禁忌呪いの陰陽師   作:ベザリウス家

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第2怪 怪異の専門家②

東京都調布市。愁が悪戯で狛犬に貼られていたお札を小便で剥がした、廃墟化した神社にて、愁、邦彦、菜祐実の三人はおどおどと怯えた様子で神社に足を踏み入れていた。その様子は以前悪戯目的で訪れた時のような粋がった様子は皆無だった。

 

愁「天邪鬼(あまのじゃく)さーん・・・お食事を持ってきました」

 

当たりを見渡しながら、愁が震えた声で天邪鬼などと呼び掛けながら、学校帰りに買ってきたコンビニのフランクフルトを取り出すと、ボロボロの神社の鳥居の奥の階段から姿を現したのは、全身真っ赤な肌で頭部から一本の角を生やした、成人男性並みの体格の鬼のような妖怪だった。

 

天邪鬼「待ちくたびれたぜ全く!あと5分経っても来なかったらこっちからテメェらまとめて引きずり出そうかと思ってたところだ!」

 

その妖怪、天邪鬼は不機嫌そうにそう喚き、愁が恐る恐る差し出したフランクフルトを受け取ると、黄色い眼光で三人を睨み付け、三人が一斉に悲鳴を上げそうになる寸前に再び罵声。

 

天邪鬼「テメェこりゃファミマのフランクフルトじゃねーか!俺はフランクフルトはサークルK派だっつったろうがボケ!」

 

邦彦「し、仕方ないんですよこれは・・・・・天邪鬼さんが封印されてた間にサークルKはなくなっちゃったんですから」

 

天邪鬼「マジかよ!それを先に言いやがれ!ったく、これだから餓鬼はよぉ~」

 

文句を垂れ続けながらも天邪鬼は受け取ったフランクフルトをバグバグと頬張り始めていた。

その図々しい振る舞いに二人の後ろにいた菜祐実は腹立たし気に小声で愚痴を漏らしてしまう。

 

菜祐実「気に食わないなら食うなってのっ!サークルKとか何時の時代の話だよって感じ……20年も封印されてたんなら、まずは今の世の中がどう変わったか勉強してから喋れっての!」

 

邦彦「シッ!聞こえちゃうだろ菜祐実!」

 

菜祐実の声量がやや大きくなりかけていたので邦彦が即座にそう制していた。

 

天邪鬼「オラガキ共!ボサッとしてねぇでこのゴミだらけの神社の掃除しやがれ!それとその辺に散らばった落ち葉も綺麗にしとけよ!」

 

そして三人は天邪鬼に言われるがまま、廃墟化し手の行き届いていない神社の清掃を命じられるのだった。

何故、このような事になっているのか、それは愁が悪戯で狛犬に貼られていたお札を聖水・・・ではなく放尿で剥がしてしまった翌日の学校帰り、何時ものように神社を通りかかった時だった。

いきなり野太い声に話しかけられ、何事かと背後を振り返った三人の前に天邪鬼は姿を現した。

完全に人間離れしたその姿に三人は唖然とし、腰を抜かしているのに対して天邪鬼はこう言い放った。『俺の封印を解いた、お前ら3人を子分にしてやる、遠慮はいらねぇ』などと図々しく勝手に上下関係を付けたのだった。

何とか気を落ち着かせた三人は、偉そうな物言いの天邪鬼に対して、『付き合ってられるか』『ばかな事を言うな』と言った感じにどうにか言い返したものの、直後に天邪鬼は、神社に転がっていた握り拳サイズの石を拾い上げると、なんとそれを目の前で力づくで握り砕いてしまったのだった。

そのあまりにも凄まじい握力に気圧された三人はそれ以来、度々天邪鬼に食事の用意、神社の清掃などの為に呼び出され、完全にパシリの如く扱われていたのだった。

 

菜祐実「そもそも愁のせいだからね!アンタが汚い聖水で狛犬に貼ってあったお札剥がしちゃうからこんなことになったんじゃない!」

 

いきなり現れた妖怪にこき使われ続けるこの状況に最も苛立っている菜祐実が悪戯の張本人である愁に対してそう毒づいていた。

 

愁「俺だけのせいにするなよ、お前らだって面白がってみてだけの癖にさ……」

 

気まずそうに落ち葉を拾いつつ、愁はそう抗議する。

 

邦彦「そんな風に言い合ってても仕方ないだろ、今朝例のSNSから返信があったんだ、5時30分になったら約束の場所に来てくれるって」

 

気まずい愁と菜祐実に対して邦彦がそう言いながら、この状況を打開するために頼ったとあるSNSの話を切り出していた。しかし菜祐実は訝しむように言う。

 

