乙女ゲー主人公はヤンデレでした   作:でち公

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評価が赤いっ! つまりそれだけこんな設定がすこっていう人が多いってことだよね?

じゃあ似たような設定で書いてくれるよね? 俺も書いたんだからさ。

そんなわけで初投稿です


第2話 レイン視点

 目の前で自己紹介をしていた私の愛しいオルドを見て思わず想いが溢れてしまった。今はオルドの姿を記憶に焼き付けるためにしっかりと見ないとね。……えへへ、オルドぉ。オルドとの将来を考えるだけで思わずにやついてしまう。はしたない女の子だなんて思われてしまうだろうか? 

 

「それじゃあオルドの席は━━━━━」

 

 オルドの席、そんな言葉が聞こえた瞬間、私は反射的に手を挙げた。

 

「先生、私の横が空いています」

 

 オルドが私の横に来るのは絶対だ。何せこの学園に来た時から夢想していたのだ。もしオルドが学園に来た時の為に横の席は取っておくと。それが今叶うのだ。今までオルドとの将来を考えて周りに味方を増やしていってよかった。私の学園生活は薔薇色になるに間違いない。ありがとう神様! 

 

 そんなことを考えていたのに先生は何故か渋った様子を見せた。

 

「や、だがなあ━━━━━」

 

「先生、私の横が、空いています」

 

 少々圧をかけて再度『私の横』という言葉を強調していう。もしオルドが私の横以外の席に行ったのならオルドの横に座っている人の席を奪うことも吝かではない。そうならない為にも私の横にしてくださいね、先生。

 

「お、おう。じゃあそこで……」

 

 そんな私の想い通じたのか先生はやや戸惑った様子で私の提案を呑んでくれた。そしてオルドが私の隣の席へと向かって歩いてくる。ほんの少し手を伸ばせば触れる位置にオルドがいる。その事実に自分自身でも笑みが深まっていることが分かるほどだ。

 

 オルドが席に着いたのを見て挨拶をする。

 

「これからよろしくね、オルド」

 

 末永く、ね? そんな想いを込めながら手を差し伸べるとオルドは少し困惑したように手を握り返してくる。思っていたより手の皮膚が硬い。それにこの鍛え方……。体幹の維持とか歩法とかもそうだったけどもしかしてオルドって武に通じてる? どうにも戦い慣れしてる様な印象があるなぁ……。

 

「ええ、これからよろしくお願いします。えっと……」

 

 何やらオルドが困っている様子だ。……もしかして私の名前を知らないのだろうか? これは想定外だ。とりあえずは私の名前を教えてみる。名前が分かればすぐにでも私が水の聖女だということに気がつくだろう。

 

「あ、ごめんね? 私はレイン・ローレライっていうの。レインって呼んで欲しいな」

 

 オルドは特に驚いた素振りを見せなかった。この反応は私が水の聖女ということに気がついてないと思える。

 

 ……どういう事なのかな? 

 

 私とオルドが出会ったのはまだ幼い頃だから仕方ない、と2ヶ月前ならそう言えただろうが、今の私ははっきり言ってリバドレード王国民のほとんどが知っているはずだ。何せ2ヶ月前に魔王討伐による大々的なパレードを行ったのだから。私も有名になるのは嫌だったが、オルドが私を見つけてくれるかもしれない。そんな一縷の望みをかけて出たのだが、当のオルドはそれを知っている様子ではない。

 

 そうなると現時点ではオルドがいた場所の3つの推測が出てくる。

 

 一つ、私のパレードが伝わらないほどの辺境にオルドが住んでいた。

 

 二つ、額の右側から頬にかけて走る一筋の傷跡から見てパレードの話すら届かない最前線で戦っていた傭兵。

 

 三つ、同じく傷跡から見て奴隷として最下級の区分に分けられる戦闘奴隷だった。

 

 2番の可能性は低い。そうなると3番か1番の可能性があるが、そもそも3番については私が原因となる人達を潰した。となると1番? でもオルドの出身地は私と同じはずだ。じゃあやっぱり2番なのかな? 

