アインズ・ウール・ゴウンが幻想入りしたようです。(再投稿)   作:TubuanBoy

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異変-13

 

 

『宝物殿』

 ギルド『アインズ・ウール・ゴウン』がユグドラシル全盛期時代に溜め込んだ宝の数々と、運営資金となる金貨の山、武器、データが大量に納められている。

 その価値の高さは幻想郷に転移した現在でも変わらない、むしろ高くなったとも考えられる。

 他の階層とは独立した空間に存在し、ギルドが作った特製アイテム『リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン』を持つものしか侵入する事が出来ない。

奥にある霊廟にはアインズ・ウール・ゴウンのメンバー、至高の41人の石像が飾られており、アインズにより辞めていったメンバーから預かったアイテムが装備されている。

 

 

-----エクストラステージ----

 

 

「スペルカード発動!!

至高41符『アインズ・ウール・ゴウン』」

 

 

 

 山河社稷図により展開された異空間の中にアインズの言葉が響く。

 41枚のスペルカード光るこの光景に霊夢は困惑していた。

 

 

「(なんだろ………あのスペカ………

どう動けば良(・・・・・・)いかわからない(・・・・・・・)………)」

 

いつも冴え渡る霊夢の勘が鈍っている感覚がする、霊夢は思考を巡らす。

 

「(嫌な予感がするわね………

何かやられる前にやるしかなさそうね!!……無時間移動(【亜空穴】)!!)」

 

霊夢はアインズの背後に転移し蹴りを繰り出した。

 

「(スケルトンには打撃が有効!

【昇天脚】!!)」

 

 霊夢の痛烈な蹴りがアインズの後頭部に見事にヒットした様に見えた。

 しかし、二人の間にアインズを守る様に降臨したのは純白の聖騎士。

 

 

戦士職最強(たっち・ミー)…………」

 

 

 そう、それはかつてのギルドメンバーであり、モモンガが最も信頼する男の姿をしていた。

 

「仲間!?…………いや、式神みたいな奴ね………」

 

騎士は剣を縦に振り押す。

霊夢は慌ててそれを回避した。

 

攻撃は外れたが剣の延長線上の地面にはまっすぐな亀裂を作った。

まるで空間を切り裂いた様であった。

 

 

 霊夢は回避しながらでもアインズの腕の動きを見逃さなかった。

 アインズの手元にはキーボード少し上にはディスクプレイが空中に展開されている。

 

 

 

「(出せるのはおそらく1体……それもあの手操……本人が操らないといけないタイプね)」

 

 

「避けるのは良いが、上に注意した方が良いぞ?」

 

 避けた反動で後退りする霊夢はアインズの言葉で上空の異変に気付いた。

 

 上空から垂れる雫が霊夢の腕の大きな裾に落ちる。

 

「あつっ!!!」

 

 霊夢は突如襲う痛みに顔を歪める。

 雫は服諸共、霊夢の肌を溶かしていた。

 

 上空を見上げると上ではスライムが強い酸の雨を降らせていた。

 

強酸スライム(ヘロヘロ)……」

 

霊夢は堪らず結界をはり、身を守った。

 

「ふっ……そんな守り方で大丈夫か?」

 

 アインズは霊夢の周りや結界に酸がこびりついた状態を確認し、スライムをカードに戻し手元に引き寄せ、別のカードを霊夢の後ろに投げた。

 カードは光り、また新たなモンスターが召喚された。

 

 今、結界を消したら結界にこびりついた酸を頭からかぶってしまう。

 霊夢に回避の選択肢は無かった。

 

女教師怒りの鉄拳(やまいこ)

 

 巨大なガントレットは結界を叩き割り、霊夢に直撃。

 霊夢は吹き飛ばされ地面を転がった。

 

 次から次へと現れるアインズ・ウール・ゴウンのメンバーは勿論本物ではない。

 

アインズはそこに着目し、召喚したモンスターの姿をかつての仲間の姿に改造し、仲間から預かった装備を彼らに装備させたのであった。

 

 姿だけならパンドラズ・アクターを作る際のデータが残っていたため苦労はなかった。

 

 ただし、改造の際に召喚獣の精神が耐えられず人形になってしまったため、リモートを余儀なくされた。

 

 元々、召喚獣にギルメンの戦術がこなせるとは思っていなかったから問題は無かった。

 

 

 

 

 しかし、そうして出来上がったスペルカードの性能は対費用コストに比べ『微妙』である。

 

 

 

 

 装備は一流ではあるがモンスターのレベルまで100LVにする事は難しくPCのキャラとは違い種族LVや職業LVの振り分けが効かない上に習得できないスキルや技は多い。

その最も酷い例は『たっち・みー』であろう。

 彼の装備はワールドチャンピオンのジョブでしか装備出来ず、仕方なく魔法を使えるモンスターが〈完璧なる戦士〉(パーフェクト・ウォーリア)を発動して装備したのだ。

おまけに必殺技の〈次元断絶〉(ワールドブレイク)〈現断〉(リアリティ・スラッシュ)を更に劣化させないと再現不可能なレベルであった。

 

 たっち・みーだけではない、他のメンバーの分もレベルもスキルも再現度もまるで足りてはいない。

 そして、流石のアインズも幻想郷に来てまだ短く41人分も作れる筈がなく、今現在実際に戦闘に出せるのは10名もいない。

 

 

 

 しかし、ここで疑問が生まれる。

 

 

 

 何故、この様なスペルカードを作ろうとしたのか…………

 

 

 

 確かに至高の41人の装備は手元に置いておくのは惜しい。

 だがそれならNPC達に貸し与えた方が彼らがうまく使うだろう。

 

 もし、理由が戦力としてではなく、かつてのギルドメンバーの姿を再現することが目的だとしたら?装備もその為の手段でしか無かったとしたら?

