いつもとなりの友希那さん   作:葛葉一壱

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青薔薇芽吹くよ友希那さん

 その事件は、ようやく湊のバンドメンバー探しが落ち着いたある日に起こった。

 

 

 

「最近思ったんですけどー」

 

「ん~? どしたーあこ」

 

 

 

 相も変わらずバンドメンバーではないけれど練習にみっちりしっかりとつき合わされ、練習後の片付けを行っていた際のこと。

 あこがマイクスタンドを収納しようとしていた俺と湊のところへてこてこと歩いてきた。

 メンバー全員が俺を含めあこの奔放さにある程度慣れてきた頃であったので、真面目な話ではないと判断した段階で片付けを続行したのだが……。

 それが、いけなかった。

 

 マイクとスタンドを分離させ、湊にマイク部分をアタッシュケースへと入れるよう促してからよっこらせとスタンドを持ち上げて所定の位置に持っていこうとした、その瞬間。

 

 

「友希那さんと紘汰さん、いつもくっついてて仲良いですよね! あことりんりんみたいです!!」

 

「フゥワッ!?!?」

 

「~~~~っ!?」

 

「わお☆」

 

「……はぁ」

 

 

 珍妙な声を挙げて慌ててスタンドを取りこぼしかける俺、そして右側から聞こえる声にならない声とアタッシュケースを盛大に床へと落とした豪快な音。

 リサさんは一瞬で猫のように目と口を変え、紗夜さんはまた下らないことを話し始めたわこ奴らとため息を吐く。

 

 な、なんていう爆弾を無自覚で投下しやがるんだこの娘は……っていうかりんりんって誰だ……!

 

 純粋無垢とはかくも恐ろしい。

 戦慄し、しかし即座に切り替える。今はこの場を切り抜けねばならない。

 リサさんは論外。紗夜さんは恐らく一切この手の話題に乗ってこない。

 湊は――――駄目だあからさまに動揺して息を整えている。援護は不可能。

 

 

(つ、詰んだか……!!)

 

 

 何気ない一言、それだけでバンド練後の和やかな雰囲気は跡形もなく消し飛んでいった。

 宇田川あこ、恐ろしい娘……!!

 

 ともかく、ここはなんとしても無傷で潜り抜けて――――!

 

 

「い、いやぁあ? そそんなことないんじゃねぇぁ?」

 

 

 思いっきり声裏返ったぁ……。

 失態だ、リサさんの顔がニヤニヤと変化してきやがる!

 俺は撃沈し膝から崩れ落ちる。となれば後は頼れるのは湊、お前だけだぞ……。

 

 チラ。と再び縋るように湊を見れば、そこにはようやく立ち直ってくれたのかいつも通りの氷の表情でケースを棚へと戻してこちらにズンズンと向かってくる姿。

 まるで初めから何もなかったかのように俺たちの前へと躍り出た湊は、ファサ。と髪の毛を靡かせてから目を閉じ、言葉を紡ごうと口を動かす。

 

「…………っ」

 

 

 上手い具合に凌げるか……? 

 ぐ、と息を飲む。緊張の一瞬だった。いや、なんでこんなとこで緊張の糸張り詰めてんだよと言われたらそれはもうまったくもって仰る通りですとしか言いようがないが。

 ともかく、見せてやれ孤高の歌姫、お前の絶対零度の言葉で、この場を上手く締めるんだ。

 

 だってそうだろう? 俺とお前は音楽だけに全てを賭けてきたんだ。こんな中学生男子みたいな揶揄いに、負けていい筈がない!

 

 さあ言ってやれ。「そんな下らないこと言ってる暇あったら練習しろ」位の刃を浴びせてやるのだ。

 いけ湊っ……! せっ……! せっ……!

 

 祈る俺を前にその冷淡な表情はそのままで、ついに湊がこの戦場へと切り込んだ。

 

 

そうかしら。私はそうは……思わないけれど?