 

 一体どれが━━━━━

 

 そんなことを考えているとまるで脳髄を溶かすような甘い響きが私の耳に届いた瞬間、今までの思考が那由他の果てまで吹っ飛んでしまった。

 

「分かりました、レイン」

 

「━━っ!」

 

 レイン、レイン、レイン! ああ、なんと甘美な響きなんだろう! オルドが私の名前を、それもファーストネームで呼んでくれた! ああ、駄目だ。下腹部に熱が滾っていくのがよく分かる。まるでマグマのような熱量だ。これは刺激が強すぎるっ……! 

 

「それじゃあ転入生への質問……といきたいところだが、この後は戦闘訓練だから質問は休み時間にしといてくれ。それと今回の戦闘訓練はペアで行う。適当にペアを組んだら第1訓練所に集合しろよ」

 

 ペア!? 今ペアと言ったのかなこの先生は? そんなの組む人は決まっている。

 

「レイン! 俺と一緒に━━━━」

 

「オルド、ペアになろっ!」

 

 何やら変な言葉が聞こえた気がする。私が組むのはオルド以外にはいないというのに。

 

「ま、待ってくれ。レインはその男と組むのか?」

 

 ああ、さっき喋ってたのはオルティスくんだったんだ。それにしても当たり前のことを聞くんだね。

 

「そのつもりだよ、オルティスくん。だってオルドはこの学園に来たばかりでペアを組む人はいないと思うから」

 

 仮にいたとしてもオルドのペアを譲る気はない。オルドのペアはこれからずっと私だけでいいのだ。今まで一緒に過ごせなかった分を取り戻すようにオルドとは二人っきりで濃密な時間を過ごしたいのだから。

 

「なら、俺がそいつと組むよ。それならレインが組む必要は無いだろう?」

 

 その言葉に思わず呆気に取られてしまう。誰が誰と組むだって? 私を差し置いてオルドとペアになるなんて許されるわけがないというのに。

 

「ダメに決まってるでしょ。だってヴァンくんと組んだら怪我するかもしれないじゃない。それなら回復もできる私の方がいいと思うの。それに私は学級委員長でもあるしね。だからオルドと組もうと思うのだけれど……ダメ、かな?」

 

 ヴァンくんは手加減が下手だ。オルドの動き方からしてないとは思うが、万が一怪我をさせられたら私はヴァンくんを蒸発させてしまうかもしれない。そうなったら今まで積み上げてきたのが崩れてしまう。それは回避したい。

 

「うぐっ、ああ、分かった俺は別にそれでいい」

 

 上目遣いでヴァンくんにお願いすると、どうやら納得してくれたらしい。他の皆も渋々といった様子だが引いてくれた。これでようやくオルドとペアを組むことが出来る。

 

「それじゃあ、一緒に頑張ろうねオルド!」

 

「えっ、ああ、頑張りましょうね……?」

 

 その後私とオルドは別れて更衣室へと向かった。

 

 ……しょ、しょうがないよね。これから行うことはオルドがどれくらい鍛えてるのかを知るためであって、ペアを組むのに必要な偵察だもんね。うんうん仕方ない仕方ない。それに私がオルドの身体が見るのにオルドが私の身体を見ないのは不平等だもんね。これからペアになるんだから不平等はいけないもんね。今度オルドと二人っきりのときにしっかり見てもらわないと。

 

 そんなことを思いながらオルドが着替えているであろう更衣室の中にある大気中の水分を使って眼を作り、私の感覚と同調させる。

 

 オルド以外の人の身体なんて見たくもないからオルドのみ映るように調整し、バレないように細工をしかけた上で天井に作る。

 

 えへへ、オルドの逞しい身体……。一体どんな感じなんだろう? 思わずよだれが垂れてしまいそうになり、急いで拭う。

 

 そして同調しきったため視界が切り替わる。

 

 ……なに、この傷跡。

 

