素直になれない私のロマンス   作:huuuuuuum

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好きよ、好き、あなたの事、大好き。

葉山と折本、あと中……なんとかさんと前に来たことのあるサイゼリアに、俺とあと二人はいる。

 

「戸塚、材木座、来てくれてありがとな」

 

今日は土曜日。小町とのあの涙ながらの兄妹のお話を終えたその翌日になる。

そして今目の前にいるのは、あの時メールをして来てもらった、俺が今一番頼ることのできる二人。

 

目の前の席に座る、左から戸塚彩加。材木座義輝。

 

「ううん。嬉しいよ、八幡が僕たちのことを頼ってくれて。」

 

可愛い。もうあいつじゃなくて戸塚ルートでもいいんじゃね? って血迷うやつもいるかもしれないほどのこの可愛さ。いや……マジでどうして男なんだよ、戸塚。

 

「フッフッフ、我も長い間この瞬間を待ちわびていたさ……大船に乗ったつもりでいるがいい盟友よ!」

 

あ、こいつに関しては特にコメントないです。

 

その会話から直ぐに運ばれて来た◯ラノ風ドリアに舌鼓を打ちながら、俺たち三人はいつもよりは真面目に、ただ凝り固まったような様子ではなく、体の中から溢れ出るやる気に満ちた、何か大きな事を実行する前の心地よい高揚感と緊張感の中にいた。

 

「八幡、凄いね。ちゃんと一人に決めれたの、凄いと思う。」

 

「それだけではない。それでいて選択しなかったその周りすら離さぬなど……全く豪胆極まれり! 流石我が盟友であるな。」

 

「……流石に、傲慢だよな」

 

一度決心した癖に、弱気になってしまいながら言った俺のことを見て材木座は突然笑い出した。

ただその笑いは人のことを嘲るようなものではなく。俺の感じているモヤモヤとしたものを吹き飛ばしてくれるような、そんな性質を持った笑い声。

やつはひとしきり笑った後、俺の目をまたしっかりと見て、語りかけてきた。

 

 

「なあ八幡よ、それでもお前が信じた道だ。賭けてみるに値すると思ったからその傲慢な事とやらをする気になったのだろう? だったらやるのだ八幡。八幡のやったことによって受けるかもしれない痛みなら、我らがともに背負ってやるわ。我も戸塚殿も、それを望んでいた。ずっと、八幡に背中を預けられることを、待ち望んでいたのだ。だから八幡が我ら二人に文を寄越してきた時は、あまりの嬉しさに血が高ぶったのだぞっ! 」

 

 

「……」

 

こいつ……普段マジでうざったいくせに……材木座のくせに、中二病のくせに、デブのくせに、鼻息うるさいくせに……クソっ。……普通にかっこいいって思っちまったじゃねえかよ……。

 

 

「そうだよ。八幡。八幡にはいつも僕たちがついてる。例えみんなが八幡から離れていっても、僕たちは最後まで八幡の隣にいる。八幡のいいところも悪いところも含めて、僕たちは八幡の事が大事だから。力になりたいから。……それに、彼女たちも、ちゃんと誠実に話せば分かってくれるよ。……だから、八幡、自分のやりたい事、やりな? 僕たちは、どんな結果になっても八幡の思いを一緒に背負うから」

 

 

二人とも、俺の背中を押すように熱のこもった、それでいて心強い言葉をくれた。

 

あれ? なんか俺、恵まれすぎじゃね?

 

今まではこんなのなかった。こんな風に俺の事を見て、こうやって一緒に悩んで、バカやったり、楽しく話したり、一緒に時間を過ごしてくれるやつなんていなかった。こんなに熱い感情を共有してくれるやつなんていなかった。熱い想いを共に作れるやつなんていなかった。男の友情なんて、そんなもの信じていなかった。

 

いや、知らなかったんだよ。そんなもの。

 

昔、親父がこんなことを言っていたことがある。

 

『八幡、人間が本当に人との繋がりを感じた時、一体何が起こるか想像出来るか? 』

 

言われた時は何も分からなかった。分かろうともしなかった。想像なんてできるわけがなかった。考えようとだなんて全く思えなかったし、なんなら今の今まで完全にこの出来事すら忘れてしまっていた。

 