 

 

「……」

 

「え? 友希那さん、今なんて言いました?」

 

「ん~~~っ友っ希那~~~!!」

 

「自主練があるので、失礼します」

 

 

 ――――いや声ちっさ。

 

 ここにいる全員が恐らく思ったであろう。

 いつものバンド練ではスタジオをビリビリ言わせる位の声量を誇る彼女が、蚊が飛ぶような細い声でつぶやくそれに、俺は膝から崩れ落ちリサさんは何かが振りきれたのかきゃあきゃあとはしゃぐながら湊へと向かっていく。

 

 ギター片手にそそくさと退散していく紗夜さん並みの強心臓が欲しい。

 そう思いながら俺はこのあとやってくるであろうリサさんの質問攻めに対して、きちんと躱せる回答を準備しつつスタンドを元あった位置へと戻しに行くのであった。

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

「あこ。金輪際ああいった冗談は禁句よ。いいわね?」

 

「うぇっ。は、はいぃ……すみません」

 

「まあまあいいじゃん友希那。アタシは久し振りに可愛い友希那が見れてよかったよ~?」

 

「リサ、やめて……あれはその、そういうのではないから」

 

 

 ライブハウスから出て、自宅へと帰る道。

 リサが加入してからは、いつもとなりにいた彼はあまり付き添いには来なくなった。

 練習に熱が入ってすっかり夜が更けてしまったことがあれば危ないからと途中まで付いていく位で、最近はもっぱらリサと、道中の商店街に家があるあこ。そしてそこに稀に紗夜が入ってくる。

 

 私はまだ火照りが取れない頬をマスクで隠しながら、とりあえず今後ああいった事故が起きないように注意を促しておいた。

 またあんな冗談がそれこそ練習中に飛び出してきたのならたまったものではない。

 1つ疑問に思うことがあるとするのなら……何故、あそこまで狼狽えてしまったのか。

 

 最近は、特に彼があこを連れて一週間近く開けた後帰ってきた時から、どこか体の調子がおかしいときがある。

 頂点を目指す。そのために全てを擲つ覚悟で挑む練習はいつもメンバー全員がピリピリと張り詰めているものの、休憩の合間にはリサとあこが今日のように話題を持ちかけてくることがあるのだ。

 紗夜は露骨に顔をしかめて嫌がるも、私個人としてはバンド練に支障がない休憩時間であれば常識の範疇で私を抜きに好きにしていいという方針だった。

 

 だが彼とは珍しく意見が会わなかった。

 メリハリがついていいし、なんなら私も紗夜も混ざったほうがいいときた。

 

 何故か問うてもはぐらかすばかりで、理由を聞きたい私は結果的に彼の傍でヒントを聞き出そうと躍起になった正にその時に、今日のこれだ。

 

 だからこそあこの発言に心当たりがあって慌てたのは認めるが、今思えばあそこまで過剰反応する道理はないだろう。

 そもそもくっついていたからなんだというのだ。私だって親しい友人と話すくらいはする。

 

 ……やはり、体調が思わしくないのだろうか。せっかくバンドが本格的に始まったというのに、私の体調管理不足で時間を無駄にするのはよろしくない。

 

 

 

「リサ、あこ。私は薬局に寄るから、ここで別れましょう」

 

「へ? 薬局……? 別についていくよ~?」

 

「友希那さん風邪ですか!? そういえばマスクしてるし……あこもよかったら付き添います!」

 

「もし本当に風邪だったら移してしまうかもしれないし、それでは練習に支障が出る。気持ちだけ受け取っておくわ」

 

 

 それじゃあ。と言い残して、帰り道から少し逸れて近くの薬局へ。

 ぴと。と頬に手を当ててみれば、やはり少し熱い。これは明日次第では本格的に療養しなければと決めて、足早に道を進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 そそくさと立ち去っていく友希那の後ろ姿を見て、今井リサはふむと顎に手を添える。

 朝の登校中に稀に話題に上るくらいだった件の彼と直接関わるようになってきたのはもう一週間近く前のこと。

 最初こそあの友希那がボーイフレンドを作ったのかと目玉が飛び出るくらい驚いてしまったが、知れば知るほどあの二人の関係性は謎に満ちている。

 一言で表せない関係。簡単にいってしまえば……。

 

「……ん~。もしかしてあの二人……すっごい拗らせてる系?」

 

「こじらせぇ?」

 

「あぁ、ううん? あこは気にしなくていいんだよ~☆」

 

「そっか! じゃあリサ姉、あこもここらへんで! また明日~!」

 

「は~いまた明日~。ふぅ……う~ん、紘汰さんの方は意識してると思うんだけど、友希那は鈍感なところあるからなぁ」

 

 

 まあ、頼れるお姉さんの出番はまた今度ってことで!