 オルドの身体は見ることが出来た。鍛えに鍛え抜いたんだろうってことが思えるほどに絞りあげられた肉体をしていた。それと同時にこの筋肉の付き方は戦うために付けたと分かる程に機能的な肉体をしていた。

 

 そしてそれを裏付けるようにオルドの身体には無数の傷跡が残っていた。切創、銃創、刺創などの明らかに人と戦ってついたような傷跡から咬創などの魔物とも戦っていたと考えられる傷跡が身体中に刻まれていた。

 

 不愉快だ。不愉快極まりない。

 

 誰が、誰が私のオルドにこんなにも傷をつけた。きっと痛かっただろう。辛かったのだろう。どれほど苦しんだのだろう。

 

 許さない、断じて許してなるものか。

 

 私の愛しいオルドに傷をつけたことを後悔させてやる。それこそこの世に生まれてきたことを後悔するほどに。

 

 先程考えていた1番と2番の可能性は消えた。何故なら1番ならそもそもこんな傷は出来ていない。2番は傭兵ならば情報を最も重要視している。なら調べなくともわかるパレードについて知らないわけがない。それに私の存在を知らないというのもありえないだろう。

 

 そうなると残るは3番、戦闘奴隷だ。戦闘奴隷はその名の通り戦闘時のみ出される奴隷。最も死に近しい奴隷。そのため奴隷の中でも最下級の位置に付けられている。そして何よりも他の奴隷でもある人権が一切ない。戦いの時のみ駆り出され、戦いが終わればまるで道具をしまうように檻の中に叩き込まれる。加えて逃走防止のために首に爆破機能がついた首輪を装着される。また死んだとしても墓を作ることはない。そこいらの森に投げ捨てるなりなんなりして証拠隠滅として魔物に食わせるのだ。

 

 仮にそんな存在であったのならばオルドが私のことを知らないのも頷ける。それにオルドは昔はあんなにへりくだったような言葉遣いではなかった。戦闘奴隷であったがためにそう言う言葉遣いになってしまったのだろう。

 

 けど気になることもある。オルドが戦闘奴隷であったとしてどうやってこの学園に入学したんだろう? 誰かが手引きしたとしか思えない。多分オルドを戦闘奴隷から解放した人もその人のはずだ。もしそうだったのなら私はその人に対して出来るうる限りのお礼をするつもりだ。なんなら聖女としての地位を使っても構わない。

 

 それにしても戦闘奴隷は存在そのものが違法だ。そのため国王様と協力して戦闘奴隷を販売している奴隷商人は根こそぎ潰して、戦闘奴隷を持っている貴族達も容赦なくスキャンダルとしてすっぱ抜いて没落させた。全員潰したと思っていたけれど何処かに生き残りがいたんだ。そしてそいつがオルドにあんな傷を付けたのかな? 

 

 そっか、そっかぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━━━━潰す。

 

 

 

 

 

「おーし、全員着替えて集まったなー?」

 

 この学園は基本的に自由だ。そのため規定された運動服などはない。そのため服装は各自動きやすい服に着替えるのだが……。

 

 ちらちらと何度もオルドの方を見てしまう。

 

 オルドの筋肉質な身体の全体を覆う黒がピッチリと身体に張り付き、薄らと見える筋肉の筋がTシャツの隙間からチラリチラリと顔を覗かせる。そしてTシャツ故に見えてしまう黒に覆われた鎖骨にそこはかとない色気を感じてしまう。

 

 ━━━━━このオルド、スケベすぎるっ! 

