アインズ・ウール・ゴウンが幻想入りしたようです。(再投稿)   作:TubuanBoy

42 / 47
風神-4

-----玉座-----

 

 アインズは文から渡された書類を読んでいた。

 

 

「中々、むちゃくちゃな事を請求してくるな…………」

「この請求はあくまでもそちらに話し合う気があるかどうかをみるものですから。」

 

「そうかもしれないが、まるで従属国みたいな扱いだな。…………

最後のが一番ふざけている。

ナザリック周辺に妖怪の賢者と博麗の巫女の協力の元結界を貼り下位アンデッドの動きを制限する……ってナザリックを地下に封印すると言っているようなものではないか。」

 

「勿論全てを受け入れてもらおうとは思っていませんよ。

何度か間接的に話し合ってから、直接的な交渉に移る……

その為の伝達係(わたし)ですから。」

 

なんとも穏和的で事務的な会話に違和感を感じたアインズは文に言った。

 

 

「成る程……お前も中々食えんな……」

 

「あや?……なんのことでしょうか?」

 

 

「隠すな……わざとらしい…………

平和的解決を望む連中がこんな要求をしてくるわけがない。

上からはナザリックに喧嘩を吹っかけてこいとか言われてきたのだろう?」

 

「………いえいえ………そんな事は………」

 

「お前には上層部とは違う考えがある筈だ…

それを話せ。」

「いやいや、1伝達係の話なんて聞く価値ありませんよ。」

 

「無理やり聞き出されたいのか?」

「言います……」

 

文は自分の考えを話し出した。

 

「今、妖怪の山は二つの勢力に挟まれている形です。

上には神が、下には不死者が……

その状態に焦った上は早々に不死者達を片付ける計画を立てました。

不死者の件に蹴りをつけた後に神に対抗しようと……………

しかし、わたしの見解ではそう簡単にどうにか成る程、ナザリック(ここ)は甘くはありません。

ですから、こちらとの関係を良好にできれば徒党を組んで神様に対抗できると考えました。」

 

上層部とは違い、文はナザリックを過小評価していない様だ。

 

それだけではなく文はアインズを見込んで頼みごとをしてきた。

 

「これは私たちだけではなくそちらにも利点がある話です。

どうか…………懐の深いところを見せてくれれば後は私が上を説得します……」

 

普段はどちらかといったらおちゃらけた性格をしている文が真剣な面持ちだ。

隣にいる魔理沙も驚いた顔をしている。

 

妖怪の山とナザリック、ガチで戦争をしたら妖怪大戦争なんて目じゃないぐらいの規模になるだろう。

そうなっては誰も得をしない。

そのことに気づいた文は自分の出来る限りのことをしようと考えていた。

 

文の事は紫や霊夢から聞いている。

烏天狗の中ではかなりの古株で、力もかなり上位の存在、上からも一目置かれてるからこそ今回交渉役にも選ばれたのだ。

 

 

「成る程、わかった……しかし、その為に切れる手札がお前にはあるのか?」

 

アインズはプライド意識が低い代わりにそんな事はしないタチだ。

そこに幻想郷の平和とかバランスとかは頭にない。

 

アインズが納得できる条件を満たせなければこの交渉の成功はありえない。

 

文は席を立ち風の力でふわっと浮かび、アインズの隣に降り立った。

そしてアインズの隣で驚くべき言葉を吐いた。

 

「………私、そのものじゃ駄目ですか?……」

 

「はあ!!?…………」

その言葉に声をあげたのは魔理沙であった。

 

「何、言ってんだよ!文!」

 

「………スパイか…………」

「はい、私があなたに従えば妖怪の山の動向を逐一監視できる。

勿論、表向きには私は妖怪の山の住人ですけどね。」

 

 

「………なんだ………そういう意味か………」

 

 

「「お前(魔理沙さん)は何を勘違いしているのだ?(していたんですか?)」」

 

「ぐう…………」

 

一人は無自覚でもう一人は自覚ありで魔理沙にツッコむ。

 

 勿論、文自身にも色仕掛けの意図は勿論あった。

 しかし、それは自分一人の犠牲で山の皆が助かるのならそれでいいと思っていたからだ。

 

 天狗の上層部にそこまでの忠義を尽くす気はないが、彼らは下の者の事をまるで考えていない。

 戦争にでもなれば一番辛い思いをするのは彼らだからこそ体を張ったのだ。

 

 普段の行動や態度からはあまり結びつかないが、こう見えて仲間思いなのだ。

 

 しかし、アインズには色仕掛けは効かなかった。

 普段からあれだけの美人に囲まれている彼だからなのか、そもそも性欲のないアンデットだからなのか。

 少なくとも研究の被験体にされるくらいの興味はあるかと思いきや、一番自分に都合の良い解釈をしてくれた。

 

 

「どちらからも美味しい蜜を受け取る気か?

カラスではなくコウモリにでもなる気か?」

 

「……あ〜…………美味しい蜜を、というか何というか…………

あなたは今や幻想郷の台風の目です。

こんな美味しいポジションはないでしょう。」

 

(重要なのは楽しめるかどうか…………

霧雨と同じトラブルメーカーの思考回路だな。

ただ、魔理沙は当事者を好み、射命丸は傍観者を望む…………さすがは新聞記者だ。)

 

台風の目という表現は風を操る文らしい表現であると同時にかなり的を得ている。

台風とは中途半端に近づく者に一番被害を与える。そして目に入ってしまえは無害である。

 

「お前の様な奴が妖怪の山にいるとはな。

中々楽しめそうだ…………

良かろう………チャンスを与えよう…………」

 

するとアインズは一つの書類を文にわたした。

 

「妖怪の山への交換条件だ…………」

 

 アインズは守護者や同盟者たちが納得してくれるだけの最低限の譲歩を文に提示した。

 

「そちらの要求を妥協してくれればこちらも妥協する準備があるとつたえろ。

ある程度その方向に持っていけなければ貴様は組む価値もない無能だったというだけだ……」

 

「わかりました……頑張ります。」

 

 

 

そのあと、細かい打ち合わせをした後、文はナザリックを後にした。

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

文が去ったあと、同じく会議室にいたアルベドから質問された。

 

 

「よろしいのですか?

