ゆ る し て
どうも、僕だ!目覚めたぞ!ロマニ先生!
という訳で別のカルデアに来て2日目の朝であるが……目覚めたロマニ先生が露骨に嫌そうな顔をしているのが至極気にくわん。最優の藤丸立香ことこの僕が起き抜けの癒しとなっているはずなのに。
「その自尊心は尊敬に値するよ……夢だけど夢じゃなかったってセリフはいい事が起きたときに言いたかったなぁ」
そうか、それはそれとしてこのカルデアの状況把握ができた所で僕はここの工房化と主要サーヴァントの抱き込みを開始したいと考えている。仮にもカルデアの医療チームならメンタルコントロール力を悪用して案を出せ。
「仮にも医療に携わる者になんて事を!?というか本格的にカルデアをどうにかするつもりなんだね怖い!」
僕は不要な嘘はつかない。とりあえず工房化には一時間はかかるだろうが、優秀な僕は目覚めてからすでに取り掛かっていたため出来上がった物がこちらになる。周りをよく見るがいい。
「え?って何これ!?僕の知らないうちに倉庫がめちゃくちゃ広くなってる!?」
空間の拡張だ。シャドウボーダーにも使われているだろう?……あー、いや忘れてくれ。
ロマニ先生と来ればあとはダヴィンチだが、使い魔による探索で捕捉できなかったな。情報を寄越せ。
「高圧的だな本当に特殊な目の持ち主にいい思い出が無いよ本当に、ああマシュと藤丸君がいればなぁ……」
マ、マシュキリエライトの名前をだすな!!
「えぇ!?あの清楚と天然の権化のようなマシュになんのトラウマが!?」
あ!?!?マシュキリエライトが清楚?天然だぁ!?あの女は出会うや否や僕に「なんか、臭いですね。傲慢なクズの臭ーい匂いがします。もしかして、先輩の体臭ですか?ありえません。認めません。早く消臭してください。いえ、それでは駄目ですね。人理修復を遂げたらすぐに無に帰ってください」と豚を見るような目で……クソっ!仮にもAチームの一員だった僕に対してあの女ぁ!
「そっちのマシュ凶悪すぎる!?ってAチームだったの君?でもそうか。ここを工房化する時の手際といい使い魔の隠匿技術といい並の魔術師じゃない事はわかっていたし、不思議ではないか」
不思議では無いではなく当たり前だ。僕ほどの男が望まれない組織は無いんだからね。優秀な僕だからこそあの日爆発に飲まれる事なく生き延びたというわけさ。
「それこそ、レフ・ライノールなら優秀な者を優先して殺そうとするはずだ。よく逃げ切ったね」
ああ、オルガマリーがセリフを噛んだ時に煽り倒してやってな。あの節穴悪魔には止められたが癇癪を起こしたオルガマリーに見事追い出されることに成功したって訳だ。さすが僕。周囲からの僕への評価を鑑みたスマートな作戦だ。
「え、えげつない……」
ほざけ。生きるために手段など選ぶものか。いや、主義に反する事は死んでもしないがな!
「所でレオナルドの事だけど、彼女は確かだいぶ前から自分の作業室に閉じこもってしまった筈だ。強固な防壁があったから使い魔が侵入できなかったんじゃないかな」
む、そうか。ならば僕らが出向くしか無いな
「え、今僕らって言った?」
当たり前だ。万が一、億が一ここがバレたとして誰がお前を守るのだ?まさか僕の作った工房の中でぬくぬくとニート出来るとでも思っているのか?わかったらこの礼装をつけるがいい。
「検査するまでもなくとんでもない一品だ。これも君が作ったのか」
僕の優秀さに感涙を流すのは構わないが、さっさと動くぞ。近頃ここの糞マスターの奴はおたのしみにふけっているようだが、いつ気変りするか知れん。
ロマニ先生の奴、工房から出るまでずっとふてくされていた癖に出たと思ったらいきなりハイテンションになった。……長い間暗い地下倉庫に閉じ込められていた事で想像より参っていたようだ。壊れる前に発散させておくか
サーヴァントを一箇所に集めて自分の世話をさせるとは馬鹿な奴だ。いいなりになっているサーヴァントは何故あの糞野郎に忠誠を抱いているのかすらわかるまい。そういう魔眼とはいえ気の毒になるな。
「君に相手を気の毒に思う気持ちが残っているなんて……!」
いい気になるなよロマニ・アーキマン。ぶっ殺すぞ。
「理屈っぽい君がそんなに感情的になる程か!?」
いいから行くぞ。ダヴィンチの頭脳はカルデア攻略において必要不可欠だ。そ、それに……お前の隣にダヴィンチがいる光景には個人的な思い入れがあってな……
「それに?」
黙れへたれ医者!カルデアの黄金比の話だ!これ以上の追求は許さん!!