『震えるんだよ。魂が喜ぶんだ。それが自分で分かるんだよ。人と分かり合ったり、通じ合ったりすることなんて本当に珍しいことだ。俺は八幡の3倍近くは生きているが、数えるほどしかそんな瞬間はない。だが、確かにある。八幡、世界は広い、そんな瞬間は絶対にお前にだってくる。』

 

 

あのクソ親父……魂が喜ぶとかどこの材木座だよ……ああ、イタイし、ほんとわけわかんねーし……正直今でもとても頭で理解なんてできそうにない。

 

……だが、熱くて、強く、そして心強い……俺は今確かに、そんな感情と共に、この体が思わず身震いしているのを感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ふと気がつくと、俺の事をじっと見ていた戸塚と材木座は何故か一旦目を丸くして、なんだか俺の顔を見て和やかに笑い始める。

 

 

 

……なんだよ、そんなに俺の目が腐ってるのが面白いのかよ……ああ、クソっ、なんでだよ。こんなこと絶対しないって決めてたのに、なんでこんなことしちまうんだよ俺。

 

 

うるせーよ材木座……別に泣いてなんかねえよっ……クソがっ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時を見計らったようなタイミングで、俺の携帯にこんなメールが送られてきた。

 

 

 

『雪ノ下雪乃です。

 

比企谷君、お久しぶり。いきなりでごめんなさい。アドレスは姉さんに教えてもらいました。

 

 

いきなり本題になるのだけれど、これから、私の家に来てくれないかしら?

前にあんなことがあって、我儘を言っているのは分かっています。

でも、それでもあなたに聞いてほしいことがあるの。

あなたと、真正面から話したい事があるの。

 

だから、お願い。

 

返事、待っています。』

 

 

 

そのメールを三人で見る。

書かれているものを読み終わった俺が目の前の二人を見ると、もう既に二人は俺の目を見ていた。

二人は、これから俺が何をするのかもう分かっているのだろう。戦いに赴く者を送るような、高揚と、熱気と、信頼を込めた目で、二人は俺を見つめていた。

 

 

 

「八幡」

 

戸塚、サンキューな。いつも俺の事を気にかけてくれるお前のおかげで、俺はこうして道を外さずに決意を固める事ができた。

 

「八幡っ! 」

 

材木座。一応お前の心配にも感謝してんだぜ、まあ、あれだ。今度、体育のペア組んでやってもいい。

 

 

 

彼らの声を聞いた後、ゆっくりと俺はその場に立ち上がり、戸塚と材木座から背を向ける。

そうして、最後の踏ん切りをつけるために、二人にある事を頼んだ。

 

 

 

 

 

「戸塚、材木座。頼む。……俺の背中を、思いっきり叩いてくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人が息を吸ったのが聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『行ってこい! 八幡っ! 』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

走りながら、俺は今背中に感じているこの痛みと、この思いを、一生忘れることはないと確信した。

 

 

 

 

 

 

 

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「久しぶりね、比企谷君」

 

あれから、戸塚と材木座に背中を押されて走って辿り着いた場所。

つい何日か前に来たばかり、だが俺にとってはその一番直近の記憶がとても悪いものであるために、今も確かに俺は緊張しているのを感じる。そんな場所。

すると、そんないつまでたっても何も言わないまま突っ立っていて、変な顔をしてるであろう俺を珍しく心配したのか、久しぶりに会うウチの部長様は、だが初めて会った時からの普段通りの美しい黒髪と、最近よく見るようになった優しい笑顔で、俺に告げた。

 

「比企谷君? どうしたのかしら ……入って? あなたに、お話したい事があるの 」

 

ああ、俺も、お前に俺の覚悟を伝えるためにここに来たんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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俺は今、雪ノ下家の中にいる。それだけならこの期に及んで特に特筆すべきことはないだろう。

だが、明らかにおかしいと思うのは、俺の今の体勢。

 

 

雪ノ下の部屋に案内されてから、仰向けに押し倒された。

 

 

そんな訳で今の仰向けに倒れている俺の上には、柔らかくて、想像したよりも小さくて、暖かくて、そんな俺にとって特別な人がいた。

 

