最弱無敗の英雄譚~獣と竜のロンド~   作:無淵玄白

1 / 4
というわけで第一話。

ルール無用の残虐ファイトが始まります。

そもそも、最弱無敗の文明文化レベルならば、そんぐらいは当然なんですよね。

リアリズムがない原因の一つである『共和国』に対してまずは改変を行おうと思います。


プロローグ 

――――その姿をいつでも覚えている。

 

それはある晴れた昼下がりだった。ただ平穏を暮らしていた村であり、街を攻囲するように、『ヘイブルグ王国軍』が、襲いかかってきたのだ。

 

今の今まで気付かなかったわけではないが、予想よりも速い進軍に驚きながらも、防衛戦の準備は整えられていた。

 

既に『第五共和政』によって国体としての王と呼ばれるものが形骸化しつつあるなか、最後の抵抗のようにヘイブルグ王家の人間たちは、このハーズマイス領に襲いかかってきたのだ。

 

度重なる隣国からの侵攻を受けて、荒廃した旧王都エグゼスタルを離れた際に、王権の奪取及び簒奪を目論んだ有力貴族家は、『王室解体』を行い、ここに共和制合議政治の基礎は出来上がった。

 

無論、如何に王室が無能だからと言って、その関係者全てを殺すことは、王政派の復古を促すだけだとして、合議政治の『国民議会の議員』の一人として、席を与えていたのだが……。

 

「それで、このハーズマイス領に戦いを挑むとは見事な手際だな。ピョートル……」

 

王室解体の主導的役割を果たした先祖を持つハーズマイス侯爵は、集められた戦力の中に、見知った偉丈夫の姿を見て静かに緊張をする。

 

「かき集めた銃器は、弾込めをしておけ。煙幕展張の用意も同様に……煮えたぎった油も用意しておけ」

 

「承知しました―――領主様、自ら出られるのですか?」

 

「敵には、『装甲機竜』持ちが見える……私、自らでなければならない場面がある。同時に飛翔出来るタイプが出てくれば、防衛戦用の武器など、意味がない―――同時に、私はもう領主ではない。

ただのこの辺の地主でしかないよ」

 

せいぜいがハーズマイスシティの市長、町長といったところだろう。いずれは、『国民主権』『主権在民』の政治制度で、皆が等しい立場で国に参画出来ることを願うも―――、旧来より人は『貴種』というものに弱い……。

 

どれだけ、言葉では平等な立場を謳っても、そういう風な眼で見ることは避けられない。

 

そして、その役に立たない看板が、誰かの戦う力になるならば―――。今は、『貴種』に見られている自分が矢面に立たなければならない。

 

城壁の上に立ちながら―――鬨の声を上げて城壁に向かってくる『歩兵』の姿を見る。階子を掛けて上ることを目論む獣の如き軍勢を前に―――。

 

「撃てぇええ!!!」

 

遠くから『ミニエー銃』の一斉発射。敵の進撃を阻む。どんなに硬い鎧でも貫通する威力の『小銃』の前に、原始的な武器ばかりを持ったピョートルの軍勢は一瞬怯むも、マーチ(軍歌)の如きシンバルなどの合図を以て進撃は止まらない。

 

「撃てええええ!!!」

 

弾込めが速いミニエー銃だが、ピョートルが用意した歩兵の数は1万は下らない。

 

こちらは領民兵だけで2000、国民皆兵で女子供に戦の術を手伝わせても5000に届くかどうかである。

 

遂に、階子を掛けていく集団が出てきて、遠くからは投石機が打ち込まれていく。

 

「応戦しろ!!」

 

言う前から煮えたぎった油や湯を眼下にいる連中に吹っかけていたが、時には、馬糞や人糞を満載に入れた桶を投げ入れてやる。

 

そして石どころか岩を下に投げつけていく。

 

重すぎる鎧を身に着けたピョートルの軍勢は面白いように落ちていくが―――。流石に1万以上もの大軍を擁してきただけあり周到である。あちこちで防衛の穴が空きそうになる。

 

