理を超える者   作:クズ餅

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早速評価付けてくれた人が居てビックリしました。
あと、自分から始めたけど勘違いもの書くの死ぬ程難しいのなんとかして(懇願)

あと、この話から、オリ主の内面が出ます。


それは始まりの光 裏

時間は少し巻き戻って、試合開始5分前。

 

選手控え室として当てられていた個室にて、彼_リヒトは静かに椅子に腰掛けていた。

彼は少しも身動ぎすることも無く、部屋に居る自身の手持ちを見つめていた。

 

その目は、真っ直ぐポケモン達を見据えており、ポケモン達もまた、彼をしっかりと見つめ返していた。

試合準備の為に彼を呼びに来たであろう係員の男は、その雰囲気に、部屋へと踏み込めないでいた。今その部屋にあるのは、彼とポケモン達との物言わぬ会話であろう。試合に望む前に、そういったルーティーンを取る選手も少なくない。

 

その神妙な空気に、彼は扉の前で立ち竦んだ。

 

 

 

 

 

「(どうしよ、お腹痛くなってきた。)」

 

 

 

……実際は、そんな大層なものではなく、1人のアホが腹痛に苦しんでいるだけなのだがり

 

 

 

 

 

ここでリヒトについて、説明を入れるとする。

 

彼、リヒトはメンタルクソ雑魚のパンピー野郎である。

幼少期より、先程試合に出したケッキングのように、何故か捕まえているポケモンがクッソ強いだけであり、本人にはそこまで強くないと思っている塵メンタルである。

 

彼は、俗に言う転生者である。

前世ではそこそこの高校に通い、そこそこの大学に進学した、いわゆる大学生だった彼は、ある日サークルの先輩にアルハラをされて、急アルで倒れてしんだ不幸な男だった。

 

だが、そんな彼が目を覚ましたら、ある街に生まれた赤ん坊だった。

 

そこからは、特に語ることの多いわけではない。

普通に育ち、遊び、彼が十歳の時、母親にボールを渡されて、「取り敢えずジム制覇してきなさい」と言われ家を飛び出さされたのだ。弱冠十歳のリヒト少年、漸くここがポケモンの世界だと理解した。

 

そしてそこから、彼の人生は大きく動き始めたのだが、それはここで語るべきではあるまい。

 

問題は、さっきの試合である。

 

 

「(指示出してなかったからって正面から受けんなよォ!)」

 

そう、この男、さっきの試合を黙って見ていたのでは無く、単純になにも言えなかったのだ。

彼は、とてつもないビビりである。大舞台で緊張し、セリフを噛み、言葉が詰まったりする、ノミの心臓である。

 

では、ここで先程までの彼の心境を踏まえて、彼の発言を、振り返ろう。

 

 

 

まず始め、緊張でパニクってたリヒトをよそに、向こうがのしかかりを仕掛ける。

 

しかしここで、リヒトの目の前に、ハエが飛んでいた。

 

 

目の前のバトルそっちのけで、目の前にハエにイラついたリヒトは、思わず呟いた。

 

「目障りだな」と。

 

すると何を勘違いしたのか、キングはそれを目の前の相手の技だと勘違いし、虫けらのようにただ目障りなだけと主が断定したと思い込み、それを前に小細工は無用と、正面から受け止めた。

 

これには会場もセンリもビックリ、そしてリヒトが1番ビックリ。

 

 

「(えっ、なにしてんの?)」

 

 

間接的にだが自分のせいであると、リヒトは思いもしていなかった。

 

一瞬出来た空白も、センリの指示がそれを終わらせた。距離を取った相手のケッキングが、きあいだまを溜めるのを見たリヒトは___またもやパニクった。

 

 

「(弱点技じゃん!!あれ食らったらやばいやんけ!!)」

 

 

そうだよ(肯定)

そう思いながらも、メンタルクソ雑魚のリヒトは、指示を出そうとして、どもった。この大舞台、全国中継で放送されている自分、そして対戦相手がかのジムリーダーという条件が重なった時、リヒトはどうなるか。

 

 

結果、リヒトは声を一時的に失った。

 

「(ああああ声出ねェェどうしよ指示出さないとヤバいでも避けろぐらいしか思い浮かばないけど声出ねぇしこれヤバいヤバいヤバい)」

 

 

中身が分かれば、周囲が引くくらいパニクってた。まともな思考が働かない状態になった彼は、回らなくなった頭で、解決策を弾き出した。

 

 

「(アイコンタクトにかけるしかねぇ!)」

 

 

この男、アホである。エスパータイプならまだしも、ノーマルタイプであるキングに、そんな事出来るわけがない。だがテンパっているアホはそんなことも分からず、キングに強い眼差しを向けた。