 

 おい聖女、と言いたくなるくらいアホの感想だ。だが、聖女と言うだけあって生娘であるが故に想い人の身体のラインが出る服装に興奮を隠せない。

 

 そんな風にオルドの服装に悶々としていると、目の前に立っていた先生が自己紹介を始めた。

 

「そんじゃ、お前たち2年の担任となるクロード・ベルコだ。主に戦闘訓練を担当している。ビシバシ鍛えてやるから覚悟しとけー」

 

 そんなふうに気だるげに言っているクロード先生だが、立ち振る舞いに隙がない。

 

 ━━━━━この先生、騎士団長さんほどじゃないけどそれ相応に強いね。あの人からも教えを受けてはいるけどこの先生からも教えて貰えるなんて運がいいなぁ。

 

「そんじゃペア同士組んで念入りストレッチしとけよ。今回は魔法無しの組手をするからな」

 

 へえ、組手するんだ。……? 組手? オルドと組手? 魔法無しで? つまりそれって使えるのは肉体のみだよね? えへ、えへへ、それってつまりオルドが私の身体に触って、私もオルドの身体に触れるってことだよね? 

 

 ありがとうっ、その言葉しか見つからないよクロード先生! 

 

 そんなことを考えていると隣にいたオルドがクロード先生に質問をしていた。

 

「すみませんクロード先生」

 

「お、なんだ転入生」

 

「私の相手はレインさんなのですが、組手は拙いのではないでしょうか」

 

 もしかしてオルド、変なところ触ったらって考えた? 私はオルドなら何処触られても全然大丈夫なんだけどなー。寧ろ触ってほしいとさえ思う。

 

 そんなこと言うのははしたないから言わないけど。

 

「お前は戦場で女と戦うことになったら戦わねーのか?」

 

 クロード先生がそう言うとオルドは僅かにだが苦い顔をして黙り込んだ。

 

「おい、お前ら一応言っとくが相手が女でも適当にやろうとすんなよ。俺の戦闘訓練は生温くはないからな。それに怪我をしてもこの学園にゃ優秀な回復術士もいる。安心して潰し合え」

 

 凄い発言だ。仮にも王族がいるこのクラスで言っていいセリフじゃない。けれど、ハッキリとそう言ってしまう所にレインは好感を得た。

 

 実際、レインは女だということもあり、組手の時にはいつも手加減されていた。怪我をさせないように、機嫌が悪くならないように、そんな思考が明け透けて見えてしまうほどだった。その上、自身よりも圧倒的に格下とも言える人にまでそんなことをされてしまったので女だからという理由で手加減する輩が苦手であった。

 

 だが、聖女だからこそ怪我をさせてはいけないと思う気持ちは理解はしているためさして騒ぐ気もなかったが。

 

「そんじゃ一発目は……決めた。オルドとレインペアで戦え。レインの実力は既に知ってるが、オルドの実力は知らねえからな。ルールは闘技台の上の白線から外に叩き出すか、気絶、もしくは参ったというまでだ」

 

 初戦からオルドと戦うことになった。互いにストレッチをしてから闘技台の上に上がると構えを取った。

 

 ふぅーっ、と軽く深呼吸をし、オルドを見据える。そこでふと気づいた。

 

 オルドが纏っている空気が変わり始めていることに。

 

 その姿を認識した途端レインの胸の内からなんとも形容しがたい感情が湧き出てきたのが感じとれた。その感情に蓋をしつつオルドに声をかける。

 

「よーし! 私負けないからねっ!」

 

「ええ、此方も負けないように頑張りますね」

 

 ほんの少しの静寂。

 

「じゃあ、いくよっ!」

 

 その言葉とともに地面を思いっきり踏みしめ、一気に加速してオルドへと詰め寄る。そして勢いを落とさないままオルドの側頭部へハイキックを叩き込む。だがそれを上体を後方へ反らすことで躱される。だが、そのまま足を振り抜くことで勢いを落とさず流れるようにして足払いへと移行する。

 

 躱される、そんな予感はしている。何故ならオルドは上体を反らした時にこちらの様子をちらりと確認していた。その時の眼光にレインはゾクゾクと身体を震わせた。今まで手加減をしてきた奴らとは違う。敵として見定めている目であった。

 

 そしてやはりというべきか、足払いもオルドはバク転をすることで躱した。とはいえ、回避されるということは分かっていたため、即座に騎士団長仕込みの掌底をオルドの顎目掛けて打ち込む。

 