応戦の声が響き、互いに罵り合う声が聞こえながらも、こちらの防衛装備に流石に怯んだ所で―――。

 

「砲弾装填よーし! 導火線確認よろし! 着火――――放てぇ!!!」

 

城壁に並べられた砲台から砲弾が跳んだ。段取り通りとはいえ、ここまで上手くいくとは―――。

 

しかし、敵本陣を強襲するはずだった砲弾が無為に帰す。

 

いや、確かに砲弾は本陣で炸裂した。発破されて大地を土煙と火煙の混合で覆った。本来であれば、そこで数十発の砲弾で出来たモンロー・ノイマン効果でふっ飛ばされた人間や死体があるはずだったのだが……。

 

代わりにそこにいたのは、『不細工な鎧』に身を纏った男どもの姿だった。

 

(『障壁』に対して質量ある実弾は効くだろうが、なるほど着弾の衝撃だけを防いだか)

 

積んでおいた火薬の量は、砲弾ギリギリの分量。更に言えば、この辺りでは最新式の『アームストロング砲』である。

 

即座の行動には移れないようだ。身体を揺らして三半規管を完全におしゃかにした中では立っているのも辛かろう。

 

ここで砲弾の滅多打ち。陣地発破を掛けられれば良かったのだが、あいにくと言うか砲弾も砲も、そこまで用立てられていなかった。

 

ゆえに5分ほどの遅滞を以て動き出した―――『装甲機竜』纏う一団……200名ほどに対して、侯爵率いる30名ほどの装甲機竜の集団……明らかに負けると分かっていた勝負に対して―――ハーズマイス侯爵は、『援軍』に連絡を入れた。

 

「―――『少佐』……お願いできますかな?」

 

『侯爵閣下の奮戦は拝見させてもらいました。見事な差配ですが―――あのような『インチキ』には、我々が対処しましょう』

 

「助かります」

 

その言葉のやり取りを以て街の宿屋から十人程度の集団が現れる。

 

この危急存亡の秋にあって、若者であり偉丈夫というべき集団は、何をやっていたのかと思われかねない。

 

旅人……というほどではないが、自由を尊ぶ人間であることはよく分かっていた。そして、この時のために牙を研いでいたのだ。

 

「行くのツルギ?」

 

「うん。侯爵様は奮戦してくれている。本当ならば、僕たちの力を借りずに自主防衛で済ませたかったんだろうけど、状況は、良くないようだ」

 

援軍の当てもなく籠城戦などはっきり言えば敗着の一手であるのだから。

 

そして周辺領主が援軍に駆けつけないという調略を行われていた場合、それを考えてハーズマイス侯爵閣下は、『自分たち』を呼んでいたのだ。

 

「大丈夫なの?」

 

「問題ないさ。少佐は歴戦の戦士だし、俺も小さい頃から■■■に乗ってきたパイロット……乗り手、ライダー、だよ」

 

「そういうわけで、アンタたちはちゃんと家に引っ込んでなさいよ。戦になった後、『落城』すれば、『女』がどういう扱いを受けるかなんて知らないわけじゃないでしょ」

 

「まぁ一兵たりとも入れる気はしませんが、最悪を考えて行動してくださいね」

 

黒髪の少年。何かの『入れ墨』なのか赤い線を頬に入れたものに追随するように額に金色の刻印を入れた薄紫色の髪をした少女……古都国という国の民族衣装に似たものを着ているのが付け足して、緑色の少女……同じく民族衣装に似たものを着ている快活そうなのが言ってきた。

 

その言葉に、自分たちと変わらぬ年齢なのに、戦場に出れることを少しだけ羨む。

 

自分たちとて装甲機竜を手に出来れば、父母の手伝いが出来たというのに……。

 

ステファ・ハーズマイス

 

ローザ・『ラウリ』

 

二人の少女の心配そうな視線を他所に、『戦士』たちは、戦場に赴く。決して人民を不安にさせない整然とした行進は、人々に安心感を与えて―――そして、『人種の違い』をこれ以上無いぐらい、見せつけるのだった。

 

 

