天災と魔王の青春   作:倉崎あるちゅ

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 ちょっと最近また俺ガイルを見始めて、最近私の性癖に陽乃さんがぶっ刺さりました。

 昔は、出てきたな! 魔王はるのん!! って感じだったんですが今じゃ陽乃さん出てきた! うおぉぉぉぉ!! っていう感じで推してます。

 見切り発車です。よろしくお願いします。




一話 彼と彼女の関係

 

 

 

 まだ彼と彼女が幼い頃。

 県議会議員兼有名建築会社社長の雪ノ下氏。ならびにその雪ノ下氏と友の有名電気設備会社社長の逸見(いつみ)氏が合同で開いたパーティで彼らは出会った。

 逸見遊理(ゆうり)、雪ノ下陽乃。それぞれ逸見家の次男と雪ノ下家の長女である。この二人の才能は周囲の子供よりも図抜けている。

 まず雪ノ下陽乃。彼女は成績優秀、幼いながらも眉目秀麗、運動神経良しの才女である。

 次に逸見遊理。彼もまた雪ノ下陽乃同様、成績優秀、容姿端麗、運動神経良し。しかし、彼の土台となる部分は雪ノ下陽乃とは全く異なる。

《完全記憶能力》。一般的に完全記憶能力といえば、見るだけだが、彼のそれは少々異なる。視覚はもちろん、聴覚、味覚、触覚、嗅覚、全てにおいて一度覚えれば二度と忘れることはない。

 二人の父達は息子、娘を自慢し合っている。

 

「……」

「……」

 

 そんな雪ノ下家の長女は、というとちらりと遊理を見て、親達の会話の空気を読んで年相応の笑みを浮かべていた。対して逸見家の次男はつまらなさそうに会話を聞き流してニコニコ笑う陽乃を見つめている。

 その後、自慢話は終了し、二人の父達は仕事の話に移ろうとしていた。

 

「遊理、陽乃ちゃん、お父さん達は仕事の話をするから、工理(こうり)と雪乃ちゃんのところで遊んでおいで」

 

 遊理の父にそう言われ、遊理と陽乃は素直に頷いて、彼の兄、工理と彼女の妹、雪乃の下へ向かう。

 一番歳が上の工理が一番歳が下の雪乃の面倒を見ていたのだ。

 二人の下に着いても、遊理と陽乃は何も話さない。兄と妹が遊ぶ姿を笑って見つめているだけである。

 

「ねぇ」

 

 ふと、遊理が口を開く。声量からして隣にいる陽乃に言葉を投げかけている。

 

「なにかな」

 

 陽乃は笑みを浮かべたまま遊理の方へ向く、すると、呆れたような顔をして彼は陽乃の柔らかな頬を軽くつねる。

 

「っ!? ちょっ」

「なにそのつまらない顔。空っぽすぎ」

 

 そんな遊理のつまらなさそうな声。

 

「──」

 

 むにむにと陽乃は頬をつねられたまま、そんな彼の言葉に唖然とする。

 初めてだった。まだ未完成とはいえ、この仮面を見破られたことは一度もなかった。周りの大人達も不審がることはない。目の前にいる少年の父でさえ見破ったことはなかった。

 

「なんだ、驚いた顔はできるんだ。せっかく可愛いんだし、()()()()やめて笑えよ」

 

 全てを見透かしたように、光の反射で紫色に見える瞳で陽乃を捉えて言う。

 ニィ、と彼は笑って、頬に伸ばしていた手を離して差し出した。

 

「改めて、俺は逸見遊理。君は?」

「……雪ノ下、陽乃。知らなかった? 遊理くん」

「いいや知ってる。他の人達からの紹介より自己紹介して欲しかったんだよ。その方が正確に覚えられる」

「へぇ、面白いね遊理くんって」

 

 その人がどんな人なのか、正確に記憶しておきたかった彼は興味のある人に対してはこうして会話をする。興味がなければ耳に、視界にすら入れない。

 彼が認めるのは尊敬する兄と、とてとてと歩み寄ってくる幼い雪乃、父と母、雪ノ下夫妻……そして、

 

「これからよろしく、陽乃」

 