 心の中でよし。と諸々含めた決意を抱いて、リサもまた帰路についたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「――――ってことがあって! すっごい毎日楽しいんだよ!」

 

『……そっか、それは……よかったね。あこちゃん』

 

 

 その日の夜。宇田川宅、あこの部屋にて。

 PCを前にヘッドセットを着けたあこは、その画面に映るゲームをプレイしつつ、マイクの先に居る1番の親友へと近況を報告していた。

 少したどたどしい喋りに少しの喜色を浮かばせて、ふふ。と時々笑いながらもあこの説明に聞き入っている。

 

 

「あ、今日も通しの動画録ったから、あとでりんりんにも送るねー?」

 

『ありがとう。あこちゃん、いつも楽しそうにドラム叩いてて……見てるこっちも、楽しくなるよ』

 

「えへへ~でっしょ~? 練習は大変だけど、あこだけのカッコいいドラムを絶対にマスターしてみせるんだ! あ~あ。りんりんも一緒にバンドできたらいいのに」

 

『え、あ……う、うん。そう、だね』

 

「まあでも! あこがバンドの楽しさを知ってもらうために毎日きちんと動画は送るからね! ふっふっふ……我が真なる力の宿りし二振りの……えと」

 

『ふふ……魔剣の鳴動に跪け?』

 

「そうそれ! ……あ、もうこんな時間かぁ。りんりん、そろそろログアウトしよっか」

 

 

 楽しい時間はあっという間に過ぎていくというもので、既に時刻は23時を回っている。

 通話越しの人物も時計を確認したのか了承の返事を返し、やがて通話を切って部屋にはあこ一人となる。

 

 

「……ん~っ。毎日が楽しいなぁっ」

 

 

 ボフッ。とベッドに倒れ込むように寝転がると、そのまま天井を見つめながらここ数日の想い出に浸る。

 あこにとっては激動の日々だ。毎日が新しいことの連続で、自分の目指すものに少しでも近づけているように今は思える。

 

 

「……あこだけのカッコいい。きっと、いつか」

 

 

 姉の背だけを追う者はいらないと言われた。

 それは所詮真似で、自分自身にとってのカッコいいは偽物だと。

 ……けれど、それが自分の源だから。

 叶えて見せる。このバンドで。

 

 ぼやける思考の中、ただそれだけを思い描いて、あこは眠りにつく。

 

 

「……やっぱり、りんりんも一緒にできたら、なぁ」

 

 

 そんな、本当に夢のような願いを口にして。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

「……っふぅ」

 

 

 ――――親友との日課のような通話を終わらせてから、少しした後。

 送られてきた動画を見ていたら、ふと視界にそれが映った。

 

 

「……やっぱり動画に合わせてピアノ弾くの、楽しい」

 

 

 最初はほんの少しの違和感だった。

 送られてきた動画を見ていると、たまに意図的に開けられたかのような音の薄い場所、空白を感じた。

 ただの気のせい。そう考えつつも私の手は、両親が私のために置いてくれたピアノへと向く。

 空白を埋めるように、自分の音を重ねていく。

 するとどうしたことだろう。ピタリと。それこそ欠けていた歯車がカチリとかみ合ったかのような高揚感が胸を満たした。

 

 

「けど、やっぱり――――」

 

 

 私は言いかけて、止める。

 最初に抱いた高揚感。しかし、今では……それすらも足りないと思っている自分がいる。

 らしくない。本当に……。

 

 

「私も、バンドに入りたい、なんて……」

 

 

 柄じゃないことは分かってる。なんでもハキハキと物を言う元気な親友とは対照的に、私の性格はひたすらに内向的だった。

 どこに行くにも、彼女がいなければ新しいところへ踏み出せない。

 今回も、やりたいと思うだけで一向に踏み出すことができないでいた。

 

 

『――――でね~? キーボードが足りなくて困ってるんだぁ。私達に教えてくれてる人も、キーボードがあって初めて完成する曲だ~って言っててさぁ』

 

 

 数日前に語られた時に、言うことができなかった。

 私が弾けるよ。と言いさえすれば、今こうして描く空想が現実になったかもしれないのに。

 

 

「……弾きたい」

 

 

 この動画に映る親友と、そのバンドの人たちと。

 動画に合わせるだけでこれだけ楽しいと感じるんだ。やっぱり私は、彼女たちと弾きたい。

 