城壁での戦いは阿鼻叫喚に至ろうとしていた。装甲機竜という砲弾を『それなり』に無力化し、銃撃の大半をシャットアウトした上で、時速六十kl(キル)の『高速』で動きながら戦える兵器は、素手で城壁を崩して、エネルギーで溶断をするためか、光り輝く剣で壁……レンガと石で丈夫に築いたものをバターのように切り裂いていく。

 

装甲機竜という兵器には、射撃武器もある。キャノン及び『ガン』というものを使えばチャージ(弾込め)に時間がかかるとはいえ、城壁を砕けるのだが、それをせずにあえて『原始的な武器』を以て、砕こうという意図は自ずと分かる。

 

彼らにとっては安易で着実な処刑より、まずは全ての戦うものたちを畏怖せしめることこそ寛容なのだろう。

 

その後にはお決まりの略奪の陵辱の限りを領民に対して行うのだろう。

守るべきものがいなくなった街にバルバロイ(野蛮人)が現れる。戦での『いつものことだ』。

 

そして、そんな『いつものこと』をやる()を何とかするために、もう悲劇を、惨劇を生みたくなくて政治を行っていたというのに、その結末をくれてやろうとするピョートルを憎悪の眼で見る。

 

「ガリアの『銀の悪魔』どもに対抗するために、我々はお前達、ロマノフ王室と決別したのだ!! 貴様には迎合せん!! ピョートル!!」

 

「ならば、あの世で己の無能と無知を悔やめ!! アレクセイ!!」

 

飛翔型の装甲機竜に乗っていたピョートルが、剣を振りかざして、アレクセイ・ハーズマイスを殺そうとした時、高速の機影が間に入った。

 

その機影は、ピョートルの横っ腹に『頭突き』を食らわせた。

 

ただでさえ空中にいたことと踏ん張りを効かせられなく胃の中身全てを吐き出さんばかりに反吐を吐き出しながら地に落ちるピョートル。

 

護衛役のように家臣団が、ピョートルに駆け寄る。

 

そしてその後には、他の高速の機影―――時速にして100klは下らない速度で動くそれらは、次から次へと敵軍を撃破していく。主に装甲機竜がメインだが、時には装甲機竜と一緒になって攻城作戦を行っていた重装歩兵も餌食にする。

 

そもそも100klもの大質量が動き回っている時点で触れた人間は吹き飛ばされるのが、オチで、それだけならまだしも―――。

 

「ごあっ!! あがががが―――」

 

頭を叩き潰されながら移動していくさまが見える。

 

断末魔の悲鳴を上げられるものがいるだけマシだろう。

 

他国では、高速の機影が動くさまを『ミンチメーカー』(挽き肉製造機)と呼ぶのも頷ける。

 

ひとしきり動き回り、崩れそうになっていた戦線を落ち着けた……むしろ逆に混乱させたのではないかという勢いの『それら』は、城門前に陣取り、城壁の上に陣取り、空中に漂い―――遠吠えを、雄叫びを、嘶きを上げた……。

 

まるでそれは人々を守ることを宿命付けられた守護の獣。

 

神代・古代の頃から信仰の対象として崇められてきた自然の化身を思わせる……『守護獣の神像』

 

 

「そ、装甲機獣……!? ゾ、ゾイド!!!!」

 

「ゾイド乗り……Zi連邦の軍人!? な、なぜここに!?」

 

口々に、ほとんどの国家において『死神』『悪魔』の代名詞として囁かれる言葉が上げられて―――。

 

「これよりZi連邦所属高速戦闘部隊『フライハイト・フォース』は、軍令によりハーズマイス侯爵領を援護する!」

 

宣言すると同時にビームの乱舞が装甲機竜に降り注ぐ。

 

キャノンのチャージタイムなど彼らにはありはしない。砲身冷却の為の冷媒も完備してある。

 

『遠未来兵器』にして、彼らにとっては『現代兵器』。そして多くの武器を乗せても意思を持つ『生体機獣』という存在を心強く想いながら灼熱の戦場に降り立つのであった……。

 


 ▲ページの一番上に飛ぶ
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。