その綺麗な黒髪から香る匂いが麻薬のように俺の脳にじわじわと広がる感覚があって、でもやはりいきなりのこんな状況に訳がわからなくて、もっと言うと何故彼女がこんな事をしているのかについての疑問が全く拭えずに戸惑いを隠せない俺がいる。

しばらくして、そんな俺の顔を見て笑って、ゆっくりと彼女、雪ノ下雪乃は囁いた。

 

 

「言っておくけれど、私、今は酔ってないわよ? 当然お酒にも……前とは違うのは、あなたといるこの空気にも」

 

「……前ってことは……お前、あの時のこと覚えてるのか? ……じゃああれ、酒に酔ってた訳じゃなかったっつーことか? 」

 

「あの時の私も、今の私だって、お酒臭くないでしょう? それに私の家系はお酒には逆に強い方よ」

 

至近距離で話しているせいか、お互いに吐く息がお互いの顔に当たるから、雪ノ下の言うことにはなんだか説得力があって……確かに少なくとも今は酒になんて酔ってなんていないみたいだ。

 

「じゃあ、どうしていきなりこんなことしてんだ? 」

 

「嫌だった? 」

 

「まさか」

 

「フフっ……驚いた、即答なのね。それにあなたがそんなに素直だなんて、明日は大雪かしら? 」

 

「……性格自体は基本的には変わるつもりはないけどな……それでも、まずお前には、この場では捻くれないで、素直にお前に向き合うことに決めたんだ。……俺は雪ノ下雪乃に対しては、正直でありたい。」

 

俺を押し倒しているから、そのせいで彼女の顔は俺の胸の上にあるのだが、お陰でさっきまで余裕の笑顔で俺を見つめていたその端正で色白な彼女の顔が、一気に赤く染められていくのを目と鼻の先で目撃する事ができた。

 

そんな様子の雪ノ下雪乃は、目線を斜め下に向けて、先程よりも幾らか小さな声で囁く。

 

 

「……まったく、もう……卑怯よ、どうしてしまったの? いきなり、目の前でそんなことを言うだなんて……」

 

「悪いな。でも、言いたかった。お前にだけは、そうでありたかったんだよ。……なあ、雪ノ下、いきなりで悪いんだが、俺の話を聞いてくれないか? 」

 

 

 

相変わらず赤く染めながら、少し下向きにしていた顔を俺の方に向けた雪ノ下は、俺のさっきの発言内容に驚いてまだあまり余裕がないのか、これから俺が言うことに全く予想がついてないように見えた。

 

まあ、こう感じる理由っていうのもただの俺の勘なんだが、、、多分、この勘は正しい。何故だか、断言出来るほどに自信が持てる。

 

 

 

……腹をくくれよ、俺。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「好きだ。雪ノ下。……雪ノ下雪乃のことが、俺は好きだ。これから雪ノ下と一緒に、楽しい事も、辛い事も、面倒くさい事も……一緒に、乗り越えていきたい。……俺のパートナーになってくれないか? ……俺と、一緒に戦ってくれないか? 俺に、背中を預けてくれないか? 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪ノ下の顔が驚きに染まっている。何秒ほど経過しただろうか。

 

ただ、俺の一世一代の告白がやっと頭で理解できたのか、雪ノ下の目からは雫が溢れて、その瞳の奥には、喜びの色が見えた。

 

 

 

「……ズルいわ。比企谷君のくせに、私が言いたい事を言う前に……しかもやろうとしていたことを先にやってくるだなんて……ズルいじゃない」

 

 

 

 

そう言いながら、雪ノ下は両手でポカポカと、弱々しく俺の胸を叩く。さらに泣きながら、でも頬の筋肉は確かに彼女の顔に笑顔を作って……そして俺との顔の距離を詰めてきた。

 

後少しだけ距離を縮めればお互いの距離は0になるという所で雪ノ下は止まって、ニッコリと頬を緩ませて言った。

 

 

 

 

 

「比企谷君。私も、あなたのことが大好き……だから……これから私の背中、お願いね? 」

 

 

 

 

 

 

その言葉を聞き終えてから直ぐ、俺たちは今度こそは自分達の意思で、お互いの唇を合わせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

余談だがこの時、俺も、俺の上にいる雪ノ下からも確かに、体が身震いしているのを感じる事ができた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「それにしても、あなた、あれただのプロポーズよ? 自覚あるのかしら? 」