 

「私も、前に……!」

 

 

 あこちゃんは、一度拒絶されても諦めなかったという。

 私はまだスタートラインを切ってすらいない。

 

 

「こんな時、あの人なら……お兄さんなら、また、言ってくれるのかな……?」

 

 

 幼い頃の記憶。

 もう何年も前のことだけど、私はしっかりと覚えてる。

 逃げ出してしまいそうになっていた時、ふらりと現れた年上の男の子が私に向かって言ってくれた、大切な言葉。

 

 

「諦めるのは、簡単……でも」

 

 

 これを逃したらもう私が変わる機会はない予感がする。だから、今だけは勇気を振り絞って――!

 

 

 

 

 

 

「ライブ。決まったな」

 

「ええ。決まったわね……けれど、まだキーボードがいない。私達の音楽を形にするためには、必要不可欠なのだけれど……」

 

「短期間で私達全員が揃うというのが奇跡だったということです。藤井さんの曲や私達で作った曲はキーボードありきですが、妥協してメンバーを入れる位なら……」

 

 

「ん。それなら打ち込みでいいわな。ここでせっかくそろった歯車がかみ合わなくなったらそれこそ大惨事だ。まあ一番は見つかってくれることだが」

 

「んー。でもアタシとしては、せっかく作った曲なんだからベストの状態で聴いて欲しいケドなぁ」

 

「……切り替えていくしかないわね。ひとまず現状をまとめましょう。紘汰、お願い」

 

「んじゃあとりあえず当面の目標はここで開催されるミニライブってことでいいか。スケジュール表更新しとくから後で個人個人で確認してくれ。湊、曲目の希望は?」

 

「……そうね、貴方のと私達のとでオリジナル2曲、後は――」

 

 

 時間は週末お昼に差し掛かってきた頃。

 CiRCLEのスタジオが今のところ開いていないということで、共同経営という形で出店しているカフェで湊たちバンドメンバーは会議を開いていた。

 

 ある日突然決まったミニライブ。CiRCLEのミニライブといえば、名前とは裏腹にメジャーのスカウトマンも集うと言われている。気合いが入るのも道理だった。

 

 まあ当然のようにスケジュール管理が俺になっているのはこの際置いておこう。

 紗夜さんは個人のスケジュールならともかく団体のスケジュール管理は経験が浅いと言っていたので、教えるついでに今は俺がアプリで見れる管理ツールを実際に使って教えている最中だ。

 

 それに加えてあらかじめ印刷した今まで湊が歌ってきたオリジナルからカバーまでを羅列したシートを机に適当に並べる。

 黙々と選んでいく湊の選曲に耳を傾けつつ、ちらりと腕時計に目をそらした。

 さて、そろそろ本日もう1つの本題がやってくる時間だが……。

 

 

「りんりん! こっちこっち!! お待たせしましたーっ!!」

 

「はぁ……あこ、ちゃ……早い……」

 

 

 噂をすればなんとやら。

 なんとキーボードを連れてきたのはあこであった。

 リサさんの交友の広さはそのコミュ力を直に味わったこともあって頼りにしていたのだが、まさかまさかのキーボード欲しいと言った数日後にあこの口から「あこの親友、ピアノ弾けますッ!」と言われた日にはひっくり返ったものだ。

 

 即座に課題用の曲を1本お渡しして、本日初顔合わせといった次第である。

 

 

 

「え、と……白金、燐子……です。よろしく、お願いします」

 

 

 ぺこり。と丁寧に挨拶され、ひとまず座って落ち着いてもらうことに。

 遠慮がちに座った姿はなんというか……小動物染みていた。

 

 

「へ~、この娘が燐子ちゃん? あこの友達っていうから、似たような元気っこだと思ったケド……」

 

「りんりんはねっ! あこをいつも助けてくれるんだ! あ。あとネトゲもすっごいんだよぉ!!」

 

「あ、あこちゃん……今は、その、音楽の話を……」

 

 

 おお。見事にオロオロされてらっしゃる。

 なんというか、意外だった。あこの交友関係もそうだが、とてもじゃないがバンドをやるような雰囲気ではない故に。

 

 ……ん? いや待て、白金?