 

そして、このスペルカードがアインズの………いや、モモンガの気持ちを最も再現するものだとしたら?………

 

 

 

 

 

 

 ユグドラシル終期、モモンガは独りであった。

 

 

 

 

 メンバーの殆ど居なくなったギルド。

 ナザリックで仲間達の帰還を待つ日々。

 

 いつか、またみんなで遊べる。

 そんな事を思いモモンガはあの輝かしい時代を糧にアインズは霊廟に仲間の石像を作り待ち続けた。

 

 決して折れる事は無かった。

 あの時代の思い出こそモモンガにとって何よりもかけがえのないものなのだから……

 

 

 

 しかし、幻想郷に転移してしまった今、もうあの輝かしい時は戻ってくる事はない。

 

 

 昔の様に皆が集まる方法を失ったのだ……

 

 

 

 仮にメンバーが幻想郷入りしてもそれは人間の姿……

 決してナザリックに戻る事はないだろう。

 

 

 モモンガは仲間の姿をした人形を作り出す事にした。

 永遠に近い時間の中でかつての栄光が自分の中で風化しない様に。

 

 

 

 このスペルカードこそ、待って、待って、待って待ち続けて叶わなかった願い。

 その寂しさをこめて作られたモモンガの人形遊びだったのだ。

 

 

 

 故に本来では使うつもりはなく、想いの強さが自分を突き動かすこの戦いで使う事を決心したのだ。

 

 

 出し渋ったのは「寂しいから友達そっくりの人形を作って遊んでいます」なんてとてもカッコいい話ではないのもある。

 

 

 

「(近づくのはマズイ、一先ず距離を……)

霊符『夢想封印 散』!!」

 

 霊夢は霊力の塊を複数、放った。

 

防御力特化スライム(ぶくぶく茶釜)!」

 

 アインズは再びスライムを召喚。

しかし、先ほどとは違う色をしていた。

 

 スライムは変形し、アインズを守る障壁となる。

 

「&……遠距離特化鳥人(ペロロンチーノ)!」

 

 素早くスライムを戻し、次のモンスターを召喚、今度はバードマンが現れ弓を構えた。

 

「ゲイ・ボウ!!!」

 

 矢は霊夢の肩に刺さり、霊夢は撃ち落とされた鳥の様に地面に落ちた。

 

 

「ふっ……まだこんな切り札を残してるなんて………」

 

 霊夢は撃ち抜かれた肩を抱えながら再び立ち上がる。

 立ち上がった霊夢の顔を見てアインズは少し意外だと感じた。

 

 

「本当………厄介な奴が幻想入りしたものね………」

 

 

 

「その割には嬉しそうだが?」

 

 

 霊夢の顔には笑顔が浮かび上がっていた。

 

 

「(…………なんで私、こんな状況で笑って居るんだろう………)」

 

 霊夢は自分の心の中から期待感がこみ上げてくる事に気付いたのだった。

 

 

 

 

 

 博麗の巫女として天性の才能を持っていた霊夢にとって妖怪退治は退治を通り越し虐殺であった。

 大抵の奴は霊夢の足元にも及ばず、たとえ実力的に自分より強い相手だろうが博麗の巫女としての世界の法則性が発動し、結果的には勝利を収めてしまう。

 

 普通は勝ち続ければいつかは負けるものだが霊夢は決して負けない。

 ワザと負け様にも妖怪退治は死と隣り合わせの為、必死にならざるえない。

 

 そんな状況を霊夢は博麗の巫女としての宿命だと悟った。

 悟った上でそれに抗った。

 

 それが霊夢が考案した『スペルカードルール』であった。

 

 死のリスクを減らせばあの異常な現象は生じないのではないか?

 強さが全てではないルールを作れば戦いを楽しむ事が出来るのではないか?