「すっごく理不尽!?何言ったのか気になるじゃないか!」
そういう風にネチネチしつこいから扱いが悪くなっていくのだ。あほー。
「罵倒すら雑になって行く……!?」
もうそろそろ目的地だな。細かい場所はお前がいるから探す必要も無い。やはり連れてきたのは正解だな。さっすが僕!
「流されたし……うん。もうレオナルドの作業室は目と鼻の先さ!管制室には一部職員が常駐している事を除けば大した障害もないだろう」
カルデア職員が敵対しているのか?人望が無さすぎるぞロマニ先生……あ、コミュニケーション能力が欠如した先生には無理、か。
「酷い!気にしてるのに!そんな的確に射抜かなくてもいいだろ!?皆んな彼に支配されているんだ。サーヴァントという力を持った彼に逆らおうとはしないよ……」
……まずい。誰かくるぞ。話の途中だが(恐らく)敵対反応だ!!
「それ僕のセリフゥゥゥ!!!」
「そ、そこにいるのはロマニ医師……なのか?隣にいるのは一体誰だ?」
あ?お前……確かカルパッチョ、だったか?
「ムニエルだ!なんだお前!?普通に侵入者じゃないか!」
黙れシュリンプ。焼いて食うぞ。
「こいつっ!聞いた上で間違えやがった!!ロマニ医師!?なんでこんな奴と居るんだ?心配させやがって!」
「し、心配?職員は全員鳥奪君の支配下にあるとばっかり……良心はまだ残っていたんだなぁ……」
馬鹿め、個人としては優しい奴だったとしても集団になれば個人の意思などすぐさま消え去る。昏倒させるぞ。
「ま、まま待って!?物騒すぎる!降伏する!降伏しまーす!そのバチバチしたのやめて!」
「君は無抵抗の男を一方的に叩き伏せるような奴ではない筈だよ?現在の事情を知る人を確保するのは重要な事だよ?やめようよ!ね?ね!?」
ちぃ!運が良かったなロブスター!
「だーかーらー!それやめろよ!?」
というかお前らうるさいぞ。ここが敵地だと忘れるんじゃない!目的を果たすぞ。
「あ、そうだった」
「目的ってなんです?自分にも教えてくださいよ」
ダヴィンチの回収だ。お前らの元仲間だろう?情があるなら口外するなよ?
「あー!もう!わかったから。これ見よがしに攻撃魔術をチラつかせるな!」
よし。ここだな?ロマニ先生。
「うん。ここであってるはずだ」
よし。防壁も確認した。このレベルの防壁を築けるのはダヴィンチくらいのものだろう。破壊するぞ。
「は、破壊ぃ!?」
かけられた術式だけな。物理的破壊はできない事はないが、音がデカすぎる。術式破壊だけならロマニ先生と僕の礼装があれば壊せるからな。そら、壊したぞ。
ダヴィンチ!確保!!!
「レオナルド!本当にごめん!」
「ちょ、ちょっと!?どうして入ってこれるのさ!?って離せ!おい!ってロマニ!!無事だったのかあああああああ!!!!!」
駆け抜けろ!ロマニ先生は海老フライを持って走れ!
「ムーニーエールー!!!!そもそもムニエルと海老は関係ないだろぉぉぉぉぉぉ!?!?!?」
「ムニエル君。失礼ッ!!」
この日僕達は、一陣の風になった………
ドゥルルル!!!ドゥルルル!!!
もうっ!もう良いよぉ!やめようよ!
うるさい!いや、ドゥルさい!俺はやり遂げるんドゥルルル!!!
やめてよぅ!怖いよぅ!
すまない。俺は、俺はぁぁぁ!!!ドゥルルルドゥルルルドゥルルルドゥルルル!!!!!!
世界も今日は回るルルルル!!!ドゥルルル!!!