 

 

「(頼むキング!お前との付き合いは長い、だから俺の気持ち伝われ!!)」

 

 

そう祈るように思いながらの強い眼差しに、キングは気付いた。そしてその眼差しをしっかりと見返し、主の意思を__

 

 

「(我が主は、このような羽虫の如き敵に私が臆することを望まれていない。あの眼は、「正面から敵をねじ伏せよ」という、確固たる意思を私に伝える為のものなのか!承知致しました、我が主よ!)」

 

 

 

 

 

__1ミリも正確に受け取っていなかった。

 

 

まるで意思疎通が出来ていないキングは、主の仰せのままに(言ってない)ねじ伏せる為、自身の右腕を前へと伸ばし、そのきあいだまを受け止めた。

 

 

(what the fuck?)

 

 

普段使わないようなスラングが思わず脳内を過ぎった。というか、リヒトの動揺が天元突破していた(グレンラガンは未視聴)。

旅を始めて2年、いくらメンタルクソ雑魚でもここまで動揺したのではと思うくらい、リヒトは動揺していた。

 

 

それはなぜか?

 

弱点技を正面から食らって、自分のポケモンが負けたと思ったのか?その後の観客からの侮蔑の眼が気になったのか?

 

否、リヒトの動揺の種は、そのどれでもなかった。

きあいだまが着弾し、砂を巻き上げ、キングの周囲を覆った。

 

その砂塵の中で、リヒトはキングの無事を()()()()()()()()

しかし、その胸中は焦りで一杯だった。その表情には一切の揺るぎは無く、傍目から見れば何一つの不安もないように見えるリヒトは、ある1点でとてつもなく焦っていた。

 

 

 

「(やべぇぇ、キングがバグってるのバレたァァ!!!)」

 

 

そう、リヒトが懸念していたのは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そう、リヒトの手持ちは、自他共に認める程にバグっているのだ。

 

それは、少し前に遡る。

ある日、リヒト少年(十歳)は、初めて仲間になったケッキングをボールから出して、野生のポケモンと戦闘をしていた。

しかし、そこはトウカの森、低レベルのポケモンでは全く敵にならず、どうしようかと思案していたリヒト少年に、事件が起きた。

 

なんと、野生のキノガッサが現れたのだ。

 

前世ではポケモンを嗜んでいたリヒト少年も、これには仰天。なんせトウカの森には、キノココはいてもキノガッサはいなかったのだ。

しかし、動揺していたのはリヒトだけで、既にボールから出していたキングは、先制攻撃とばかりにキノガッサに、アームハンマーを叩き込んだ。

 

ケッキングの圧倒的力から叩き込まれたアームハンマーに、キノガッサは堪らず吹き飛ばされる。

 

だが、その一撃は瀕死に至らず、キノガッサは体勢を建て直し、こちらに向かってくる。

 

 

この瞬間、リヒト少年は諦めた。

 

 

なんせ、キノガッサのタイプはくさ・かくとう。つまりケッキングの弱点技を保持している可能性は大で、しかも、自身のポケモンがケッキングなのである。

 

 

ケッキングには、致命的な弱点として、特性「なまけ」が存在する。その効果は、所謂ゲーム内において、2ターンに1度しか攻撃出来ないということだ。

しかし、リヒトが置かれている現状は、ゲームでは無く現実。しかしながら、なまけという特性がある以上、その行動にはかなりの制限がかかる筈だ。

 

そう考えていた時、ありえない事が起きた。

 

 

すぐ真横を抜けた、一陣の風。

その余りの風圧に、一瞬顔を庇ってたたらを踏んでしまうリヒト。しかし、いつまでも目線を敵から逸らしてはいけないと思ったリヒトは、すぐにキノガッサに目を向けた。

 

 

そこには、地面にキノガッサを叩きつけているケッキングが居た。

 

 

 

「……は?」

 

 

あまりにもあんまりな光景に、リヒトは思わず呟く。

 

 

そう、この光景が表していることとは!

 

 

 

 

 

このケッキング、なまけないのである!!!

 

ケッキングとして持たされた圧倒的ハンデを、暴力的な力を半減させる為の枷を、なんとこのケッキング、自力でなんとかした。……いや、自己進化を果たしていたのである。

 

これにはリヒト少年、腰が抜けそうな程ビックリ。

 

しかし、これだけでも驚きの事実だが、その後に、更にリヒトの頭を悩ますような事実が発覚した。

 

 

それは、ムロジムにて起こった。

そこで、彼はジムリーダーのトウキとの戦いにて、キングで圧倒的な蹂躙を果たしていた。

そこで調子に乗っていたリヒトに、トウキはガチのポケモンとして、ハリテヤマを繰り出した。

 

その瞬間、我に帰ったリヒトはビビった。そういや弱点やったわ、どうしよ、当たったら即死やんけ!!