 

 

 ──己と、同等の存在のみである。

 

 

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

 

 

 大学生になって早二年。俺は今、大学の学食の席に座って本を読んでいる。

 一般的な文庫本は有名どころは全て読んでしまい、もう既に本の一字一句全て頭の中に刻まれている。今読んでいるのはライトノベルと呼ばれる架空の都市や世界を舞台にした、恋愛からアクションまである本だ。

 

「なぁなぁ遊理」

「ん」

 

 ライトノベルのページに目を落としていると対面に座った同学年の男が俺の名前を呼ぶ。

 

「ここわからねーんだけど、どうやったら解けんの」

 

 ペラ、と本のページをめくる。

 ちらりと本から目を離して、見せてくる問題集のページ数を見た。

 

「問四だな」

「おう」

「それは教科書百二十ページの公式を応用して使えば解ける」

「えーと、百二十ページ……百二十ページ……。お、これか」

 

 本に視線を戻してまた読み始める。

 教科書の内容も、この男がやっている問題集も全て記憶している。もう読み返したり解き直したりすることはない。

 

「おお! できたー!」

「そっか、よかったな」

 

 喜ぶ男に適当に賛辞を送る。

 

「ありがとう遊理助かるぜ!」

「ん」

 

 そういえば、こいつの名前は覚えていたな。なんだったか。

 基本的に俺は興味のない奴やどうでもいい奴は、例え記憶したとしても、記憶の奥深くにしまい込む。人間の脳には限界がある。その限界を超えないために、俺は必要最低限の情報しか必要としない。

 しかし、今回ばかりは比較的俺とよく話す奴のため記憶の浅いところにしまっていたようだ。

 青葉(あおば)(りん)。それが対面に座る男の名前だ。

 

「凛、お前は地頭はいいんだからもう少し頑張れ」

「遊理に言われると嬉しいものがあるが……なんというか、オレはそこまで良くねーよ」

「何言っているんだ。お前がやったその問題、公式を使ってもそんな簡単に解けるものじゃない」

「え?」

 

 不思議そうな顔をしているが事実だ。ひっかけもあるし簡単に解ける問題ではない。

 そのあとも凛はわからないところを俺に質問してきた。流石にあまりにも簡単な問題の時は無視したが、難しそうなものは教科書のページ数を答えるだけにしておいた。

 本を読んでいると、廊下の方が騒がしくなってきた。

 

「はー、まーた囲んでるよあいつら」

「……飽きないんだろ」

「普通飽きるだろ、あんな美人でも」

「さてな」

 

 視線を向けた先には一人の女性を囲んで男女複数で談笑する光景が視界に映る。その囲まれている女性は艶やかな黒髪をセミロングにしたスタイルの良い眉目秀麗な女性だった。

 名前は、雪ノ下陽乃。

 幼い頃に見た()()の完成度を増した笑みで周りを魅了し、完璧な理想の女性を体現している。

 

「お前はいいのか、凛」

「オレは半年見てりゃいいかなって。なんか飽きるんだよなー雪ノ下さんの笑顔って」

 

 綺麗なんだけどさ、と付け足して、凛は再度問題集に取り組み始める。

 

「遊理はどうよ、雪ノ下さんは。入学当初からずっと興味なさそうだけど」

「そうか、知らないんだったな」

「何が?」

 

 納得した。俺がこいつを他の奴らとは違う対応をしていることを。こいつはそもそも俺と雪ノ下陽乃との関係を知らないのだ。だから俺はこいつに多少目をかけているのだろう。

 

「俺と雪ノ下陽乃は幼馴染だ」

「……え?」

「聞こえなかったか。俺と雪ノ下陽乃は幼馴染だ、と言ったんだ」

「…………マジ?」

 

 無言は肯定、と言わんばかりに俺は本を読み続ける。

 

「なんでお前、雪ノ下さんと一緒にいねーの?」

「高校卒業の時に少しな」

「仲、わりーの?」

「俺はそう思っていないが、あいつはどう思ってるのかね」

 

