファンブックか何かに特殊な効果があるとかないとか書いていたような気がするなぁ……。ま、所詮たかが歌だしそんな大した効果はないだろ。

 

 しばらくの間歌を歌っていると不意に気持ちよさそうに眠っている聖女の姿が目に映りこんだ。こんなにも気持ちよさそうに眠られては何だか毒気も抜かれるというものだ。……まあ、別に誰も見ていないしたまには構わないか。

 

 




次回も番外編です。なにやらオルドくんの傭兵時代が気になっている様子なのでメテオラちゃんとセットで傭兵時代を書きます。あとついでに設定資料もあげるかもー。

そう言えばレインちゃんヤンデレか? という疑惑が沢山出てますが、ヤンデレだよ(鋼の意思)まあ、今は病みが浅いですけどきっと病んでくれるでしょう。この純粋乙女の特大の地雷をRPGで撃ち抜くレベルのことをオルドくんがしでかすので(畜生)

女の子:今はいい夢を見てることでしょう。

男の子:膝枕してる。普通逆なのでは……?

小袋:MVP

まだまだリクエストは募集しているので気が向いたらして、どうぞ。

ほな、また……(失踪)

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