ナザリックが妖怪の山の下につく様な事になっても………」

 

 紅魔館と違いアインズにとっては守谷も天狗も上から目線でこちらを利用しようとする気に入らない奴らだ。

 

 それでもナザリックの為に間違っても戦争などにならないように対処した。

 

 同盟を蹴った守谷に組織に取り込まれるかもしれない妖怪の山。

 両者の違いはナザリックに必要だと思う物を両者が持ちそれを重要視しているかしていないかの違いであった。

 

「名目上の上下関係なんてくれてやる。

それに、奴らだってバカじゃない、ナザリックを下部組織として取り込んだとしても無下な扱いはできるだけ避けるだろう……」

 

 ナザリックを無下にする様な扱いをすれば紅魔館や八雲あたりが黙っちゃいない。

 

「ああ、それに奴らはあの条件に隠れている真の目的に気がつかないだろうしな。……」

 

「恐れ入りますが、それは何でしょうか?」

「河童という存在だよ…………」

 

交渉の末、河童と同等かそれ以下の権限しかもらえなかったとしても河童と近いポジションを獲得することで河童との技術を取り込むか、掌握するのが目的だ。

 

「河童……確か、高い科学技術を持つ、妖怪の山の下っ端ですよね。…………」

 

「ああ、私は妖怪の山の脅威は河童の科学技術だと思っているのだよ。」

 

「成る程……しかし、そのぐらい向こうも気がつくのではないでしょうか?……」

「いいや、奴らは気がつかない…………

何故なら彼ら天狗は河童の技術の価値に気づいておらず、軽んずる傾向があるからだ。」

 

 外の世界をモチーフとし、この世界の魔法を含む技術体系を投入した河童の技術を使えば幻想郷に亀裂を入れるほどの兵器を作ることも容易だ。

 しかし、天狗はその価値に全く気付かず、便利屋か道具屋程度にしか認識していない。

 

「つまり、我々の目的が河童の技術だと気づいても大した事ではないと見逃す可能性が高いのだよ。

私が魔法使いということも含めればナザリックが河童の技術を欲しがるのも何らおかしくないしな。」

 

 魔法使いには研究者の一面が大きく、すでに系統違いの紅魔館の技術を取り込もうとした経緯がある事からアインズの知識欲は雑食である事は広く知られており、河童の技術に興味を持っても何ら不思議ではない。

 

「重要視している河童を抑えてしまえば妖怪の山の勢力を内側から操ることも、滅ぼすことも可能……と考えておられるのですね……

そこまで考えが至らず申し訳ありませんでした…………」

 

 自分の浅慮を悔やみながらアインズに謝るアルベドであった。

 

「気にするな……こればかりは外にでないとわからなかったことだ。

 私の留守を任せる事が多いお前は外での仕事がほとんどないからな

 だが……だからこそ、休日ぐらい他の守護者の様に外に出ることを薦めるぞ。」

 

「私にとって外の住人は付き合う必要も価値もない存在ですから仕事以外でナザリックを出るつもりはありません。」

 

アルベドの外嫌いは相変わらずだ。

まるで年頃の娘を持った父親の様にアインズは頭を抱えた。

 

「何にしても下につくかどうかは文屋の成果次第だがな……」

 

 そもそもこの話は射命丸の成果で決まる。

 その射命丸はその頃、ナザリックから天狗の山に帰ろうとしていた。

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

「いや〜……楽しくなりそうですね〜

早速帰って上司に報告しないと……」

 

文が上機嫌に帰っていると目の前の空間が歪む。

 

「久し振りね………」

 

 

空間は裂け、中から紫が現れた。

 

 

「紫さんじゃないですか。どうしたんですか?……」

 

「なんか色々、ナザリックの方で動いていたみたいだけど……なんか大きなことをしようとしているみたいね。」

 

紫の前では先ほどのやりとりも筒抜けだ。

 

「やっぱり、紫さん相手に隠し事はできませんね。

それがどうしたんですか?」

 

紫は文の返答に意味深なトーンで答えた。

 

「困るのよね……

あの子に天狗と同等程度の立場で収まってもらっちゃ。」

 

「え?」

 

長い付き合いだからこそこの直後の紫の行動は予想外であり、動きが鈍る。

 

ニュル

 

足元の空間が裂け、中から触手が現れ文を拘束し始めた。

 

「キャ!……気持ち悪っ!!

くっ!離れない…………紫さん!冗談はやめてくださいよ!!」

 

「ゴメンね〜…………

でもね……しばらく大人しく私の領域(テリトリー)にいなさい……全部終わったら出してあげる。」

 

文は必死で抵抗するが隙間に引きずり込まれていく。

 

「紫さん!何を考えているんですか!?幻想郷のバランスを一番に考えてるあなたが!!

 

…………まさか!!それだけはやめさせるべきじゃないんですか!?

 

聞いているんですか!?紫さん!!紫さぁぁぁぁ………………」

 

 隙間に沈んでいき、声も届かなくなると紫は隙間を閉じてナザリックがある方に向かって言葉を漏らす。

 

「…………ゴメンね。悟…………

でもこれもあなたに必要なことなのよ………」

 

 自らも隙間に入りその場には誰もいなくなった。

 


 ▲ページの一番上に飛ぶ
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。