アインズ・ウール・ゴウンが幻想入りしたようです。(再投稿)   作:TubuanBoy

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風神-2

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 幻想郷にある人間が暮らす里で最近新しく開業した店、通称『魔法屋』そこでは多種多様な依頼を魔法によってこなしている。

 

 現在、この店には二人の魔法使いが在籍しており、その一人は先の異変でも大活躍した人里の英雄、今や人里で知らぬ者なしと言われるほど有名になった鈴木サトルである。

 

 そして、もう一人はナーベラルという見目麗しい女性である。

 

 サトルの従者として幻想入りしサトルと同様に魔法を扱う、先の異変でもサトルほどではないが活躍し里の人々の信用を得ていた。

 

 そんな彼女は実は身分を偽っている。

 

 彼女のフルネームはナーベラル・ガンマ。

 

 ナザリック地下大墳墓に君臨する大魔導士アインズ・ウール・ゴウンに仕えるメイド集団『プレアデス』の一人であり、人真似妖怪ドッペルゲンガーである。

 

 現在は主人アインズのもう一つの姿であるサトルのお供として人に扮している。

 

 サトルの命令で里の人々には友好的に接している為、里の人々には『ナーベさん』『ナーベちゃん』などの愛称で慕われている彼女であるが、人間という種族に嫌悪感を感じているナーベラルの本心は『馴れ馴れしい下等生物(ミジンコ)は消えればいい』と思っているみたいだ。

 

 そんな彼女は今、魔法屋で店番をしている。

 商品である魔法のアイテムを掃除しながら。

 

 このアイテムはナザリックで作られた物で殆どがユグドラシルで第1階位に属する魔法や最近ナザリック近郊で確認された低レベルモンスターから取れるクリスタルで作られた物だ。

 

 多忙なサトルの代わりに店を切り盛りする姿はまるで良妻賢母のようであり、二人の関係を勘違いする人もいるようだ。

 

 

 店に一人の訪問者が現れた。

 

 カラーン!カラーン!

 ドアが開き客が現れた。

 

「いらっしゃいませ。

ご用件は依頼ですか?買い物ですか?」

「両方ですね。」

 

 緑髪の変わった服装をした女性であった。

 

「ここの商品は魔法を使って生活の役に立つ物が多いらしいですね。」

「はい、作っているのはナザリックという妖怪集団。

危険な物が混ざってないか私達がチェックしています。」

 

 

「外の道具をモチーフにしていそうなのが多いみたいですけど?」

 

外の世界という言葉にナーベラルは気になり、客に探りを入れ始める。

 

「…詳しくは知りませんが作ってるナザリックの主人が外の世界に詳しいらしいです。

ところでお客様は外の世界の出身で?」

 

「はい。最近越してきたばかりで。」

「では、依頼というのも……」

「ええ、出来ればこの話はここの主とお話がしたいので呼んでもらってもいいですか?」

 

 外の世界の関係者ならナーベラルの手に負える相手ではない。

 ナーベラルは答えた。

 

「………………はい。」

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

-----ナザリック地下大墳墓-----

-----第6階層・闘技場------

 

そこでは鮮血の戦乙女と紅白巫女が戦っていた。

 

「あの時は(邪魔)がいたけど、一対一なら負けないでありんすよ!」

「勝ち負けが目的じゃない筈だったけど!」

「アインズ様が見ていらっしゃるのに無様な姿を晒すわけには行かないでありんすよ!」

 

二人が戦闘している様子を見るのはアインズと数名のエルダーリッチ。

エルダーリッチの方は何やら計測の様な魔法を使っている。

 

「『清浄投擲槍』!」

「『天石門別命』!」

 

シャルティアの取り出した聖なる槍は霊夢の出現させた大穴に吸い込まれた。

 

『モモンガお兄ちゃん、時間だよ。』

 

その時、アインズの腕にある時計から懐かしい声が聞こえる。

 

「時間だ。一旦休憩しよう。」

 

「悔しい…あとちょっとだったのに。」

「その言葉、そっくりそのまま返すわよ。」

 

 運動してかいた汗をタオルで拭う霊夢は見学者のアインズに問う。

 

「どう?アインズ。収穫はありそう?」

 

 アインズはある事を調べるために博麗霊夢を呼び、シャルティアと模擬戦をさせていた。

 それは霊夢が最近覚えた神の力を借りる能力についてだ。

 

