夕影の怪盗団 Afterglow   作:コードネーム/スマイル

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ついにミナトパレスも終盤です。お付き合いいただければ


ボスバトル:Roselia①

 八月七日 朝

 過去に囚われた妄執の大罪人、湊友希那殿。

 他を見下し、あまつさえ仲間すらも従僕としか考えていない哀れな亡霊。

 我々は、全ての罪をお前の口から告白させることにした。その歪んだ欲望を頂戴する。

 ──影の怪盗団より。

 

「……なにかしら、これは」

「さ、さぁ? 今朝見たら友希那んちのポストにこれがあって」

「ふざけているわね……こんな悪戯」

「だ、だよね……あはは」

 

 ──上等だわ。私から奪うつもりなら……それ相応の覚悟をしなさい。

 さぁ、命すらも懸ける覚悟はいいかしら? お粗末な怪盗さん。

 そんな声が聞こえた気がした。確実に、友希那さんは自分の欲望の中心を強く思い浮かべた。成功だね。

 

「よし、行こう蘭」

「うん」

 

 オタカラ、友希那さんの心の中心にある大切なものは普段は白い輝きのモヤでしかない。形状のハッキリしないそれは奪うことができない。無意識でしかないから。だったら意識させてやればいい。

 こうして、予告状というカタチで、自分の心が盗まれるということで、認知させてやることでオタカラは実像を結ぶことができる。

 でも、この効力はそう長くは続かない。予告状のインパクトは一日、予告状を出したらその日に決行するしかない。

 

「にしても、影の怪盗団って……」

「夕影、にしたらバレるでしょ」

「あ、そっか」

 

 ちなみにデザインはモカが、文章は蘭が考えて、一旦心の怪盗団の方にこんな感じでどうですか、って写真を送った。

 反応は上々、芸術家の卵である祐介さんがいいデザインだ、と反応して、蓮さんがモルガナの悪くねぇな、竜司よりずっとかマシだという言葉を打ち込んだ。

 

「モカはポスターデザインとかやってくれるし、蘭はそもそもアタシたちAfterglowの作詞担当だからな!」

「うん! それじゃあ……誰が出しに行く?」

「私と蘭で!」

「うん」

「見つかったらダメだよ~」

 

 そうして頑張って早朝に今井家のポストに投函、普段からリサさんがポストを確認するらしいから、そこで新聞に紛れ込ませて、後はリサさんが友希那に見せるだけ。

 もっと大胆にしてもよかったかな、と蘭は言ったけど、アッチの方みたいにやるとニュースとかになって面倒だよ。

 そして作戦を立てたりして、夕方にライブの熱気が高まる会場前に来ていた。

 

「よーしみんな、頑張るぞー! えい、えい、おー!」

「いや~、かいとーだんでその掛け声はないですな~」

「うん、ない」

「ないな」

「あはは……」

「え~! 気合いれようよ~!」

 

 そんな締まらない、いつも通りの私たちのまま、パレスへと潜入していく。

 二つ目の鳥籠を抜け、そして丁度ライブステージの前にやってきたところで、暗転していたステージが点灯した。

 

「目指すは頂点、ただ一つよ」

 

 LOUDER……友希那さんたちRoseliaの、そして友希那さんのお父さんが残した夢。それをBGMに、友希那さんはステージに立っていた。

 その手には何も持たず、折れた羽を背負って。そして、その周囲にある四枚の羽。孤高の女王を守る親衛隊。

 

「前哨戦……にしちゃあちょっとキツイな」

「気合いれてくよ」

「う、うん!」

 

 頷いた瞬間にもの凄い速さで認知の紗夜さんが突進してきた。片翼をはためかせ、つぐに向かって槍を向け、それをスワンがレイピアでなんとか逸らしてみせた。

 それを開幕の合図に、リサさん、あこちゃん、燐子さんが次々にステージから躍り出てきた。

 

「ばばーん! え、えっとぉ、なんかものすごいハンマーで雷ドーンってしちゃうから!」

「みすみす怪盗団を放ってはおけません、ここで処理します」

「闇よ……闇よ……わたしに力を……! ここから先には、いかせませんよ……!」

「さてさて、友希那のためにお掃除しないとね☆」

 

 顔見知りと同じ顔をされてると、戦いにくいけど……! そういうのも含めての覚悟なんだ! 私たちは話し合った。絶対に、現実と認知の区別だけはつけないといけないって。あれは私たちの知ってるRoseliaじゃないんだから! 