 回避した後の硬直で避けれないだろう。そんな思いと共に打ち込んだが、オルドは迫り来る掌底から一切目を離さずに冷静に見極めることで最小限の動作で躱すと同時に後方へと大きく跳躍し距離を取った。

 

 追撃にいこうと思えばいけた。だが、この身を襲うゾクゾクとした高揚感に動くことが出来なかった。

 

「あはっ、やっぱり思った通りだぁ」

 

 オルドは強い。体捌きからでも多少はわかっていたが、騎士団長に格闘術を仕込まれた私と並んでいる、いやそれ以上なのではないかと思える。

 

 それが私と同い年、それも私の愛しい人だという事実に興奮を隠せない。

 

「オルドは強いねぇ。多分格闘術だけなら私と同格……いや、もしかしたらそれ以上なのかな? えへへ、ね、オルド」

 

 オルドなら、オルドならば本気で戦っても他の生徒のように簡単にやられずに、寧ろ私の全てを受け止めてくれる。そんな確信を抱いた。

 

「本気で、戦おう?」

 

 そう呟くとオルドは常の無表情が消え、私にだけ見えるように口角がつり上がった。

 

「ハッ、上等」

 

 あぁ、その言葉遣いは……。

 

 昔の、昔のオルドの口調に戻っていっている。私の手を引いて色んな世界を見せてくれた、勝気な性格だった頃のオルドに。

 

 嬉しい、好き、愛してる、そんな感情が胸を占める。それと同時にこのオルドを知るのは私だけでいいという独占欲も湧き上がる。

 

 だが、複雑な気持ちにもなる。オルドが元に戻れるのは戦闘の時だけ。戦闘奴隷として生きてきたであろうオルドが自身の素をさらけ出せるのが戦闘だけだったとは何たる皮肉だろうかと。

 

 ━━━━━いつかは戦闘以外でもオルドの素が出てくれるようになったらいいな。

 

 いや、必ず元のオルドに戻してみせる。そんな決意を胸に抱く。

 

 まずはそのために、もっとオルドにさらけ出してもらうように私も本気でオルドと戦う。

 

 先程よりも強く地面を踏み締め、先程のよりも比にならないくらいの速度で間合いを詰める。ただの学生では目で追うことすらもできないであろう速度で詰めたにも関わらず、オルドはしっかりと目で追ってきていた。

 

 掌底では速さが足りない。掌底ではきっと先程のように見切られて躱されてしまうだろう。故に打つのではなく、速く、鋭く、貫くように。

 

 今までで最も速いと言えるほどのスピードを乗せた貫手を放つ。

 

 だが、オルドはその速度にも対応してきた。高速で放たれた貫手に、まるで壊れやすいものを触るかのようにそっと触った。たったそれだけで私が放った貫手は大きく横へと逸れ、私の懐がガラ空きとなった。

 

 そして目の前にはグッと拳を握り締めるオルドの姿が見えた。

 

 それを見た瞬間本能的に後ろへと大きく跳んだ。そして跳んだと同時にオルドの拳が私の腹部に目掛けて放たれた。私は大きく吹っ飛びながらも着地すると同時に地面に足を叩き込むことで無理矢理減速して停止した。

 

 ━━━━━私の跳んだ時の速度の方が僅かに速かったおかげでオルドの拳は軽く当たった程度で済んだ。

 

 けれど、それでもなお軽く当たった程度の腹部に痛みを感じた。もしこれが直撃していたらどうなっていたのか……。ゾクリと背筋が震えると共に私はオルドに対して嬉しさを感じていた。

 

「えへへ、嬉しいなぁ。私相手に手加減しないで戦ってくれるなんて」

 

 女だから、聖女だから、そんな理由で手を抜いてくる奴らとは違い、私というレイン・ローレライを見て戦ってくれている。私という個人を見ているからこそ躊躇なく本気で攻撃してきているのだと思うと嬉しくて堪らない。

 

 そんな想いを抱きつつ、今度は先程よりも速く鋭く打ち込もうと踏み締めた瞬間、目の前にオルドが現れた。

 