 

「……今になって段々現実に戻ってきたところだ。あんまりそこを突っつかないでくれ、どうせ今日は過去1の羞恥で眠れないのは確定してる。」

 

 

あれから少し経って、私と比企谷君は背中合わせで座っている。

だって、私も、彼も、今はとてもじゃないけれどお互いの顔なんて見れないから。

それに……私たちはもう、背中を預けられる関係だから……それを体現しているの。

 

 

「全く、私、これでもあなたの事をもっと驚かせるつもりでいたのだけれど……逆になってしまったわね。私のやりたかったこと、先にやられてしまったわ……こんなに驚かされるだなんて、露ほども思わなかった。」

 

本当よ。予定なら全ての私の思いを伝えた後、狼狽えた彼に選択を迫る気で……それから、比企谷君に選ばれない覚悟もしていたから……とても緊張していたというのは今となってはもういい思い出になってしまった。ほんのついさっきの話なのにね……。

 

「……自分の部屋のベッドまで無理矢理引きずってきた上にいきなり押し倒してきたやつがよく言うな」

 

「嫌だった? 」

 

「まさか」

 

「フフっ なら、いいでしょう? だって、あなたは今、幸せじゃあないの? 」

 

「そんなの幸せに決まってるだろ。幸せすぎて実は夢オチだったとか、明日の朝生きてるか不安になるまである。」

 

「なら、許してくれる? 」

 

「……別に、最初から嫌な気はしてないからな、許すも許さないもねーよ。」

 

フフフっ……比企谷君と話すのって、どうしてこんなに楽しいのかしら……。たった一週間近く会わなかっただけなのに……とても、安心する。

 

 

 

そんなふうに安心していると、ふと私の脳裏に、お団子頭の親友と、初めて出来た可愛い後輩、それだけじゃない。たくさんの人たちの顔が浮かんできた。

 

 

そうだ、まだ話さなければならない事がある。これからの私たちの話。これから、私がどうしたいかの話。

比企谷君がどう思っているかは分からないけれど、多分、あなたも私と同じ事を思ってくれていると信じている。

理由なんてないわ。ただの勘よ。だから彼も私の想いに同意してくれるかの確証なんてないけれど、でも、この勘は恐らく間違ってない。

 

 

「ねえ、比企谷君」

 

「……どうした? 」

 

「私は、全部欲しいの。あなただけじゃない、由比ヶ浜さんも、一色さんも、あの空間に集まる全てが……私は手放したくない。協力、してほしいのだけれど、あなたはどう思う? 私のこの我儘に」

 

 

比企谷君の手が私の手を握るのが分かった。暖かい、それでいて逞しい手。彼から逞しさだなんて感じる事が来るとは思わなかったから正直驚いたけれど……すごく、安心して、この事を口に出す前から感じていた恐怖や緊張もなくなってしまった。何故だか、その時点で彼の答えも、予想をすることもできた。

 

 

「雪ノ下」

 

「何? 」

 

「簡単な道じゃないが……俺と、戦ってくれるか? あいつらを繋ぎとめる戦いに、付き合ってくれるか? 」

 

全く、なんで疑問系なのよ。あなたもどうせ私が何を言うかなんて分かってるくせに。

そう思いながら、繋がれた手に私からも力を入れる。

 

「当たり前じゃない。一緒に、私たちの場所を守りましょう。」

 

 

これから私たちがすることは、彼女たちからしたら到底受け入れられないかもしれない。かなりの時間を要するかもしれない。私たちの願いだなんて叶わないかもしれない。……多分、大好きな人たちを傷つけてしまうかもしれない。

でも、求めずにはいられない。傲慢でも、酷い我儘だと言われても、それでも、それでも、あの場所が、私も、比企谷君も、大好きだから……。

 

だから、そんな厳しい戦いに赴く前に、充電だけしなくちゃね。

 

「比企谷君っ 」

 

「何だ? ゆきのしっ……」

 

 

 

私は彼の真正面から抱きついて、その唇に自分のそれを押し当てる。

 

 

 

たっぷり甘いひとときを過ごした後、私はありったけの想いを比企谷君にぶつけた。

 

 

 

 

 

「好きよ、好き、あなたのこと、大好き」

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