菜祐実「そのSNSって本当に当てにして良いわけ?相手のアカウント名は呪われ陰陽師とかでしょ?何が今時、陰陽師よ、アホっぽい」

 

邦彦「けど、実際にああして妖怪が目の前に現れたんだ。だとしたら妖怪や怪異の専門家って言われてる陰陽師が存在しててもおかしくはないんじゃないか?」

 

愁「どちらにせよ、俺等じゃどうしようもないんだから、その陰陽師ってのが頼りの綱か・・・」

 

天邪鬼「何さっきから無駄口叩いてんだガキ共!口動かしてねぇで手ぇ動かしやがれウスノロ共が!」

 

そして、5時まで神社の清掃をさせられて、取りあえず今日は解放となったのだが、帰り際に天邪鬼は三人に対してこう言い放った。

 

天邪鬼「明日も同じ時間に来やがれ、今度はマックでベーコンポテトパイを買ってこい」

 

それに対して三人は、マックのベーコンポテトパイはもう売ってないと説明すると、天邪鬼は癇癪を起し、『だったら他の店で似たようなのを買ってこい!』と再び理不尽に怒鳴り散らし、三人は逃げるように神社から退散したのだった。

そして、陰陽師と待ち合わせの場所のファミレスに間に合うように急いで走ったのだった。

 

 

※ ※ ※

 

※ ※

 

 

 

邦彦「もうすぐ、待ち合わせの時間だ」

 

菜祐実「アイツマジで頭来る!あのダサい角引っこ抜いてアイツの目ん玉に差し込んでやらないと気が済まないわ!」

 

ファミレスの外で地団太を踏みながら天邪鬼に対して不満を爆発させる菜祐実だった。

 

愁「いや、だからそれはこれから来る陰陽師に何とかしてもらうって話だったろ?」

 

菜祐実「だからその呪われ陰陽師ってのがそもそも胡散臭いって言ってんの!いっその事アタシらで何か対策立ててアイツを逆にパシリにしてやって―――」

 

隆聖「止めとけ、お前らが浅知恵絞って反抗したところで、力づくでねじ伏せられて終わりだからよ」

 

その声は、三人の近くに駐車されていた一台の古い車の中から発せられた。三人が同時にその声の方を振り向くと、車の運転席側のウインドウが空いており、運転席に座って気怠そうな表情でこちらを見ていたのは年若い青年、或いは少年だった。

 

愁「え?えっと・・・もしかしてあ、貴方が・・・・・」

 

隆聖「お前らに呼ばれてきた呪われ陰陽師の月宮隆聖(つきみやりゅうせい)だよ」

 

その人物は堂々と自分が陰陽師だとハッキリと言ってのけたのだったが、三人はその姿を見てある意味では、天邪鬼を初めて見た時と同等以上の衝撃を受けていた。

 

菜祐実「アンタ・・・・・本当に陰陽師なわけ?」

 

隆聖「だから言ったろうが、ほらこれが俺のSNSの裏アカだよ。お前らこれにメッセージ送って来たんだろうが」

 

そう言いながら隆聖は自分のスマホの画像を三人に見せつける、その画像は確かに愁たちとのやり取りが記されていた。

が、それにしても目の前の月宮隆聖は愁たちが想像していた陰陽師とは遥か程遠い姿だった。

その17~18歳くらいに見える歳若い姿もそうだが、服装や風貌もであり、茶髪にロン毛、チャックとファスナー付きの黒いパーカーの下に着込んでいる白のTシャツに書かれている文字は『働いたら負け』といった具合に、和を沸騰させる陰陽師とは何もかもイメージが違い過ぎる月宮隆聖に対して三人は何かの手違いで別の誰かが来てしまったのではないかと思いたくなるほどだった。

 

隆聖「揃いも揃って間抜け面してねぇで、取りあえず車乗れよ。中でゆっくりと話そうぜ」

 

愁「あ、失礼します・・・・・・」

 

愁が助手席に、そして後部座席に邦彦と菜祐実が座り込み、三人は天邪鬼に出くわしてしまった経緯を説明した。

隆聖は未成年が三人も乗っている社内であるにも拘らず無遠慮にタバコを吸いながら話を適当に聞いていた。そもそも、この陰陽師を名乗る青年が20歳(はたち)に達しているのかどうかも疑わしいものだが、話を円滑に進めるため三人は敢えてそれには触れる事は無かった。

 

隆聖「成程ね、20年くらい前に天邪鬼が鬼道衆(きどうしゅ)に封印されたって話は聞いた事あったけど、まさか調布の神社の狛犬だったとはな・・・・・んでもってその神社は持ち主が不在の状態で荒れに荒れて、オメェら見てーな悪ガキの遊び場になって悪戯の果てに封印を解いちまったわけか」

 

邦彦「まあ・・・そんな所ですね」

 