「幻想郷において神とは全知全能の絶対なる存在ではなく、一芸特化の八百万の神の事を指す巫女の力とはその神を体に宿し、その能力を使う。

博麗が普段使う符撃や結界術が精神力に依存するが、神の力を借りるには信仰心の値に依存する…………

(要領は前の世界の神官や聖職者が使う魔法と変わらない……計測器等も問題なく発動できたしな。)」

 

 本職の博麗だから習得できた力であり、すでにレベルMAXのアインズには習得不可能なものである可能性が高い。

 

 

「紫に言われて始めた修行だからなんとも言えないのよね、この力。」

「八雲のことだ何か考えがあるのだろう。

それに将来性の高い力だから覚えて損ではない。」

 

この力は引き出せる神様の力は神そのものの力と自分の力に依存するため上限が存在する。

しかし、引き出す神様の種類には上限が無い。

日本の神様はその分野に応じて数多存在する、文字通りの八百万なのだから。

 

一つの能力(神様)には100レベルの上限があっても、その神様を同時もしくは切り替え式で力を発揮できれば通常の100レベルでは太刀打ちできない力になる。

その辺はユグドラシルとは違うところだ。

 

 

理論上は存在する可能性を考慮しても実際にその通りの力を持った存在がいる事をアインズはまだ知らない。

 

アインズは自分では習得できない類のものでないとわかると興味の対象を別のものに移した。

 

(この世界に八百万の神々の概念が存在するなら、妖怪と神の違いは一体なんなのだろうな……

一般的には妖怪だと認識されているものでも地域や伝承によっては神様として崇められる事も少なくは無い。

化け狸や化け狐……天狗だって伝承によっては神様にもなる。

付喪神は文字通りの神の名をつけているがその性質は妖怪のそれだ。

もし、その境界が曖昧であれば巫女とは違う方法ではあるが我々が神の力を手にする事も我々自身が神になる事も可能だ………)

 

少なくともこの幻想郷においては神と崇められるほどの利をもたらし、また祟り神と言われるほど恐れられている自信がある。

 

「すまんが博麗、もう一戦頼む。」

「え〜もう、帰りたい」

 

「時給を倍にしよう。」

「やりましょう!すぐにやりましょう!」

 

 

 

 

 

 

アインズが神の力について調査しているとナーベラルから連絡が入った。

 

 

 

 

 

『アインズ様、魔法屋の依頼です。』

『どうしたナーベラル。

私が不在の時はパンドラズアクターに頼めと言ったはずだが?』

『依頼者は外の人間です。

………依頼内容もおそらく特別な依頼でしょう。

私の一存でパンドラズアクター様ではなくアインズ様本人の方がよろしいと思い連絡しました。』

 

(確かに軽視出来る案件じゃ無いな。……)

『わかったすぐ行く。』

 

 

 

「どうしたの?アインズ?」

「すまんが用事ができた。続きはまた今度にしよう。」

「え!……じゃあ、時給アップは?……」

 

 凶報を聞きあからさまにがっかりする霊夢。

 

「心配しなくてもくれてやる。その分、次も頼んだからな。」

「やったー!これで一週間は生きられる。」

(普段どんな生活をしてるんだこいつは。…………)

 

 やらせたコッチのセリフでは無いが、神の力を金儲けに使う巫女というのは大丈夫なのだろうか。

 

アインズはそんな事を考えながら魔法屋に急いだ。

 

 

 

 

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-----魔法屋-----

 

 

 

 サトルは急いで魔法屋の扉を開けるとそこにはナーベが客人らしき女性と話している姿がみえた。

 

「おかえりなさいませ、サトル様。」

「ナーベ、こちらの方が?………」

「はい、依頼主です。」

 

サトルは依頼主の女性を見た。

緑髪で非常に整った顔立ちをした女性がニコリと笑顔を見せてくれた。

その美しさはサトルが幻想郷に着て美人に慣れていなければ即堕ちていたであろうほどに。

 

「こんにちは、この度幻想郷に引っ越してきた東風谷早苗です。」

 

彼女はサトルの顔を見ると確信した。

 

「やはり、私たちと同じく外の世界からの移住者ですね。」

 

 顔つきというか雰囲気というか、明確には違いがないが幻想郷の住人特有のものを彼から感じなかった早苗はサトルを自分達と同じ外の住人と認識した。

 

「店の商品は魔法が使われているみたいですが、その着眼点やデザインには外の世界のものが使われています。

 作っているのはナザリックと言う組織らしいですが、その良し悪しが分かるのもやはり外の住人だと思いまして。」

 

 

「私たちというと私やあなたの他にも居ると?」

「ええ、人ではありませんが。」

 