 

 そんな風に考えたのだ。

『スペルカードとは妖怪が異変を起こしやすくし、又人間がそれを解決しやすくする為のものである。』これは『人間でも妖怪に勝てる』ルールである。

 しかし、このルールの裏には『妖怪でも博麗の巫女に勝てる』と言う霊夢の思いが込められていた。

 

 このルールにより一人だった霊夢の周りにはいつしか人が集まる様になった。

 実際このルールの採用により幻想郷は変わり霊夢が負ける事()可能になった。

 

 

 

 しかし、事が異変の場合そうではなかった。

 

 

 ルールを採用する事で霊夢が嫌っていた自分の異常性は異変限定とはいえ「どんな大妖怪のどんな弾幕だって初見で完璧に避ける」と言ったものに昇華されてしまったのだった。

 

 

 

 

 そんな虚しささえ感じてしまう現状に終止符を打つ時がすぐそばまで来ていた。

 

 

 

 目の前の男の前では霊夢が何をしても抗えなかった異常性さえ意味を持たない絶対的力の持ち主。

 

 生まれて初めて全力を出しても勝てない奴が生まれようとしているのだ気分が高揚しないはずが無かった。

 

 

「(このままでは私は負けるだろうけど、それを受け止めるには今、全力でこいつにぶつかる必要がある……でなければなんの意味もない。)」

 

霊夢はアインズにとある提案をした。

 

「体は限界だし、霊力も残り僅か………

次の一撃を最後にしましょう…………」

 

霊夢は最後の力を振り絞り霊力を放出し始めた。霊力はまるで霊夢を包む炎のようであった。

 

「そうだな。どうやらこのスペルカードは貴様の力の範囲外であるようだが、そろそろネタ切れだ………どうせお前には二回も同じスペルカードは効かないだろうしな。」

 

 

二人は向かい合い、最後の一撃の準備を完了させた。

 

「もう一度………もう一度あなたの名前を教えて……………」

 

「…………アインズ………

アインズ・ウール・ゴウンだ。」

 

「アインズ・ウール・ゴウン………人の名前にしては変な名前ね………」

 

「自分でもそう思うよ。」

 

「でも、覚えたわ…………

(私に勝つかもしれない男の名を。)

 

そろそろ行くわよ。準備は良い?」

 

「待ってくれなんて言った覚えはない。

来るがいい博麗の巫女 博麗霊夢よ!!」

 

二人は走り出し、お互いの全霊力と全魔力をぶつけ合った。

 

二人は光に包まれ、その衝撃波は隔離空間中に広がった。

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 

------玉座の間-----

 

 

 突如現れた隔離空間により、八雲紫でさえ中の様子を見れなくなった。

 

 よってアルベド、紫、永琳の3人はせめて空間のすぐ側まで来ていた。

 

「しかし、驚きね。

紫の能力を持ってしても干渉できない力があるなんてね。

神出鬼没の大妖怪の名が泣くんじゃなくて?」

 

「私はなんでもできるわけじゃない。

出来ることがあなた達より多いだけよ。」

 

 

「私たちからしたらそう易々と踏み込まれたら困る代物なんですけど。」

「ナザリックの切り札だからね。」

 

 

「…………あなた本当にどこまで知ってるのよ。……………」

 

 

 3人が隔離空間の前で待っていると空間が解除されていくことが確認された。

 

 主人の無事を心配し真っ先に走り出したのはアルベド、そしてそれに紫と永琳が続く。

 

 アルベドが走っていると戦闘痕で荒れ果てた玉座の真ん中で気絶した霊夢を抱えるアインズを発見した。

 

「アインズ様!ご無事で!」

 

「アルベドか…………ナザリックの名に恥じない戦いだったぞ………」

 

「そんなことより御手当を…………」

 

「そうだな此奴の傷を癒してやってくれ。」

「で……ですが!」

「私のは大したことはない。」

 

 少し遅れてやってきた紫に目線を送るアインズ。

 

「これでいいのだろう?………八雲紫。」

「ええ、いい意味で予想以上の働きよ。」

 

「ならば義理は果たした。これからは好き勝手させてもらうからな。」

「どうぞ〜」

 

 アインズは永琳に霊夢を渡し、紫に言った。

 

「その娘に伝えておけ

『異変を終わらせたのは貴様だ。

世間的な勝利は貴様にくれてやる。

しかし、貴様がそれで納得できないのであれば我々の領域(100Lv)までたどり着くがいい!その時再び相手になってやる。

何度でもな……それができるのが貴様が考えたスペルカードルールなのだろう?』

とな」

 

「ええ、伝えておくわ。

じゃあ、アインズ………またね。」

 

 なんとも意味深な風に「またね」と言う紫であった。

 

「………アルベド。」

「はい。」

 

「撤収作業だ。

24時間以内にナザリックの機能を復旧させよ。

それとナザリック内外問わず、本異変の被害調査を頼みたい。

被害の範囲は敵味方問わずだ。

パンドラズ・アクターに任せているから大丈夫だとは思うが人里の被害があったら今後面倒だからな。」

 

「かしこまりました。」

 

「それが終わったら守護者全員に出かける準備を済ませ、集まるように言ってくれ。」

 

「かしこまりました。12時間以内に終わらせます。」

 

「………何故自分でハードルを上げた?……」

「アインズ様に褒めてもらいたいからです!」

「………そうか………頑張れ………」

 

 

 今回、アルベドは裏方に回って今一活躍できなかったからここで名誉挽回したいのだろうか。

 

 アインズが時間制限をつけたのには理由がある。

 幻想郷には異変が解決すると開かれるとあるイベントが存在する。

 

 新参者のお披露目会も含め幻想郷中の主要人物が集まるイベント………そう、『宴会』である

 

 

 


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