菜祐実「言っておくけど、悪戯したのはこの愁だからね!コイツが小便かけて狛犬のお札剥がしちゃったのよ!」

 

愁「あ、そこは伏せとけよ菜祐実!」

 

当初の説明では愁が封印のお札を剥がしてしまったやり方は伏せていたのだったが、菜祐実は苛立ちからその事を隆聖の前で暴露していた。

 

隆聖「ま、どんな経緯で天邪鬼の封印を解いちまったかは俺は大して気にしねぇし、お前らを説教しようなんて思っちゃいねぇよ。俺は天邪鬼を倒せば良いだけだからな、さてと」

 

隆聖は三人の顔を交互に見渡すと、俗物な笑みを浮かべて話を切り出す。

 

隆聖「お前ら、報酬はいくら位を用意してるんだ?」

 

愁「ほ、報酬っすか?」

 

菜祐実「アンタ、陰陽師の癖に妖怪退治にお金取るの!?」

 

唐突に金の話を切り出されて戸惑う愁たちに対して隆聖は当然と言わんばかりに言う。

 

隆聖「そりゃ取るさ、何せ妖怪退治を含めた怪異の対策を生業にしてる陰陽師だからな。金取らねぇと廃業になっちまう、まあ俺も中学生共からそんな大した金取れるなんて期待してねぇからよ。取りあえず3人で用意できる予算を出して見ろよ」

 

菜祐実「コイツ……アタシらの足許踏んで~」

 

邦彦「取りあえず、財布出そうぜ皆!所持金チェック!」

 

愁「まあ、あのままアイツにこき使われたり、買い出しに行かされるくらいなら・・・・」

 

三人はそれぞれ財布に入っている所持金をチェックする。愁が所持金2100円、邦彦が4500円、菜祐実が3600円・・・合計して10300円が三人がスグに用意できる最大限の金額と言う事になった。

 

邦彦「と言う訳で、10300円で天邪鬼を退治してもらえませんでしょうかねぇ・・・?」

 

邦彦が苦笑しながら隆聖に対してそう窺うが、隆聖の表情はあからさまに嫌そうに、全く気の乗らなさそうな様子を見せ、そしてその返答は案の定だった。

 

隆聖「車から降りな、この話は断らせてもらう」

 

愁「ま、待ってって!そりゃないよ隆聖さん!」

 

菜祐実「アンタさっき中学生から大した金取れるなんて期待してないとか言ったじゃない!言っとくけどアタシらにとって1万円なんて目ん玉飛び出る大金なんだからね!」

 

邦彦「どうかここはなにとぞ!哀れで愚かな中学生たちを助けると思って!」

 

三人は一斉になおも食い下がる、ここで隆聖に断られてしまっては自分達はこれからも何時までも、あの横柄で怪力の天邪鬼にこき使われ続けてしまうのだからココで何とかしてもらわなくてはならないのだから当然必死になる。

 

隆聖「大した金がとれるとは思ってなかったが、どんな低賃金でも引き受けるとまでは言ってねぇんだよ。お前ら、妖怪退治がどんだけリスクを伴う危険な事か少しは分からねぇのか?」

 

その隆聖の言い分は三人もある程度わかっているつもりだった。目の前で石ころを素手で握り砕いた天邪鬼の怪力っぷりを考えれば、自分達の骨を砕くくらい容易くやってのけてしまうだろうと、それ位には思っていた、だが――

 

邦彦「あ、俺んち実家が中華料理屋なんで、ウチのメニューで一番のご馳走の特製ラーメンスペシャルセット付きでどうですか!?」

 

実家が中華料理屋を営んでいる邦彦が、食事を報酬に隆聖を引き留めようと必死に懇願する。

 

隆聖「それってせいぜい1000円そこそこのセットメニューなんじゃねぇか?10300円で断わってるってのにそれに1000円分上乗せした位で請け負うと思うか?」

 

尚も消極的な姿勢の隆聖。

 

菜祐実「アンタ後で後悔しても知らないわよ!邦彦の家のラーメンってホント美味しいんだから、ここで引き受けないと出禁になるわよ!」

 

実際の所、邦彦の店のラーメンをそこまで高く買っていない菜祐実だったが、ここは敢えて邦彦の店のラーメンを過大評価して見せていた。

 

愁「それでも足りないって言うなら、俺が持ってる秘蔵の18禁写真集コレクション進呈します!苦労して河川敷で集めた品々なんで!」

 

隆聖「んな物いらねぇよ!」

 

流石にそれには釣られなかった隆聖だが、その隆聖自身も連日の賭け事での負けが続いているせいで金欠状態、そんな時に唯一の依頼がこの中学生たちの小遣いで総額1万円強の天邪鬼退治の依頼だけという状況なのであった!

 




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