 

 

「白金燐子……ピアノ……?」

 

「え、あ、はい。私が白金で……あっ!?」

 

 

 …………あっ。

 記憶の端に引っかかっていたものが呼び起こされていく。

 もう一度ようよく顔を見てみれば、すぐにでもそれを思い出した。出してしまった。

 

 

「お、お兄さ……んぐっ!?」

 

「あっはっはーいやあどうしたんだいりんりんとやら、口の横になんかついてたよぉ~?」

 

 

 何かいけないことを口走ろうとした口に高速でティッシュをあてがう。

 すまないな。お兄さんの痛いいたーい過去を、こんなところで曝け出させるわけにはいかないんだ。

 もごもごとしばらく困惑した様子を見せて、やがてこれは言ってはいけないことだと理解してくれたのか口を噤む白金さん。

 話を拗らせないで。と言外の意思を込められた溜息を紗夜さんに吐かれ、追加で貴方また何かしたのねいいから今は一旦黙ってなさいと言わんばかりの眼光で湊が俺をひと睨み。

 

 ……あ、はい。引っ込んでまーす……。

 

 

「……邪魔が入ったけれど、音楽の話をさせてちょうだい。燐子さん? 課題は弾けたのかしら」

 

「あ、友希那……さん。あの、私……ずっと、練習の動画で、その……たくさん」

 

「? 私はあなたがどれだけ弾けるのかが知りたいのだけれど」

 

「クラスは一緒だけれど、話すのは初めてね。白金さん……あなたは確か、コンクールの受賞歴があったはず。課題曲は問題なく弾けた……違うかしら」

 

 

 

 コンクール。その単語を聞いて、白金さんは俺にわずかに目線を合わせてきた。

 小さく横に振る俺。それだけでなんとなく察してくれたのか、再び紗夜さんに向き直った。

 

 

「コンクールは、小さいころの話で……でも、曲は沢山、弾いてきました……」

 

「そう。私たちは今後ライブに積極的に出ていく……あなたは、それを承知で私達と共に行きたい?」

 

「っ……らい、ぶ……。私、私は……」

 

「できないのであれば帰って。いくら弾けたところで、それを魅せることすらできないのであれば」

 

「――――”諦めるのは、簡単。でも”」

 

「ッ……」

 

 

 小さく呟く白金さんの言葉。それに、聞きおぼえがあった。

 声を挙げそうになって慌てて唇を噛む。昔の記憶が、また1つ掘り起こされたようで頭痛がした。

 それは、まだまだ青二才も青二才だった頃の俺が、身の程を知らずたった一人の少女に投げた言葉。

 

 

「”1曲弾くのは、もっと簡単……!” だから、私は……やりますっ!!」

 

「そう。なら期待しているわ……あこと同じ、1曲だけ。それでだめなら諦めてもらう」

 

「は、はい……頑張り、ます!」

 

「では行きましょう。そろそろ予約した時間です」

 

 

 湊を先頭として、それに白金さん、そして紗夜さんがCiRCLEへと入っていく。

 あとに残されたのは俺、リサさん。そして呆然としているあこ。

 

 

「……なーにボケっとしてんだよあこ。ほらセッションセッション」

 

「はっ!? りんりんのおっきな声、初めて聞いたからびっくりしちゃった。うん、あこ頑張るよーっ!」

 

「あはは。頑張るのはあこじゃなくて燐子さんでしょー?」

 

 

 ほらいったいったとあこの背中をリサさんと一緒に押しながら、おどおどとしていて、しかし強い意志を持って湊の背中を追う白金さんを見た時、俺は確信めいた思いを抱いた。

 もう何度も繰り返したことだ。このバンドのことになると唐突に発揮される直感。この人は絶対に湊とバンドを組む。という予知染みたもの。

 それに今回に限っては彼女ならば技術は何ら問題ないだろうということを、俺は知っているから。

 

 

 

 数十分後、CiRCLEから出てくる五人組の彼女たちが正式にバンドメンバーとしてスタートラインを切るのも、当然の未来であると言えただろう。

 

 

 不可能を可能にする湊友希那の名のもとに、今こうしてメンバーは揃う。

 青薔薇は、不可能に近かったその華は、ようやくその小さな芽を現実にしたのだ。

 

 

 

 




今日の紘汰さんメモ:燐子さんとは何やらお知り合い。


ガルパポストカード友希那さん可愛すぎたので衝動で書き切りました。
ようやく五人そろったのでそろそろバンスト軸の物語はじまるよー

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