テンパるリヒトだが、時すでに遅し。先制とばかりに繰り出されたはりてを、ケッキングが正面から受けてしまい___

 

 

 

 

 

 

__はりてをした手を掴んで、ゼロ距離からきあいだまを叩き込み、ハリテヤマを戦闘不能に追い込んだ。

 

 

(what?)

 

これにはリヒト少年数日ぶりにビックリ、尚トウキはもっとビックリ。

 

弱点技を食らったキングだが、虫に刺された程にしか反応せず、なおかつ弱点技でもないきあいだまで、相手のハリテヤマを瀕死にした。

 

 

 

 

このケッキング、素のスペックもバグっていた。

 

 

 

 

これらの経験を通して、リヒトは学んだ。彼は別にチャンピオンを目指しているわけでもなく、特別目立ちたいわけではない。

というか、目立ちたくない。ジムには一応挑戦するが、いいつけだけであってやりたい訳でもない。

 

だからこそ、彼は決意した。

 

 

 

 

「(目立たないようにしよう)」

 

 

もっとも、どだい無理な話ではあったが。

 

 

 

 

そして、場面は戻りスタジアムへ。

その砂煙の中、リヒトの顔___は変わらなかったが、心は大層死んでいた。

 

 

「(あーあ!折角ジムバッジ2つでサボってたのにここでバレたら確実に母さんに言われんじゃん!何サボっとんねんわれェ!とか言われんの嫌や!)」

 

 

前世持ちでも、母親には頭が上がらないらしい。

頭の中で文句とこれから起こることへの忌避感を募らせていた彼は、ふと、あることを思いついた。

 

 

「(せや!キングに手加減してもらって、接戦でした感出せばまだいけるやろ!)」

 

 

お前ここまでやって何言ってんの?

 

だが、アホのリヒトはそれでいけると思ったのか、未だ砂煙の中に居るキングに対して、声を掛けた。

というか、そもそもこの状況でキングが無事だと思われていなかったので、まずここで失敗を1つしてしまう。

 

 

「キング、(今からきあいだま撃ってもらうけど、相手まで)届くか?」

 

 

つぎにリヒト、言葉選びのチョイスを失敗する。()で括られた圧縮言語が酷すぎて、最早別の意味に聞こえてしまうものになってしまった。

 

 

「(いいえ主よ、これでは私たちには到底及びません)」

 

 

ほら見ろ、お前の相棒間違って伝わってんじゃん。

間違って伝わった内容、リヒトが伝えたかったことは相棒にもまともに伝わらず、当然そんなセリフは他人には伝わらず、観客達から嘲笑を受ける。

 

 

「(どうしよっかな〜……万が一失敗しようもんなら…いっそシンオウにでも高飛びしようかなぁ…)」

 

 

しかし、この男自分に向けられた嘲笑の声さえ聞いていなかった。彼の頭を占めているのは、この後起こりうる事への対処と、保身しかなかった。もっと周りに目向けろ、馬鹿にされてんぞ。

とまあ、こんな風に嘲笑を受け流して(聞き流して)いたリヒトだったが……

 

 

 

 

 

 

 

 

「(貴様等!誰に向かってその下卑た視線を向けている!!)」

 

 

キングが、それを見過ごす筈が無かった。

 

 

『私の敬愛する主を何故愚弄する!そこでただ居るだけの力の無い貴様らに、我らがあるじより遥か格下の!吹けば飛ぶような塵芥共が、身の程を知れ!!』

 

 

「静まれ、お前が向けるべき目は目の前の同族だ(ヘェア!?なんで叫んでんの?お客さんビビってるじゃん!!!)」

 

 

お前(の為)じゃい!

 

知らぬが仏とは言うが、こいつのアホさには仏も三度許すまい。しかし外面だけは保てている(印象最悪)リヒトは、このまま何事もなく行けば、計画通りにキングが接戦を繰り広げ、それっぽく目立つ割合を減らそうと企んでいた。

 

 

「さすがに正面から貶してくれるのは…少し腹立たしいな」

 

 

しかし、その企みは、リヒトにとっては予想外の発言で全て吹き飛んだ。

 

 

「(怒ってらっしゃる?!キングの咆哮を挑発と捉えられてジムリーダー様が怒ってらっしゃるぞーー!!)」

 

 

お前じゃい!(二度目)

 

少し前の自分の発言が、今自分の首を締めている。自分の埋めた地雷に引っかかったアホは、そうとは知らず慌てふためく。冷静に考えれば自分の発言に気づくのだが、如何せん今日のリヒトはテンパっていた。