 

「まず白金さんから!」

「うん!」

「よっしゃ! アタシの出番だな!」

 

 まず遠距離が得意な燐子さんを叩く。ゲームだと凄腕の魔導士なせいか、友希那さんの認知でもそうなってるっぽい。特に呪怨属性を多用してくるし、下手をすると即死まで使ってくる。そこで私たちが立てたのは、スワンのペルソナの特性だった。

 モルガナに教えてもらったけど、ペルソナや悪魔にはそれぞれ得意不得意の属性がある。そして認知世界ではペルソナの特性によって私たちもダメージを受けやすい属性とそうじゃない属性が存在するって。

 スワンはその中で呪怨属性を無効化できて、更に火炎に対して耐性を持ってるって特性があった。つまりその両方を得意とする燐子さんにとって、スワンは最適解ってこと。

 

「覚悟してください! 燐子先輩!」

「う……!」

「りんりん!」

「いけない、白金さん──っ」

「いかせませんよ! 行くぜっ、サリエル!」

 

 当然、フォローに機動力のある紗夜さんは向かおうとする。けど紗夜さんはどうやら物理を苦手にしていることがヴィーナスの解析(アナライズ)でわかったことだった。

 だったら、一番パワーのあるフレイムで足止めできる。

 

「いっけー!」

「くっ……い、今井さん!」

「スカーレット!」

「わかってる」

「うわ! 物騒なもの持ってるなぁ、もう」

 

 蘭も含めれば取り敢えずリサさんと紗夜さんを止められる。あとはあこちゃんと燐子さんを私とスワンで倒すだけ。

 けど、誤算はあこちゃんが今日はでっかいハンマーを持ってること。嘘じゃん! あこちゃんも魔法攻撃ばっかりだったのに! 

 

「バーン! いっけー!」

「うう……!」

「わたしが……! ミヤズヒメ!」

 

 和装のお姫様が燐子さんの魔法を打ち消しながら、光り輝く剣であこちゃんのハンマーを返り討ちにした。私も! といきたいけどあこちゃんと燐子さんは魔法全般に耐性がある。流石ゲームでもネクロマンサーとウィザードなだけはあるよね! 

 

「どうやら……対策はしてきたようですけど……!」

「りんりんはファイヤー! だけじゃないよ!」

「え?」

「凍えろ……ブフダイン!」

 

 うっそ! 氷結魔法(ブフダイン)まで使えるなんて聞いてないよ~! 足元が氷結してくる。慌てて離脱して、私は銀弾を二発、燐子さんに向けて撃ったけれど、これは燐子さんの腰のムチで弾かれてしまった。

 

「今度こそ! 終わり、だよ!」

「くっ……! ダメ!」

 

 あこちゃんがハンマーを振りかざして攻撃するのを、スワンが念動でなんとかしてくれるけど、こっちは不利になっちゃった。

 蘭と巴も押され気味だし、どうにかしないと……! そんな私たちを見て、見下ろす女王が笑い声をあげた。

 

「あはははは、無様ね……所詮、あなたたちも雑音をまき散らすガラクタの一つ、というわけね」

「く……!」

「無駄な抵抗よ、ガラクタに鳥の羽ばたきは止められない」

「……鳥?」

「そうよ」

 

 スカーレットが友希那さんを鼻で笑った。ボロボロになりながら、その仮面を外して青い炎に溶かした。背中にナンネルが現れ、大剣を持ち変えて、弦を鳴らしながら叫んだ。

 ──音楽を、感情を、スカーレットの激情に応えるようにナンネルの指から白光が漏れる。

 

「あたしたちのロックを、バカにするなっ!」

「くっ……」

「友希那!」

 

 溢れんばかりの光の粒が矢となって、シャドウ友希那さんに襲い掛かる。それを間一髪といった風に認知のリサさんが槍で防ぐ。

 その隙を好機とばかりにフレイムのサリエルが幅広の剣でリサさんを吹き飛ばした。

 

「……そうだ! アタシらはアタシらのいつも通りを守るために、音楽をやってる! 羽もないアンタよりもずっと、音楽をしてるんだ!」

 

 動揺した紗夜さんや燐子さん、あこちゃんもフレイムとスカーレットの前に倒れていく。

 紗夜さんがナンネルのコウガの前に倒れ、あこちゃんと燐子さんはサリエルの網目のような剣技の前に倒れた。

 ホントは友希那さんを退けるために余力を残す作戦だったのに、結局こうなっちゃった。

 

「はぁ……はぁ……湊さん……!」

「その体たらくで、私と対バンでもするつもりかしら?」

「その、つもりですけどね……!」

 