 大雑把に説明すると彼女たちは土や風を司る神様で最近まで土地を守り続けていたが、外の環境汚染がついに彼女たちに牙を剥いた。

 なので神社ごと幻想入りを決心したのだ。

 

 話を聞く限り嘘はない。

 外の世界の荒廃具合は悟のよく知るところであった。

 

「それで?あんたたちはこの里で…この幻想郷で何がしたいんだい?…」

 

「もちろん、布教活動を…

でも、その前に話を通しておかないといけない存在がいます。」

 

「ほう?…」

 

 サトル自身自覚はないが既に幻想郷の大半の組織に顔が立つ重要人物である事を早苗は事前の情報収集で理解していた。

 

 そして、もう一人の重要人物の存在も。

 

 

「…………魔法の森最深部…………

ナザリック地下大墳墓最下層に住む死者の王

アインズ・ウール・ゴウンの元に私を連れて行ってください。」

 

 

「!!」

 

ナーベラルはすぐに反応、直ぐさま魔法を撃つ構えをするが、サトルに止められた。

 

《殺すことはいつでもできる…

焦るなといつも言っているはずだが?…》

《…申し訳ありません》

 

 

「ナーベさん?

どうしたんですか?」

 

 突如不審な動きをしたナーベラルを不審がる早苗。

 

「なんでもないよ。

アインズ・ウール・ゴウンは僕らでも気軽に手を出せない要注意人物だからね。

案内できないこともないけど目的次第だね。」

 

「なにかしようとか、そういうのを考えてるわけじゃありませんよ。

ただ、お話ししたいだけです。

提案したいことがあるだけです。」

 

 サトルは早苗の依頼を聞いて少し考え、答えた。

 

 

 

「…わかった。案内するよ。

でも変な事しないでよね。」

「わかってますよ。」

 

 話がどんどん進んでいく中、不安になったナーベラルが問う。

 

《よろしいので?………このようなものにナザリックを案内して………。》

《ナザリックの中なら何があってもどうにでもできる。》

 

「………それで………お代の方なんですけど………」

 

「お金は物資運搬の依頼の相場だけでいいよ。

そのかわりついたで条件なんだけど…

僕を残りの神様に合わせてくれないかな?」

 

神様には二種類いる。

躰のある神様と躰な無い神様。

これは博麗霊夢に聞いた事だ。

 

早苗の口ぶりから前者の神様である可能性は高く、おそらく妖怪の山に現れた神社に住んでいるのだろう。

 

「そんなんでいいんですか?わかりました。」

 

 最近、サトルは神様という存在に興味があり、これはまたと無い機会だ。

 

(ついでに妖怪の山に入る理由が出来た。

気になっている天狗の動きもみれたらいいな…………)

 

「なら、こっちのお願いを聞いてくれた後で」

 

 

 

 こうして、早苗のナザリック訪問が決まった。

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

「サトル様…少し聞いてもいいですか?」

 

早苗が帰ってからナーベラルがある事を聞いてきた。

 

 

「なんだ?……珍しいな…………」

 

ナーベラルはサトルをじっと見て聞いた。

 

「あの娘も輝夜様と同じなのでしょうか?……」

 

 先程、サトルが早苗に見せていたのは同郷のものとしての姿であった。

 それはユグドラシルを知る輝夜の前で見せる姿にも似ていた。

 

「…………いや、少し違う…………

あの娘は『外の世界』の住人であるが、我々がいた前の世界のことを知らない。逆に輝夜は『外の世界』を知ってはいるがいた事はなく我々がいた世界と此処を行き来していただけだ。」

 

 ナーベラルは前にアインズから聞いた話を思い出した。

 

(その昔、ナザリックが栄えていたあの時は至高の方々は人に扮して『前の世界』と『外の世界』を自由に行き来できていたらしい。

しかし、それが困難になり至高の方々は外の世界に止まらなければならなくなったと……

ならば………)

 

「では…………どちらが本当の姿なのですか?」

 

 もし、人の姿がアインズの本当の姿なのならば自分は考えを改めなければならないかもしれない。

 

 サトルは少し考え、ゆっくり答えた。

 

「…………らしくないな。

………………そんな無意味な質問。

事実はどうあれ、仲間とともにナザリックを築き上げたあの時代が私の記憶の中で最も輝いていた事は揺るぎようもない真実なのだ。

今の私は鈴木サトルでもなく、モモンガでもない。ナザリックの支配者アインズ・ウール・ゴウンなのだよ。」

 

外の世界を捨て、ナザリックの為に生きると誓ったのだから。

 

 

 

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