 

「(これは不味い!公衆の面前でジムリーダーを怒らせるとか嫌って下さいって言ってるようなもんだ!……よし、取り敢えず謝ろう)」

 

 

 

「すまないな、俺は(仲間を強くできなかった自分の)力不足というものが嫌いでな。どうしても(不甲斐なくて)口にしてしまうんだよ、(煩くて)気に触ったか?ならば謝罪しよう」

 

 

再びリヒト、言葉選びに大失敗する。圧縮言語は止めろとあれほど……。

 

 

しかし、リヒトがどう思おうと事態は止まらない。リヒトの言葉を当然挑発と受け取った観客達は、一斉にブーイングをする。確かにこれは擁護できない。

しかしリヒト、意外にもこれに動揺していなかった。極度の緊張の中で遂に精神が進化したのか?いや、そんなわけも無い。

 

 

「(まああんだけ五月蝿かったら怒るわ。騒音罪って前世でも結構問題だったし)」

 

論点がズレていた。

 

観客、センリ、手持ちのどれとも心を通わせていないリヒトは、ただ1人だけズレているこの男は、自分の勘違いにも気づかず、口を開く。目指すは接戦の演出、それ以外にはあまり興味がなくなっている。

 

 

「では此方からいかせて貰おう」

 

「(ま、手加減すりゃ耐えれるでしょ。いくらバグモンでも相手ジムリーダーやし)」

 

「キング、小手調べだ。威力を抑えてのきあいだまだ」

 

 

そう指示し、キングがきあいだまを溜める作業を見て、リヒトは安心した。ああ、これなら大丈夫だろうと。表に感情がでるなら、おそらくホッと一息ついただろう安堵感が彼を支配していた。

 

 

「(うんうん、いいよーキング。指示通り()()()()()断然力込めてない、うんうんこれなら多分耐えれ__)」

 

 

 

次の瞬間、キングから放たれたきあいだまが着弾したセンリのケッキングが、スタジアムの壁まで吹き飛ばされていた。

 

 

「(は?????????)」

 

 

ここでリヒトは、大きな誤算をしていた。

 

1つ目は、溜める力を減らしすぎたことによる、スピードの短縮だ。

普通、きあいだまは練度が高くなっても、発動までに多少の時間がかかるのだ。

しかし、あまりに力を込めなかったが為に、恐ろしい速さでチャージが完了し、放ってしまった事。

 

 

そして、2つ目はというと…

 

 

 

「(えっ……装甲紙すぎない?)」

 

 

この世界に生まれて、キング以外のケッキングを知らなかったが為に、相手の力を見誤った事だった。

これが普通のポケモンならば、センリのケッキングも1度や2度ならば耐えられただろう。なまけがある為即座に反撃は出来ないだろうが、それでも反撃のチャンスはあっただろう。

 

 

だが、今回は相手が悪かった。そう言うしかないだろう。

 

 

「(え?待って?いや立ってよ!?これで終わったら俺が虫けらでも薙ぎ払ったみたいじゃん!?それって印象最悪じゃん!!!)」

 

お前は何を言っているんだ?(外人)?

 

手遅れの事に大慌てのリヒト、しかし無常にもケッキングはボールに戻される。その様をただ呆然と見ていたリヒトは、泣きそうだった。

しかし、涙どころか表情筋1つも動いていない。

 

生まれつき、何故かリヒトは、表情が一切変わらないのだ。両親も病院へは連れていったが、原因は分からない上に病気でも無いと診断された。

当時のリヒトは、顔動かないとか動揺バレなくてラッキーくらいにしか思っていなかった。

 

 

しかし、ここに来て、リヒトは自分のその体質を呪った。もっと動け表情筋、仕事放棄してニート決め込んでんじゃない、もっと働けと。

 

依然動かない表情筋と、進んでいく事態に、意識が遠くなってきたリヒトは思った。

 

 

 

 

(どうせ転生するなら、牧場〇語かルーン〇ァクトリーとかのほのぼの系が良かった)

 

 

……牧場物語はともかく、ルンファクはそこそこ波乱あるんですが。

 

 

そんなことを思いながら、リヒトは立ったまま、膨れ上がったストレスと緊張で意識を手放した。

 

 




ちなみにこの後、ちゃんと試合終わる頃に起きていそいそと帰ったリヒト君。

この後の話どうしよう?手持ちとの出会いか、原作主人公君等のキャラとの絡みか、いっそオメガルビー基礎にしてるのにシンオウに高飛びするか。

うーん迷う。あと、ポケモンのバトル描写のお手本になりそうな小説教えてください。

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