 出が見えなかった。まるで最初からそこにいたかのように私の目の前に現れた。そのことに驚きつつも咄嗟に掌底を放った。

 

 これがいけなかった。動揺により先程躱された掌底を踏み込みによる速度も乗せずに打ってしまったのだ。当然オルドにそれが見切られることは分かった。きっとオルドは私に打ち込んできて吹き飛ばしてくるだろう。そう思ったため、無茶な体勢であったが無理矢理後ろに飛ぼうとした時だった。

 

 オルドは私の右手首を掴むと後ろに飛んだはずなのに気づけば私は空に投げ出されていた。混乱する私の視界に映し出されたのはオルドが足を曲げ、傍目から見ても分かるほどにギチギチと膨張している足の筋肉。

 

 私は咄嗟に腹部をガードした。そしてオルドの正面から放たれた蹴りが私の腕を捉えた。ミシミシッと骨が軋む音が鳴り、盛大に吹っ飛ばされた。

 

「空中なら魔法を使わない限り勢いは消せねぇだろ? そんでもって━━━━━」

 

 勢いよく飛んでいきながらも空中で体勢を整える。だが、視界の端に白線が見えた。

 

 ━━━━━ああ、これは……

 

「俺の勝ち、ってな」

 

 私の負け、かな。

 

 私が着地した場所は白線の外。それは私の負けを意味していた。それを確認したであろうクロード先生が試合終了の合図を上げる。

 

「勝者オルド! 勝負を終えた二人は別の闘技台で訓練するか、他の奴らの見学をしてもいいぞ」

 

 また負けちゃった。オルドには昔から勝てなかったけど成長した今の私なら勝てると思ったんだけどなあ……。私も成長していたがそれ以上にオルドは成長してた。私の知らない技を使って私を驚かせてくれた。

 

 ああ、本当に━━━━━

 

「凄い凄い! オルド本当に凄い!」

 

 目の前まで来ていたことは分かっていたため、思いっきり飛びつく。何だかぐふっ、と声が聞こえたような気がするが、オルドに抱きついたことで高揚した私の耳に届くことは無かった。そのまま倒れ込んだオルドの腹の上に座り込み昂る感情のままに言葉を紡ぐ。

 

「私これでも学生の中では格闘戦で負けたこと無かったのに! それに私の知らない技が沢山あった! えへへ、ね、私にどんな技なのかじっくり教えて欲しいな。それこそ手取り足取り……ね? って、あれ?」

 

 また昔みたいにオルドに色々と教えて欲しいな。

 

 

 




相変わらず簡潔に纏めること出来てねえな作者ァ!?

戦闘描写を書くのが好きだからまあたくさん書いちゃった。

所でヤンデレの思考って難しいもんですね。他のヤンデレ小説書いてらっしゃる作者様方を尊敬します。

Q.奴隷制度あるの?
A.ありますねぇ!

Q.乙女ゲーで奴隷制度あるとかやばくね?
A.奴隷と言っても人権は認められてるし酷い扱いはされていない。どちらかと言うと職業に近いのでセーフ! セーフだよ! セーフだよね?

傭兵:ちょっと漁れば出てくる情報を知らなかった大馬鹿者。知らなかった理由はまた別の話の時に。戦闘時に来ていた服は傭兵してた時に着ていたタイツに上からTシャツとか被ったもの

聖女(本部):傭兵が悲惨な目にあってたと考え本部化。私が守護らねば……! 覗きに聖女の力を使うという実に無駄な力の使い方をした。騎士団長仕込みの格闘術を使う。

奴隷商人:ギリギリ生き残ってようやく立て直せてこれたのに傭兵のせいで聖女にロックオンされてまた潰される予定の人達。

感想自体はしっかり読んでます。疑問に思ったところなんかは書き込んでくれれば話に影響しない限りお話の中に盛り込んでいきます。ネタバレになるのは勘弁な!

という訳で感想待ってます

じゃあの(失踪)

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