 そう。雪ノ下陽乃とは小学から今まで一緒の学校だ。

 小学生の頃は互いに興味なんてないため名前は知っていても挨拶なんてしなかった。だが、初めて親に連れていかれたパーティで雪ノ下陽乃を見た時、俺は彼女をとてもつまらない奴だと思った。

 未完成ながら大人を騙すほどの外面。愛想を振りまく笑顔は一見、可愛らしい少女だ。

 俺はそんな彼女に呆れ、少しちょっかいをかけた。そうしたら簡単に素の彼女に戻った。素の彼女はとても魅力的で、可愛らしく、美しいとさえ思えた。

 ──まぁ、囲まれている今の彼女を見るととてもそうは思えないのだが。

 

「付き合ったりとかは?」

「してた」

「ほー、それは羨ましい限りだ。あんな美人と付き合ったことがあるなんて最高じゃないか」

「なにが最高だ。突発的に行き先を指定されるわ家に来るわ仕事の邪魔をしに来るわ」

「……あぁ、大変だったんだな」

 

 まぁいい。あれはあれで俺も楽しませてもらった。

 

「それより、それ、解かなくていいのか」

「あ、そうだった」

「それはこの公式な」

 

 とん、と教科書に書かれた公式を叩く。

 できることなら、高校の時のようにあいつと接したい。こんな退屈な日常に埋め尽くされる記憶なんぞ必要ない。

 話しかけようとしても、雪ノ下陽乃の周囲には人が集まる。人がいない間に話を済ませたいが何故か上手くいかない。携帯を使って連絡を取ろうにも彼女は着信拒否をし、メールも一切返事がない。

 

「……完全記憶能力なんて持っても、肝心なことができなきゃ意味なんてないよな」

 

 小さく呟き、俺は本に栞を挟んでパタン、と音を立てて閉じた。

 

「なんか言ったか、遊理」

「なんでもない。俺は帰る。お前は」

「あ、オレも帰る! もうこの後講義もないし。帰りにタピオカドリンク買おうぜ。オレ、カフェモカにする」

「あのデンプンか」

「おいおい、言うほど不味くないんだぞ。むしろ美味しい」

「そうか。チョコはあるか」

「あるある! たぶん遊理の好みだとチョコミルクだぜ」

 

 そういえば、高二の頃にあいつがくれたバレンタインのチョコ、美味しかったな。

 

 

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

 

 

「それでさ──」

 

 いつも通り、私──雪ノ下陽乃は友達、とも言えないような人達を相手に笑顔を見せて会話をしている。

 正直会話なんて言うレベルではないけれど。一方的に相手が喋るだけのもの。こんなの会話なんて言わない。

 

「雪ノ下さんも──」

 

 あはは、と笑ってやれば相手は気分を良くする。ずっとそう。

 学食の前を通り、ふと私は席に座って本を読む紫かかった白髪の男性を見た。

 

「っ……」

 

 その男性、逸見遊理は対面に座る人に質問され、本を読み続けながら質問に答えている。

 相変わらず、彼はマルチタスクが得意みたいね。

 通常、マルチタスクは脳の領域を短期間で切り替えることで複数の作業を行う。しかし、彼、逸見遊理だけは違う。本当に同時並行で作業できる。

 

「雪ノ下さん?」

「あ、ううん、なんでもないよー! それで、このあとどこに行くんだっけ?」

「ほら、最近できたタピオカ専門店とか!」

 

 あぁ、あそこか。ホントは遊理と行きたかったなー。ちょっとオシャレだったし、遊理と仲直りしたら……って思ってたんだけど。

 しかし、遊理は今の私に興味などないだろう。このような仮面をつけた私なんて見向きもしないに違いない。

 

「あるある! たぶん遊理の好みだとチョコミルクだぜ」

 

 これからどこかに行くのだろうか。遊理と一緒にいる人が機嫌良く言う。

 いいな、遊理とどこか行くんだー。私も一緒に行きたい。……チョコといえば、遊理にあげたバレンタインチョコ、喜んでくれてたな。

 

 

 





 いやー、俺ガイル書き始めるとホント書きたいものが多いのにどれから書いていいのかてんわやんわ。
 あと、あらすじですが後々気に食わない場合改変、加筆します。


感想、評価お待ちしております。

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