 ペルソナは魂の力、みたいなのを消耗しちゃう。だからなるべく抑えておきたかったけど、もうこうなったらしょうがないよね。

 後は女王だけ、私たちの全部の力で……そう思っていたら、友希那さんが倒れた燐子さんに近づき、そして……その片翼を引きちぎった。

 

「なに……して……」

使()()()()()()()から捨てるのよ、こうなってしまえば彼女たちもガラクタよ」

「──っ!」

 

 あこちゃんの、紗夜さんの、そして……リサさんの羽をも、むしり取っていく、むしり取って、シャドウの友希那さんは変貌した。鮮血が破裂したように地面に溜まりを作って、色とりどりの六枚の翼を持つ巨大な青きバラの天使が降臨した。

 

「あれが……湊、さんの……シャドウ……?」

「まずい! ヴィーナス防御!」

「え、あ……!」

「わたしが……守る!」

 

 ミヤズヒメが剣を構え、そして一瞬のうちに……貫かれた。

 光の矢……ううん、槍とも言うべき巨大な光線で、腹部を貫かれた。

 ──つまりはスワンの……つぐにも。間一髪でフレイムの回復とヴィーナスの防御が間に合ったおかげで、死んではない。でも、死んでない()()だ。

 

「……っ、よ、よかった……みんなぶじ、で」

「つぐみ! クソっ!」

 

 今の、スカーレットと同じ祝福? 威力が違いすぎる。あれはスカーレットのコウガより上のコウガオンだ、それだけじゃない。シャドウ友希那さんは手を天にかざし、宙に浮く。

 その手が眩い光を発していて……ぞわっとするほどの力を認知した。

 

「終わりにするわ、ガラクタたち……マハコウガオン……!」

 

 鳥籠を埋め尽くすほどの光の雨が私たちに迫ってくる。嘘……マハコウガオンまで……? なにからなにまでケタ違いすぎるよ。

 私たちじゃ止められない。そもそも一番祝福に耐性のあるスワンがあれなのに……私たちが受けきれるわけない。

 

「やらせない……みんな、あたしが……!」

「ヴィーナス!」

「みんな、湊さんは……呪怨属性に唯一弱点があるから……だから、ひ──」

 

 それだけを残して、モカのUFOは大量の光を浴びて、爆裂した。

 スカーレットがボロボロのモカが落ちてくるのを見つけて、慌ててキャッチする。まずいよ、フレイムの回復も限度がある。しかもこんな重症のモカを回復するなんて、精神力がいつ尽きてもおかしくない。

 ──呪怨属性に弱点がある、だから……ひーちゃんなら、倒せるよ。モカはこう言おうとしたんだ。それ以上に、頭が冷えた。スワンがやられた。ヴィーナスが墜ちた。あんな派手な装飾がついて、独りじゃ飛べもしなかった堕天使()()は、私のいつも通りを壊そうとしてる。

 

「ガラクタ……別にガラクタでいいじゃん」

「なにかしら?」

「私たちは、ガラクタだってオタカラになるって信じて、音楽を続けてるんだ!」

 

 マスクが青い炎に消えていく。

 ──うん、そうだね。いつも通りを、永遠を奪うものはゼッタイに否定しなくちゃ。例え悪魔と罵られようとバケモノだと誹られようと、私は……コイツを倒す! 

 

「まだ立てる? スカーレット!」

「……当たり前!」

「さぁ……ショータイムだよ!」

「うん! やるよ、レディ!」

 

 蓮さん(ジョーカー)、あなたの勇気、少しだけ借ります! 杏さん(パンサー)のトモダチを想う力も、竜司さん(スカル)の豪胆さも、祐介さん(フォックス)の冷静さも、真さん(クイーン)の熱も……もちろん、モルガナの夢を見る力も! 先輩たちに教えてもらった全てで、私たちは! 

 

「あなたの心を、いだだきます!」

 

 まだまだ! 私とスカーレットで逆転しちゃうから! 

 その意志に応えるように、エリザベートが背後で赤黒い炎を手にまとわせているのを感じた。頭はクールに、心はホットに! ジョーカーのように時には大胆に! 

 私は、シャドウ友希那さんに向けて、エリザベートの炎を放った。

 

 

 




頑張れリーダー!
ボス名は作中には出しませんが名づけるなら「湊・ベリアル・友希那」でしょうか。
無価値の名を持つ堕天使にして悪魔、炎の王で、まぁまぁ皮肉と妄執をイメージできるキャラクターとしてピッタリですね!

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